坂道でグッとペダルを踏み込んで、乗り越えた先で感じる風。
あの心地良さがこの曲にある。
ギターのリズムから涼しく吹き抜けるメロディーが心地よくて、背中に追い風を受ける感覚。
さらにこの曲のダンスに引きつけられて、歌番組「音楽の日」での披露が衣装の色も含めて最も好きなパフォーマンスになった。
King & Prince「Key of Heart」
作詞:Susumu Kawaguchi さん、佐原康太さん、MKSSさん
作曲:Susumu Kawaguchi さん、佐原康太さん
編曲:佐原康太さん、Susumu Kawaguchi さん、兼松衆さん
メンバーそれぞれの声の長所をのびのびと聴ける印象の曲で、“越えてゆく君の背中は”を歌う髙橋海人さんの歌声からは、抑えられない胸の高鳴りが声に溢れて聴こえる。
ユニゾンのワクワク感も魅力。
バランス良くキープするのが難しそうな声の大きさを、音響さんの技術も含めて、その都度メンバー自身も程よいバランスで響かせていける、グループの歌声としてのまとまりも耳心地がいい。神宮寺勇太さんの保たれた声量が、確かな軸になっていると感じる。
イントロで盛り上げて、サビからさらにもう一段階、突き抜けたメロディーにしたくなりそうなところを、螺旋階段みたいに一音ずつ上がっていく音階の美しさに惹かれた。
鍵とハートがモチーフになっている振り付けからは、「シンデレラガール」からの物語のはじまりを今も大切な要素にしている心意気が伝わってくる。
靴紐を結び直すシーンから始まる「Key of Heart」
そこにまず心を掴まれたのは、一度解けてしまったとしても結びなおして歩き出すストーリー性が、この一つの動作にぎゅっと込められている気がしたから。
さらにイントロでのチャールストンステップ。
足先を前後にクロスさせて、軽やかなステップで弾むように踊る姿が素敵で、特に平野紫耀さんは踵がつく暇がないほどふわりふわりと踊っていて、重力はどこに?と思いながら見ていた。
そして大好きなのが、右上から左下へと流れるように手を伸ばす振り付け。
曲くねった道を表すような動きに心躍って、ワクワクが急上昇する。
岸優太さんの歌う“優しさの溢れるその笑顔が”のパートは、陽だまりみたいに温かくて、包容力に満ちていた。
そこでの振り付けも、岸優太さんの前後縦一列に並んで“優しさの”のポイントで両サイド角度をつけて腕を伸ばす構図が美しい。
平野紫耀さんのしっかり遠くを見つめている目線の伸ばし方と、腕をピンと向ける魅せ方にも心惹かれた。
さあ解き放て全てを もうへこんでいる暇はない
“さあ”と呼び掛けられて心がこんなにも動くのは、それを自分の心が求めていたからかもしれない。
シンプルな言葉でありながら、“解き放て全てを もうへこんでいる暇はない”と響くユニゾンの歌声は力強く、けれど軽やかに浸透していく。
“暇はない”で、胸に当てた手を広げる緩急をつけた動きも、胸から溢れるエネルギーが振り付けに表れているように見えて、好きになった。
あのトビラの鍵は
胸の中 光る Key of Heart
サビ中間の“あのトビラの鍵は”で、ユニゾンから平野紫耀さんのソロパートになり、その声質でぐっと切実さが増す。
鍵を表す動きのニュアンスも魅力的で、ぬるっと踊ると良さが光らないけれど、首の傾げ方、真っ直ぐ伸ばした腕から指先の魅せ方にアクセントがついていて、ドラマチックさを作り出していると感じた。
映画「弱虫ペダル」の主題歌になった「Key of Heart」
主演で小野田坂道を演じた永瀬廉さん。歌詞にも“坂道”というワードがあって、そこで自分を指差す動作がいい。大サビのソロパートで歌う箇所での“悩まないで”の歌い方がまろやか。
“で”の時に舌がそっと音を作っていて、柔らかい言葉の繋ぎにやすらぎがある。
この曲を歌っている時のメンバーが、踊りながらアイコンタクトを取って楽しそうなのも印象的だった。
永瀬廉さんをセンターに両側から肩に手を置いているシーンで、しっかり真面目に曲の世界観にいる神宮寺勇太さん。晴れやかな感じを表情で表すことに全力をかけている岸優太さん。最初はしっかり表情を保とうとするものの互いにつられてほほえみを堪えきれない平野紫耀さんと髙橋海人さん。
徹底的に曲の空気に染まる「Naughty Girl」「Mazy Night」などの魅力と、ふいに自然な表情を垣間見ることのできる曲の魅力。
どちらも見ることが出来るからこそ、そのギャップに引き寄せられていく。
さあ未来が待っている もうこの手を離さないで
素直な言葉に、これからへの期待を失わずにいられる気がした。
楽しみに出来ることがある。心躍ることがある。
「Key of Heart」が収録されているアルバム「L&(ランド)」は、1番目、はじまりがこの曲になっている。
鍵を手にして、視点を前に向けてみた時。閉じていた心が開いて、その世界は広がるのかもしれない。