いちごを一粒ソーダに落として - なにわ男子「初心LOVE」

 

ドライブの先でガス欠になりそう。

そんなときに立ち寄った、

728 ENERGY STAYCATION

そこでお客さんを待っていたのは、なにわ男子。

 

 

なにわ男子「初心LOVE」(うぶらぶ)

作詞:栗原暁さん(Jazzin’park)
作曲:久保田真悟さん(Jazzin’park) / 栗原暁さん(Jazzin’park)
編曲:久保田真悟さん(Jazzin’park)

MV監督:酒井麻衣さん

 

MVの視点は、なにわ男子に迎えられるお客さん。

三者の視点のカット割りで作ることを選ばずに、ほのかにストーリーを持つMVを選択したこと、そうなんだ!という感覚だった。

ストーリーがありつつ、想像で広げていける自由な部分の多さが魅力に感じる。

 

ちりばめられたブルーとピンクのコントラスト。

ふわふわ舞うシャボン玉。

チャランと鳴る音にぴったりのタイミングで映る、大西流星さんの引力。ぐっと握りしめた手元に、カメラが斜めから寄っていくところがすごく良い。

本音を知りたいのは僕も同じです”の語感がぴたっとくる聴き心地の良さにも感動する。

大西流星さんの落ち着いた歌声が柱のようにスッと安定感を作る。後ろ手にステップを踏むダンスもリズミカルで楽しい。

 

久々のお客さんにテンションが上がる、なにわ男子たち。

いらっしゃいませ!の気持ちが前面に出るあまり、給油位置より先に「ストップ!」をする慣れてなさが可愛い。

どうぞーと車を案内するのに7人総動員。可愛い。

車内からの視界は多分、近づいた途端、ピンクの制服を着た従業員さんたちに取り囲まれる世界。

 

メンバー揃って一目惚れ…!のカットで、下唇を噛む仕草を選んだ藤原丈一郎さんのズルさ。

恋した…!を表す時に選んだ表情…!と思って見るとぐっとくる。

一目惚れ!のカットなのに、藤原丈一郎さんの腕にガシッと掴まる大橋和也さんも、ひゃーっとなる。

マドンナに首ったけなシチュエーションは、関ジャニ∞の「イッツマイソウル」や「wonderful world」で馴染んでいるからこそ、なにわ男子にもこのシチュエーションがやってきた…!とテンションが上がった。

暇そうにしている様子から始まり、そうは言っても大橋和也さんと藤原丈一郎は車を拭き拭きしている作業分担がまたいい。

 

 

もっとあんな恋がしたくて こんなはずじゃなくて

 

前位置でしゃがむ大橋和也さんに藤原丈一郎さん。

両サイドから右に長尾謙杜さん、左に高橋恭平さん。中央寄りで右に道枝駿佑さん、左に大西流星さん。センターに西畑大吾さん。

物語、はじまりました。と旗を掲げたいほど、まばゆく優しいオープニング。

 

道枝駿佑さんのアップになるカットから、ひとりひとりの表情に目が釘付け。

どの瞬間だって目を離したくないと思わせる、すべてのカットがフルパワーの輝き。

 

心がざわめく はじまりの予感!?

ドラムのキック音が、心拍数みたいにドッドッ…と胸を叩いて、抑えが効かないドキドキがこっちにまで移る。

 

初心だね”の時に、頬に両手を添えてちょこんと顔を傾ける動作も、メンバーごとに個性がでているのがいい。

くっついて離れて”の振り付けは、離れていく名残惜しさが指先に表れている西畑大吾さんを見て、この歌詞の切なさの要素がさらに感じられた。

そして、“恋は暇じゃないさ”の“恋は”で、親指を立ててグーサインにして、胸の前に大きくハートを描く振り付けはたまらなく愛くるしい。

手元だけで描かずに、胸筋から足先まで全身使って、ふわあっと胸膨らむドキドキを表しているのが素敵だった。

 

MVの映像としての綺麗さに、何度でも感動する。

コントラストが青とピンクで効いているのに、目がちかちかしない。メンバーが揃ってピンクの衣装を着ていても、画面上で色被りしないのもすごい。

 

さらに、MVのストーリーの合間で一瞬映る、わちゃわちゃカットの大切さを噛み締める。

YouTubeのショート版では「1:53」のタイミング)

顔のアップやストーリーを追うなかで、視点の休憩ポイントになる。

一呼吸置ける映像としての役割りもあり、ここのカットがあることで、心地良い余白が生まれていてすごく好きだと思った。

スパナを持ちつつ、虫眼鏡みたいにしてる藤原丈一郎さんが特に好き。

 


モップに手をかけながら、おいでおいでする高橋恭平さん。“タイムライン”のおでこに当てた手と、指差し振り付けのかっこよさ。

つなぎ衣装と、仕草を含めて似合いすぎている。

ジュースをすすめる大西流星さんと、プリンをすすめる大橋和也さん。並んで張り合う二人が可愛い。
プリンなんで食べたん?って顔の大橋和也さんの愛らしさに頭を抱える。

好きなポイントでもう一つ、自分の歌うパートが終わって、すっと背を向けて“ああしよう こうしよう”で振り付けに合流する長尾謙杜さんの動き。とてもいい。

歌詞としても、“ああしよう こうしよう”は、抽象的な言葉で紡がれる歌詞が印象的で、ぼんやりする輪郭が初心さを表していると感じた。

 

