花を一輪渡しても、花束にして渡しても、輝くアクセサリーを渡しても射抜けない。
ひとりのマドンナを目の前に、途切れることなくアプローチがつづく、BUDDiiSの新曲「Magic」MVが楽しい。
BUDDiiS「Magic」
作詞・作曲・編曲:UTAさん
振り付け:NanA MAEDAさん
音楽にMVというストーリーが加わることでますます好きになる現象は、
ライブで演出込みで観てますます好きになる現象に似ている。
一目惚れから花をプレゼントしたいのにお代がすぐにポケットから出せないMORRIEさんと、すかさず横に入り赤いバラを一輪取ってアプローチしつつ右手でコインを投げるKEVINさん。飛んできたコインをキャッチしにいくお花屋さんのFUMIYAさん。
一つの画面のなかに、いくつものストーリーが同時進行していく。
曲そのものの魅力も、ファルセットの美しさが次から次へとフラワーシャワーのように振る、華やかさと心地良さがある。
ボーカルが素敵に際立つ楽器とのバランスで、それでもしっかりベース音でビートが刻まれているところがいい。
日常で聴き続けたくなるという意味で、8LOOM「Melody」に近いものがあるのかなと思っていたら、制作に8LOOMと同じくUTAさんが携わっていると知って、好みの傾向ー!と思った。
目覚めの朝にも、夕暮れのマジックアワーにも聴きたい曲。
“もし同じ気持ちなら Stay by my side”と“君と視線交わすたびに”のメロディーに、涼しげなブルーをイメージする。
メンバーひとりひとりにボーカルパートがあり、地声ともまた変わる裏声を使った歌い方はメンバーにとっても挑戦だったのではと思った。
KEVINさん、MORRIEさん、SHOOTさんの息をふわっとそよがせる歌声のハーモニーが曲調と相まって光りながら、バトンを繋ぐメンバーそれぞれの声がさらに鮮やかな色を作っていく。
「OZ」の時も引きつけられたTAKUYAさんが今回もポイントをぐっと押さえていて、“君を連れていくよ”の安定感のある低音に、優しげな微笑みと紳士さのある動きがよかった。
SHOWさんのファルセットが綺麗なことを初めて知って、「Magic」でその輝きを知ることができたのも嬉しい。
ワンカメラで撮る方法になると、見切れないように位置についたり、不自然にならないようにフレームアウトする難しさも加わるのだろうなあと思う。
タイミングよく入っていくのもしかり、メンバーを押しのけてメンバーが入る流れなので、自然なお芝居と安全な動線が大切になる。
できるだけ一連で撮っている楽しさを感じたのは、マジックで使った金テープがカメラさんが床を映しながらの移動の際に一瞬映り込むところ。
恋焦がれてアプローチをするシチュエーションの難しさは、どう映るかをある程度意識しつつ、目の前のひとりに集中して、相手への眼差しを本気なものにしてお芝居することなのかなと思ったりする。
SHOOTさんの登場がダンスからなのが流石。すぐさま心を奪う。
SEIYAさんのフレームインからつづく、YUMAさん、TAKUYAさん、HARUKIさん。
フレームインの前からほかのメンバーのアプローチをベンチに座って見ていたり、
TAKUYAさんにおいては初めはエプロンを着けたカフェの店員さんをしていて、SHOWさんの指輪プロポーズの後ろでコーヒーカップをYUMAさんのテーブルに置いていた。
一旦お店に入ってからエプロンを外して、再登場からのYUMAさんにエプロンを掛ける流れだったと何度目かになって気づく楽しさもあった。
照れずに撮るのは大変だっただろうなと思いながら、だからこそMVのシチュエーションに没入している様子のFUMINORIさんが印象に残った。
マドンナの前に立った時の真っ直ぐな眼差し、力強いダンスに、歌声のファルセットで柔らかさがありながらも情熱がほとばしっている。
一人で映る時だけでなくて、メンバー揃ってのダンスシーンでも、最後の最後に“It's like a magic.”の少しあとにくる胸元に片手をぐっと押さえる動きが、表情含めて心を奪われた感を見せていて素敵だった。
アプローチの形のなかにダンスがしっかり組み込まれている構成も魅力的で、
かっこいい動きにこだわる訳ではなくて、夢中だから君の気を引きたいという気持ちが振り付けに表れているところが好きになった。
どこかディスコの空気を感じる振りもありつつ、スタイリッシュさもあって、可愛げもある。
中盤ではなく終盤でダンス集中パートがあるのも意外で楽しくて、ぐーっと伸びをするような動きがいい。サビで斬新に背を向けるステップはもちろん、個々に踊る時の指差しもキュートだった。
MVの色調が程よくノスタルジーとポップが合わさっていて、衣装の色合わせもパステルに走りすぎない色味だった。
ジャケットのサイズ感はオーバーめでレトロさが出つつ、シルクっぽさのあるシャツを着るメンバーや、ニットベストを着るメンバーがいて、揃えすぎないバランスの良さも感じた。
誰かが射抜くかと思いきや、ベンチに置いて行かれるメンバーの表情とジェスチャーも様々。
ああー…と可愛く落ち込んでいて、なんだよーと怒るリアクションにはしないところが良かった。
一生懸命なアプローチの可愛さと、ダンスの色気。
BUDDiiSメンバーの表情に引き込まれながら、「Magic」の輝きで誘う曲に心が躍った。