第6話「いちばんすきな花」 - ある角度からは解けて、ある角度からは解けない数式

 

うううお鍋は美味しく、味が分かる状況で食べようよー…が見終えた最初の気持ちだった。

これまで4人の姿を見ながら、ちょっとずつ積み重ねてきて、

わからないけどわからないことも含めての、4人であり個々を受け取り始めているかもと思いはじめていたところに、

それがバラバラと崩れていって、印象というものがまた新しくなって、それはそれで模様を作っているような感覚の第6話だった。

 

ゆくえさんの元友、赤田さんのお仕事を把握していなかった為に、

椿さんのお家に来た時に、ゆくえさんとの関係性を分かっていてここへ訪問してきたのかと思った。

保険のフリして、コミカルだけどホラーな展開かと思ってしまった。ごめん赤田さん。本当に保険だった。

 

赤田さんの動揺っぷりに、保険契約のお客様という感覚が椿さんへ向けて無くなっている面白みを感じつつ、

ゆくえさんと椿さんが恋愛じゃなくて友情であるとしても、嫉妬があるのではないかな。そう思いながら見ていたら、夜々さんがそれを見ずとも察知していた。

そんなに仲が良い友人になれるのか…俺以外のやつと…ってことでは。

 

4つ並んだマグカップに目線を向けた赤田さんの表情も印象的に映っていて、

仲が良いことを察知しただけかとはじめは思ったけど、このマグカップを買う時にゆくえさんと赤田さんは再会していたのだったと思い出す。

あの時に聞いた人がこの人か!と繋がってしまったことでの倍増ショックだったのだろうなあ。

赤田さん退出後の椿さんの、えもいわれぬ顔が忘れられない。

 

そして今回最大に衝撃だった、あの発言。

ゆくえさん、わかってたんだ。

ゆくえさんの語った理論は、ちょっと私にはわからない。不倫と同じではないと思う。

紅葉さんの角度で聞く考えは、なんとなくわかるのに、ゆくえさんの角度では解くことができない…そんな不思議を抱えた。

共感も、わかる気がすることも、イコール正解だなんてこと無いけど、ゆくえさんがどんどん霧の中になっていく感覚がする。

 

自分の心に沈殿するこのもやもやは、第6話の冒頭から多分しっかりと蓄えられていた。

だってゆくえさん、最後のゴミ袋を使うと買いに行くことになるから使わないんだもん…職場で地味に積み重なるモヤつきのやつ…

ゴミ袋の袋を使うのはありだと思う。思うけど、無くなりそうだなーって思ったら2袋くらい補充したい…もしも自分だとすると。

すすーっと逃げる、ある意味でずるさのある感じが、ドラマの軸になる登場人物として新鮮な性格かもなあと思う。

 

気を許すとすぐに椿さんを目で追ってしまう。

叶うなら、夜々さんとカフェで温かい飲み物のマグカップを手で包みながら、椿さんの可愛さ談義に花を咲かせたい。

初対面の話しやすさが裏目に出た椿さん。本日のMVPをあげたい。

 

家のことについて言わなきゃだけど、言い出せない椿さんの葛藤がずっとひしひしと伝わってきていたから、

紅葉さんと話していた時「またおいで」で目の色が変わって、笑顔になった椿さんにぐうーっと引き込まれていった。

紅葉さんが忘れていない先生からの言葉を、でんでん虫みたいに頭を隠して言った時の「ああー」の様々なことを察している絶妙な感じもよかった。

転がされてゆく紅葉さん。かわい。

 

そしてダッフルコートの椿さーん!!

「ただいま!」に対して、おかえり!な気持ちで見てしまった。

だって…ひょこって…!自分の家なのにひょこって登場して…

チェスターコートでもさらっと着こなせそうなのに、ダッフルコートで、上から下までボタンをちゃんと閉めていて、フードが付いている。

素晴らしいです。ありがとう。

 

第6話の冒頭に戻ると、3人が帰宅…と見せかけて紅葉さんはお風呂だけど、一時ソファーに深めに腰掛けて「静かー」と言うところが好きだった。

椿さんに渡されたアイスはやっぱりパルムで、紅葉さんはMOWを嬉々として食べていた。

椿さんのお家には、空を観察できる窓がある。

月を観察できる天窓が憧れな自分には、理想の設計だった。

キッチン横のアーチ状の壁も、すごくすごく好きな建築様式で、素敵だと思いながら眺めている。

 

4人が揃って話している時に、夜々さんのわりと近くでテーブルに肘をついた椿さんがいた。

私にはわかる。夜々さん、きっと目に見えない心拍数がすごいことに。椿さんがいる方の左側が熱くなっていくやつだ。

 

椿さんは実家のお花屋さんに寄りつかないのかなと思っていたら、気持ちも行動も変わりつつあるのかお手伝いに行っている。

手に取るお花の種類が少し分かることが嬉しくなりながら、弟の楓さんが言った、

「優先順位に自分の気持ちを入れ忘れてるんだよ」

その言葉が耳に残る。

あの人はどうしてほしいだろう。今の状況でどう動くのが最適解だろう。

あなたはどうしたい?という優しい問いに、面食らったことがある。

弟さんは早々に気づいていたけど、椿さんは今そういう自分に気づくことができたんだなあと思った。

 

少しずつ、出会った頃からそれぞれが移ろう。

それぞれのアクが出てきたようにも思う。

アクだから要らないとか良くないとかでもなく、人間味ということだと考える。

 

お鍋をみんなで食べる、ご飯の時間。

せっかくワクワクのお鍋なのに、この後で味はするだろうか。

だけど、椿さんが清々しく言い切れたことは、素敵なことだと思うから、どうかこの変化に持ち堪えてほしいと願うばかり。

 

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