第11話 最終話「いちばんすきな花」 - 何もなくなっても、楽しめる4人。

 

リラックスしている人たちを見ると、リラックスできるのかもしれないと、毎話思いながら見ていた。

4人のそばに自分はいないし、あのお家にも行ったことはないけど、それでも放送されている1時間は私もそこにいるような。

椅子をもう一つそっと置かせてもらっているような感覚でいた。

 

“ちょっと住んで”いる4人から始まる空気が心地良く、ゆくえさん夜々さんがベッドで眠り、椿さんがソファーで眠る。

少し微笑んだように見える椿さんの眠り顔が、ああ嬉しいんだなあと感じられて、よかったねとさらに温かいお布団を掛けたい気分になった。

さて紅葉さんはと待っていると、抜け殻の寝袋。

それを見ただけで、もう大分寂しかった。いないということに、過敏になっている証拠だった。

実際には紅葉さんはコンビニのアルバイトから帰って来るし、お土産の朝ごはんも持って来てくれる。

 

急いで出掛ける夜々さんが「あっ、なんか頂戴。朝ごはんやつ」と言って、「あっ」と勿論なテンションで袋を開く紅葉さんの空気感がとても好きだった。

パンもあるけど、夜々さんが手に取ったのは、おにぎり。

 

キッチンで話している時に椿さんが着ていたニットカーディガンがNo.1に好きな服になった。

異素材組み合わせや、パッチワークっぽさのあるデザインが好きだから、白、ミントグリーン、ベージュのニットが程良くシンメトリーに組み合わさって、ケーブル編みがあったりなかったりなのが魅力的。

なにより、椿さんに似合っていた。

 

そして突如明らかとなる、夜々さんのTシャツ!カタツムリ!まさかの盗用問題。

お!えっ?ええ?となりながら見ていた。ここでイラストレーターさんや物作りをする人たちのモヤモヤが出てくるか…!と少し前のめりになったものの、

夜々さんはしっかりしゅんとしていたし、紅葉さんはまあこのことに限っては夜々さんに対しては許容の姿勢な様子で。

紅葉さんのお仕事としては、著作権や盗用、無断転載などなど、消耗する切実なことだと思うから、時間があればその辺りもう少し見られたらとも思った。

 

ガチャッとドアを開けると、あのテーブル、あの席に、赤田さん、純恋さん、このみさん、楓さん。

ある意味の悪夢かと思った。ごめんだけども。なにがどうなってこうなった謎の組み合わせ4人衆。椿家が完全に占拠されている。しかも楽しげ。

椿さん、ゆくえさん、ソファーの前に座る姿勢で追いやられている。

なかなかの社交性の4人だと圧倒されながら、貴重な様子を見ている気持ちでいた。

 

夜々さんが椿さんに今一度伝えたことと、紅葉さんがゆくえさんと話したこと。それぞれに何か言っていなかったかを気にかけつつ、4者4様の対応なのが良かった。

夜々さんはゆくえさんに話していそうだし、紅葉さんは椿さんに話しているような気がしていた。

でもゆくえさんは夜々さんに話していなさそうだし、椿さんは紅葉さんに話していなさそう。

そんなふうに想像していたら、思いがけずこのみさんが椿さんに届けた夜々さんの本心。ほっとしたような、うれしそうな椿さんの表情。

夜々さんきっと、ゆくえさんとこのみさんの3人でいた時間のなかで、ゆっくりとお話ができたのだろうなあと思った。

 

どうしたってお引っ越しの日はやって来る。

引っ越しのあの気の重さと、前途を思えばどこか清々しい独特の空気感はなんだろう。

ダンボールにはなんだかんだ荷物が収まっていくし、部屋はどんどん片付いていく。片付けているのは自分なのに、自分の心は追いついていない感覚は身に覚えがある。

変わっていくことの受け入れ方をどこか知っている椿さんと、ちょっと抗いたい3人の様子に心がぎゅっとなった。

カーテンレールに手が届く4人の背の高さには、シンプルに驚いた。

 

第1話を見て考えた、自分の抱える小さかった頃の自分。インナーチャイルドのこと。

椿さんの背中の向こうに、手を振る子供の頃の4人が見えた時、4人は区切りを持って前に進めたんだと感じた。

 

置いて行ったマグカップ、その存在感に、

大丈夫かな、美鳥ちゃんの気持ちとしてどうかなと思ったけど、おじゃましに来る時は順番に来ていて安心した。

椿さんに赤のマグカップを当たり前のように差し出す美鳥ちゃんの優しさと、色を覚えていてそれぞれに合わせて用意してくれる美鳥ちゃんは十分にかけがえのないひとりとして証明されていると思う。

椿さんに「ここ」と伝えてもらったごみ袋の場所を美鳥ちゃんの生活に合わせて戻すことも出来たけど、そのままにしていたことに心温かくなった。

 

職場にいる椿さんを見るのも好きだ。

出版社勤めの椿さんであることを時折思い出す。

書類のぶちまけ方史上、最も拾うのが大変そうな散らかしっぷりを披露する椿さん。たいへん愛くるしいだった。

椿さんは常にもう、その姿見せてくれてありがとう大賞で、スーを差し上げるかわりにありがとうを差し上げたい。

紅葉さんに精神安定パンを「椿さん好きだから」ともらった椿さんの「えっ、ありがとう」(高音)から大賞決定だった。

 

