第3話「いちばんすきな花」 - 明日枯れる花束

 

「正義感が強すぎます」と言われた日のことを思い出す。

先生は困ったように、少し怒って、親にそう言っていた。何か褒めて貰えるかのかと期待した私は、居心地が悪かった。

親は私になにかを変えるようにとは言わなかったけど、正しくいようとすることで嫌がられることがあるのだと、小学低学年で知った。

 

はじめに映る幼少期の椿さんの三者面談。

クラスの黒板の上には「先生・友達のはなしはしっかり聞こう」「じゅぎょうちゅうは おしゃべりしすぎない」と大きく掲げられてられていて、

クラスでの目標を決める時、この張り紙をみんなで書いて作る時、椿さんの心にどんな色のインクが落ちただろうと考える。

子供の姿の椿さんが、会社で書類を受け取り続ける様子を見て、大人の心の奥ってこういう感じかもなと気づいた。

 

今回見ていて、なんか…4人ともリスっぽいな…すき。と思った。

私はリスに弱い。好きなタイプはリス顔と言っていい。挙動がリスならなおのこと。

階段で3人、話を聞いていたり、ソファーから顔を出していたり。その様子が童話の絵本みたいだった。

世代や個性がそれぞれな役者さんが揃ったと思っていたけど、気づくとみなさんリスのポテンシャルがある。

 

3話目?本当に3話目かな、と思うくらいに、親しみが湧いている。

わかるからだけではなく、わからないところや未知なところがあるから、親しみたくなる。

4人の空気が、見ていてくつろぐような感覚になるほど馴染んでいる。

夜々さん紅葉さんゆくえさんがもたれかかっていたソファーのごとく、自分の気持ちがほぐれていく。椿さんの3人への声かけを聞いて、さらに安心した。

 

クスッとなる瞬間があちこちにあって、それでもピリッと胸に痛みが走るところもあるなかで、

藤井風さんの歌声で、“みんな儚い みんな尊い” と聞こえてきた時に、そう…そう…と思った。

 

自分の話す言葉を、“意味分かんない”って言われる椿さんの気持ち。

何度も耳に飛んでくるたび苦しかった。

分からない話というものはあるのかもしれない。ただ、相手と向き合いながら、話そうとしながら、聞こうとしないのはあんまりではないかと思ってしまった。

私も聞く人によってはきっと意味の分からない、もしくは何の為に考えているのか分からないことを話す。

でもそれを、分かろうとしたり、一旦でも受けとめてくれる人が数人いる。本当に貴重で、ありがとうと思っている。

 

謝ることないのに謝る椿さん。

ごみの袋、空気を抜いて小さくする椿さん。

それを考えてか無意識かはわからないけど、ごみの袋を出来るだけ小さくすれば、同じ場所に捨てる人が次に置くスペースができる。

そういう椿さんがすきだ。

 

美容室から女性のお客さんを送り出す夜々さんが、「お洒落してどこ行くんですか?」と聞いた。

お客さんは「女友達とご飯行くだけです」と答えて、どうする…と見ていたら、「それが一番楽しいですよね」と夜々さんは言った。

そうあっけらかんと言える夜々さんがすきだと思った。

 

ゆくえさんの第3話でのすき台詞は、点Pへの

「あいつね、懲りずに動くよね」

だった。数学への親しみが、もはや友達のように発想として出ている。

中学生とゆくえさんのやり取りを聞きながら、笑いが溢れてる夜々さんも可愛かった。

 

椿さんのお家の前で、もっもっとおにぎりを食べている紅葉さん。
花束を掲げる椿さん。あっで伝わる色々。

ひとつひとつ、いいな。が織り重なる感覚だった。

「自分が悪いって思う方が楽だから」

椿さんはそう言った。

本当に、そうだと感じる。相手に向かって感情を持って体力を使うより、矛先を自分に向けた方が話が早い。そして自己完結できる。

私が悪い。それでいい。

でも多分、“楽”じゃない。自分に刺さる刃が、痛い。

ずっとそう思ってきた。でもここは怒らなくてはいけない。冷静に、だけどはっきりと要求を明言しなくてはいけないという状況に追い込まれてようやく、慣れない爪をチャキッと出せた。

なんで?!がついぞ言えるようになって、それが相手に向かってではなくても、聞くだけにしてくれる人がいるから、今はそうでもなくなった。

 

純恋さんを前に、とつとつと話しながら。

途中、椿さんは子供みたいに泣きじゃくりそうになるのに、その最終ゲートは開けない。それでもゲートから溢れた分の、つたう涙。

ひらけないのか、あけるほどではなかったのか、どちらでもそれでよかったと思う。

あの花束を渡したことが、椿さんにとって、はっきりとした怒りな気がしている。

 

ストーリーとして、あえて連絡先を交換しない道筋もあったはずだけど、このタイミングでこの形と順番で少しずつ繋げていく。

4人だからこその歩みがいいなと思った。

 

今回も服装には注目したくなる。

第3話のゆくえさんのアイボリーのニットベストが丸襟で、そこにノーカラーのブルーのシャツを合わせているところと、

椿さんのブラウンのニットベストはVネックで、同系色の薄めのベージュシャツでノーカラーなのが素敵だった。

夜々さんはタートルネック、トップス、ベルトに緑が散りばめられていて、第2話のフォーマルな夜々さんから、カジュアルでありながらしゃんとしている姿もよかった。

紅葉さんはインナーを着つつ襟付きシャツを重ねて、さらにニットを羽織るおしゃれさんな感じがいい。

 

誰かに淹れてもらうコーヒーは、おいしい。

ほうじ茶でも、コーン茶でもおいしいはずだけど、手に取るマグカップの温かさから変わる気がする。

“嫌われない配慮”もしながら、“好かれる努力”もしていたい。

でも出来るなら、その両方とも意識しないうちに一緒にいられたら。それがいい。

 


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