自転車を漕ぐ足がほんの少し軽くなったような、柔らかい風の吹くドラマを見つけた。
ドラマ「日曜の夜ぐらいは…」
テレビ朝日で日曜、夜10時からの放送。
エレキコミックと片桐仁さんのラジオ番組「エレ片」で何度も耳にしていた、ラジオリスナーが集うバスツアー。
そのバスツアーが、ドラマに出てくる3人の出会いの場になるんですよとラジオから聴いた私は、それは見ないとなと思った。
時間の合間を見つけて録画を再生すると、なんともその空気が心地よかった。
3人それぞれにやるせなさや不器用さを抱える様子は、わかるな…という思いと共にずしんとくるものがあるけれど、
それでも、いい風が吹いている感じがする。
清野菜々さんが演じる岸田サチ、岸田ゆきのさんが演じる野田翔子、生見愛瑠さんが演じる樋口若葉。
ラジオを聴いている翔子と若葉とは対照的に、ラジオを聴いてはいないサチがいることで、内輪受けだけにならないバランスを生み出す構成もいい。
さらにエレキコミックも本人役で出演している。
エレ片のラジオで、ドラマ内で登場するラジオシーンのやり取りは、巡り巡ってエレ片にゆかりのある放送作家さんが書くことになったと話していた。
心惹かれる登場人物はまだまだいて、公園のパンダも名演技だと思う。
気になるお店の店員さんのはじめの一言が、いらっしゃいませより先に「こんばんは」だったところが良いなと思った。
バスツアーの仕切り役をベテランリスナーとして任されている、みねくんの細やかな察し力と眼差し、ゆるーい雰囲気には、すでに引き込まれている。「呼び捨てー」の言い方と、その後のなんとも言えない表情がいい。
サチが自転車で進むにはなかなか険しい道のりを黙々と漕ぐ姿に、ただひたむきなのでもなく、苛立ちと振り払いたいモヤつきも内包している気がした。
誰に向けるつもりもない。どうにもならない、やるせなさ。
だから、サチが見せた本音に、そうだよな…と思うほかなかった。
非日常みたいな嬉しいことがあって、日常に帰されるくらいなら、何も無ければいい。嬉しくなったり、悲しくなったり、高低差があるほど心のエネルギーも消費する。
静かにじっと集中してドラマを見ていて、
サチがふうっと息を吐いた時、見ている自分も同時に息を吐いた。
あまりにタイミングが合っていて、どれだけ同じ気持ちになって見ていたんだろうとハッとした。
台詞で語る言葉以上に、表情が語る。劇中で流れる音楽も、さり気なく、でも心情に寄り添う音が鳴っている。
自分の見たことない笑顔に、自分で驚く感覚が私にもわかる。
サチは楽しいも嬉しいも、失う時のことを思って自分で離れてしまうけれど、翔子と若葉はあんなにサチのいる時間のことを大切な思い出にしていた。
バスツアーで知り合っただけの3人。
また出会える保証なんて無いまま、離れて行ってしまった3人。
これからがどうなっていくのか気になりながら、この深夜に聴くラジオのような心地よさがつづいてくれることを期待したくなる。