月に帰らないで“隣でずっと” - King & Princeが届ける恋の和歌「恋降る月夜に君想ふ」

 

King & Princeにとってのムーンライト伝説!と思った。

ジャケット写真から、MVのシックなブラックスーツと、雲の上にいるような夢見心地に合うピンクのスーツ。

どちらの世界観も素敵で、タキシード仮面からのセーラームーン…!とテンションが上がった。

三日月のセットに腰掛けるメンバーが、手に持つのはフルムーンなところもいい。

 

指で形づくる月のハンドサインが可愛くて。

月をモチーフに歌うKing & Princeにこんなに心躍るのかと発見する。

星のモチーフに惹かれる傾向は元からあって、対照的に月のモチーフに惹かれるということが、これまでほとんどなかった。

それが変わり始めたくらいに、「恋降る月夜に君想ふ」のダンスとMVのテーマが胸に刺さっている。

 

King & Prince「恋降る月夜に君想ふ

作詞:栗原暁さん(Jazzin'park)

作曲:久保田真悟さん(Jazzin'park)/ 栗原暁さん(Jazzin'park)

編曲:久保田真悟さん(Jazzin'park)/ ha-jさん

 

「koi-wazurai」からつづく、今回の「恋降る月夜に君想ふ」

どちらも、作詞・作曲に栗原暁さんが携わっていて、「koi-wazurai」は前田佑さんとの共作。

先日の「‪関ジャム‬」に、栗原暁さんがトークゲストで出演された際に「koi-wazurai」の制作についてのお話もされていて、

『恋煩い』という古風な良さがある言葉を思い浮かべた栗原暁さんが、共作の前田佑さんに「こんな素敵な言葉見つけたんだけどどう?」と提案したところ、「おあぁ…」という返答で、あまり反応は良くなく。

考えていくなかで、“運命的な恋煩い”ってどう?と提案して、「それだったらドラマティックでいいですね」と意見がまとまり、

さらに『これは』を頭につけて強調することで際立って良いのではと話が進んで、“これは運命的な恋煩い”と歌詞が出来上がったことを説明なさっていたのが興味深かった。

 

恋煩いと漢字で書くことの味わい深さも十分に素敵だと思うけれど、確かに親しみやすさとスタイリッシュさを取ると、平仮名かアルファベット表記になるのもわかる気がした。

その前回があるからこそ、今回、曲のタイトルで「恋降る月夜に君想ふ」と、古文の和歌のような言葉並びがそのままタイトルとしてついたことに特別感があると思った。

漢字で、季語があり、想うではなく“君想ふ”と表記されたところに、理想形をそのままに採用できた念願を感じて、勝手に嬉しくなった。

百人一首の一つに今から差し込めないだろうかと企むほど、この言葉の連なりから伝わる風情を好きになった。

 

 

歌い始めでしっかり掴まれる心に、サビはじまりの強さを実感する。

「koi-wazurai」で印象的だった、“素直になれたら”のフレーズの音階が降りていくところと、今回の“恋する月夜に君想ふ”と歌う音階に、なんとなくの近さがある気がした。

オクターブ下?ちょっと違うけどちょっと似てる?と考えたけど、おそらく音階が似ているわけではなく、不思議な音運びをしつつ印象に残るメロディーラインを忍ばせるという意味で、栗原暁さんの個性が感じられるフレーズなのかなと考えた。

 

Darling Darling 隣でずっと

Loving more Loving 笑っていたいよ

 

サビのメッセージも、軽快でありながら切実で胸を打つ。

“Darling”は『だ』の濁音で始まって、耳にしっかり残るインパクトがある。

“Loving more Loving”の『more』が、音として聴くと『もう』にも聴こえる、音への遊び心も楽しい。

 

僕らは運命に 少し甘え過ぎかな

 

サビにつづく一言がキラーフレーズすぎる。

「koi-wazurai」の歌詞で、“これは運命的な恋煩い”と歌ったことが、ここへきて際立つ魅力。

運命によって結ばれる“僕ら”を前提とした、“少し甘えすぎかな”

チャーミングに問いかけつつ、そろそろ運命に甘えず素直にならない?と聞けるほどの、運命を味方につけた上級者同士の闘い…!と戦々恐々とする。

それでも、運命があるとしてもこのままでは離れてしまうかもしれないと少し不安そうにも感じられるのが、満ち欠けする月みたいだと思った。

“甘え過ぎかな”と歌う時の、『す』と『ぎ』の間にタメの『ん』が小さく入る感じがとてもいい。

 