預かっている車なのに煙が出てきて、てんやわんやのなにわ男子。どうしてか舞う紙吹雪。

なんとかしよう!の末の行動が、せーので「ふうー」なのが。かっわいいなもう。

意識的だったとしても可愛いものは可愛い。

メイキングを見たところ、きっちり決まった動きの指示があるというよりは、即興演技のようにアドリブで発生するメンバーの動きにメンバーがのっかる展開の仕方がとてもスムーズで、積み重ねてきた3年間から生まれる空気がMVにも映るんだなあ…と思った。

故障車を表すために、スタッフさんが寝転がった状態で、パタパタ動かしている車のドア。タイミングを見計らって、乗り込むアドリブをした西畑大吾さんのアイデアがすごい。

ひとりで映るリップシンクのカットも、表情作りに迷いがなくて、カメラを前にどの瞬間もピッカピカ。発光。

そのリップシンクの時間も、長すぎず短すぎずのベストな間合いで、間延びしないのがすごい。

 

 

明るい昼間のカットだけにしても撮れ高たっぷりそうなところを、わーっとどさくさ紛れに目隠しみたいにカメラを覆う大橋和也さんをきっかけに、アンニュイな表情へと移り変わるなにわ男子。

修学旅行とかで稀にあった、お風呂上がりの濡れた髪が可愛く見えたりかっこよく見えたりする現象のように、髪先がほんのり濡れたメンバーの表情にくっきりとギャップを感じる。

わー!っと賑やかだったのが、すっと真顔になった瞬間の息を飲む空気。

目を合わせて、一度目線を落としてまた合わせる長尾謙杜さんの表情プランはすごい。ストーリー構成が長尾謙杜さんの中で出来ている。

二度目の目線が、今度はもっと本気。が空気として伝わってくる表現力がすごい。

 

こうしよう 二人は

めげない ロミジュリ


ロミジュリ”という単語が歌詞にあるスペシャル感も魅力。

初心な気持ちに翻弄されながら、“こうしよう”と提案できるまでになった決心に、聴きながらキュンとくる。

「初心LOVE」は、ドラマ「消えた初恋」でW主題歌になっている。主演を務めるのはSnowMan目黒蓮さんとなにわ男子の道枝駿佑さん。

道枝駿佑さんは、2020年に舞台「ロミオとジュリエット」でロミオを演じた。

その頃にファンの間で飛び交っていた“ロミジュリ”という略称。そう略すんだ…!と目から鱗で、インパクトがあった。

今時感のあるワードがいくつも入っている歌詞の中で、“ロミジュリ”は、シェイクスピアが重なる歴史を越えて今の時代にも届いたことを表すように、

歴史あるものの魅力を汲みながら現代へとアップデートしていく、なにわ男子のスタンスに合ったワードなのかもしれない。

 

 

様々なパートに上ハモで入っている大橋和也さん。

“ああしよう こうしよう”は、おそらく藤原丈一郎さんが下ハモ。大橋和也さんが上ハモを歌っていて、こうしてメンバーごとのハーモニーを聴き込めるようになったのは音源化されたからこそだな…と実感して嬉しかった。

“ハートの”と歌う大橋さんの声も、“はあーと”の上っていき方が、ふわっと舞い上がる恋心にリンクしていくようで、すごく好きなところ。

さらに藤原丈一郎さんの歌声がとろ甘ボイスで、この声がCDになったのか…溶けてしまうなと何度でも思う。


道枝駿佑さんの台詞パートで、真剣に力を注ぐレコーディングのメイキングをニュースで見ていたから、「えっ、今もだよ」が「ねぇ、今もだよ」になったことや、

提案に応えてニュアンスを変えてみるなかで、「ねぇ、今もだよ」のOKテイクはこれに決まったのねと楽しさも増した。

切なさと甘えた感じがキュンとくる声色。

 

 

2番に入ってからの、

ジェットコースターみたいで 息ができなくて

と歌うフレーズ。

息ができなくて”に、切実さが目一杯表れていて、1番の“くっついて離れて”から、さらに高まった思いが伝わってくる。

そして1番で“恋は暇じゃないさ”と歌った箇所が、2番で“恋に暇はないさ”と変わる。

一文字の変化だけど、入り口で見ていた恋が、真っ只中にいる視点に変わったと感じられる。

はじめはドッドッと落ち着きのなかった心拍数のようなドラム音も、2番に入ると、1拍空けてすこし恋のペースを掴んできた雰囲気になる。

 

勢いこのまま畳みかけるか?!と思ったところで、“何から伝えて…”と曲の空気感ごとガラッと変わるのが楽しい。

SMAPの歌に感じてきたファンキーさが、ここのメロディーにひとつある気がした。

曲間にある“Lalalalattta Lalalalattta”の音感も、繰り返すことで耳馴染みよく、しかも曲の中で良い余白を生んで、聴き手を忙しくさせない。

聴き手へのエスコートが、ホテルのコンシェルジュ並みにスマート。

さらにしっとり落ち着いてからの「ねぇ、今もだよ」で弾けるメロディーで、やっぱり後味に残るのは初心なLOVEの甘酸っぱさ。

 

いちごミルクのような甘さと思っていたら、

フレッシュないちごをソーダに一粒落としたような、弾ける切なさも持ち合わせている「初心LOVE」

一筋縄にはいかなくても、実らせようと奮闘する恋心と、なにわ男子のドキドキしながら進むこれからとが重なって、弾ける甘さのメロディーになった。