「潜入捜査官 松下洸平」が面白い

 

役者さんとして、シンガーソングライターとして。

あの作品やあのバラエティ、あの歌番組で徐々に知っていったつもりでいた『松下洸平さん』

その芸能活動が実はかりそめで、潜入捜査官として、裏では任務に取り組んでいたとしたら…!?

という、うわ気になる!とソワソワせずにはいられないシナリオのドラマ。

 

いつから放送かな、見たいなと思っていたら、

それがTVerオリジナルドラマだと知って、ふと再生した日が、配信開始日だった。

配信は火曜日と金曜日で、20分のドラマ。しかし全く油断をする隙はない。

ある意味シュールな間はあるのだけど、めくるめく展開について行くのがやっとのジェットコースター。

 

面白そうという期待をさらに超えて、第1話「売れてはいけない俳優」から面白かった。

松下洸平さんが実は芸能界に潜入捜査していた?!という作りがもう面白いのに、松下洸平さんのお芝居の魅力がてんこ盛りで、シュール顔と間合いを堪能できる。

飄々としてみたり、ポカーンとしたり、とぼけてみたと思ったらスッと真面目なトーンに落ち着いたり。

松下洸平さんの持っている、大真面目が面白いことを知っている面白への感性と、リズム感のセンスが見ていて楽しい。

 

第1話でのエキストラシーンの愉快さはすごい。

ADさんの焦りと戸惑い。「暴挙に出たよ」が好きすぎる。

ラジオを聴いていると、楽屋でのあのお二人とのやり取りも自然なのがわかる。

 

これまで見てきた「スカーレット」での実直で柔らかな眼差し。「最愛」での静かに燃える思いと献身。「MIU404」での忘れられぬ哀しさ。

シリアスなお芝居と、ニュートラルでいる時の佇まいの良さだけでなく、「やんごとなき一族」で垣間見たコミカルなリアクションと、可愛らしい夫婦の姿にも惹かれた。

最近では「最高の教師」での寄り添いと、決意を尊重しつつ弱さも慮る労いの姿勢が、苦しくなるドラマのなかでの染み渡る優しさになっている。

 

バラエティでは「ゴチになります」や、KinKi Kidsへの愛が溢れ出た「KinKi Kidsのブンブブーン!」

そして歌で見る、役ともバラエティとも別の表現。

「つよがり」でドキッときて、コラボではラテンを感じるこぶしに魅力を感じて、カバーで歌った「白い恋人達」の刹那に沁みた。

そういう語り尽くせないひとつひとつを重ねてきているからこその、今際立つこの企画の面白さ。

今まで見てきたものが…芝居の芝居だった…!?と想像した瞬間の楽しさ。

 

見て驚いてほしいと思うほど、ちょっと出てくる役者さんがちょっとどころでは済まない存在感を放っている。

見ていたあのバラエティの裏が実はこうだったかもしれない…?と錯覚させる作りの緻密さで、

どこからどこがドラマとして撮っていて、どこがドキュメンタリー状態で撮っているのか、考えるほど翻弄される。

アドリブを含んだやり取りも多いそうで、その絶妙なリアリティに迷い込む。並行の撮影は大変だったのでは?!と思うほど入り組んでいて、境が曖昧になっていく、これこそ潜入捜査さながら。

構成も出演者も楽しみつつ本気。制作に携わるそれぞれの意気込みがジリジリ伝わってくるから、見ていてもテンションが上がる。

 

“このドラマは一部を除き、フィクションです”と最後に書かれるこのドラマ。

全5話で終わってしまうんですか…?本当に…?と既に名残惜しいほど、

「潜入捜査官 松下洸平」が面白い。