漂う余白が思いを濃くする。関ジャニ∞「ここに」MVの魅力とは

 

シンプル。それでも溢れ出る魅力。

澄んだ空のブルーと地面に広がるグリーンが、情報量を少なくシンプルに彩っていて、曲と映像の引き算の美しいMV。

関ジャニ∞が9月5日にリリースした新曲「ここに」

MVがとても素敵で、その魅力を語らずにはいられなくなった。

 

曲がエネルギッシュな分、MVの落ち着いた空気感が調和を取っていた。

自然の光の差し込み方と、映し出す輪郭の柔らかさと、メンバーの衣装もシンプルな色合いに穏やかな組み合わせのシャツを羽織って、コンセプトから佇まいまでニュートラルな関ジャニ∞の一面に触れられる映像になっている。

もしこれがスタジオで賑やかめの衣装を衣装を着て撮るMVとなると、印象はガラッと変わると思う。ライブを観て曲のイメージがより鮮明になるように、MVのコンセプトも大切な曲の要素だと感じる。

 

朝日が昇る前の早朝から撮影を始めたこのMVは、段々と登ってゆく太陽と移りゆく空の色とで表情を変える。

セットでの撮影もいいけれど、自分は野外で撮られた映像や写真がとても好きで、その理由はレンズに映った時の光の綺麗さだった。ドラマや舞台のセットで窓から差し込む外からの光を作るのが難しいように、MVでもくっきりとした色合いになることが多くて、フィルターを後から掛けても自然光のものとは違ってくる。

外でも大きなライトやレフ板は使うけれど、空からの光はとても綺麗に映る。

レンズが本体と一体化したビデオカメラというよりも、メイキングに映っていたようにレンズを付け替える一眼レフのようなカメラで撮ると、絞りと呼ばれるボケ感がきめ細かくなって、メンバーに綺麗にピントが当たる。奥行きも美しくなるから、背景と被写体が大きく離れている時は特に相性が良い。

スマホの写真加工でメインだけにピントを合わせるのが好きな人や、単焦点のレンズが好みの人にはたまらないMVだと思う。

 

撮影日が何日もあるわけではない、1回きりの朝日のなかで、テイク数を決めてスタンバイをして、カメラさん照明さんメイクさんや楽器担当の方々まで何人ものカメラに映らない人たちの働きでこのMVが出来ている。

セッティングのためにはメンバー到着よりも早くから動きだしていたであろうスタッフさんのことを考えると、5分間のMVを作るためにどれだけの力が注がれているんだろうと感慨深くなる。

後で編集する時のことを想像しながら、取りこぼしがないようにすることもきっと簡単ではない。この歌詞でこのメンバーが歌っているのに、その映像が無いなんてことがあったら大変なわけだから。

その映像のパーツが完璧だったからこそ、贅沢すぎるソロアングルを全メンバー分作ることができて、それをこうして見ることができているんだと思った。

 

人の目が持つ力は凄い。人と目を合わせてみるとわかる。こんなにも言葉になりきれない何かが流れ込んでくるのかと。

もしこれから自分の決めた道に迷うことがあったら、丸山隆平さんのソロアングルを見て、何度でも気持ちを立て直していく。

“Hey!”の歌詞での可愛さは村上信五さんがピカイチだった。横山裕さんの実直な目線も、錦戸亮さんの時折はにかむ笑顔もすごくいい。大倉忠義さんがバスドラムのキック音でリズムを取るのを見られたのが嬉しかった。あの全力の叩きで、朝とはいえ夏場。10では済まないかもしれない回数を叩いた大倉さんがすごい。

 

安田章大さんの歌声と、吹き抜けるウィンドチャイムの音。聴こえるギターの音色。背景に映る空のブルーがぴったり合っている。

曲の始まり、安田さんが歌って、その後に“降りだす雨に打たれて”と歌う錦戸さんの歌声に、明るく透き通るような音でエレキギターが重なる。そのエレキギターの音色が、歌詞とは対照的に雨上がりの空のような音色で、ここが何度聴いても初めて聴くみたいにいっつも好きだ。このメロディーを弾くところをいつか実際に見たい。

空からの明かりは行き渡るとは言っても、夜が明けきる前の薄暗い光を絶妙に映すのは難しいはずだけど、光を活かしてメンバーの表情が綺麗に映っていた。

天井もない、空を遮る電柱や建物もない広い原っぱで、泥くさくも伸びやかに歌う関ジャニ∞に心を鷲掴みにされた。メイキングまでもがMVだった。

 

画面の中に情報を詰め込まなくても、伝えたいことは関ジャニ∞ひとりひとりからの表情で伝わる。「ここに」については装飾は無くてもいいし、作り込み過ぎないのがいい。

漂う余白に魅力を感じて、私はこのMVが大好きになった。