ヒリヒリと忍び寄る切迫感。
暗雲が立ち込めた先で、開けて行くサビの歌声に、煙に巻くニセモノから真実を掴み出す感覚が込み上げてくる。
2枚目のシングル曲は、両A面「The Answer」「サチアレ」
今回は、なにわ男子のシリアスな一面を垣間見るについて。
なにわ男子「The Answer」
作詞・作曲:草川瞬さん / 坂室賢一さん / 佐原康太さん
編曲:佐原康太さん
ストリングスアレンジ:立山秋航さん
歌詞には、ミステリーを追いかける心境と同時に、“ミステリーラブ”というワードが出てくる。
なぜミステリーとラブが同居するのだろうという疑問は、一代目金田一の主題歌から解けていった。
堂本剛さんが“一ちゃん”を演じた、「金田一少年の事件簿」第2シリーズの主題歌になったのは、KinKi Kids「Kissからはじまるミステリー」
恋はミステリー 人は胸に
悲しい謎をかくして生きている
このフレーズを聴いた時に、ここから始まっているからだと繋がった。
一代目金田一から、五代目金田一として道枝駿佑さんが演じるの今回の主題歌は「The Answer」
“ミステリーラブ”が歌詞にくる意味も深まっていくと感じた。
バリバリ踊るダンス曲と言われるジャンルの楽しみ方を迷う時がある。
けれど「The Answer」を聴いて、嵐「Monster」から感じていたような、抱える孤独の中の希望。やるせなさに絶望しながら、それでも伸ばす手の切実さ。
底に辿り着いた時の、鋭い眼差しに駆り立てられるこの感覚はわかる気がした。
1枚目のデビューシングル「初心LOVE」から表情をガラリと変えて、衣装もブラックに。
プリンプリンの子として見つける唯一の手がかりは、蝶ネクタイからわずかに思い出される可愛さと言えるくらい、大橋和也さんの鋭い眼差しが見られるパフォーマンスに痺れた。
ピシッと止まる動き、ふわりと腕をしならせる動き、ダンスを魅せきる姿がかっこいい。
西畑大吾さんが大西流星さんと手を差し伸べ合う一瞬に、永遠の企みを感じる。
“ナゾメイテ”でカメラに抜かれる大西流星さんは、最後の1音の『テ』でクッと片側の口角を上げて頬にしわを寄せる。
笑みというより、ダークな顔つき。
大西流星さんの雰囲気・表情・立ち回りのハンドル捌きが、F1レーサーだろうかと思うくらいのフル回転で、遠心力で振り飛ばされそうだった。
すっと見据えることに、もう物語がある道枝駿佑さん。
真顔が真顔どころの風格ではない高橋恭平さんが、この曲調に染まった時の儚さ。
解釈が確立されている長尾謙杜さんの表情を見ていると、曲の世界観が深まっていく感覚がして、興味深く楽しい。
にこにこ顔がトレードマークになりそうなほどのなにわ男子が、スッ…と表情から温度を消す。その引力は凄い。
藤原丈一郎さんがセンターにバンッと立ってからの振り付けが好きだ。
ひっと息を飲んで、藤原丈一郎さんの圧に後ずさりする。
道枝駿佑さんが衣装にマントを背負っていると気づいた時、ファントムじゃないですか…と思った。
「The Answer」MVを見てさらに、やはりファントム…歌わせるのではなく自ら歌い光を掴もうとするファントムだ…と引きつけられた。
ダンスパートの足元に張り巡らされた白黒のタイルが、チェスの盤のように見えた。追い詰められ、追い詰めて、チェックメイトを取るのはどちらか。
本棚に並ぶ沢山の本に、ひとつの真実を見つける意思が表れているのではと考えながら見た。
願う君と繋いでく 物語の先へ
“繋いでく”の歌詞で、下げた腕の先で、手を握る振り付けがある。
様々な“繋ぐ”があるなかで、振り付けとして手を握る表現をしているところが魅力だと感じた。
1人で頭の中で考えて解くミステリーではなく、“君”と繋ぐ手に温もりがある。
道枝駿佑さんをセンターにサビの序盤で、右の藤原丈一郎さん、左の大橋和也さんがバックステップで後方へと下がる動線の美しさ。
サビ後半では、下がる道枝さん大橋さん藤原さんと反対に、前方に出てくるのは右に長尾謙杜さん、左に高橋恭平さん。
後ろを見ずに下がる方も、寸分違わず前に出る必要のある方にもプレッシャーがあるはずで、ぶつからずにフォーメーション移動ができているのは当たり前ではないなと、リハーサルの積み重ねに感動した。
さらにラストで、時計の針の音が足早に刻まれるなか、決めポーズのわずかな秒数で前に出てくる道枝駿佑さんと、大西流星さんのスライディングが素晴らしい。
大西流星さんは、そこからそこに移動?!という驚きと、脚の曲げ具合が美しいこと。ぐらつかない手元足元がすごい。息が上がっていないように見えるところも。
藤原丈一郎さんの後ろから、被る可能性を加味して少し覗き込むポーズを取る長尾謙杜さんも画角把握のプロだと思った。
デビュー前に歌っていた「2 Faced」の印象から、
シリアスなパフォーマンスのスイッチを握っていることを知っているつもりだったけれど、これまでとも雰囲気の違う、
どうしてか胸に込み上げて泣きそうになる切なく切実なメロディーラインと、止めハネの際立つダンスが新感覚だった。
二度とは戻れないけれど 変えられる明日がある
失う望みの淵に、まだ見る光を握りしめる。
道枝駿佑さんが金田一一となって見つめる謎と、なにわ男子が歌う「The Answer」が共に走って追いかける世界を噛み締めたい。