カメラワークになれるアトラクション。
目線で1つの映画を撮っている感覚になった。
【アトラクション内について書いています。ご留意ください。】
お城の表玄関ではなく、裏口からこそっと忍び込むドキドキがあった。
招かれざるお客でありながら、アトラクションの乗り口までの道のりで見る、お城の装飾や置物、甲冑に怖さと期待が入り混じる。
一度では足りないほど、右にも左にも緻密に具現化された野獣の城がそこにある。
アニメーション「美女と野獣」で好きな、“コート掛けの彼”が目の前にいることに感動した。
タンスの彼女の活躍もすごくいい。
ぐんっと心掴まれたのは、実写版「美女と野獣」のルミエールとコグスワースが静かにお城に紛れていたことだった。
荒ぶりすぎて、撮れたつもりの写真がブレッブレだった。
プロローグの見せ方に、ほお…と感嘆の息を飲む。
ゲストが乗り込む物語の始まりが、キッチンであることに心躍る。
乗り込む大きなカップが並ぶ動き1つにも、必要最低限の最短距離で動くのではなく、乗る前からカップが踊りだすようにクルクルクルーっと寄って来るところが素敵だった。
4つのカップが揃って扉が開く。
先頭が決まっていないライド系アトラクションの新鮮さを感じて、みんなで目にする物語という実感があった。
このカップの動きが秀逸で、あれなんでこっち向き?と思った数秒後には、あっと驚く景色が広がっている。
スルスルと誘われて物語が進む。
“愛の芽生え”のシーンは、とにかくクルンクルン回るので、おお…動線の先を見ていないと酔うかもしれないと思った。
フィナーレの扉が開いた時。
天井を見上げると、もうここは舞踏会の世界。
ベルと野獣の視点であり、あのアニメーションのカメラワークでもあり、実写版フィナーレの舞踏会で共に踊っている視点のようでもあった。
この時のカップの動きにひたすら感動した。
私がカメラです。と言いたくなるくらいに、完璧な景色の中、寄って引いての画角の変化をカップが見事に実現してくれる。
レーンを引いたカメラもしくは、肩後ろから背負って前にぐいーんと構えて両手でハンドルを握って撮影するあのカメラに“なった”気分。
「美女と野獣」を見るたびに、アニメーションで映画のカメラワークを実現しようと試みた、最高のダンスシーンに惚れぼれしてきた。
この視点の動き、本当に素晴らしい…と噛み締めてきた景色を体験できる。なんて喜び。
「Be Our Guest」「愛の芽生え」「Beauty And The Beast」
美女と野獣のメロディーに包まれながら、ルミエールの歌声に酔いしれて、ベルと野獣の声を聞く。
順を追いたくなる物語を、ライド系アトラクションとしてギュッとしつつ満足感を作る。何人ものイマジニアさんたちの思考が注がれたアトラクションなのだと感じた。
「朝の風景」は、お城に入ってからでは物語に描くタイミングが無いよなあと思ったけれど、エリアごと美女と野獣の世界が誕生したということは、
お城に着くまでの景色を思い起こせば、ベルとパパの家を横目に見て、キャストさんから「ボンジュール」と挨拶を受けながら。
ガストンの銅像が光る噴水を通り過ぎ、窓も建物も素敵な街並みを歩いて来た道が、「朝の風景」そのものなんだとわかった。