すべてを突き抜けて行く光の線のような強さと、
なのになぜか無意識のうちに泣きそうになる切なさが共存している。
この魅力はなんだろうと思いながら惹かれて、何度も何度も聴いている。
ドラマ「わかっていても」で、とてつもない可愛らしさの向こうに大人のメンズ感があり、底知れぬ深みを予感した、じゃがいもくん。
ではなくチェ・ジョンヒョプさんが主演キャスティングで日本のドラマに!と心の中で湧いた、ドラマ「Eye Love You」
予告で見るたびに印象に残った歌声。主題歌をフルで聴きたいと思っていた。
Omoinotake「幾億光年」
作詞:藤井怜央さん
作曲:福島智朗さん
編曲:Omoinotake、Ryo Konishiさん
Omoinotakeのボーカル、藤井怜央さん。
作曲したのがベースの方と知って、嬉しくなって意識して聴くからなのか、曲の始めのベースがいきいきと動き回って楽しそうなのがわかって、
耳に届くベースのメロディーラインに心躍る。
ドラマの今の展開で流れてくると、ときめきを増幅させてくれる。
でもどこかで侑里さんとテオの背景を思うと、不安の拭えないこの先。
歌詞を読んで、聴いて、その切なさのわけが少し紐解けていった気がした。
歌を流し始めて最初に耳に届くのは、ボーカル藤井さんの息を吸い込む音。
ここをカットせずに、呼吸から音楽としてのせてくれたことで、臨場感と日常を感じられる。
もう一度さ 声を聞かせてよ
めくれない ままでいる
夏の日のカレンダー
最初の歌詞をしっかり受け止めたら、曲のワクワク感と相反して、寒さに鼻がツンとくるみたいに切なくなった。
“もう一度さ”の“さ”に、優しさが溢れていて、それだけでもう。
“声を聞かせてよ”がそのままの意味としても、ドラマでの侑里さんが持つ特徴としても捉えられて、そう考えるほど心がキュッとなる。
ココロが壊れる 音が聞こえて
の歌詞に、明るく聴こえていたなかの切実な思いに気づく。
もう二度とは 増やせない
思い出を 抱いて 生きて
と聴いて、この歌の“君”と“僕”がそばにいないことも、もう一度が容易くないことも突きつけられる。
サビの言葉ひとつひとつが胸を打つ。
時間のスピードを超えることができない切なさは、IUの「You&I」を聴くたびに思ってきたけど、その感覚が「幾億光年」を聴いて蘇った。
“寄り添った日々”だけでなく、“生きている意味”と綴るところに、この歌の重心がどこにあるかということを真剣に受け取る気持ちになる。
だから
いつもココロで 想い続けてる
まだ僕の 声は聞こえてる?
弾けてしまったと思うくらいに、想いがどれほどかを痛感する歌詞。
“ココロ”で想う、“僕の声”が聞こえる侑里さんのことを思って。“まだ僕の 声は聞こえてる?”という問いかけをテオに重ねて、勝手に泣きそうになってしまう。
ゼロセンチの 指先で
渡せた気に なってた
その前にある言葉も含めて、近かったからちゃんと伝えようとできなかったこと、
送信するメッセージでは足りなかったもののことを言っているのかなと想像して、身近な後悔を思い起こす描写にドキッとする。
大サビ前に、すうっと音がしぼられていく流れがあって、
そこで鳴る楽器の音が、懐かしい恋しさを連想させるレトロなオルガンのような音になっているところがすごく好きで、いい。
自然と耳に心地良く、リズムを刻む韻を踏んでいる言葉たち。
“止まらない日々”と“君と逢う旅”の部分は、耳で聴いていた時は[君と会う度]なのかなと思っていて、“旅”だったんだと気づけて嬉しかった。
その先でやってくる歌詞の、“進み出す日々”と“目を開けるたび”も美しくて、“たび”を漢字表記ではなく、ひらがな開きなのも素敵だなと思う。
言葉の使い方だと、“藍色の先を見つめ”と夜空を見上げることを言い表わすことにも心掴まれている。
会いたい、がひたすらに伝わってくる歌詞の最後のサビで、
デイバイデイ
どんなスピードで 追いかけたら
また君と 巡り逢えるだろう
わけあえた日々 季節はふいに
君だけを乗せ 彼方へ
言葉にならない。歌で、歌詞で、こんなに想いも情景も届けてしまう。
最後の行の言葉に、宇宙に放り出されるような無力さを感じる。
お互いが別れたくて別れたわけではなくて、抗えなかったんだと想像して、もしそうじゃなく飛行機で遠くに行くということならそれがいいと思うほど、苦しくなった。
泣きたくなるわけを考えるならここだと聴きながら思った。
それでも、その後につづく歌詞は希望を携えていて、
そして最後の最後、
過去形にならない「I Love You」
最高に好きだと思った。
過去形にしないという決意としても受け取れて、人の心の中で愛し続けるなら過去形にはならないと気づく歌詞だった。
ドラマとしては日本語と韓国語で、言語と意思疎通が鍵になっている作品の締めくくりの歌詞として、ドラマタイトルにも重なる言葉選びの素晴らしさに感動した。
実際にドラマのラストシーンで、タイミングぴったりで際立って聞こえた時、すごい…と息を飲んだ。
星の光を見ると、見えている光の美しさに引き込まれていくけど、
この光は届かないほど遠い時間の先から来ていると、何度も気づいては切なくなる。
Omoinotakeさんの「幾億光年」を聴いていると、どうしようもなく届かないことを思いながら、それでも強い想いがすべてを突き抜けて行く光のように照らし続けることはできると感じられる。
侑里さんとテオには明るい世界線にいてほしいと願いながら、ドラマ「Eye Love You」を見て、「幾億光年」をこれからも聴き続ける。