神木隆之介さんのトークイベント「30祭」 - 優しさとサプライズに満ちた、落ち着いた空間

 

俳優さんのファンクラブ発足が増えたと感じる。

写真集やカレンダーの発売があると、受け取り会が開催されるという流れも最近、急激に増えた気がしている。

これまでは、テレビやスクリーン越しにしか会えない存在。役を通しての俳優さんを見ることが9割で、雑誌のインタビューかバラエティーでたまに垣間見える素に近いもの。という印象で、

映画の舞台挨拶が唯一の接点のような感覚。

舞台に立つ役者さんのファンにはなれるのだけど、“応援する”と“ファン”はギアが一段階変わる気がして、俳優さんのファンという段階を知らずにいた。

 

気になる俳優さんはいるけれど、どうにもあと一歩入る勇気が持てなくて、

俳優さんのお知らせや投稿を見るたびに、一歩進んで二歩下がる状態でいる。

 

そんな私に、友からのお誘い。

神木隆之介さんのイベントに行ってみない?」

行く!行きます!と返事をした。申し訳なくも常に追ってきたわけではなかったけれど、常に見てきた世界の中にはいらっしゃる。

誘われたら行ってみよう。そういうフットワークで新しい景色を観ていきたい憧れがあった。

なにより、友の誘いとあらば、馳せ参じたい所存だった。楽しいに決まっている。

 

ファンクラブ未入会でもお連れさんは大丈夫よという優しさにより、行くことになった神木隆之介さん初のトークイベント「30祭」

ネーミングに親しみを感じる。

2歳で芸能デビューした神木隆之介さんの、30歳になる日。30年目にして最初の単独イベントということだった。

 

降り立つ浜松町。

2度ほど来ている場所だけど、文化放送と四季劇場がある。あとは何も無い、がイメージ。東京タワーはとにかく近い。向こうを見渡せば、薄っすらとスカイツリーも見える。

でも来てみると、ビジネスビルがほとんどなのは変わらずなものの、道の広さやビルの中にレストランなどのテナントが入って、多少は居る場所がありそうな土地に変貌していた。

ビルはとにかく高い。直線、斜線が美しい。

f:id:one-time:20231213154008j:image

 

スマホのナビに頼りつつ、それらしきグッズを持つ方をコンパスのごとく頼りにして歩いて行くと、

やはり心当たりがあるホール。Nissyの「OK?」試写イベントで訪れたホールだった。

 

入場すると、入場者全員に“30”と神木さんイラストのイベントロゴがオレンジでプリントされたトートバッグが配布された。

大盤振る舞い…!!と驚きつつ、トートの中には神木さんがCMに出ている企業さんのチラシ、リクルートスタッフィングのオリジナル付箋、「らんまん」な入浴剤、BOSSパロディのコースターまで…!

このチラシは今回のために、神木さんが載せる文字を手書きで書いてデザインに合わせた特別版だったりすると、後々にトークで知った。

 

入場の時点でのプレゼントはまだ続く。

おもむろにテーブルに並んでいるBOSSコーヒー、カフェラテ、紅茶のペットボトル。ペットボトル!?

「お好きなものをお持ちくださーい」と言われるがまま、そおーっと“甘くないイタリアーノ”を選ぶ。

おもてなしがすごすぎて怖気付くの図。

 

ロビーに飾られているお花たちも楽しい。

auの高杉くんにちなんで、auのお花にはメガネが掛けてあるというチャーミングさ。

f:id:one-time:20231215145846j:image

ほかにも、高杉くんのパネルとマフラーを一緒に巻いて写真を撮れるスペースがあったりした。

 

ファンクラブに入会している方は、その場でスマホにてガチャを引くと、参加賞と特賞がそれぞれに当たる企画もあり、

しかも特賞は神木隆之介さんと一緒にチェキが撮れる。

グッズ購入に合わせたくじのシステムでは聞いたことがあるけれど、入場するのみで引けるガチャという更なる大盤振る舞いにまた驚いた。

そして会場に入った時から何となく感じていたことが確信になったのは、そのガチャの結果で一喜一憂する人が見える範囲でいなかったこと。

キャー!も、わー!もない。みなさん粛々と、当たった方はその場所に。今回は…の方は席に。

ここ…平和…落ち着いている…

 

すでに心動かされながら、中に入るとステージには素敵な植物多めの装飾。30のインテリア。

オレンジの暖かい照明。

ステージ両サイドにも、座席がある配置になっていた。

 

私たちが座った階段側席の見晴らしも良く、緊急時通路に出やすいのもありがたかった。

開演前のBGMには、Perfumeの歌や、高橋優さんの歌、SEKAI NO OWARI「Habit」などなど流れていて、

RADWIMPSの「前前前世」イントロが聞こえた瞬間に心の中が「君の名は」だった。

どの歌もきっと掘り下げれば神木さんに通じる選曲になっているのだろうなと感じて、細やかー!と思った。

 