交わる恋の二乗

絡まる思考回路

この二つの言葉で、「かぐや様は告らせたい」の世界観と、頭脳明晰な二人を示唆する絶妙さも楽しい。

サビで、パァーンと開けるメロディーが目立つのと対照的に、その後につづく歌詞のメロディーラインは控えめで、息を多く歌うようなささやきボイスになる。

最大音量から音量をギュンと絞るイメージの緩急が、歌う方にとっては難しいところもあるのではと思ったけれど、二面性に似た声の違いを一つの曲の中で聴けることで、陽だけではない陰の哀愁を感じられる。

月を表す曲の雰囲気がしっかりと感じられるのも、細やかな表現によって気づかないうちに届いているものなのかなと思った。

 

歌番組でのパフォーマンスを見ていて惹きつけられたのは、平野紫耀さんの手の所作だった。

特に、“映っていたいよ”で胸に手を当てる振り。

平野紫耀さんと岸優太さんは大きめに手を添えていて、紳士的な所作の美しさに見入った。このパートは、メンバーごとにそれぞれの手の置き方をしている。

その他にも一箇所、“Oh Yeah, Find the answer”のところで、平野紫耀さんが肩に自分の手を添えつつ踊る動きをしていて、

どこまでが振り付けなのか、アレンジなのか分からないものの、ここはこう魅せるというこだわりを感じる瞬間で、そのダンスへの感性に心惹かれながら見ていた。

 

King & Princeにロイヤルな品格を感じているポイントの一つに、立ち姿があると思う。

すっと立つ時に、片方の足を少し前に置いて、つま先に片方の足が重なるポーズをする姿が様になる。

片足を下げて、くの字に曲げてつま先を立てるポーズも、ナチュラルに様になるほど身体に馴染んでいるのがすごい。

 

さらにダンスでは、“高まるKissフラグ”の振り付けで、自らの顎に手を添えてクイッと横へ動かす仕草。

“フラグ”の部分でそれをかき消すような手の動き。この一連がとてもいい。

君らしくKiss the sun

僕らしくKiss moonlight

ここのフレーズでグッと雰囲気が落ち着いてシックになる感じも、笑顔で踊るのとは別の魅力がある。

腰を落とす振り付けも、永瀬廉さんの少し顔を下げて目線を落とし醸し出す雰囲気に、目が離せない。

 

 

最近、ますますKing & PrinceのCDを買うことが増えた。

きっかけは、アルバム「L&」が凄く好みだったところから。その次のアルバム「Re:Sense」も、平野紫耀さんと神宮寺勇太さんのユニット曲「ツッパリ魂」に、“横浜銀蝿”の系譜を感じてグッときた。

今回はシングルだけど、買うと思う…買うだろうな…と思っていて、やっぱり買った。

 

ジャケット写真の解禁で、衣装がパキッとしたピンクに背景が水色なのを見て、うわあ好き!とデザインに視覚から持って行かれた。私は、水色とピンクの色合わせに弱い。

タイトルが白のペンで手書き文字になっているところ。月の黄色も入ってかなりビビットな組み合わせでありながら良いバランスなところ。

通常盤の窓枠は、おそらく実際にセットを置いて撮影していそうな、アナログの魅力のある美術が素敵。

実際に通常盤を買ってみると、ジャケット写真の左上、月の部分がくり抜かれて、向こう側の白が見えている紙の加工になっていて、ただプリントするよりお金も手間もかかる丁寧さに感動した。

総じて「恋降る月夜に君想ふ」のアートディレクションに惚れたのだと思う。

 

King & Princeの歌声として、メンバーの声が揃ってユニゾンで聞こえてきた時の耳心地の良さ。

すっとパートが分かれて、ソロの歌声になった時の際立つ一人一人の声質と個性。

King & Princeの曲を聴くたびに、その声の魅力に引き込まれていく。

 

“いつか Take us to the moon”の『いつか』が裏声で、ファルセットを使ってフワッと息多めに入るところも魅力的。

ラストのアウトロのメロディーが好きで、華やかさと壮大さと一緒にエンディングの寂しさのようなものが込み上げるこの感覚はなんだろうと考えていたら、IUの「You&I」のアウトロと共通する雰囲気があると感じた。

ストリングスの豪華な音色と、時計の針のように落ち着いていくメロディー。曲が終わってしまう寂しさがあって、おとぎ話の世界観に通じていく鍵がここにあると思った。

 

街なかで月のモチーフを見かけると、今はこの曲を思い出す。

恋降る月夜に君想ふ

眺めるたびに美しいこの句に、恋の頭脳戦を繰り広げる二人はどんな答えを出したのか、気になっている。

 

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