第5話「いちばんすきな花」 - お茶碗二つ分にある優しさ

 

ごっこで、ターゲットにもしてもらえない感覚。

紅葉さんの始めのモノローグは、“そうありたかった”という願いで、実際とは違ったように見えた。

 

ぐうう…ってなって、ぬうう…ってなった、第5話。

紅葉さんではないし、わからないけど、どうしてかなあという事で本当を突き詰めて、正直に話さずにいられない。

その感じは、わかる気がした。

 

起きた時の、紅葉さんの「めっちゃ布団」が好き。

「やっぱ先にコーヒー飲みたいかも」

「わかった、入れるね」

スティックパンをもらって、食べながらそう言えるのがいい。

自然に、してあげるとかあげたのにとかが無い、椿さんの反応とコーヒー1杯の優しさ。

 

「またおいで」言われたいわ…と思わずにいられない。

改めて思い出してみると、椿さんパジャマにカーディガンで、すっかり家の人以外が居てもリラックスだったな…

コーヒー「すぐ淹れるね」可愛かったな…マグカップ手に取って「…かわいい」は、あなたがかわいかったな…

かわいいと思うことは誰にだってあるよと感じるような、絶妙な温度感の言い方だった。

 

「しのさんからのご指名で」とイラストのお仕事を持ってきたマネージャーさんとのやり取り。金額の提示。

篠田くんと紅葉くんの間柄。

どれもがうそだなんて思いたくないなと思うけど、どこまでが篠田くんにとっても本心で、どういうつもりで今イラストで呼んだのかはドラマを見る側の受け取り方で何色にもなるシーンだなと感じた。

 

ゆくえさんが第4話で言った、可哀想に見える人をなぐさめる人の話に重なるようにも思えるけど、多分そうじゃなくて。

紅葉さんの持ち続けてきたような立ち位置の罪悪感を自分は抱えたことがないけど、彼と黒崎くんとの関係性を見て、僕じゃなくてもいい、と思ってしまったのかなと感じている。

人の感情は一色じゃない。傷つける気が無くて傷つけたり、意識していないフリをしながら、傷つけてもいいと思う心があったり。

何をしてくれるからとかではない、紅葉さんを紅葉さんとして見てくれる人がきっと必要だった。

それが唯一、ゆくえさんだったのかなと思っている。

 

言ったって治らない。解決しない。なら一人で対処したらいい。

そう思ったことがある。

一人でどうにかしようとすること、言いたかったけど飲み込むこと、今でもある。けど、椿さんの紅葉さんの「耳貸してほしいだけなんだけど」「耳貸してほしくて」を見ていて、それをしてもいいのかもなと思えた。

 

「紅葉くんは今お腹痛いんだって分かってたい人は居て」

椿さんのその言葉が浸透していく。

 

紅葉さんなりの緊急事態に、

座って待ってればいいよじゃなくて、「じゃあお湯沸かしておいて、お茶碗二つ分ね」って言う椿さん。

することを、お願いしておく椿さん。駅に着いても一旦落ち着くことができるまで、その場で話を聞いて、それから急いで向かう姿。

紅葉さんが「間違った」って言いながらでも、椿さんの家に来てくれてよかった。

 

椿「うん、急いで帰るね」

紅葉「ゆっくりでいいよ」

椿「じゃあゆっくり帰るね」

紅葉「ちょっと急いで」

椿「じゃあちょっと急ぐね」

「ちょっと急いで」の紅葉さんの声が、心にズキンときた。

 

この電話のシーンを、紅葉さんである神尾楓珠さんが撮る時に、映らないけども松下洸平さんが来て電話越しに話したと公式InstagramとXの動画で言っていた。

相手の相槌や反応を想定してではなくて、実際にお話ししたことでのお芝居。暖かかった。

「silent」でも、紬と湊の電話シーンの撮り方がそうだったなと思い出した。

 

ゆくえさんが最後に話していた、「優しいって思った人にとっては、優しいでいいんだよ」は、このドラマの受け取り方にも適用できるのかなと思いながら聞いた。

私の受け取り方は私の受け取り方として、ここにそっと置いてある。

見ている角度で見え方が“変わることを知っている”はきっと大切。

ゆくえさんの振る舞いも、あからさまには元親友の前でしなかった配慮があるけど、

妻になった彼女の目線に立ってみると、見えないところでも、ああして到底敵いそうにないやり取りがあったことを何かしらで察知したら、もや…となると思ったりする。

 

紅葉さんが選んだのは黄色のマグカップ

その後で黄色で塗りつぶされていく絵はつらい。
必要とされることが友達の条件ではないはずなのに、紅葉さんはそこから抜け出せずに。

目指して進むものについても葛藤していた。

 

いずれにしても、どうあろうとも、

ゆくえさん、椿さん、夜々さん、紅葉さんがもう出会っていること、それが何よりだと感じる。

何だかつらい、をそれぞれ積み重ねて歩いてきた4人の今を見つめている。

紅葉さんがこれからどんなことを考えて選んでいくのか、選ばなくても、気にかけつづけていたい。

 

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