第2話「いちばんすきな花」 - いつものマグカップ

 

4人だけがすごす時間を、見せてくれてありがとうと思った。

4人がもし仮に、何らかの街で何らかのインタビューを受けて、どんな関係の4人ですか?テーブルを囲んでお話し?それ取材させていただいても良いですか?なんてことを聞かれたら、

こんな一面は見せてもらえなかったはずと思う。

 

紡がれていく脚本によって、言葉というかたちになって、演じられることによって、人物は立体に。存在するものになっていく。

第2話でさらに深まって感じた、絶妙にグラデーションな各々の感受性。

同じことのみに共鳴し合うのとも違っていて、こう思う人もいればそう思う人もいる。

それでいて、ゆくえさん、椿さん、紅葉さん、夜々さんは各々の感じたことを興味深げに楽しんでいて。

いいなあこの4人。そう思う自分に気づいた時には、名前も覚えていた。

 

「silent」に抱いた色のイメージが冬の寒さと深く潜るような濃い青なら、

「いちばんすきな花」は早朝の空にも似た水色が白とマットに合わさる、ペールブルーだと感じている。

 

ドラマ本編やポスタービジュアルを撮影した
方は市橋織江さんだと、公式さんのお知らせで知った。

本屋さんでパッと表紙を見かけても、市橋織江さんの写真に気がつく。でも「いちばんすきな花」に携っていらっしゃるのはわからなかった。

どうりで惹かれるわけだと思う。

お花をもらいに行きたいと表参道へ向かったのも、ドラマのポスタービジュアルがプリントされた袋も含めて魅力に感じたからだった。

景色の写し方が、フレームでバツンと切られている感じがしない。

その場所の空気ごと、ふわっとシャッターを押しているような写真がとても好きで、光の白の美しさと、水色が印象的に漂う色合いをとても好きになった。

 

「勉強だけしてればいいなら行くのに」の言葉に、本当にねと思う。

移動教室は、移動教室だと教えてくれる友達が居なくてうっかり待ちぼうけした記憶と、慣れてきたら誰より先に速やかに移動する人になっていた記憶がある。

理解や音楽は席が選べるから、適当に座った。

体育の方が、休み時間のうちに着替えておくとか、今日は校庭か体育館かとか考えて動くことが多くて、毎度緊張した。

 

お花屋さんに帰って、弟の楓さんとお母さんに会う椿さん。

出版社からの電話に、「あっ、」でワンクッションを置いていく椿さんの話し方を見て、仲間…と思った。

コミュニケーションにおいて、「あっ、」を封じられたら、私は多分はじめの一音を発することが出来ない。

 

紅葉さんの「初めまして」には素早く答えて、夜々さんの「初めまして」に「三度目」と自分の記憶を見つめ直してから言う椿さんが好きだ。

台詞のリズムとしても、テンポが良すぎて流れていかない、休符の置き方が心地良くおもしろかった。

ニ度目以降を不得意としていた椿さんだけど、誰と何回会ったのかちゃんと覚えている。そういう感じが椿さんなんだな…と興味深いような嬉しいような感覚になった。

 

一度目と同じ席についた紅葉さんと夜々さんに、コーヒーを淹れて運んできた椿さん。

その動きを見た時に、あっどうするのかなと思った。

椿さんは、前回のような躊躇を見せることなく、ピンクのマグカップを紅葉さんに。ベージュと線の入ったマグカップを夜々さんのところにそっと置いた。ゆくえさんは黒に線。椿さんは水色。

いつものマグカップができていく感じ。椿さんは無意識そうなところ。いい。

 

紅葉さんと夜々さんが席について話している時の、

「どっか旅行とか行かないんですか?」

「引越しのために取った休みなんで」

紅葉さんが聞いて、椿さんが当然のことのようにそう答えて、何とも言えない紅葉さんの表情。

ここがすごく好きだった。

体調不良で休んだら、夕方から調子が戻っても断じて外には出られない。そんな感じの、融通が効かないと、誰かは言うかもしれない感覚。

椿さんは暇していても、引っ越しのために取った休みで何かをする気にはならなかった。

 

公園でのシーンで、紅葉さんの着ているパーカーと、夜々さんが手元に持つバッグの色が落ち着く深緑だったのが、今回の印象的な衣装と小道具だった。

忘れ物を戻しに行くことにした夜々さん。

忘れ物を置いて行くことにした紅葉さん。

紅葉さんがそっと置くハンカチに、ハテナの顔になってから、意味がわかった椿さんの表情と返答。意外なようで、安心した瞬間でもあった。

 

結婚式後の披露宴のシーンに、夜々さんの感受性が見えるなあと思いながら見ていたから、別のことを思っている様子のお友達にハラハラした。

そのままの感情で涙が流れた夜々さんなのに、見せる表情を本当の気持ちとして接してもらえずにきた積み重ねが、

夜々さんの中にどれだけ存在してるのだろうと考えると苦しかった。

 

だけどそう感じた一方で、バスの中で話す夜々さんの言葉を聞いた時、

学校で、グループのリーダーみたいな、その子の機嫌次第でというふうに見えていた子のことを、今の自分のような考え方で見ようとできていたとは思えなかった。

あの頃、決めてかかっていた私はいなかっただろうか。多面的に想像力を働かせるってなんて難しいんだろうと、自分の足りてなさを感じた。

 

バスが、シーンの中で登場した。

バスには特別な思い入れがある。

座ったゆくえさんが、肩にかけていたバッグの持ち手をすっと下ろして落ち着く体制に入ったところが好きだった。

演出なのか、多部未華子さんの考えなのか、どちらにしてもそういう日常の動きが映されていることが素敵だと感じた。

 

4人を見つめている時の私の視点はなんだろう。

客観、部屋の家具、それよりは見えない席のひとつに座っている感覚かもしれない。

自分はそうは思わない、があっても、4人は寂しそうな顔はしても怒りにしてぶつけない。「二人に見えんのかよ!」意外は。

その姿を見ていたい。話を聞きたい。

話を聞かせてくれて、ありがとうと思っている。

 

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