なにわ男子「I Wish」 - まばゆく、それでいて暖かい

 

呼びかける言葉に、手招きする道枝駿佑さんの姿と、つづいていくなにわ男子の声にほっとする。

海辺に立ち尽くした寂しさを取り払う、夕陽の温もりのような歌だと思っている。

 

なにわ男子「I Wish

作詞・作曲:youth caseさん

編曲:youth caseさん、ha-jさん

曲名の表記の“W”が大文字になっているところが好きで、絶対に叶えるという気概を感じる。

 

聞こえてるよ ふいに声が頬を撫でる

あの日の風のように

イントロでキラキラした気分から、ドッドッと刻まれるドラムのキック音が、心臓の向こうからうるさく叩くノックの音に聴こえた。

“聞こえてるよ”の言葉に、こんなに安心するのはなぜだろう。

“わかってるよ”の長尾謙杜さんの歌声に、“信じてるよ”の大西流星さんの歌声にブランケットのごとく温もりを感じる。

 

“君が君らしくあるように”からサビへと進んでいくパートで、長尾謙杜さんと高橋恭平さんと大橋和也さんの歌声がユニゾンで、“いつまでも”から大橋さんが低音でハモって聴こえるところがある。

声が溶け合ったり、グラデーションになったり。化学反応が美しくて、ワクワクする。

そしてその後ろで踊る西畑さんが、いえーい!な感じで腕を上げて、弾けてアイドルしている様子が可愛い。

 

サビにもすごく好きな言葉がある。

Baby oh my darling

よく聞く言葉だとしても、ここでなにわ男子の声で聴くと満ちた愛という感じがして、

お手紙に書く尊敬と愛を込めて記すDear.のように、“Darling”から愛しているんだよと言われる以上の思いの深さと温かさを受け取る。

 

「I Wish」がラブソングでありつつ、直感的に応援ソングにも聴こえる理由を解明したくなって、自分なりに掘り下げていった。

歌詞に応援や感謝の気持ちを重ねられることは勿論のこと、サビのリズムがZARD「負けないで」の“負けないで もう少し”で、とことん耳馴染んできた、応援リズムがここでも自然と刻まれてるからではないだろうかと行き着いた。

そこに伸びやかでいきいきメロディーを動かすバイオリン、ビオラなどの弦楽器の音色が重なっていく。

人の心が弾むリズムやメロディー進行は存在していて、様々な曲に共通項としてあるのだなあと考えると、方程式みたいで楽しい。

曲の似ている部分を探して一緒だと指摘したい訳ではなくて、共通項を見つけることで音楽の歴史や繋がりを感じると嬉しくなる。

 

「I Wish」のダンスは好きなところばかりで、“君がいれば”での肩振りは一目見て好きになった。

YouTubeのなにわ男子チャンネルで披露した時の、肩振りと止めの動きの揃いっぷりと勢いが素晴らしかった。

そこからくるっとターンして屈み気味になって、腕は八の字でストップ。これをかっこよく魅せる。

道枝さんがしっかりめに膝を曲げるのは、全体の高さが揃う方が、ここではなにわ男子として全体の格好がつくと分析したのかなと思った。

 

道枝さんと大西さんで並んで歌い始めているところに、

意気揚々と先陣を切って歩いてくる藤原さんの僕のターン!感と、それをわらわら止めるメンバーの様子がいい。

 

“訪れたね”で西畑大吾さんが藤原丈一郎さんを背中で支えるようなギュギュッと感から、フォーメーションが開けていって、

左から道枝さん、藤原さん、西畑さん、大西さんと前後の奥行きで並ぶ。

ここで右前に立つ、大西さんのダンスの魅せ方に目が行く。

そこから腕を伸びやかに動かすダンスも、見ているこちらを自然と導く視線の誘導になっていて美しい。

 

最初のサビでは西畑さんと大西さんが前方にシンメトリーで、奥中央に道枝さんの立ち位置。

大サビへ来て、藤原さんが直前まで魅せてからのここがサビです!とばかりに、ジャンッとVフォーメーションでセンターに飛び出してくる道枝さんにテンションが上がる。

2回目のサビで道枝さんという、ある意味の焦らしも素晴らしい構成だと感じている。

終始センターで存在感を放つというより、センターにいながら後方に下がっていったり、

それでいて道枝さんだけがする振り付けが入っていたりと、抑揚の効いた観せ方になることで、メンバーそれぞれが光る曲になっている。

曲全体としてフォーメーション移動もめくるめくスピードで変わっていって、音に合わせた足踏みで移動するところもあれば、ワンステップで移動なところもあったりする。

その変幻自在っぷりが見ていて楽しい。

 

振り付けの繊細さは、まだまだ随所にある。

“ありますように”の細やかな音取り。腕の角度と握り拳、首の角度。

正解が分からなさそうな角度の振り付けを見ると、この魅せ方を掴むのに試行錯誤があったのではと想像する。

“願っている”で、胸元を押さえる大橋和也さんの動きも好きだ。

 

CDTVライブライブの曲紹介で、道枝さんが「流動的なダンスで」と話していた意図を汲みつつ、頭に置いて見ていたら、

力点と作用点で、触れた所から次の振りに続いていたりと、ダンスが流れるように繋がっていることに気づいて、目から鱗だった。

メンバーが触れたところから次の動きが生まれて、弾けたり、ウェーブしたり、並んだりする。

主題歌になっているドラマ「マイ・セカンド・アオハル」で、道枝駿佑さんの演じる拓と広瀬アリスさんの演じる佐弥子の影響し合う関係性みたいだと思った。

 

CDTVライブライブ ver. は、道枝駿佑さんからキラキラだけでなくハートがどんどこ飛んできた。

ちゃんと丸みのあるトップに、先端は尖った王道ハート。

エフェクト?と思うくらいに、ハートが飛んでくるかのようなパフォーマンスだった。

 

道枝さんが中心に立った時の、大橋さんの膝で滑りつつの前移動が華麗で、うおおと思いながら見た。

縦並び少しずらしでのチクタクダンスも、いい具合の間隔で揃っていて、その時ごとに磨かれていくものがあると感じた。

 

“その笑顔が”がサビでありながら裏声で優しく歌われて、どんどん胸が高鳴るように曲が盛り上がっていくなか、

“ありのままで(君のままで)”と歌声が連なっていく最中に、道枝さんが人の多い街並みを駆け抜けるようにメンバーの間を駆けて踊って、その先で“その全てを抱きしめるよ”と歌う構成、そして歌声がとびっきり好きだ。

 

藤原さんが歌う、

もしもを重ねながら ここに来たね

何を思っての“もしも”なのだろうと考えていて、何度目になるか聴いた時にふと、もしもあの時に(ああしていなければ)(こうできたら)と考える、選ばなかった方の“もしも”のことなのかなと想像した。

選ばなかった方があるから、(こうしてきたから)と選んできた方を肯定して実感できる。

この詞を藤原さんが歌うことにまた、輝きを見てしまう。


その後に続く大橋さんの、

変わりたいと誓った日から 物語はまた始まる

の歌詞が、そのもしもを踏まえると尚更に胸に響いてくる。

 

「I Wish」は、まぶしいのに直視できる暖かさを感じる。

光に当てられるというより、包まれる。

これからいろんな日々と一緒に聴いていきたい歌が増えて嬉しい。