第9話「いちばんすきな花」 - 1つの家。1人ではなくなった持ち主。

 

みんなが仲良くいられたらいいのには、きっとちがうのだろうな…

思わずそう願いたくなってしまう第9話だったけど、それぞれの関係性は、それぞれの具合で成立している。

4人は4人としてバランスを取れたり取ろうとしていたりで、美鳥ちゃんは4人で居る時ではなくて、それぞれと順番に会いたいというだけなのだと思える。

 

それでもどうしてだろう。こんなに切ないのは。

なんでこんなに切ないんだろう。先週ときっと違う意味で涙が出ているんだろう。

 

1話からの積み重ねが、1ページずつ意味のあるページとして参照されていく感覚があった。

思い起こす作業すら必要でなく、染み込ませてきたこれまでが、時系列を整えていくかのように蘇る。

 

「初孫?」って聞かれて否定しない椿さんの笑み。

初孫でしょうねと納得するくらいに自腹で本を買う椿さん。いい。箱いっぱいにうれしいが溢れている。

美鳥さんに、4人でゲームセンターに行った話をしている時の「バスの一番後ろの、繋がってる席」と言い表した椿さんが、ベストオブ大好きだった。

広い席ではなくて、“繋がってる席”。

 

暗にと言うよりもはや明確に、カラオケに行きたくなっているゆくえさんと赤田さんも良かった。

夜々さんが見せる、美鳥ちゃんへの真っ直ぐな慕う心が可愛くて、大好きと思った。

 

こんなに切ないのは、1つしかないお家に居たい人が、1人ではないからだろうなと考えている。

パラレルワールドかなんかで、この家2つありますってことにならないかな。

でもここに一つだから、今ここにたどり着いて居る、ゆくえさん、椿さん、夜々さん、紅葉さん、美鳥さんだから、いいんだよな。

 

美鳥さんのこれまでをもっと見ることができて、ゆくえさんと紅葉さんが見てきた美鳥さんもまたその時の姿だと知ることで、

現在で再会した時も、ゆくえさんと赤田さんの前で見せるフランクさや、一括りではない印象に触れていくことができた。

紅葉さんの見ていた美鳥さんは確かにツンケンしていた。 

 

「またおいで」

それでも完全には失われていなかった感情が、不意に美鳥ちゃんにそう言わせたのかもしれない。

“不覚にも数学の成績が上がってしまって”

という紅葉さんのモノローグが面白い。うっかり上がってしまった成績。

紅葉さんと話していた時の美鳥さんの「やだよ」はとても可愛かった。プイッてしているの良かった。

 

言葉の強さで言うと、今回が特にだった気がしている。

「暴力」と断言するのも、それ以外にも。

脚本の筆圧が強くなる瞬間というか、何もかもをふわっとはさせていられないのもわかりつつ、時折おっと思ったりしながら見ている。

 

それぞれが美鳥さんの印象を違うふうに受け取っていたのは、時間の流れも状況の変化もあると思うけれど、

美鳥さんもまた、美鳥さんの知らない、4人でいる時の4人の姿を目の当たりにしていたのかもしれない。

 

放送から40分を過ぎるまで、美鳥さんは4人が揃う所には来なかった。

そのまま避けて通るかなとも思ったけれど、5分で行ける近くのスーパーで食料品を買って、帰って来た。

帰って来たいと言った場所に、4人が先にいた時の表情からゴミ袋のシーンまでの間、ずっと切なかった。

なんでだろうな、うれしいのに苦しいなと思いながら見ていて、心の壁が縦にキューッと狭まる感覚だった。

だからそれぞれの心配そうな眼差しと、椿さんの「ここね」「ここ。」に、1人にしたくない。ならないでという願いを感じた。

 

「私ね、2人って好きなんだよね」

2人って好きと言う美鳥さんがいてくれてよかったと少しほっとしている。

交換ノートに途中から参加する気持ちに例えるの、すごく伝わってくる。私は人と会うなら2人がいい。

4人も4人組でいることを理想としているというより、1+1+1+1=で思いがけず導き出された回答のような気がする。

 

帰りたい家が見つかることの奇跡を思うから、美鳥さんにも譲ってほしくないと思ってしまう。

けど、椿さん、ゆくえさん、夜々さん、紅葉さんの帰りたい場所であることも見てきていて、だから何も言えない。言いたくない。

なんだかもう、‪ほっこりと切ないを反復横跳びしている。


誰かからもらったものを誰かに渡していて、それは意図せず、不意にだったりする。

そのことを見つめた第9話だったとも思う。

それが繋がったり、気づくことは稀だったとしても、得てしてそういうことが起きている。

 

優しさと遠慮の無さの匙加減。

遠慮と優しさのバランス。

「いちばんすきな花」に好きを感じるポイントはこういうところかなと思う。

 

ゆくえさんが見送った、美鳥ちゃん。どことなく心細くなる空気。でも椿さんもこのままではいない予感。

ずっと見ていたいけど、移ろっていく人も時間も止められない。当人たちさえ抗えない。

だからせめて、温かく見守っていたい。

 

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