2021.07.28
なにわの日、なにわ男子のCDデビュー発表。
12:00開演の昼公演。YouTubeで毎公演ごとに生配信されているコーナーの中で、この日はいつもと様子が違った。
『誰が宣伝うまくできるでSHOW』と題して、アドリブでメンバーごとに宣伝をしましょうというお題のもと用意された、7枚の紙。
3.2.1の合図の後、開いてくださいという指令で、これまでと違うゲームのルールに、いつもならつつがない進行もたどたどしくなる藤原丈一郎さん。
期間限定のポップアップショップ「なにわのにわ」の宣伝と、7月29日25時から放送のなにわ男子のオールナイトニッポン、ABC夏の高校野球応援歌と熱闘甲子園のテーマ曲に決まった「夢わたし」
24時間テレビでのドラマに道枝駿佑さんの出演、メンバーそれぞれのCM紹介、
更にひとつひとつ積み重ねてきた、「まだ、アプデしてないの?」や「めざましテレビ」「キャスト」などのレギュラー番組出演情報について書かれていて、あらためて多くの経験をしてきていることを感じる。
次に「高橋恭平さんセンターへお願いします」と指示されて、高橋恭平さんが紙を1人で受け取る。
開くと、『私は、高橋恭平は常々、一生懸命踊っているつもりなのに手抜きダンスと言われてしまいます。今日を機に、これからは精一杯本気で歌って踊って、日本一のアイドルになることを誓います!』となぜかカンペに言わされる高橋恭平さん。なにこれ?と戸惑いつつ、藤原丈一郎さんの振りによって、反復横跳びダンスをしながら自己PRをした。
なにわ男子のプロデュースに関わっている、関ジャニ∞ 大倉忠義さんの仕業のような気しかしない。
そして踊り終えた高橋恭平さんのポーズを見つつ小さく「スーを差し上げますってな」と言っている大橋和也さんは和やかさの極み。
なにこれ?がメンバー全員に広がるなか、長尾謙杜さんが受け取った紙。
そこには『なにわ男子 公式インスタグラム開設決定』
読んだ後にすぐ「じゃあアドリブでいきますね」と喋り始められる長尾謙杜さんのポテンシャルがすごい。「全然準備できてないねんけどー」と言いながらポージングばっちりな大西流星さんも流石。
さらに道枝駿佑さんに手渡された紙。
開いて見ると、『なにわ男子 単独YouTubeチャンネル開設決定』の文字。
なにこれなにこれ!とひたすら広がる動揺。
緊張の高まりを表すように、最年長である藤原丈一郎さんの顔に余裕が無くなっていく。それはそう。だって大事な事が言われていない。
気持ちを整える隙なく3.2.1のカウントダウン。ぐっと静まり返り息を止めた。目を見開くものの、ぽかんとしている2人。紙は白紙。
間を埋めようと、自己PRを始める2人。「野球が好きです!」「いっせーのーで、土!」
ここへきて、暗転。
えっなに?はわかるけど「誕生日?」って聞く大橋和也さんが最高にジーニアス。
『最後まで絶対に声は出さずにご覧ください‼︎』の白い文字がスクリーンに映る。
心拍音が響く中、西畑大吾さんの「心電図?」に反応して「心電図やなあ、誰かの?」ってまたも挟み込む大橋和也さん。あなたは天才ですか。
ハリウッドスペクタクル映画でも始まるのかという物々しい音に、息を潜めて見つめるメンバーの顔。YouTubeの生配信では、ひたすらメンバーの顔のみが映されていて、でもその表情でなにを見たのかはすぐに理解できた。
『なにわ男子』
『2021年11月12日』
『CDデビュー決定!』
堰を切ったように泣き出すメンバーの姿は何の繕いもない等身大で、その言葉を見るまでは信じてはいけない何かがあったかのように伝わる安堵が胸に迫った。
掴んだ。というようにガッツポーズを掲げた藤原丈一郎さんの表情。
崩れ落ちるほど泣いた高橋恭平さんの姿に、一定のテンションでニュートラルでいるようにも見える彼の、想いの人である心の真を見た気がした。
デビューは11月12日、金曜日。
ジェイストームからのCDデビューであること、そして8月27日からのファンクラブの発足が伝えられた。
発表のためサプライズを重ねられたところにも、驚かせたいという愛情を感じた。
意識せざるを得ない状況で、どうやってサプライズにするか。変化球に変化球を重ねて、練ったのだろうなあと伝わる。自分の範囲で出来た想像では、このコーナーです!と振らせておいての突然スクリーンに文字がドーンくらいのものだった。
前日の公演でのコーナーで、“ひらがな一文字の入ったクジを引いて胸キュンセリフ”を言う企画があって、考える隙なく3.2.1のカメラ目線で一言という演出も、今思えば前振りになっていたなと気付かされる。
紙を開くのは藤原丈一郎さんをラストにすることもできたところを、大橋和也さんと藤原丈一郎さんをラストにして、白紙にしたのが良い。あの紙に書いてあるんだと思わせての。誰かが先に見るでもなく、メンバー揃ってスクリーンに文字が映った瞬間に悟るのがすごく良かった。
