8LOOMが花咲くラストライブ

 

終わりが決まっていることは悲劇だろうか

それを知りたくて、見つめていた気がする。

 

8LOOM(ブルーム)としての彼らを観ることのできる期間は限定されていた。

ドラマのキャスティングオーディション、そしてボーイズグループ結成のためのオーディションでもあった1年前の日に、

きっと映像としてこちらが見ることがなくても、多くの役者さんやシンガーさんやダンサーさんが「君の花になる」に参加するためのありったけを注いでいたのだと思う。

 

そこから選ばれた7名。

元からこの形だった7名ではなくて、それぞれに蕾を持った1人ずつが8LOOMとしての形を作った。

実際にグループ活動をしているメンバーが2人いたり、かつてグループを経験しているメンバー、演技経験が初めてになるメンバー、本当にそれぞれの道を歩いて、ここで横並びのラインを描いたことは、奇跡だと思っている。

現実的なことを考えると、期間が限定されているからこそ、実現できたグループだと感じていた。

 

2022年12月4日、日曜日

君の花になる  "Let's 8LOOM" TOUR 〜THE FINAL〜

14時 開演

パラビ配信で視聴

 

チケットは外れてしまったものの、配信とアーカイブが決定したことに歓喜した。

しっかりテレビ画面に大きく映して、カーテンを閉めて、大きめのクッションを抱き締めて万全の体制で待った。

 

開演15分前から配信視聴者にも会場の様子が見えるようにしてくれていて、開演前のアナウンスはメンバー自身。

両サイドのスクリーンには、ドラマ内での8LOOMの様子や、オーディションから追ったドキュメンタリーの映像が流れていた。

ソワソワして、ドキドキして、口が乾いていく感覚。

配信でもライブを観る前はこの感覚になるんだなあと客観視した自分と、8LOOMに対してそう感じていることの楽しさを両方抱き締めた。

 

ラストライブの幕が開く。

持ち曲が限られている中でも、すでに配信されている3曲にプラスして、今回はこれから物語に絡んでくるであろう新曲も披露した。

ダンスでダークな雰囲気と表情を見せつつ、歌詞に恋ゆえの焦ったさと投げやりになりたくなる感情が表れた曲。

曲のクオリティとパフォーマンスのクオリティが成立していることの凄さを、まじまじと見てしまう。

ドラマ内の架空のボーイズグループでは終わらせないという制作側の気合いと、自らの意思でもムーブメントになる熱量を内側から作っていくんだという演者としての本気を感じた。

 

徹底して役へのイメージを身体の中に構築していそうな高橋文哉さんも、喋っている時は比較的ナチュラルな顔を見ることができるけど、

曲フリをするタイミングで、瞬間的に弾になる声色と顔には圧倒された。

 

ドラマのようでいて、現実で、

現実のようでいて、役が被さる時もある。

その劇中劇のような不思議さが心地良かったのは、役名でいる姿も本人でいる姿も程よく地続きで、違いもまた人間味として愛くるしかったから。

 

楽曲「Melody」のパフォーマンスでますます引き込まれてからの短期間でも、高橋文哉さんのオールナイトニッポンXのピンチヒッターとして、宮世琉弥さんを筆頭に揃ったメンバーの賑やかさだったり、

普段聴いている森崎ウィンさんのラジオ「Winning Parade」の特別担当として出演した八村倫太郎さん、森愁斗さん、電話参加の綱啓永さんのお話を聞いて、役ではない時の1人1人のことも関心が深まった。

特に八村倫太郎さんと森愁斗さんは、現在も活動しているグループの曲をラジオで流していたところから、

八村倫太郎さんの所属するWATWING(ワトウィン)の「Honey,You!」MVをチェックしたり、

森愁斗さんの所属するBUDDiiSの「OZ」を聴いたり、関連動画で再生した超ときめき♡宣伝部の曲のカバーパフォーマンス「すきっ!〜超 ver〜」が想定外にくせになっていたりする。

2人に思い入れが深くなるのは、グループ兼任ということにも思いを馳せるから。

スケジュールのことだけでなく、主軸であるグループでの位置。ファンの空気。実際にどうであったかまでは追わなかったけれど、いろんなことを感じながら考えながら、全うする姿に胸打たれていた。

 

なんか好き。なんかいい。と思って、ひたすら見続けた「Melody」のダンス。

ビートが入る、宝くんの“不意に始まる”からのパッと顔を上げてリズムを取る腕と、少し前めに曲げて置く脚。手を変えてもう一度そのリズムで踊るところが最高に好きになった。

今回のライブMCでも話していたように、山下幸輝さんが「Melody」のサビ以外のAメロBメロを振り付けしていたことを、雑誌のインタビューで読んだ時、好き…!!と思った。

MCでさらに、振り付けは30分考えて、構成含めて1時間だったことを知ることができて嬉しかった。

 

ジャニーズのライブ構成が身体に馴染んでいたからか、ドラマ映像を見せることでしっかり確保される着替え時間は新鮮で、マジックテープでばーん!なズボンとかシャツじゃなくていいのか!そっか!と発見だった。

歌の合間には、演技のワークショップのようなコーナー。

ドラマのシーンを役を入れ替えて再現しよう!のコーナーが楽しいのは、これからますます役者としても進んでいこうとするメンバーだからこそだと思う。

その場での配役と、配られた数ページ分の台本。

台詞覚えの時の顔も見ていたくなるのは役者さんの魅力だよな…となかなか無い機会で楽しい。

弾を演じる山下幸輝さんを見てみたかったから、いくつめかの再現コーナーで告白花丸シーンの弾役のクジを山下幸輝さんが引いたのが嬉しかった。

 

