暗闇に浴びるのはドームに響くライブの音。「5×20」レンズが映した嵐は、今映画館で輝く

 

“鳥肌感知機能”がアップルウォッチにあったなら、

148分の間に過去最高数を叩き出していた。

 

嵐のライブが目の前に広がる。

映画館のスクリーンで観たのは、

ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM Record of Memories

ドキュメンタリー要素は無しにした、ライブそのものを映像化したものになっていると、松本潤さんの会見インタビューで聞いてはいたけれど、

観に行こうかなと思った段階では、まだ映画を観に行く感覚で、だからチケット代が3,300円だと知った時は驚いた。

そして上映時間が約2時間半だとわかった時にも驚いた。

そうか、ライブだもんな…!ドームライブとなったらギュッとしても2時間半だなと納得した。

 

嵐のことをますます意識して観るようになる前から、嵐のライブチケットは幻の存在だった。

ツチノコよりきっと見つけるのは難しい。

そんな印象だけを受け取って、ファンクラブに入る段階も踏まずに、応募さえしたことがなかったのは悔いのひとつだった。

行けないと決めつける前に、そのチャンスのラインに立ったらよかったのにと思った。

配信ライブという形での「アラフェス2020 at 国立競技場」と、2020年12月31日の「This is 嵐」ライブは観ることができた。

だけどこうして、行けなかったはずのライブに、嵐とファンの大切な20周年の空間に今こうして連れていってもらえるとは思わなかった。

 

 

ドームに響く歓声が聞こえた時。

鳥肌がぶわっと身体を駆けるのがわかった。

 

知ってる…ドームに響く声を私は浴びたことがあると、細胞から記憶が蘇る。

そしてそれを欲していたのだと自覚した。

声を出せないのは仕方ない。それはそれで楽しみ方はあると思うけれど、確かにあの頃あった空間が鮮明すぎるほどに身体を覆った。

 

とてつもない数のカメラが捉えた、ライブ空間。

嵐。ファンが埋め尽くすドーム。

様々な座席からの景色を、一度のライブで一気に観るような贅沢さ。

そして、普段ならあり得ないような視点で、ムービングステージの上にいる感覚になったり、ステージ上から見渡す客席だったりと、演者側のような視点が体感できる。

 

アイドルがどんな感覚でステージに立っているのか。

ライブの空間で、どんな世界を見ているのか。

少しでもその近くに呼んでもらえたような、緊張感も熱も楽しさも分け伝えてもらったような経験になる「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM Record of Memories」というライブ空間だった。

 

 

映画館で流れる本編としては、

ライブでの一部としてほぼ必ずある、暗転からの映像、映像ではメンバーが1人1人映ってからの歓声。

そして名前が出るという、紹介オープニングがなかった。

5×20の幕と、嵐5人の姿。

それがすべてを物語る。

 

ツアー終了後に、ファンクラブに入っている1人1人にあの輝きが1粒ずつプレゼントされたことを知った上で観ると、なおのこと5×20の幕の輝きに胸が熱くなる。

 

映画館が暗闇だからこその、没入感。

聴きたかった歌声が、表情が、すぐそこにある。

 

 

ライブ本編で流れている、1つ目の映像がすごく好きだった。

楽しい遊び?と思いきや、なんだか不穏。ドキリとさせられる光と影の追いかけっこに、不敵な笑みの相葉雅紀さんから目が離せない。

そして映像が明けて始まるのは「I'll be there

相葉雅紀さん主演のドラマ「探偵貴族」主題歌。

探偵の雰囲気がある衣装の可愛さも、ステージ上でのイリュージョンのような演出も、映像とステージが地続きで、ドキリとさせられる作りに魅了された。

 

君のうた」での、相葉雅紀さんがアップで映った一瞬の、指パッチンから人差し指と中指を横に“ニ”のサインを指で作る流れが美しかったことが忘れられない。

ここ!を映すカット割りを観るたびに、これほどの台数のカメラが記録した膨大な映像から、どれほどの時間をかけてコンマ1秒の次元で繋ぎ構成していったのだろうと、宇宙で1つ星を探すようなその途方もなさに怖ささえ覚える。

 

 