場内の写真を撮っていいものか、しかし自分たちがこれまでいた文化では禁句であった…と友と話していると、

お隣の優しきお姉さんが「撮影可って言ってました」とにこやかに教えてくれて、「わああ、ありがとうございます」と照れ笑いした。

 

神木隆之介さん トークイベント
30祭

ニューピアホール

2023年12月2日 3部

開演 17:00

 

ついに時間がやってきて、少し落とされた照明。スクリーンには神木さんの関連するCMが流れる。

まず登場したのは司会進行を担う、俳優で脚本家の吉村卓也さん。

登場してすぐ、知ってる!とテンションが上がった。

ドラマ「東京DOGS」で、小栗旬さんの演じる役に“お義兄さん!”と屈託のない笑顔で言っていたインパクトから覚えている。

 

みなさんが程良くはしゃげるように、盛り上げる吉村卓也さんこと、よしたくさん。

Go Proを手に、掛け声の練習しましょう!ということになり、ファンの方の発案でよしたくさんが「僕たちー!」と言ったら、「入れ替わってるー?!」と返すことに。

繰り返しながら、ぐるーっと客席全体を映していくよしたくさん。

 

熱気高まってきたところで、勢いそのままに神木隆之介さんが客席通路側のドアから登場。

そのまま歩いて中央通路を進んで来る。見える!近い!手を振っている!

スタッフさんが常にSPをするでもなく、のんびりと和やかに歩いてステージまで向かう神木さん。

これが成立するのか…とカルチャーショックですらあった。

 

企画もゆるやかながら盛り沢山。

過去の雑誌インタビューから、何と答えていたでしょうクイズがあったり、俳優仲間の桜田通さんから神木さんへのクイズがあったり。

ステージに置かれたトランクから「らんまん」の台本が取り出されると、「らんまん」のお話へ。

実際に撮影に持って行っていたという台本を開きながら、どんなふうに台詞や方言と向き合っていたか、どんな撮影期間のスケジュールを過ごしたかをお話ししてくれた。

方言については特に興味深く、俳優さんによってイントネーションの染み込ませ方が変わってくるのだなあと聞けて嬉しかった。

スクリーンに映る台本の書き込みは距離的に見るのが難しかったものの、神木さんがしっかりとどんなふうに書いてあるかを口頭で説明してくれるので、話についていくことができた。

 

つづく企画は「神木と自由時間」

???となっているみんなに、20分間、自由に質問していい時間ですと説明。

お約束事として、写真を撮ってくださいなどの個人的なお願いはお控えください…と柔らかく言われていたものの、すでにその場の空気がそのようなことは無さそうな空気だった。

それにしても、ファンへの信頼ありきの企画にびっくりする。

 

挙手制で、神木さんが当てる。

みなさん静かに手を上げる。誰かが当たれば、耳を澄まして聞く。

当ててもらった方も、名乗るでもなく「こんにちは」とだけ挨拶されて、質問に移る簡潔さ。

一人暮らしに役立つ、買って良かった家電は?の問いに、ハンディミニ掃除機の良さを熱弁したり、

最近好きな曲は?で終わらせずに、歌ってみてくださいとナイスパスに拍手が起きた質問。歌いづらかったら…と気遣いも忘れていない優しい方だった。

「私は最強」と真っ直ぐ答えた神木さん。歌うことになり途端に緊張。それはそう。あの高音。

少し気持ちを奮い立たせる時間を設けて、よし…とマイクを握り横向きで息を整えると、サビをアカペラで。ファルセット込みの高音で歌い切った。

美しく力強い歌声に、息を飲んだ。

緊張した!舞台の初日ぐらい緊張した!と確か言っていて、それぐらいの緊張感が伝わった。

 

さらに質問はつづき、

アミューズの事務所イベントで歌っていたという「キミノリズム」「DEAR MY GIRL (with よしたく)」をアカペラで歌うことに。

神木さんの歌声をこんなに聴ける機会があっていいんですかと感動しきりだった。

ぜひ、クイズコーナーで話題に上がっていた山田涼介さんことハニーとアイドルモードのパフォーマンスをしてほしい。

そのクイズコーナーから関連して、ファンサービスの“バーン”をしてくださいと、当たって言われた方のパスにより、ステージ端からくまなくバーンと言いながらのファンサービス。

2本指タイプの渋めのバーン。西部劇の保安官風。

 

「君の名は」から、パンケーキを食べた後の「夢やし」をお聞きしたいというパスには、

まず台詞を思い出そうとする時の様子が仕事人でかっこよかった。その前の台詞は「まあ、いっかって言ったな…」と呟きながら台詞起こしを頭の中でしている様子。

そうしてから、三葉ちゃんの時の女の子声で。「夢やし」と。三葉ちゃんだった。神木さんも「久しぶりに三葉になったな…」と言っていた。

質問をした方はそこのシーンがよっぽどお気に入りなのかなと思ったけど、振り返ってみると、滝くんとしてではなく、三葉でいる時の声を聞きたいとなれば、そのシーンなのだと合点がいった。

ファンの方、すごい…

質問をした方が「君の名はの…」と話し始めたところで、薄っすらとBGMに君の名はの曲が流れ出すタイミングの良さもすごかった。

 

