大きなリボンで包むビッグラブ ー 美 少年「Beautiful Love」

 

ラブソングの気分じゃないなと思っていても、無条件のビッグラブを投げかけられると、思いがけずキャッチしたドッジボールみたいに受け止めてしまうものだなと思う。

無機質な曲を探していた頃に耳にしたのが、

美 少年(ジャニーズJr.)

Beautiful Love

作詞:MiNEさん

作曲:川口進さん / Fredrik Samssonさん 

無機質とは真逆。愛。Full of Love。

だけどそれが、もういいやと投げ出したくなっていた気持ちに浸透する不思議。

 

 

“Beautiful My Sweetest Love 世界中が笑顔になれ”

その言葉から始まるのだから、パールシュガーをのせたカップケーキ並みに甘くはあるのだけど、メロディーの疾走感とメンバーの歌声がどこか涼しげにそれを届けてくれる。

ベタはそもそも好きで、ここの歌詞で好きなのはSweet Loveと言わずに“Sweetest”と使っているところ。甘さの最上級で愛を現す潔さがいい。

NHKの「ザ少年倶楽部」で披露した時の、ショッキングピンクのスーツ衣装が素敵だった。

揃いの細身のスーツに見えて、よくよく見ると浮所飛貴さんと岩﨑大昇さんのスーツがわずかに薄めのピンクで、岩﨑大昇さんは中のベストが濃いめなピンクになっている配色の細やかさにも心惹かれた。

バランスが取られていることで、目に圧迫感を与えずメリハリがついていた。

 

心揺さぶられたのは、歌い出し後のメロディーライン。

物語のオープニングを彩り誘う華やかさ。その場の空気ごとリボンをかけるかのように、音符が駆け抜けていく美しさ。

ここの間奏での振り付けがとても好きで、長く伸びた腕を魔法のステッキのように大きく振って、脚も一緒にスライドさせ直線を描く。それがセンターから二人ずつ広がっていく時間差の振りが、見ていてワクワクする。

その後の片肘を曲げて、もう片方は伸ばし斜めに線を描くところもいい。

合わせるメロディーが高揚感と切なさを共存させた音階なのもたまらない。

 

サビ始まりで登っていくメロディーから間奏を挟んで、“街路樹も揺れている街角には”という歌詞がくる。

普段の会話ではもうあまり使わないのかもしれない“街路樹”という言葉で、曲の情景は一気に広がって、木々が風に揺れる様子を思い浮かべる。

謡曲や風情を感じる歌の歌詞の好きなところは、そうやって普段口にはしないとしても、多くの景色を映してくれる日本語の魅力に触れられるからだと改めて思った。

さらに、“それぞれのHappiness”と歌う、浮所飛貴さんのパートで一度落ち着いた空気感になるところがいい。“それぞれ”での柔らかな声色が魅力的だった。

曲後半にくる、“そばにいて”のパートでの上ハモも耳に心地良い。

日本語歌詞の情景から一変して楽しいのは、“Jingle,Jingle,”のフレーズ。冬の景色も似合いそうな描写が飛び込んでくる。

 

 

岩﨑大昇さんがセンターでしゃがみ、手のひらにプレゼントがおりるのを見つめる動き。

“贈り物だね”からのクロスをきって、タンタンタン・パンと弾ける音に、指を鳴らす振りが入っているのがすごい。

やわらかな曲調の中で、そのわずかな一瞬の音を捉えて動きで魅せる。振付師さん、素敵ですとお礼の握手をブンブンとしたい。

この曲では特に、岩﨑大昇さんの表現に視線が惹きつけられた。

間奏の時の、腕をクロスさせたポーズでわあっと心弾んでいるような表情になるところや、手のひらの上を見つめている時の愛おしそうな微笑み、指を鳴らす時のこちらに『ねっ』と見せるようにドラマチックに動きを際立たせるところが素晴らしかった。

ふっと音が引いてからのソロパートの歌声にも聴き入る。伸びやかでありつつまろやかで、ミルクティーボイスだと思った。

 

サビでくる二個目の“Beautiful”で、順々に手の振りをつないで、指一本一本をゆっくり握りしめる動き。

“Sweetest”の歌詞では、ジャケットの襟元あたりをグーサインにした親指で照れるように掻く仕草。

“大切な”の言葉に合わせて、頬に手をあてていたりと、手の振りは繊細に、脚の振りはダイナミックになっていて、「Cosmic Melody」をメインに歌っていた頃から、年齢も身長も成長したメンバーの今に映えるダンスだと感じた。

 

 

ひたすら録画を見返していたけど、YouTubeでもちゃんと公式が「Beautiful Love」をアップしていることに気づいて、時代は動いているな…と実感した。

雑誌の表紙は黒塗り、CDジャケット写真も文字のみで、番組やドラマの公式写真にすら写れない時代はもはや昔。

 

YouTubeでは見られるようになったけれど、ジャニーズJr.のオリジナル曲として、こんなにも数々の魅力的な曲があることを知ってから、これが音源化されないのはなぜなんだとジタバタしたくなる機会も増えた。

だからこそのCDデビュー。とはいえ、気乗りしない朝に、疲れきった夜に、いつでも高音質で聴けたならと思う。

Jr.時代だからこそのカバーも、本当は音源でも聴きたい。美 少年がカバーして歌った、光GENJIの「Graduation」は素晴らしかった。

例えばジャニーズオンリーでのサブスク化、そこにJr.楽曲を全追加。もしくはJr.アルバムなんてどうですか。なんてことも考えながら、まずはこの曲が映像になっていることに感謝している。

 

無条件で愛を歌うことができる。その強さを感じる。

理屈なんてどうでもいい。アイドルがそう歌うなら、きっとどこかにそういうものがあるのだ。例え自分に近くても遠くても、そこにあるならそれでいいかと思える。

「Beautiful Love」という直球で広大なラブソングを受け取って、甘いスイーツを目の前にした時のように、華やぐ気持ちがほんのりと返ってきた。