“君住む街”に会いに行く − 関ジャニ∞「ひとつのうた」

 

優しく微笑む顔が目に浮かんで、淡く青い空に漂う雲のような歌。

関ジャニ∞「ひとつのうた」

作詞・作曲・編曲:大西省吾さん

 

収録されているのは、シングル「急☆上☆Show!!」

初回盤、通常盤共に収録されている。

2009年に行われたライブツアー「PUZZLE」は、全国10都市34公演のライブツアーで、最終日の大阪・京セラドームで披露されたのが「ひとつのうた」

曲中の“lalalalala...”というコーラスを、初披露の場でファンに歌ってもらい、会場で録音された歌声が実際にシングル化された。

 

この曲を初めて聞いたのは、貸してもらったライブDVDの「COUNTDOWN LIVE 2009-2010 in   京セラドーム大阪」ライブラストの曲として歌われたのを見た時だった。

好きになりたての頃、スポンジのごとく吸い上げて、関ジャニ∞を履修していた私のなかでは、関ジャニ∞のライブとはゴリゴリで、ワッシャワッシャに盛り上がるというイメージが定着しつつあったところに、この曲のエンディングは意外性のあるものだった。

ライブの締めくくりを、バラードなどでしみじみ終えるか、アップテンポで明るく終えるのとどちらがいいかは、個々の好みやその時々のテーマによると思うけれど、ライブ「COUNTDOWN LIVE 2009-2010 in   京セラドーム大阪」の流れはとても素敵で印象深い。

ライブ「8UPPERS」の本編ラストも、「ひとつのうた」だった。

この究極の2択について考える時、錦戸亮さんはしっとり終わるのがあまり好みではなくて、アップテンポで盛り上がって終わりたいと話していたことを思い出す。錦戸さんの意見を聞いて以来、関ジャニ∞のライブの楽しみとして、最後の曲がしっとりか明るいかに着目するようになった。

アンコールを含めると、明るい曲になる確率は格段に高く、それでも「青春のすべて」を歌ったライブ「ジャム」などは、しみじみとした余韻の記憶として残っている。

 

そんな数あるエンディングの中でも好きだったのが、「ひとつのうた」を歌っていたライブ「COUNTDOWN LIVE 2009-2010 in   京セラドーム大阪」の映像。

“lalalalala...”のフレーズに入った途端に客席から歌声が湧き上がる一体感に、ひたすら驚いた。

関ジャニ∞の曲の中でもトップ何位に入るほど好きなのに、今までCDでは聴いてこなかった。ライブでの披露は2012年のライブツアー「8EST」あたりまではわりと頻繁にあったものの、それ以降は歌われておらず。

何度も音源で聴くよりも、いつかライブで、この曲が流れてくる日を心待ちにしたいと思っていた。

 

そして今年、2019年。

ライブ「十五祭」で、「ひとつのうた」が歌われた。

イントロを聞いて、うわあと声が出て、長年の憧れは一気に蘇る。歌い出しの澄んだ声、あの場所に漂った穏やかな空気。ついにやってきたこの日に嬉しさが込み上げて、全身の聴力を使って聴き入った。

ずっと画面越しに口ずさんできたコーラスのフレーズは自然と口を衝いて出て、ゆっくりとゆれるペンライトの灯りが心地よかった。

 

キラキラ輝く 夢を抱き 旅してる

優しく優しく紡ぐように歌う声。

曲の始まりに、声の後ろで聴こえる楽器の音色。

ぽわんと灯るランタンのような音色はたぶん、メロトロンという楽器。関ジャムでも取り上げられていたこの楽器は独特な懐かしみのある雰囲気を持っている。フルートっぽい音がするなと思っていたら、フルートの音をテープレコーダーに録音して、そのテープが回ることで弾いた鍵盤の音程が出るようで、フルートが好きなのだから、好きになるわけだと納得した。

メロトロンと一緒に、エレキギターが細やかに“チャッチャッチャッ”と一定のリズムを刻み続ける。裏打ちのリズムになっていて、それが緩やかな雰囲気を作り、ラテンやスカのようなゆとりを生み出しているのだと思う。

一定に弾きつつ、たまに“ン・チャチャ・ン・チャッ”と変速的になるのもいい。

  

