レトロワショコラに会いたくて

 

去年の12月頃からソワソワと、チョコレートの季節を待っていた。

願望を言ったら、1月、2月と言わず、通年ショコラティエさんが訪れてくれる季節であってほしい。

 

今年は、新宿の伊勢丹にチョコレートを買いに行くと決めていた。

去年、映画「北極百貨店のコンシェルジュさん」とpixivの企画で、百貨店での思い出をテーマにした小説もしくはエッセイの募集があり、エッセイを投稿した。

具体的な名前は書かない形にしたけれど、

「レ・トロワ・ショコラ」のチョコレートが買いたくて、ショコラティエの佐野恵美子さんにお会いしたくて、初めて新宿伊勢丹に行った時の話だった。

当選して受け取った百貨店の商品券。ここだという時に使いたいと思った。

 

それが2023年末のこと。

そうしたら、2024年の新宿伊勢丹のサロンデュショコラに「レトロワショコラ」が出店するとお知らせが出た。

サロンデュショコラという形では初出店になるとのことだった。

「北極百貨店のコンシェルジュさん」に関する企画の当選で受け取った百貨店の商品券を持って、「レトロワショコラ」のチョコレートと再会できる。

初めましての場所だった新宿伊勢丹で、それが叶う。

 

行こう。チョコレートのおかげで書けた文章でもらえた百貨店商品券で、チョコレートを買いたい。

もしショコラティエの佐野恵美子さんにお会いできたら、こんなに嬉しいことはないと思ったものの、

忙しく様々な百貨店でチョコレートを届けている方なので、行ける日にはいらっしゃらないとわかった。

 

それでも「レトロワショコラ」に会いたくて。

坂元裕二さんのサイン会に行ったドキドキの冷めやらない、日も経たないうちに思い切って新宿へと再びやって来た。

駅の中を歩いていたら、目の前を「レトロワショコラ」だとパッとわかる、ブルーに“3”の袋を持ったお姉さんが横切った。

もうすぐそこだ!と嬉しくなって、少し足早になる。

 

向かう途中で「北極百貨店のテーマ」や「Gift」を聴きながら、到着した新宿伊勢丹の風格はやはりかなりのものだった。

正面から入ると、両サイドにジュエリーフロア。

ど真ん中を歩くように通路があって、そこからそれぞれの目的地を目指す。

催事のフロアに向かって、整理券を受け取った。

 

整理券にあるQRコードスマホで読み込むと、あと何名かをリアルタイムで見られる。

メールで呼び出し通知もある。その場を離れても良いのがありがたかった。

 

案内の時間になって、いそいそ催事スペースへ。

ある程度の入場制限をしてくれていての整理券なので、全くどこも動けないほどではないものの、

通路によってはこっちへ来る人のターンを待って、ようやく向こうに歩いて進めたりな混み具合が、平日の昼間という時間帯でもあった。

厚手のコートを着たままでは、なかなか身動きは取れそうにない。

 

右を見ても左を見ても、つるんときゅるんとしたボンボンショコラとプラリネガナッシュが個性豊かに箱の中に並ぶ。

見事な四角のボンボンショコラとプラリネが好きな自分にとって、目移りするようなお店がいっぱいある。

シンプルなデザインの美しいボンボンショコラの多さは、新宿伊勢丹のサロンデュショコラの特色なのかなと感じながら、まずは眺めて周った。

 

壁側のスペースには、オープンでありつつ本格的なイートインのお店が並んでいた。

キッチンもしっかりとあるコの字型のカウンターで、高い位置の椅子。

これはもうフレンチレストラン…ここにお店が来ている。それがひとつではなくて、いくつも並んでいる。

フレンチレストランのキッチンの臨場感を垣間見た。

お酒とチョコレート。チョコレートと食事。

自分にとってのランチ価格の2倍3倍が並ぶ世界に圧倒された。

 

どこか自分にとって落ち着いてイートインできるお店があるかなと歩いていると、美味しそうなエクレアが目に留まった。

1粒ずつ購入できるボンボンショコラも同じショーケースに並んでいたので、エクレアとボンボンショコラを4種選んだ。

LA MAISON DU CHOCOLAT

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イートイン可のスペースで、いそいそとイエローの箱からエクレアをそーっと取り出して、一口食べる。

中がベリーで、おお!となった。

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しっかりと存在感のある酸味のベリーペーストが入っていて、上のチョコレートクリームの濃厚さと爽やかに合う。食べてよかった。

 

あちらもこちらも魅力的でよく検討したいところだけど、即決力も求められるのがサロンデュショコラと知った。

さっきいくつか並んでいたパンが、2度目に通るともう無い。

迷って今回は我慢したものの、「teal」さんの『ボンボンショコラ ルモルトン 1971』も、1粒の美しさとボックスのデザインの素晴らしさに釘づけになった。

 

事前に写真で気になっていた、「パティシエ エス コヤマ」さんの“DNA KYOTO”もここで出会ったのだから!と購入した。

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フレーバーが見たことのないような和の顔ぶれで、柚子、抹茶、焼きみかん、黒大豆醤油、金胡麻(プラリネ)、京番茶とあって惹かれずにはいられなかった。

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10個入りの方だと、万願寺唐辛子、黒七味、米こうじ味噌、ほうじ茶も入っていて、とても魅力的だった。

 

レ・トロワ・ショコラ」の看板を見つけて、抑えきれない喜びで近づく。

購入したかったのは9粒入りの缶。

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左上のボンボンショコラに、猫ちゃんがいる。

 

出来ればケークもと思ったけれど、午後になりたてですでに売り切れのマークが。

開店前に並んでいる方で売り切れているんですと販売のお姉さんに教えていただいた。

いつかタブレットを食べてみたいと思っていたから、今回はタブレット『グルマンディーズ』と9粒入りの缶にした。

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ここのチョコレートが買いたくて来ましたと店員さんに伝えて、“3”の袋を受け取る。

自分の中ではかなりの贅沢。缶の分を商品券でお支払いした。

 

無事にレトロワショコラにたどり着けたこと。

ショコラで満ちた空間を味わった満足感で退場した。

帰り道、今度は自分の持つ袋が誰かの目に留まるかもしれないと楽しく思いながら歩いた。

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冷蔵庫にあるショコラが目に入ると、ぴょこっと嬉しさゲージが上がる。

日々過ごす時に何かちょっと疲れるようなことがあっても、最高のショコラが私にはあるんだと思うと、やり過ごせたりする。

少しずつ味わっていきたくて、味の感想が書けるとしたらもう少しかかる気がするけど、1粒1粒を大切に食べていこうと思う。

 

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