20周年という場であっても、バックダンサーについているジャニーズJr.の紹介をしっかりと行って、それも形式ではなく、熱が込められている。

嵐の背中を前に踊る。どれほどのことだろうと思う。

I'll be there」でのJr.の子たちのパフォーマンスもすごく素敵で、鏡合わせのペアダンスのような演出にワクワクした。

花道で踊るだけではなく、ステージの大切な演者としてJr.の子たちの立ち位置を作るという松本潤さんの意思を感じた。
嵐が立つステージの背後のスクリーン前に、Jr.の子たちがバッと一列に並んだ時のシルエットの迫力には息を飲んだ。

 

果てない空」の驚いたボーカル演出は、思い切ったサプライズ。ぐっと引き込む二宮和也さんの求心力を感じた。

ほかの曲の歌うパートではないところで、二宮和也さんと相葉雅紀さんで、2人の曲「UB」を踊っているのが映っていて、それをするなんて…!わかってる…!とひたすら直視した。

大野智さんがドームであってもファンのうちわに答え続けていて、優しい微笑みと細やかさに見惚れていると、ダンスの寡黙な美しさに見入って、マイクを口元に運べば伸びやかな歌声が心を震わす。

自分にとって、ある意味初めて“行った”ライブが映画館での「5×20」だとするなら、櫻井翔さんに心奪われずにいるのは無理だった。

楽しそうでありながら、鬼気迫る熱。煽りの熱量、ラップパートで息をつくのも忘れるのではとハラハラするほどフルエネルギーな姿勢。

“赤の人”だ…と、メンバーカラーに赤を背負う人のエネルギーを感じていた。

 


曲が次々と繋がっていく箇所の、メドレーじゃなくリミックスですというくらいの再構築。

スクリーン映像とダンスの融合、花道にも敷かれているスクリーンに映される色彩や、照明、ムービングステージまさかの分割など、

テクノロジーの展示会ですか…!!と視点の置き場に迷うくらいに盛り沢山。しかし技術一択でもなく、ジャニーズエンターテイメントでもあることが特に後半の演出から伝わってくる。

機材の発達で可能になる楽しさと、メンバーが直に伝えるリアクションやパフォーマンスで通じるライブの魅力が活きているとわかる。


オーケストラパートの素晴らしさには、感動のため息だった。

松本潤さんがタクトを持つ姿は見覚えがある。白の燕尾服がしゃんとステージに映える。

指し示す暗闇からエレキギターやドラムの音が聞こえていたから、バンドの音が生演奏なのかと思ったら。オーケストラが現れた時の感動。

後ろのスクリーンに映るパイプオルガンに、サントリーホールじゃないですか…と一瞬にしてドームがクラシックホールへと変貌した。

「世界一美しい響き」を目指して作られたサントリーホール。実際のところそのつもりだったかの答え合わせは出来ないけれど、オーケストラのハーモニーはたおやかに美しく、音符が漂うのが見えるかのようだった。

オーケストラ演奏と共に歌うのは容易ではない。歌番組を見ていても、様々な演者さんからそれは伝わってくる。それでもなお、この演出をと決めたこと。

バリバリガシガシくる曲調とのメリハリでもあり、柔らかな音やバラードが好きな自分にとって、たまらなく好きな演出。耳に心地のいい構成だった。

 

一旦オーケストラパートが終わったところで、ありがとうございましたー!ではけてもらうのではなく、もう一度タクトを握って、指揮をする松本潤さん。

音が消えずに鳴り響きながらの暗転。

なんて素敵な演出なんだろうと思った。

 

オーケストラの登場から感じたのと同じように、セットリストとしての緩急のつけ方にも引き込まれる。

復活LOVE」「BRAVE」「サクラ咲ケ」が同じライブの中に収まるなんてと感動する。

 

 

ドームに響く歓声が、わーっと残響になって耳に残る。

関ジャニ∞のライブ挨拶で丸山隆平さんが話していた、ライブの音が耳に残って眠れなかったという感覚を疑似体験したような。

丸ちゃんの耳にもこんなふうに響いていたのだろうかと思う瞬間でもあった。

 

 

ライブのステージに観るあのひとが、どんな感覚で、どんな景色を見ているのだろうと考えたことのあるひとにも観てほしい。

嵐のライブをまるっと楽しめる時間。

それは観客としての楽しさでもあるけど、あのステージに5人と1人になれる感覚でもあった。

その嵐からの思いが、エンドロールラストの英文に込められているのではと思う。

 

プロジェクトが動き、開催された2019年12月23日のライブ。

先のことなど分からないなかで、撮影が実現していたこと。奇跡であったと噛み締める。

レンズが映した嵐の姿は、今映画館で輝く。