関ジャニ∞のライブツアー「8BEAT」では、セットリストにソロ曲が入っていない。
ライブを観ながら現地で感じたこと、振り返ってみて見る全体的なこと、それらを合わせてなぜだったのだろうと考えた。
まず、今回はCDとして様々なパターンの“盤”が出ていて、初回生産限定盤でのみのソロ曲収録であること。
基本的にどの“盤”にも収録されている、主軸になるアルバム曲を披露することで、これ聴いた!が広くなるようにされていると思った。
『今の関ジャニ∞を観せる時間』が、今回のライブだと考えた時に、すべての時間を使ってメンバーが並んだ姿を観せられるようにと選んだセットリストなのではとも考えた。
ソロとしての見せ場や、ファンからの要望も汲もうと試行錯誤したと思うけれど、それでも今回のセットリストを組んだことに意味を感じる。
ソロ曲をステージで魅せる良さもある。
これからのライブでも観られる可能性はある。
今回のソロ曲、それぞれのMVでの表現を見ていて共通点として感じたのは、“映像であること”の追求だった。
安田章大さんの「9」は、ダンスでの表現が大きく色を濃く広くしていって、さらに映像との融合によって化学変化を起こして、世界観を奥へ奥へと進めて行く。
横山裕さんの「みかん」は、かつて安田章大さんとの共作で作られた曲で、作詞は横山裕さん。作曲は安田章大さん。
冬のほっこり感がありつつ、物悲しい雰囲気があるのが横山裕さんのソロ曲だなあと感じる。
暖色系の映像になっていたのは、唯一、横山裕さんのMVだった。
大倉忠義さんの「One more night」は、夜の危うげな雰囲気。
恋人への執着というより、エントランスのソファーで合流してエレベーターに乗るような仲なのかなと思いながら聴いていた。
映像も、イメージしていたように危うげな空気。ソファーに座る大倉忠義さんが真っ直ぐにこちらを見つめるものの、心ここにあらずで目が合っている感じはしない。
丸山隆平さんの「ヒカリ」は、ボーカルという観点から触れると、がつんとがなる歌声ともゴールデンラインに乗るようなキラキラボイスとも違った、ハイトーンなファルセット(裏声)のきわきわを追求した新領域の魅力に引き寄せられた。
作詞作曲をされたのは、吉田一郎さん。
吉田一郎さんは、ベーシストであり、作詞・作曲家。“吉田一郎不可触世界”さんとしてソロ活動をなさっている。丸山隆平さんにとって、念願叶った表現のソロ曲。
映像にもこだわり、コンペを募って世界観を創り上げるパートナーを探した。
歌詞を読んだ時も、映像を見た時も、自分がまず感じたのは、丸ちゃん遠くに行かないでね。だった。
丸山隆平さんのメイキングインタビューを聞くと、がんばりたい時に限らず、様々な心境の時に聴ける曲があってもいいんじゃないかなと考えて作られたようなので、シンプルに受け取れるようになりたい。
無粋な受け取り方はしたくないなと思いつつ、「ヒカリ」を作れたことで、ようやく辿り着く、折り合いのような何かがあるのではないかなと個人的には感じた。
遠くに行かないでと思ったのと同時に、これをいま受け取れているということは、丸ちゃんがここにいるということだと、大切にしたい思いが湧いた。
元々いろんな映画や音楽に触れるのが好きな丸山隆平さんなので、創作は創作。
そう思っているかなと感じつつ、ざわっとした気持ちは胸で静めた。
村上信五さんの「フリーシーズン」で、ふっと肩の力を抜いて楽しむ空気感に戻っていった。
一聴すると、何?!と戸惑うかもしれないけれど、往年の歌謡のアクセントを見事にソロ曲として盛り込んでいる。
聴けば聴くほどくせになる。特にアウトロが。
そして映像を見ると、ますますくせになる。ふざけつつ本気のトレンディ村上信五さんを見たいなら、ここしかない。
バブル感がすごいけれど、このバブル感を出せるのはすごい。
ライブ「8BEAT」を観に行った日。
観ていて、アルバム曲がわりと序盤で出きったころ、これどこでソロ曲を入れる…?入れられる…?と頭をよぎった。
ここまでのセットリストの流れが華麗だからこその、この中のどこで5人×約4分の時間を作り入れるのだろうと、興味も湧いた。
結果、ソロ曲のゾーンは作らずに、本編が進む構成となった。
それは流石の選択だったのだと思う。
もし今回の5人の曲調がバラついていて、明るさ、バラード、などの変化がついたり、ユニット曲になることで二人もしくは三人の色調の違いが表れるとしたら、メリハリになったのかもしれない。
ソロ曲となると、その人の個の色がぐわっと強くなる。
もちろんそれがソロ曲の魅力で、ただ今回のライブでは、個々の名刺を配るより、関ジャニ∞としての名刺を配ることに決めたのだなとライブから受け取った。
あとはシンプルに、時間の長さもあるかもしれない。
1日2公演の日もあるアリーナでのライブで、公演時間が頑張ってみたものの3時間近くなってしまうと話していた大倉忠義さんの言葉を考えると、セットリストに入れたかったけどもこれ以上は…のなくなくカットの可能性もある。
またいつかの機会に、年代物のウイスキーのように寝かせていい味の出た良きタイミングで。
耳にすることができたらいいなと、先々の楽しみができた。
ライブを観た去年、そう書いてツアー後に載せようと置いていたら、ツアー最終日の配信が決定した。
ファンクラブ会員限定で、ソロ曲のパフォーマンスを披露することが発表された。
ソロ曲の部分は収録配信であっても、ステージでパフォーマンスすることに更に挑戦した、MVとも変化のある構成になっていた。
やっぱり“観たかったな”を取り残す関ジャニ∞ではないなあと、行き届く浪速のホスピタリティに感動した。
アルバムに、ユニット曲やソロ曲が入った時の楽しさ。
それとはまた別の、セットリストがどんなふうに組まれてステージが構成されていくのかを楽しむ視点を少し理解できた気がして嬉しかった。