つづきまして、
せっかく台本がそこにあるので…というパスから、「らんまん」の台詞をその場でエチュードすることに。よしたくさんは宮野真守さんが演じた役を、広島弁にその場で変換して。

戸惑うよしたくさんに、読み方をこそっと教える神木さんの様子もよかった。

ファンの方はどのシーンと指定はせず、神木さんの機転によって、さっき解説していた方言部分の台詞をかなりの長尺で聞くことができた。

さっとスクリーンに「らんまん」の写真を写して、少し照明を落とすスタッフさんの臨機応変さに感動する。

 

連れてきてもらっていながら、こういう時に参加したくなってしまう性分で、当たることはないものの手を上げる形での参加も楽しかった。

もし聞けたらと考えたのは、“これまでの作品で、言われて忘れられない台詞は何ですか?”だった。

言った台詞ではなくて、受けて心にくらった台詞を聞いてみたいなと思った。

みなさん質問のパスが本当に見事で、みんなが喜ぶ流れを生み出していた。

 

話の途中、神木さんからプレゼントされたデニムの服を、イベント当日にバリバリのまま着て来たとバラされるよしたくさんのチャーミングさにグッときてしまった。

洗ったら新品じゃなくなっちゃうと、大切にしてたのではと想像すると可愛い。

 

前説も司会進行もして、場を盛り上げるのは大変なことあると思うのだけど、吉村卓也さんの空気作りのおかげで盛り上がりやすい空気だった。

控えめで落ち着いた雰囲気のなかでも、良きところでは発声しやすい進行だった。

質問する方へとマイクを持ってくるために、近くに来た姿に釘づけだったのは内緒。

 

サプライズじゃんけんコーナーもあり、みんなで一斉スタンダップ

まず、神木さんとのじゃんけんに勝ち続けた人。次に負け続けた人。次にあいこを出し続けた人。

それらで最後の1人になった、計3名にはその場でステージ上にてスマホで記念撮影。

ファンクラブのガチャが当たらなかった人にもワクワクを!という心意気が伝わって素敵だった。

 

しっかり掲げて、違うと分かったらすぐに座る人ばかりで、スタッフさんも確認しやすそうな様子に、なんとマナーの良いじゃんけんなんだ…と思った。

負け続けじゃんけんで、3段階くらい残り続けた時は、ドキドキが止まらなかった。

目の前でサプライズが実行されていても、ええーではなく、わあっと場が華やぐ。なんと寛容なんだろうと感動した。

 

最後に神木隆之介さんからファンへ向けての実直な柔らかい言葉と挨拶があり、にしたくさんの進行と活躍のおかげで爽やかに幕を閉じた。

エンディングにスクリーンには神木隆之介さんの子供時代の写真が映って、わあっとなる空間は、長年のファンの方も今見つめ続ける方も、穏やかな眼差しで見守っていらっしゃるのだなあと感じた。

ラストに流れたのは、今日の始めに撮影した「入れ替わってるー?!」コール&レスポンスの客席ぐるーっと映した映像。

みんなで楽しんだねーと振り返る、粋で優しい演出にほのぼのした。

 

1時間20分ほどの公演時間の濃度として、とても濃かった。

終わり時間が丁度良いとも感じた。おかげで、最終公演だったものの帰りの心配もせずに済んだ。

 

友が誘ってくれたから、神木隆之介さんの30歳記念のファンイベントに行くことができた。

和やかで楽しくて、居心地の良い素敵空間が広がっていた。

神木隆之介さんのお人柄、支えるスタッフさんの優しさ、ファンの方々の落ち着きに感動した。

 

ファンの方々に委ねた構成も和やかで、

イベントを常々開催している訳ではないなかで、アナウンスが的確で丁寧さを保っていたり、スタッフさんたちの迅速な案内と、

開演前のロビーで尋ねる必要があった時にも、親切に対応をしてくださったことがありがたかった。

本編では、イベントの話の流れに合わせた照明変換や映像転換、BGMのボリューム調整なども素晴らしかった。

 

そしてエンディングの後、ひょいっと再度現れたよしたくさん。

何度驚かせるのと思いながら、驚きの知らせ。

神木隆之介さんが、みなさんをお見送りします。とのこと。

 

えっ。えっ?えっ!

えの三段活用ができるくらいの。

 

言われるがまま、みなさん静かに退出の誘導に従う。

会場のドア向こうへと人の流れに合わせて歩いていくと、そこにもう神木隆之介さん。

長テーブルのみを置いての神木隆之介さん。

はがし役になるようなスタッフさんがいなくても、みなさん等間隔に通って行く究極のお行儀の良さ。

楽しかったですと言おうと胸に抱えていたのに、目の前にしたらもう神木隆之介さんが顔をこちらに向けていて、両手を振って「ありがとうございます」と。

ありがとうございますと両手を振って答えるので精一杯だった。

 

帰りのお見送りサプライズに、ズギャンとはなにかを思い知る。

来て良かった。また来たいと思った。

 

f:id:one-time:20231213160129j:image