発表の映像は1週間、YouTubeのジャニーズJr.チャンネルで見ることができる。
素直に言って、7月28日にライブ開催決定をした日から、その時が今年であるならこの日しかないと思う空気が確実にあった。それでも、スクリーンを見つめて期待が顔に出てもいいはずのところで、まだ信じることはできないと身構えるようなメンバー。
怯えるように構えた表情を見せた西畑大吾さんが忘れられない。
もう期待しないと、できないと思ったことが何度あっただろう。
Jr.内で組まれたユニットは変動的で、昨日まで隣にいたあの子と何の説明もなく離れ離れになったり、このグループでいける。いきたい。と本人もファンも思っていたとしても、成す術なく解けてしまうことがある。
グループへの思いが、強く確かなものになればなるほど、きっと怖さも募っていったはずで、大切なものを失いたくないと怯えながら。それでも。強く吹く風の中を、身を寄せあって誰ひとり離れないように歩みを進めているように見えた。
ここ1年は特にその緊張を感じていて、わからないけれど、もし2020年の両国国技館の時点でも可能性があったのだとしたら、もしメンバー自身も寄せていた期待があったとしたら。そこからの1年は本当に長く、過酷で途方もない道だったと思う。もうあとわずかかと思われた場所が、確証のない先に伸びた時。それでも増えていく仕事と、デビューはしてなかったっけ?と不思議に感じるほどのドラマや歌番組への出演。
しかしライブは行えず、2019年に行われた年明けのあけおめコンサート以来、なにわ男子としてのライブをお客さんの前で行うことはできなかった。
夏は関西ジャニーズが一丸となって配信ライブを開催し、そこで無観客の形でステージに立つことはできた。ところがようやく漕ぎつけた、両国国技館の公演の振替公演としての横浜アリーナでのライブは、中止になってしまった。
ライブ予定が決まるたび、「ライブ決定しましたー!!」「やったー!!」とジャニーズJr.チャンネルでお知らせの動画ではしゃぐなにわ男子を見ていて、あんなに喜んでいた彼らがまた肩を落としてしまうのかと胸が苦しくなった。
心折れてしまうのではと、心配になるほどだった。ここまでの1年間を、期待を見失わず、メンバーひとりひとりが向かう仕事に力を尽くして、グループとしての意識も統一して進むというのは、モチベーションを保つのにも困難な日々であったと想像する。
大阪と東京を行ったり来たりのハードワークで、一体どれほどの回数を往復したのだろう。
今の知名度の高まりはもちろん、去年の時点でもその勢いはすごいものだった。
だからこそ、タイミングを逃すことの恐怖を誰よりもメンバー自身が感じていたのではと思う。不可抗力な状況によって、決まりかけたものが無くなることだけはどうかないようにと、待つしかないこちらはひたすら願っていた。
そしてどうか、このメンバーが誰ひとりはぐれることなく「なにわ男子」としてデビュー出来るようにと願っていた。
なにわ男子で最年長、現在25歳の藤原丈一郎さんは、2004年2月21日にジャニーズJr.になり、当時8歳で小学2年生。
17年間と9ヶ月。Jr.として続けてきたことになる。
おこがましいのを承知で、自分だったらと考えると、それほどに手放さず続けていける自信がない。たとえ6年でも何かひとつを続けてきてみて感じるのは、好きなことを継続して維持することが、こんなに迷ってわからなくなって、一体この先に何がと途方に暮れることなんだということだった。
自分の時間だけ止まったように思えて、積み重ねているはずが手応えもなく。ハッとした瞬間に何も無いのではと呆然とすることもある。
それ以上の葛藤が藤原丈一郎さんにあったと思うと、ここ。と決めた場所にまず辿り着いたことに。折れない、を貫いた意思に。手が痛くなるほどの拍手を贈りたい。
そして、その文字を目にするまで、抑えていた期待やこれからへの展望がきっとあって。
ライブそのものが先に先に伸びて、なにわ男子として形を保つことに必死でいたメンバーひとりひとりにおめでとうを贈りたい。
7月28日、夜公演でのメンバーの挨拶で、デビューのことを“チケットを手にした”と言い表していたのが印象的で、ここからという気持ちの伝わる言葉だった。
デビューを“関門”と言い表したのも記憶に残る。ここからだからこそ、ここまで来るのは壮絶な道だった。
これがほしい!と大きな声で言うのはとても恐いことだ。
何かに本気になることは、本気で傷つことと同意義だから、すごく恐い。
それでも彼らが、望む今として選ぶ道がデビューであり「なにわ男子」という形であること。その望みが実現したことに、おめでとう。
本当に本当におめでとう。