カッティングで奏でられるエレキギターに、パーカッションの音が鳴る。
心惹かれたタイトルに、再生ボタンを押したら耳を傾けたくなるメロディーが聴こえて、
幾田りらさんの声をもっと聴いてみたいと思っていた今にぴったりだった。
どんな歌詞なんだろうと読んでみて、切実で詩的な表現に思い浮かべたのは、最近触れたばかりの物語「ロミオとジュリエット」のジュリエットだった。
舞台や小説に触れたとき、受け取った空気感を自分なりに思い起こせるきっかけになる、イメージに合う曲を見つけるのが好きで、今回はこの曲がいいなと思った。
中世ヨーロッパの世界観ではないけれど、胸に抱える恋心はきっと国も時代も越えられる。
「ロマンスの約束」
幾田りらさんが2019年11月にリリースした、「Jukebox」に収録されている一曲で、作詞・作曲は幾田りらさん。
これから二人過ごしていくために
約束してほしいことがあるの
声が枯れて名前が呼べなくなる
その日まで 忘れないで
声が枯れるほど呼びたくなる名前があること、どれほどしあわせだろう。
“約束してほしいことがあるの”と語りかける言葉が、穏やかで真剣で。
覚えていてほしいと願うことが恋か愛に繋がるなら、“忘れないで”とお願いできるのはそれはそれは特別な事なのだと思う。
沢山の愛で溢れたなら
明けない夜の夢を見せてほしい
天秤はいつも傾くけど
今夜だけは同じでいたい
そう綴るサビには、うれしさもかなしさも溶け合っているような気がして、
“沢山の愛で溢れたなら”のフレーズが特に、メロディーラインの美しさが際立っている。
“明けない夜の夢”を求めているのとは対照的にメロディーは流れて行って、立ち止まれない流れ星のような刹那を感じた。
曲調の中に懐かしさもあるのが不思議な空気感を漂わせていて、そこに織り重なる幾田りらさんの歌声が、現代にも過去にも想いを馳せることのできる世界をつくりだしていた。
成就した願いも素敵だけど、どうか、と願う切々とした思いに美しさを感じている。
“天秤はいつも傾くけど”とわかったとしても尚、“同じでいたい”と思う歌の中の彼女に、心惹かれた。
YOASOBIとしての歌声も、幾田りらさんのこれまでもこれからも知りたいと思った一曲だった。