移ろいゆく景色 すべての色を愛しく思う 

 「十五祭」で丸山隆平さんが歌った、“すべての色を愛しく思う”という言葉を聴いた時、ああこれだと感じた。

何においても、どんなに複雑な感情でも、行き着くのはそれなんだと腑に落ちた。丸山さんの歌声と表情がとても優しくて、陽だまりのように暖かかった。

関ジャニ∞への思いとは別のところで考えるとしても、この歌詞はすごく素敵で、“移ろいゆく景色”を実際の窓から見る景色に重ねることもできるし、過去のすごしてきた時間に例えることもできる。その“すべての色を愛しく思う”ことは、楽しい色だけではなかったとしても、大きな布で優しく包むように、自分で出来るとびきりの肯定だと感じた。

 

君住む街に向かう バスの中で口ずさむ

会いに行くことの胸の高鳴りが伝わってくるこの歌詞が好きで、“君住む街”という4文字の言葉に、ワクワクと愛しさ溢れる風情を感じる。

2007年に関ジャニ∞は、47都道府県ライブツアーを行なった。そんな彼らがこの歌詞を歌うのが素敵で。ライブに向かうファンの心持ちも投影できる描写がいい。

「ひとつのうた」は、ライブに向かう日のBGMにも、日常で何気ないお出掛けをする日のBGMにも合う。

 

曲の中の “また会えてよかった”という歌詞が真っ直ぐに心を揺さぶるのは、ライブに行くたびそう思っているから。

ライブの機会は基本的に、一年に一度。間に流れるそれぞれの時間は思いがけない過酷さがあったりもして、それでも時間の先の待ち合わせにたどり着くことができたと、嬉しさを噛み締める。

 

 

いつまでも肩を並べて

君と歩く泣いて笑って

惹かれたのは ここにある熱いモノが似ているから きっとそうだろう? 

 

なぜ好きなのか、こんなにも心惹かれるのか。言い表せなかった思いのわけが、すとんと胸に落ちたのはこの歌詞を聴いた時だった。

エールを送る時の関ジャニ∞は、強めの力でバンッと手のひら大きく背中を叩いてくれるイメージでいるけど、時には、“きっとそうだろう?”と語尾にハテナマークをつけて語りかける。

ふとした瞬間の穏やかな問いかけにドキッとして、同時に安心する。ここぞという時の柔和さがすごい。

来月の11月27日にリリースされる新曲「友よ」にも、“そうだろう?”という語尾の歌詞が出てくる。顔をそっと覗いて、目線を合わせてくれるような、関ジャニ∞の曲がひとつまた増えるのを楽しみにしている。

 

 

明日になればまた次の街 伝えたいことがまだあり過ぎて…

「十五祭」で聴いた時、これは47都道府県のライブツアーにぴったりだよなあ…と、かつての活動を思い浮かべていた。

次の街が待っている目まぐるしさと期待。

名残惜しさに後ろ髪ひかれながら、バスの後ろの大きな窓から過ぎていく景色を振り返って見ている感覚で、心がキュッと締めつけられる。

優しさで満ちたこの曲は、憧れ叶ってライブで聴けた今でも、いつかまた会いたい曲になった。

 

 

驚くことに、関ジャニ∞は2019年11月6日、

松竹座から再び47都道府県ツアーをスタートする。

 

タイトルは「Upd8」(アップデート)

大阪から始まり、年を跨いで2020年4月29日に沖縄でゴールテープを切るライブになる。

「ひとつのうた」を聴いている時は、ぴったりだよなあ…と思いながらも、まさか今また47都道府県ツアーを関ジャニ∞が決行するなんて考えもしなかった。

メンバーそれぞれに仕事のある今、なんて無茶を…と心配する気持ちはもちろんあって、どうか無理はしないでと思っているけれど、自分の住む街に関ジャニ∞がやって来る。その嬉しさと大切さは想像することができる。健康のもとツアーが行われるようにと、とにかく願っている。

 

47都道府県のライブはお留守番組になったけれど、でもなんとなく、お留守してたらいいことあるかなーあるかもしれないなーと思ったりしている。

今は、猪突猛進で駆け出した関ジャニ∞の背中に大腕を振って、いってらっしゃい!ご安全に!とエールを送る。

帰ってきたら、カラフルなハンカチ掲げて出迎えます。