今を現在地にする私たちは、なにわ男子が「初心LOVE」でCDデビューすること。
MVがピンクカラーでとてつもなく可愛いこと。
ファンクラブ受付開始から、一向に繋がらないほどアクセス集中したこと。11月12日のCDデビュー日は快晴で、まさかの飛行機で関空から羽田へと降り立ったこと。
翌朝の朝刊は一面、ピンク輝く衣装で飛行機を背に笑顔の写真。一式買ったら、トートバッグが新聞配達の少年みたいになったこと。
それを知っている。
今やインスタグラムを素敵活用して、YouTubeチャンネルではドライブにバーベキューに楽しんでいる様子を見せてくれていることも知っている。
なにわ男子にとって、関西ジャニーズJr.としてステージに立ったライブツアー
「なにわ男子 First Arena Tour 2021 #なにわ男子しか勝たん」
DVD&Blu-rayが、2022年2月23日に発売された。
映像として収録されているのは、ライブの最中にCDデビューが発表された、
2021年7月28日、横浜アリーナの昼公演。
そうだよねと思った気持ち半分と、そうなのかと思った気持ちが半分あった。
あの日のステージはもちろん観たい。どんな空気で、前半と後半にどんな変化が起きていたのか知りたい。
ただあまり強くエモーショナルさを全面に出してあると、ふとした時に再生したいライブDVDというよりは、意を決して正座で再生するライブDVDに自分の中でなってしまいそうで、どうなるだろうーと思っていた。
この日であったことを抜きにしても、また観たい!と思うステージだったから、ライブとして楽しめる映像だといいなと思った。
発売日を前に、その心配はいらないかもしれないと、CMの作り方から感じるようになった。
様々な媒体で流れるCMは、シャボン玉の景色と浴衣姿に、楽しい!が弾けている道枝駿佑さんがぶんっと腕を広げる様子から始まって、なにわ男子のライブの楽しさに興味を引く構成になっていた。
発売日が近づいてようやく、発表の瞬間の映像がCMとして流れるようになり、それも過度には煽らずにスッと終わる、シンプルな構成だった。
迎えた発売日。
受け取ったBlu-rayを持ち帰り、見ながら食べられるように、夕飯後のデザートはわらび餅と緑茶を用意した。
再生するのが、想像以上に緊張した。何が起きるかわかっているのに、わかっているから?ドキドキする。
形それぞれの宝石がスクリーンを走る、心弾んだオープニング。ステージのダイヤモンド。
幕開いたステージに、あの日々の空気ごと、ぶわっと風が吹きつけて来るようだった。予感と、期待と。だけどもし…と心細くなる感覚が振り子のように繰り返し。
今できる全力を。今も今しかないのだから。
例えるならそんなふうに、先を急いで見つめたりはせずに、いつがラストになるかわからない関西ジャニーズJr.を目一杯、大切に歩いているなにわ男子のステージがそこにあった。
どの曲に対しても、現在から見たら噛み締めてしまう意味のようなものがある。
「オモイダマ」「夏疾風」そして「夢わたし」は特にそうだった。
さらに感動したのは、発表後のなにわ男子が見つめる先に登場した、Lil かんさいの姿。
「Tell me! Tell me!」で弾ける情熱が、言葉よりすべてを表していた。
“努力はいとわずに 手に入れるまで”
あの空気は、あのステージでしか映せなかったとわかる。
「Big Shot!!」の熱はダイレクトに胸に来る。
スクリーンに映る赤背景に白文字と、その前で半身前にして前傾体勢で足を踏み込む格好良さ。
泣いた瞳のまま、前髪も無造作になっている高橋恭平さん。横に立った大橋和也さんが、高橋恭平さんの様子を見て、にこっと笑う。へへ…とほぐれるように笑った高橋恭平さんの表情。二人の一瞬のやり取りが本当に素敵だった。
