坂元裕二さんサイン会の当日。
そわそわとメイクをした。
いつもは重ね過ぎないアイシャドウで終わりにするけど、もう少し胸を張っていられる何かがほしくて、ネイビーのマスカラ下地でまつ毛を伸ばしてみた。
イヤリングは、紗野あんさんの作品。お花にした。
電車の中で飲んだコーン茶は、思った以上にコーンコーンしていて、ミネラルも入ってるなんて優秀だなとお茶に感心していた。
今回のサイン会は、チケット購入後に紀伊國屋書店 新宿本店で「それでも、生きてゆく」を購入して、整理券を合わせて受け取る手順になっていて、
数日前から購入は可能だったけれど、当日に購入することにしていたので、早いに越したことはないと11時に紀伊國屋書店へ到着した。
その時点でのレジは空いていて、スムーズに購入できた。
休日の新宿。お昼を食べるならささっと済ませたいと、新宿ならではのお店で冒険するでもなく、
信頼と実績の大戸屋を見つけて、その中でちょっとの冒険として季節メニューのヤンニョムチキンと、ばくだん小鉢まで奮発してつけた。
馴染みの大戸屋だけど、ここは本当に私の知ってる大戸屋?擬態大戸屋だったらどうしよう?と疑心暗鬼になるほど、気持ちが新宿に馴染んでいなかった。
本物大戸屋だったので、美味しくごはんを食べた。
チケットが取れたサイン会の枠はまで、思った以上に時間はあった。
せっかく意を決して来たのだから、行って見たかった喫茶店「らんぶる」に行くことに。
地下に広がる席を見てみたいとお昼過ぎに「らんぶる」に入店。
4組ほど待っていて、しばし待つと壁沿いの席に通してもらえた。
お店は地下席からさらに半地下へと階段があって、2フロアあるような形で、1階の座席も含めてだと思うけど200席もあると書いてあった。
この日は土曜日の休日だったからか、メニューがドリンクとケーキに絞られての営業。
喫茶店といえばこじんまりのイメージがあって、壮大に広がる地下喫茶店と、200もある席が埋まる壮観さにドキドキした。
深い赤のちょこんとした1人座りのソファー席が並ぶのは喫茶店らしく馴染みもあって、ロウソク風の照明やレンガ調タイルには、アンティークな雰囲気もある。
出前なのか、時折鳴る電話がピンクのダイヤル式電話なのを見て感動した。重めの受話器をとって耳に当てて話す、黒ベストに白シャツで蝶ネクタイの店員さん。趣きのにこごりと思いながら見ていた。
ケーキセットにすると1,200円だったけど、ミルクなしのコーヒーはまだ難易度が高いので、ショートケーキとアイスカフェラテにした。
ショートケーキは600円。ドリンクは軒並み900円台で、おおぉと思いながら、念願の日だから…念願のお店だから…ということにした。
アイスカフェラテには少しホイップが乗せてあって、そのおかげでお砂糖をもらわなくても甘みを足しつつ飲めた。
音ちゃんと練くんも食べてたなと思い出しながら、生クリームのしっかりとしたショートケーキにフォークを通して、口に運ぶと美味しい。
存在感がちゃんとあるケーキが出てくると嬉しくなる。
「それでも、生きてゆく」の本を受け取ってすぐに読める心の余裕があるとは思わなかったけど、席に着いてみると自然と読もうかなと心にゆとりが生まれて、
こんなに長文の座談会が読める嬉しさを感じながらページをめくって、あとがきも読んだ。
ドラマの放送から12年経ってから話す。ついこの間の去年行われた座談会での会話と思うと、同じ時間軸にいる実感が沸くような、そして今聞いたのがよかったと思える感覚があった。
どんなふうに思っているかを言葉にしてこうして届けてもらったから、読むことができて、少しでも知ることができるありがたさを感じながら、
あとがきを読んでいくなかで、ここの言葉がもう…と浮かび上がって心に浸透していく行があって、ひとり喫茶店の片隅で壁に肩を寄せた。
本の装丁が手に持つとなおのこと素敵で、トレーシングペーパーを重ねたような質感の向こうに、少しざらつきと厚みのある紙がカバーになっている。
表紙の絵が引力を持っていて、片方は見えて片方はガラスの曇りに隠されているようなのがアイデアですごい。
装丁は坂野公一さん、装画は大白小蟹さん。
カバーを外して見える、境の曖昧な水彩にも心惹かれるものがある。
今回のサイン会で坂元裕二さんにお伝えしたいと思ったことは、5秒か10秒あればいい方かもしれないという心構えのもと、
- 必ず伝えたいこと
- 出来れば伝えたいこと
- まさかの事態でまだ話せる時に話したいこと
の3段階で用意していた。
でもスマホのメモにしか入れていない状態が心許なく、これは秘技の出番だと鞄に入れておいたネームペンを取り出して、手にカンペを書いた。
ふうとひと息ついたところで、
200席でも席にゆとりのできる様子がないのをなんとなく察知して、サイン会にはまだまだ時間があるけど流石にかなと席を立つ。
お会計のカウンターがまたお洒落で楽しかった。
レトロなホテルのカウンターかミニシアターの受付のような作りで、店員さんは一度テーブルの1箇所を上げて、ちょっとくぐりながら入る。
向こう側に入った店員さんにレシートを渡して、お会計。
後ろの壁に掲げられた時計も趣がある。
今の時間を指しているのは当然のはずなのに、この地下空間と賑わう喫茶店の雰囲気で、これは本当に今だろうかと思いたくなる時間旅行のひと時になった。
気づけば入店を待つ人はさらに増えていて、
おじゃましました。みなさんどうぞどうぞという気持ちで階段をそそくさと上がった。
地上に出たものの、まだ、時間がある。
どうしようと思いつつ、なかなか気軽に入れる商業施設およびお手洗いが無いことに困る。
新宿ピカデリーに助けられたりしながら、そういえば紀伊國屋書店の横辺りにいつの間にかビッグなディズニーストアがあったと、ひとまず見学に入った。
3階建てで、おお…おお…と思いながら見て歩いていると、BGMで流れてきたのが「塔の上のラプンツェル」から『I see the light』で、そう!この気持ちと同じなの今!と思いながら聴いた。
紀伊國屋書店から離れすぎるのは、戻れなくなりそうで怖い。
しかしまだもう少し時間がある。迫りくるサイン会に気持ちもいよいよざわついてきたので、座りたい。
狭そうだけど、ひとりならきっとなんとかなる。水分をこれ以上摂るのも不安だったから、Sサイズのジンジャーエールを選ぶ。席代。
いつもならお財布からサッと見つかるTカード。見つからない。「無しで大丈夫です」と伝える。全然落ち着いていないのがわかる。
席はとりあえずあって、極限にミニマムな店内の中、
早々にジンジャーエールは飲み干してひたすら自分をなだめながら、何を話すかを反芻して、忘れないであれとこれを出来ればこの順に話して…とソワッソワぐるぐる頭を使っているうちに、ついに集合時間の10分前。
ロッテリアのお手洗いに寄って、すぐ並べるようにしておこうと思ったら、都心警戒モードのお手洗いで、レシートにあるロック番号を入力すると鍵が開くと店員さんが近くにいたおかげで教えてもらえた。
そうなの?!と急ぎでレシートを鞄の底から取り出して、マンションのロックのごとく入力するも、最後のマークがややこしくて、#なのか*なのか分からない。
何度か弾かれてやっと入れたお手洗い。脱出ゲームじゃないんだから…と思いながら、ちょっと楽しんでいる自分もいる。
サイン会が始まるまで、あと少し。次に続きます。