消え入りそうな、霧のような声。
冬の白くなる吐息そのもの。
前に前に押し出していくボーカルの印象があったSnow Man(スノーマン)の歌う儚げなバラードに、すっかり魅了された。
Snow Man「Secret Touch」
作詞:栗原暁さん(Jazzin'park)
作曲:栗原暁さん(Jazzin'park)、前田佑さん
編曲:前田佑さん
ストリングスアレンジメント:Daiske Kadowakiさん
バラードと括るのも違う気がするほど、形容しきれない“空気”を表現している曲。
歌詞カードに印刷された文字のフォントも、儚げで素敵だった。
想いの成就を望むでもなく、ただそこにいられることを願う。
“好きでいたかっただけさ”の歌詞と、ラウールさんの声に、過去形であることの寂しさが募る。
この胸を…高鳴りを
確かめるように
君の視線に何度も触れた
目黒蓮さんの声で響く、切なる願い。
『を』の1音が表す、鼓動のようなメロディーと、“君の視線に何度も触れた”という歌詞に心を掴まれる。
君に触れるでもなく、“視線に何度も触れた”
君から見つめられているとも取れる。こちらが見つめていることにもなる。
ラウールさんの囁く言葉で、
Are you my friend?
Are you my lover?
… touch my heart
と問いかけるのがもう。
その胸の音に問いかければ答えはわかると表している。
ここはもう二人だけの世界
って思うと なぜ不安になるんだ
印象的だった言葉が、ここの二行。
二人だけの世界になれたなら、安心しそうなのに、不安になっている描写。
そう簡単ではない理由は、ドラマ「消えた初恋」で空気感ごとしっかり描かれている。だからこそ、この曲の切実さが一際伝わる。
咲いた花は まだ小さなStrawberry
ストロベリーの花言葉は「尊重と愛情」
そう知った瞬間に、井田くんと青木くんだ…と思って、これ以上言葉が出なかった。
どこまでドラマを加味しての作詞か分からないので、正確な意図は確認できないけれど、“愛情”の前に“尊重”があるのは、井田くんの青木くんへの向き合い方そのもの。
花言葉を調べたくなったのは、色づきはじめた想いだけを表すなら、“咲いた”の後に“Strawberry”は来ない気がしたからだった。
それも、“まだ小さなStrawberry”と表されるところに、いつでも消えてしまいそうな儚さがある。
ストロベリーが実る時、まず白い花が咲く。丸い花びらの可愛い花が咲いてから、その中央が果実になっていく。
人が人を、人として見ている。
誰もが初心で、まだわからない感情で、目の前にいるその人のことを一生懸命考えている。
なんてことないようで、その“尊重”をできるのは当たり前ではなくて。ドラマ「消えた初恋」を見ていて、はじめに感じたことだった。
曲をフルで聴いた時、サビの後にぐぐっとラップゾーンになるのは意外だった。
そうしてまたしっとりと曲調が移行していく。
朝 目が覚めて 涙したのは
いつもみたいに また君に会いたくなるから
“目が覚めて”の“涙”には、最愛を感じてしまうからだめだ。
関ジャニ∞「キミトミタイセカイ」の歌詞でも、同様のニュアンスでグッときてしまう。
唇のゆく先を 見失いそうで
君の鼓動に手を伸ばした
ここで再び目黒蓮さんの歌声だけが響く。
“唇のゆく先を 見失いそうで”の言葉に、君を見失う以上の暗闇を感じる。
そしてついに、“君の鼓動に手を伸ばした”
それでも悲しくなるのは、漂う空気から、その手が届いているようには思えないから。
本当はまだ 隣でただ
君を感じて
ほら そっと ずっと
優しさ分けあって
帰り道の 夕陽のように
ほのかに色づきはじめた Strawberry
-My love is blooming-
咲き始めたばかりさ
吐息のような歌。なのにこんなに心に残る。
最後にようやく、“色づきはじめた”と表現するところに、心動かずにはいられない。
振り付けも素敵で、緩やかなダンスに見えて、あの絶妙な止めとゆらぎの緩急には筋肉を使うのだろうと思う。
「CDTV ライブ!ライブ!」でのパフォーマンスがとても良かった。YouTubeでのライブダンスバージョンもよく見る。
CDTVでベストカメラワークだと思ったのは、
岩本照さんが二度目の“君の視線に何度も触れた”でカメラに映って、下がっていくダンスと相反するようにカメラが後ろに下がることで、差し伸べられた手と引き離されていくようになっていたところ。
抑えめの表現でアンニュイさの増したラウールさんのセリフパートも素敵だった。
曲の世界観として、耳に髪を掛けた向井康二さんがずっと麗しかったのも素晴らしかった。
踊りつつあの声質の曲調を歌うのはチャレンジだと思っていて、
ダンスで力が入りそうなのに、声の力は程良く抜かなくてはならない。息を多めに歌うけれど、声量も一定を保っていないとハーモニーを成立させるのが難しい。
深澤辰哉さんの歌声が聴こえた時に、引き込まれたのはその吐息のバランスの美しさだった。
サビの部分でも、息つく暇なく間に入る歌声が綺麗で、渡辺翔太さんの声だと思うのだけど、“君を感じて”のあとにくる、“love”のハモりが特に印象深い。
『ラ』の音のゆらめきが繊細で、手に取ろうとすればかき消えてしまう気さえする。
Snow Manの歌うバラード。
思いもよらない自分のツボを発見してしまった気がする。
現に、「Secret Touch」の通常盤を嬉々として買ってからは、冬空の下でごきげんにリピートして聴いている。
思いがけずカップリングの「Christmas wishes」も優しい歌声のやわらかソングだったので何度も聴いている。
切なさは悲しさと隣り合わせだけど、温かさもそばにあってこその切なさだと思う。
冷たい空気のなかの白い息はすぐに消えてしまうけど、「Secret Touch」の表現する繊細さは、きっと誰の手にも壊せない。