King & Prince「踊るように人生を。」 - 軽やかなステップを踏みながら、憂いを塗りかえる

 

King & Princeの歌声で、この曲調を選びつづけてくれることが嬉しかった。

メロディーは聴いた瞬間もう好きだった。これまで好きになってきた曲の傾向と、「Moon Lover」が好きなら抗うことはできない。

 

King & Prince × ジャズは最高の相性。

そして歌声は、スウィングのリズムによく合う。

でも、今回は変化球だと感じたのは、タイトルがはっきりとしたメッセージを映していること。

覚えやすいメロディーラインというより、ジャズのように変則的で、掴みどころのない音階で歌詞が進むところ。

王子、等身大、から一歩踏み込み、働く人の日常についての表現に向き合っているところ。

公開されたMVを見た時、カラースーツと目に止まるイエローの配色、働く人への寄り添う視点からSMAPイズムを感じとれる気がした。

 

King & Prince踊るように人生を。

作詞:MUTEKI DEAD SNAKEさん

作曲:MUTEKI DEAD SNAKEさん・児山啓介さん

 

愛しきこの My Life

この言葉と一緒に映る、MVのワンシーンが象徴的だった。

平坦にも見えるパネルの窓枠の中、吊り革に掴まって揺られる様子。

色が無いわけではなくて、街並みが溶け込むようにマーブル模様に彩られた角の丸い窓枠と、メンバーが身にまとうカラフルなスーツ。

メンバーの表情も、日々の流れを知りながら、どこかそれを受け入れて楽しんでいるようにも見える。

脱力と期待と。この曲で描きたい瞬間がここにあると思った。

 

気の向くままに 歩いてゆこう

ここでの“歩いてゆこう”の振り付けが、ペタペタと一歩ずつ進む歩幅を手のひらで表現していて、

軽やかにステップを踏みながら、手でも表現していることで、一歩一歩という意味合いが伝わってくる。

そして次にくる、“どの瞬間も”のターンの美しさ。

素早く美しい身のこなしに息を飲む。ドレスを着ているかのようなジャケットのひるがえりが素晴らしく、着ているスーツのデザインごとにジャケットのひるがえり方が違っているのもいい。

平野紫耀さんのターンをしても立ち位置変わらず、腕を伸ばすまでの一連の動きのなめらかさに惹きつけられた。

永瀬廉さんの着ているジャケットにプリーツがあることで、ターンをした時にふわりとひるがえる裾が綺麗だった。

着ている服の見え方も考えたダンスの抑揚に心引かれる。

 

歌番組で披露されるダンスにも楽しいところが多々ある。

目まぐるしくて隙のない”の歌詞で、革靴を履いた足元をトントンと片足ずつ立てる仕草。

朝、玄関を出る前の靴を履くという何気ない動きひとつを、ダンスに入れ込んだ遊び心にワクワクした。

世間にいつも追い回されてる”でジャズダンスの醍醐味と言える、腕を伸ばす動きからの脚も合わせてのステップが美しく決まっているところもいい。

Let's go!”の後、“もっと”でサビに入る前のわずかな隙間に、首元できゅっとネクタイを締めるような動作があるのも楽しい。

生きる自分を”の歌詞では隣にいるメンバーの肩に置いていた手を、“踊るように人生を”では前へと置いて、そこから自分の手首に自分の手を添える動きになるところが、誰かと踊るだけではなくて一人でも踊ることができると観せているように感じられて、素敵だった。

 

 

くるくると移り変わるメロディーから、サビで着地していく。

合いの手みたいにトランペットが鳴り響く。

生きる自分を褒めてあげたい

この歌詞の部分のメロディーがとにかく好きで、ここでガシッと掴まれた。

特に“褒めてあげたい”の音運び。平野紫耀さんのほっと落ち着く声色がユニゾンとして温かみを増し加えているように感じて、包容力がすごい。

 

目覚めを優しく伝える歌声で、ファルセットを響かせる神宮寺勇太さんが日の出なら、

一日の疲れをほぐしてゆく平野紫耀さんの歌声は夕日だと思う。

 

どれほど甘くても美味しく食べてしまえるアフタヌーンティーのようなラブソングも、バリバリに踊るダンスナンバーも、様々な曲調で作られるKing & Princeの曲があるなかで、

以前に、番組「キンプる。」でタップダンサーの先生が、“ジャニーさんはKing & Princeにタップダンスをさせたがっていた”という意味合いのことを言っていたのがしっくりくるほど、クラシカルな世界観も成立させることができる。

ロマンチックさだったり、エールの思いだったり。一曲ずつグループとしてのジャズナンバーが増えていくことがとても嬉しい。

様々に形を変えながら、どうかこれからもジャズダンスにブラスバンドの輝く曲調は続けていってほしいと願いたくなる。

それほどに、King & Princeの歌声とジャジーなメロディーの相性は素晴らしい。