弾とあす花のハグのシーンを再現することになって、

弾を演じた高橋文哉さんはあす花を、NOAさんが弾を、駆けて来るあす花のお姉ちゃん、優里を森愁斗さんが演じることに。

弾役はかなりの台詞量で、一生懸命に読み込むNOAさん。でも読める時間は1分だけ。

緊張込みで台詞が飛び飛びになるNOAさんに、助け船で言葉の始めをぽそっと言ってくれる高橋文哉さん。

はじめは復唱していたものの、光る面白センスで高橋文哉さんがすっかり弾モードに。

その時のカメラに抜かれた顔の違いがすごかった。伝えるために台詞を口にしている時と、本気で弾として言っている時の顔は全く別人だった。

クランクアップした今でも、シーンの台詞が呼び起こせるのがすごい。台詞が今もしっかり入っている高橋文哉さんによって、二重人格並の切り替えを見た。

あす花からハグをしに行くシーンなのに、にじり寄ってしまうNOAさんに、そっ…と手のひらを伸ばして静止する高橋文哉さんのシュールさと、役が行ったり来たりする謎展開に「どっち?!」と困り始める森愁斗さんも面白かった。

 

出てきた衣装でピンとくる「Melody」

MVの衣装そのままにパフォーマンスを観ることができた。

「HIKARI」も、あの時のジャケット衣装。

弾として話す姿に、体育館のステージに立つ8LOOMを目の前にしているような感覚になった。

 

綱啓永さんのハイトーン、メンバーの言い方に変えると“ミックスボイス”の魅力が発揮されていて、そして八村倫太郎さんの熱くブレない歌声も頼もしかった。

宮世琉弥さんの繊細な表情ひとつひとつと、ラップの低音ボイスのギャップにも目が離せなかった。

Jr.であるなら先輩たちの曲を歌う楽しみもあるけれど、配信とアーカイブもあることを考えると権利含めてカバー曲は難しい。

それでも、持ち歌の引きと、即興劇のようにしてその場でお芝居に挑戦する要素も盛り込んで、一定時間のライブができていた。

「Come Again」の振り付けレクチャーを山下幸輝さんと八村倫太郎さんが担当して教えてくれたのも楽しかった。覚えやすいキーワードがあるものの、本家のスピードになると難易度急上昇になる。

 

最後?と思いながら観ても、最後なんだなということをメンバーの表情から理解してしまう。

最初の曲の時から、込み上げているのが伝わる顔のメンバーもいて、一瞬前まで大丈夫だったのが一瞬にして変わる表情に、これは止められないくらいにコップから溢れる時の感情だと思いながら見つめるしかなかった。

そういう場所でも、山下幸輝さんは初めから終盤まで楽しそうな空気をまとっていたのが印象的だった。

それが、最後の最後。どうした…!と駆けつけたくなる不意のきっかけで泣いていた。

さっきまで明るく笑っていたのに、気がついたら泣いている。そういう堪え方をするひとを、私は好きになってしまう。大橋和也さんも丸山隆平さんもそういうところがあると感じている。

とにかく目に映る会場の人ひとを見渡していて、上に、右に左に目に焼きつけるように見つめている山下幸輝さんであり宝くんの様子も、印象的だった。 

 

ライブはどうしたって、終わりに近づいてしまう。

「こんなにもたくさんの人を魅了できるとは。僕は思っていませんでした。」

8LOOMの佐神弾でい続けた、高橋文哉さんがそう言った。

素直なその言葉に、心臓がぎゅっとなった。

企画の立ち上げから、オーディション、レッスン。脚本が出来て、撮影、レコーディング。歌番組でのパフォーマンス。実際のライブで8LOOMとしてお客さんを前に、歌う踊る。

プロジェクトがどんな道を進むかは、期待だけでは測り得ないことだったと思う。

1年後の今に居て、どうなったかを見ているから良かったと思えていることで、未知が広がっていた時はどれほどのプレッシャーと覚悟を背負っていたのかと考えてぎゅっとなった。

 


「儚く打ち上げて、どデカく散ろう」と高橋文哉さんがFIRST LIVEの円陣で言ったという言葉が、

LAST LIVEの今回はあえてかどうか、「派手に打ち上げて、儚く散る」と言った。

見届けた。それぞれに気持ちが入る、思い溢れるグループになったこと、最高だと思いながら画面越しにずっと観ていた。綺麗な花咲く瞬間を、観せてくれてありがとう。

これからも水を吸収して、栄養を蓄えて、枝葉を伸ばして花を咲かせて。

ライブが終わるころ、部屋には夕陽が差し込んで綺麗だった。

 

咲きつづける花を思う時、Nissyの「花cherie」MVで表現されたガラスケースにそっとしまう一輪を思い浮かべる。

8LOOMに出会ったいま、咲き続ける花はあると思える。

ドラマ内だけで聴ける曲ではなくて、どの曲も配信リリースをしてくれたこと。いつでも聴けること。それが嬉しい。

 

終わりが決まっていることは悲劇だろうか

さみしくて、受け入れるのが難しい。感情の追いつかなさは、どうしても生まれるものだった。

それでも、魅せてくれたことへの喜びが勝る。

惜しくなるほどになったことへの特別さを感じる。

人は思い出を大切に日々を過ごしていくことができる。どこかで、共演し合う彼らを心待ちにして、

明日の朝もまた、起きたら寝ぼけながら「Melody」を流して、カーテンを開ける。