「夢わたし」の野球ユニフォーム衣装も似合いそうな気がしたけど、「シンデレラガール」にぴったりなパールとツイードの衣装に着替えた後での歌唱にしたことの興味深さを改めて感じている。
上品さのあるツイードが、ガシガシ踊るダンスでは表情を変える。
特に、つなぎ衣装の大西流星さんのシルエットがとてもよかった。
「Joy!!」に思いがけず涙がダアーとなり、フー!に合わせて双子のようにジャンプする大西流星さんと長尾謙杜さんに、チップアンドデールじゃないのと思った。
「君だけに」を西畑大吾さんが選曲したこと。藤原丈一郎さんが自らのポジションである東山紀之さんのダンスをよく見て、ポケットへ手を少し入れる仕草を取り入れたこと。後から知ってまた見ることで、視点が増えて楽しい。
大橋和也さんが担当する、歌唱の後ろで踊るという難易度の高そうな形も魅せきっているところや、やまびこのように追いかけていく“君だけに”が美しいバランスで重なっているところ。パッと音に合わせて差し出す手、静止の綺麗さにも見入った。
「欲望のレイン」大人だと思っていたけど、こんなに大人だったっけ…と思うほどの空気感。泣いたあとの脱力感が、道枝駿佑さんと高橋恭平さんの肩の力をほぐしたのかもしれない。
そしてステージで、Lilかんさいがあんなにもしっとり踊っていたなんて。
當間琉巧さんが一瞬のカメラチャンスをしっかりものにしていたのが凄かった。もう一度見なければ。
「Joy!!」と「RUN」が心臓にぐんときた。
映像としてあらためて見たことで、「なにわLucky Boy!」からの「ダイヤモンドスマイル」は満を持しての曲順だったと、新しく思うことができた。
「アホ新世界」の“笑い方 教えたんで”は矢文のように胸に届く。
大橋和也さんがあいうえお作文の「ハート」担当になった時の、「うーん!ハート!(頭に大きくハートマーク)」からの『ちゃうってちゃうって』とジェスチャーしたのを見て、
ここ最近、私は難しい顔ばかりしていたのに、気づいたらぷふっと笑っていた。
Amazonプライムのドキュメンタリー「なにわ男子デビューまで1100のキセキ natural」で見ていたツアーの裏側や、
テレビ番組「RIDE ON TIME」で、パズルのピースをひとつひとつ受け取るように繋げていた時間を持ち寄って見ることで、
本編ラストに歌った「Time View〜果てなく続く道〜」への印象も、層になって厚くなっていた。
道枝駿佑さんが作詞に込めた願い。歌詞をしっかりと受け取って、噛み締めていた藤原丈一郎さんの気持ち。“横を見れば 君がいるから”と歌う前に大橋和也さんがどんな気持ちでいたか。
「natural」で映った表情が記憶にあるから、ライブ映像の中で奥に微かに見える横顔と、スクリーンに映る大橋和也さんの表情の意味に思いを寄せることができた。
映像にするにあたって、あの日の喜びを装飾するような演出は加えなかった。それがよかった。
起きたことをそのまま、彼らの表情をつぶさに映し、ステージの楽しさ、魅力を収めたライブ映像。そこに、大切な7月28日の記憶もある。
ライブの終盤。心境をおずおずと紡いで言葉に変えたメンバーの最後の挨拶を聞いていて、これは自分で送る未来の自分への手紙になるんだと思った。
自分に語りかける、デビューを知った自分の言葉。
あの時すでに忙しかった毎日は、加速して忙しくなって、今振り返るだけでも2021年7月28日から長い距離を歩いてきているように思う。
この先に何が…?と不安も抱えたはずの前途を、なにわ男子は確かに手を取り合い進んでいて、今だから見える“あの時”がある。
経験も、戸惑いも、ひっくるめて歩いてきた何万歩と言える毎日。マップに記されている歩みは、現在地からはどんなふうに見えているだろう。
ライブDVDとBlu-rayになったこの作品は、ずっと残って、いつでも出会える。
何年か先でまた、メンバー自身が見た時。大切な旗の立つ場所になっているのかもしれない。