ゆくえさんのいる塾に通う、望月ちゃんと穂積くん。

学校での様子のなかで、ようやくちょっとほのぼのできるやり取りがあって嬉しかった。

保健室のドアが回すタイプのドアノブで、両手に重たそうなおぼんを持って途方に暮れての「望月ー開けてー」がよかった。

穂積くん、淡々としているようで気持ちと頭をぐるぐると巡らせていることが滲んで伝わってきていて、

自分を責め過ぎないで。思ったことは話したい人に話せるといいな…と思いながら見守る気持ちでいた。

 

赤田さんとお嫁さんの峰子さんとのシーンが最終話にあったことは、サプライズだった。

餃子のタレは好みがでるよなあと見ながら、二人は共有しないタレでも共有できる美味しさを楽しんでいるんだと思った。

 

自分と相手からさらに次の人へと繋がる時、どんなふうに伝えるか、どう向き合うか、どの距離が心地良いか。

考えてみる視点を、赤田さんと峰子さんとゆくえさんから受け取った。

ゆくえさんが送ったものの、結果、赤田さんが車で送り届けてくれた時に、助手席でなく後部座席から降りたことに、ゆくえさんにとってのわきまえ方が表れている気がした。

後ろに乗ったんだということが見えたのは、何度目かの再生で赤田さんがぐっと振り向いている姿勢に気づいてからだった。

 

オープニングで藤井風さんの「花」が流れず、テーマが流れた。

後ろに取っておくのねと思っていたら、椿家にいる藤井風さん。ピアノ演奏とご本人の歌唱のなか、4人でここにいた時間を蘇らせてくれた。

 

ラストシーンがテーブルシーンで終わるのが素敵だった。

カフェに集合しているのも、カラオケに集まっているのも、それはそれで楽しそうだった。カフェは特に雰囲気もぐっときたから、行ってみたい。

ここでドラマ放送もはじまる前のティザー映像で、小さな紅葉さん、夜々さん、ゆくえさん、椿さんが大人な話し言葉で議論していたあのテーブルに繋がっていきますか!とテンションが上がった。

しかしお店の展示であのリラックス。誰か一室とテーブルと椅子を4つ与えてあげてーと思いたくなる。

 

席を立ってすぐに歩いて行く3人と、席をぐっと押して直してから立ち去ろうとする椿さん。

右側にスマホがあるとずっと見ていたから、椿さん椿さん!忘れ物忘れ物!と声をかけたかった。

ポッケに手を入れ、あれっ?となって、テーブルに振り返って、ああっ!と取りに戻る。きっといつものことで、あまり気に留めない3人も3人らしい。

ご飯の話をしながら、「なんで?一蘭は美味しい」の紅葉さん、言い方が小動物も小動物な可愛さだった。

 

会えてよかったなあ。

ここにいられてよかったなあと思えることのうれしさ。

何もなくなっても、楽しめる4人。


変わりなく、気にせずにいられないゆくえさん。

書類のぶちまけ方史上、最も拾うのが大変そうな散らかりっぷりだった椿さん。

咄嗟の時でも本心を言えた夜々さん。

そんな夜々さんに、最初に本音をぶつけにぶつけられて怯えきったバイト仲間くんたちに、紅葉さんが出来る限り柔らかく返して、場を平(なら)す。

紅葉さんが、飲み会の場でも自分が最優先にしたいことを臆さず言ってみる。が出来たから、紅葉さんの本当に行きたい場所に行けた。

 

オレンジのガーベラが、もう一度でてくるなんてとうれしかった。美鳥さんの塾に飾られた4本のガーベラ。

「いちばんすきな花」の木曜日に合わせて、毎週お花を飾ることを習慣にすることにして、それはしっかり3ヶ月つづいた。

今回はどうしようかと考えて、最終話に合わせた今週の花を、お花屋さんで買ってきた。

今週は、マリーゴールドや菊みたいなもりもり感のあるオレンジのガーベラと、赤くて丸みの可愛い千日紅という名前のお花と組み合わせ。奮発してちょっと花束みたいにした。

一周回ってガーベラにしたいなと選んだら、思いがけずドラマとリンクした。飾っていてよかった。

 

4人に会えた時間。4人だけでなく美鳥ちゃん、赤田さん、「いちばんすきな花」のなかで一人一人に会えた時間は、居心地の良いものだった。

そうかなあ?と思ったり、そうなんだよなあと思ったり。数式と向き合うみたいに、難解だったりわりかし解けたりながら。

大きく提示した問いについては、0か100かでないとしても、そのまとめで最終解だろうかということは、自分の頭でこれからも考えていきたい。

木曜日を軸に1週間が周って、それが3ヶ月あって。楽しかった。

会いたい人たちがテレビの中にいることがうれしかった。

 

これからも4人がほのぼのワクワク、時にモヤモヤを話し合いながら、時間を過ごしていることを思いながら。

花にそっと心惹かれる色彩の季節をありがとうございました。

 

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