第10話「いちばんすきな花」 - 大切な人に、大切なことを伝えるのをためらわない。

 

美鳥ちゃんのモノローグから始まった第10話。

4人から見て語られる美鳥ちゃんから、美鳥ちゃんの語る美鳥ちゃんになった始まりのおかげで、先週押し寄せた不穏さはどこへやらで、寂しさではなくて温かさを感じられた。

グループLINEではなく、個々からくるLINEを開いている様子を見て、美鳥さんの言い表したかったこと。どういうふうに居ることが心地良いと考えているのか、すんなり胸に落ちた気がする。

私もLINEはグループじゃなく、個々で会話したい。あの押し寄せる情報量の波には乗れない。

数式を理解するのは下手だけど、頭の中で4(1+1+1+1)=の式が思い浮かんだ。この数式でいいのかも、答えの導き出し方もおぼろげで分からない。

 

第1話で椿さんの家のテーブルに飾られた、黄色のガーベラとかすみ草のブーケが好きだった。

それ以来と言えるような、モッとボリュームのある素敵なブーケが今回登場した。ピンクのガーベラが映えつつ、同系色もありながらバランスが取れていて好きだなあと眺める。

椿さんが作ろうとしたブーケを整えて、弟の楓が作った作品。

 

「いちばんすきな花」が放送されるようになってから、その前に受け取った「いちばんすきな花 Garden」のミニブーケをきっかけに、毎週木曜日に合わせて花を一輪か二輪飾れるように習慣にして続けている。

今週の選んで飾っていた花がピンクのガーベラとチョコレートコスモスで、椿さん家のテーブルに置いてあるブーケにおっ!と嬉しくなった。

 

ハマカワフミエさん演じる美容院の上司、谷本杏里さんが比較的に不機嫌そうではない状態で夜々さんと話しているのを見られて嬉しかった。

谷本さんも職場での顔が一面的にそうであるだけで、帰ったり、知り合いに会った時にはまた印象の違う顔があるのかもしれない。

谷本さんと夜々さんの会話に、脚本家の生方美久さんの書く言葉を作品のなかで話しているなあと染み渡る感じがした。

 

椿さんのお家に着いてからのゆくえさんが、インターホンからの入るスピードの早いこと。面白かった。

事前に行くよーとは連絡していそうだけど、もはや帰っている。

 

いつものテーブルではなくて、美鳥ちゃんと一緒にご飯を食べたあの低めのテーブルを囲む4人が新鮮に思えた。

コーヒーの入ったピッチャーを中心に、4つのマグカップ

コーヒーのピッチャー。それぞれに注がれているコーヒー。真ん中にある感じが美鳥ちゃんみたいと思った。

熱いから、ちゃんと鍋敷きを敷いてあるのもいい。

 

夜々さんが作ったご飯。

コロッケ美味しそうだったー…食べたいー食べさせてー

そうバタバタしたいくらいに、魅力的だった。

手作りのコロッケな形をしていて、衣感も何というかリアル。一部だけちょいコゲに見えるのもリアル。それすら美味しそう…

メニューが、コロッケにピーマンの肉詰めもあるところが、主菜副菜より優先して得意料理を存分に!という感じがして、夜々さん…!愛くるしい!と思った。

そして一度言ってみてもういいやではなくて、心から思っているからこそ、もう一度勇気を振り絞って椿さんに言葉にした夜々さんのかっこよさにぐんと心掴まれた。

泣きそうだから、泣いてしまったから、失礼しましたと帰ることもせずにティッシュ投げで遊ぶ悲しさの中の面白みに、切なくて笑った。

美容院の休憩室で、仕事終わりの脱力が残るなか、二人が行かないのを知っていて電話をかける気持ち。

椿さんが出て、椿さんの声が聞こえるとわかっていて電話をかけるのに、どれだけ心臓がバクバクしていただろう。

 

椿さんが随分くだけたところを見せるようになって、笑い方もリアクションも様々になっていて楽しい。

特にお気に入りは、ゆくえさんからの「以上です、おつかれさまでした」に対しての「(んー)」な顔。なんて可愛くてシュールな顔を。

そこからの夜々さんとのお話で、すっと真剣に答えるところも。それは好きになるよね夜々さん。

ツッコミが冴え渡ってきた椿さん。夜々さんがコンロに火をかける時、自然とそばにあるビニール袋を片付ける椿さん。いい…と思いながら見てた。

「あんなに好きなファンがいるから」箱いっぱいの本を指し示す椿さんもいい。

具体的に示されたら、しぼんだ心も少し膨らむしかない。

 

紅葉さんの作り出した作品と、それが手元を離れて人の目に触れた時の心のぐるぐるが、どこか身近に感じてん”ん”…となりながら見ていた。

本の表紙に物言う人がいるなら、その本の著書さんもまたどこかで内容のことをつつかれているかもしれない。

見つけてもらわねば、見てもらってこそ始まると考える頭と、いざその状況になった時の“晒され感”から湧く気持ちは、相反する心境にもなるよなあと思う。

そんな石どこから?と聞きたいくらいの石を想像の斜め上から投げられることもあるのだろうな…

よっぽど川の奥地まで行って拾ってきたんだね、結構当たると痛いんだぜと言っても、伝わらないことはある。

 

どうか紅葉さんが、他者の要因によって描くことが嫌になってしまわないようにと願いながら見ていた。

でも椿さんも夜々さんも、そしてゆくえさんも、普段は心の奥でぶんぶん振っている応援旗をちゃんと態度と行動と言葉にして伝えてくれる人たちだから、

紅葉さん、きっと大丈夫。と思うことができた。

 

次回予告についにあの文字がついてしまった。

最終回だ…最終回がやってくる。

それでも、11話まであってくれることがうれしい。10話の可能性もあったはずだから。

そして、最終回があってもきっとどこかで、それぞれの存在を感じられる余韻はつづくと思っている。

 

「行って、帰ってくる。」

「ちょっと住みたい」の気持ちがわかる。

大阪の中崎町に旅行で寄るだけでは物足りず、ちょっと住んだ身としては、とてもわかる。

好きな場所には、お客さんではなくて、“行って、帰って”来たい。帰る場所にしたい。

適切な距離を心地良さとしていた4人が、ちょっと住んでみるとどんな感覚になるのか、それも知りたい。

最終回だけれど、まだまだ知りたい姿、見ていたいやり取りがある。

まずは来週の木曜日を、ちょっとした瓶に一輪の花を飾って心待ちにしていたい。


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