面白かった…噛み締めて言うほど。
松下洸平さんがする、“得も言われぬ顔”は反則だと思っている。人という存在のおもしろさ不思議さ哀愁を体現していると感じるくらいに魅力的だから。
第2話での板挟みな松下洸平さんは、それこそ可哀想と可愛いが行ったり来たりで、
年月が経って芸能界に馴染んできた感が、立ち振る舞いから見てとれるのがおもしろい。
今回は結構シリアス?と思ったら、ことわざに聞くライオンの子育てですかというくらいの、笑いのサバンナへの放り込まれ方が独特すぎて、ADさんが顔を覆う様子と共に笑い泣きした。
第3話では、番組「あざとくて何が悪いの?」に松下洸平さんが出たこの放送をリアルタイムで見てたー!と嬉しくなって、
しかし同時進行でドラマも撮っていたとは…こわ…という良い意味での慄きもあった。
松下洸平さんが何かをぼそっと言う時の温度感が好きで、山里さんへの言葉がじわじわくる。
緊張と緩和というのか、ゆるさの中でピキッと張り詰めるシーンが成立しているすごさも感じて、背筋も凍る瞬間がしっかり表情と共に映されていたところに引き込まれた。
カメラさんはぐるんぐるん回ったんだろうか。素晴らしき回り具合だった。
空気が変わった第4話。
佐藤浩市さんの語りからの松下洸平さんの目の色で、一気にシリアスにハンドルが回った感覚で、
コメディを見ていたつもりがバラエティ、リアリティ、今何見てる…!?と思うくらいのチャンネルの変わりよう。
若かりし佐藤浩市さんのメイク?の作り込みが、えっ時を巻き戻して撮った?と混乱するすごさ。
そうして第5話。いやもう…覚醒。
1時間ドラマの心持ちで観ている自分に気づいた。
芝居に嘘か本当かを問うところに、ビリビリきた。その場で、役として発する言葉という意味で考えるとき、完成した作品に嘘を見てしまうこともあれば、“本当”に圧倒されることもある。
観ている側としてそうなのだとしたら、役者さんは誰よりそれを感じているのだろうと思った。
そしてなぜこのドラマに惹かれるのかが、第5話でわかった気がする。
画角に収まるカメラの向こうの役者さんだけでなく、カメラよりこちら側にいるスタッフさんたちが映る瞬間を見た時に、これがスタッフさんたちの現場を映すドラマでもあるからだと感じた。
なかでも、現場の一員として映っていたカメラさんと、その隣の助手スタッフさんに最高でしたで賞を贈りたい。
これ…続けます?と言いたげな目配せに、ノールックで小さく頷いたカメラさんの渋さ…最高だった。
馬場ふみかさんの、ただでは許さない感も素敵だった。
どっちの事情も汲む必要はない立場であるにも関わらず、しっかり話に噛んでいて、強い。
役者 松下洸平さんマネージャーの方も、第1話の事務所で出てきた時から失礼にならない失礼さと、所属役者さんへの思いの伝わる振る舞いがすごく好きなので、
お二人には、劇中におつかれさまでしたの現場差し入れしたいくらいの気持ちになった。
佐藤浩市さんと松下洸平さんの対峙を観るという意味でも、ドラマ「潜入捜査官 松下洸平」の見応えはすごかった。
佐藤浩市さんを前に飲まれずお芝居をすることがどれほどのことか…想像するだけで震える。
これはドラマで、潜入捜査のフィルターがあるはずで。それなのに、松下洸平さんの覚悟と真摯さとお芝居への思いが、これほどまでに伝わってくるとは。
警察の顔、役者の顔、松下洸平さんとしての顔、境界線が曖昧になり到達する顔が、かっっっこよかった。
スタッフさんが、役者さんが、このドラマ面白い!と思っていて、そのワクワクが溢れて画面から伝わってきて、各話おおよそ20分という時間の中での表現を楽しんでいる。
スタッフさん役の役者さんだったり、エキストラさんだったり、映り込んでいるであろうテレビ局のスタッフさん。役名のないそれぞれの活躍が届くドラマだった。
全5話なんですか…?本当に…?と未だ思っているけど、着地点もまたおもしろさに満ちていて素晴らしかった。
シンガーソングライターとして、リリースした最近の歌が「ノンフィクション」なのも含めて、粋を感じずにはいられない。
まだまだわからぬ松下洸平さんの顔を、どんな役で、どんな作品で観られるのか、今とびきり胸が高鳴っている。