乗れないはずのジェットコースターでも君となら - 関ジャニ∞「Faaaaall In Love」

 

サビは上がっていくもの、という概念をくつがえして、落ちてゆくサビ。

なのに高揚感が煽られる。

 Falling, Rising, Falling...

 サビ後につづく英詞が、落ちて昇るジェットコースターそのものを表しつつ、せわしない心境を表しているようで、最後にくる“Falling...”で歌い方そのものも“フォール”(語尾を落としていく歌い方)を使っているところにぐっとくる。

 

関ジャニ∞Faaaaall In Love

作詞:いしわたり淳治さん

作曲:中村崇人さん、大嶋哲司さん

編曲:久米康嵩さん、桑田健吾さん、Peachさん

発売されたシングル「友よ通常盤にのみ収録されているこの曲は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのジェットコースター「ハリウッド・ザ・ドリームライド」で選択できる曲として、2020年1月6日まで搭載されている。

 

ジェットコースターに乗るならこの曲しかないって!と思うほど、シチュエーションにぴったりな歌詞、そして展開の早いメロディー。

なんというかもう、曲が合うと言うより、曲がジェットコースターそのもの。見える景色とリアルタイムでリンクしていく快感。

想像してみてほしい。上がって、上がって、落ちる…!という瞬間、耳元で聴こえるのは「目を開いて」という言葉。これ以上のときめきがあるだろうか。

怖くてギュッとつむった目。後ろからそっと目隠しして覆っていた手を離すように聴こえるその言葉。例え彼が隣に乗っていたとしても、その瞬間ばかりは関ジャニ∞とデート気分の錯覚に落ちてしまうはず。

 

この“目を開いて”パートを誰が歌っているのかを考えるのも楽しい。

1番は村上信五さんのような気がしていたけど、2番は安田章大さんだとわかる。そうなると3番目も安田さんのような気がして、あれ?1番も安田さんだったりする…?

声が似すぎているのか、同一人物なのか、もはやわからなくなってくる。

 

イントロからノリノリになれるグルーヴ。

機械的な音の質感と、トランペットとベースの質感、ゴリゴリにリズムを刻んだかと思いきや、すーっと走りだす疾走感。

列に並んで、いよいよ乗り込み、ベルトを着けて。発車して行く情景が目に浮かぶ。

さらにそんなスピードのなかでもバイオリンなどのストリングスの音がサビの後ろで聴こえる。縦横無尽なレールを滑らかに走るかのような音が心地いい。

同じ価値観 だけじゃつまらない

同じ好奇心 持ち寄って 

という歌詞には、関ジャニ∞を好きでいて楽しい理由がまさしくこれだと感じた。 

このパートに、まるみを生み出す横山裕さんの声があることで、そのままではエッジが効きすぎてしまいそうなところもブラックコーヒーにそそぐミルクみたいな効果でまろやかに耳へと馴染む。

 

目を開いて

加速して止まんない もうこの恋は

予測不可能の 想像を超えた次元へ  

空に飛び出して しまいそうさ

世界がいま逆さになる

常識は全部 忘れてかまわない

Show Me Your Love

Falling, Rising, Falling...

“予測不可能の 想像を超えた次元へ”までは横山さんのボーカルで甘みが加わり、“空に飛び出して しまいそうさ”からは村上さんへとバトンが渡る。

村上さんの声が突き抜ける空の開放感を表して、前へ前へと押し進めていく。

 

3度やってくる“目を開いて”の後につづく、サビの歌詞はそれぞれ変化を見せている。

1番のサビは、“世界がいま逆さになる 常識は全部 忘れてかまわない”の歌詞が特に好きになった。

逆さになった世界で、“常識は全部 忘れてかまわない”と続く言葉の心地よさ。ジェットコースターに乗っているこの瞬間だけの開放を伝えるのに素晴らしい歌詞。

 

そして、“Falling...”で合わさる関ジャニ∞の声。

混ざり合うというよりも同じ幅で層になって聴こえる声の相性の良さに聴き入る。丸山隆平さんの声がジェットコースターの高さからの落下速度を表現していていい。

Show Me Your Love

Falling, Rising, Falling...

ふとした拍子に入る英語がさらっと決まるようになった、関ジャニ∞の渋みとかっこよさが感慨深い。

しかも訳すと『君の愛を僕に見せて』という意味合いで、ヒロインへのベタ惚れ路線な曲とはまたひとつ違う、大人な余裕がある。

 

2番は丸山さんがメインパートを走って、弾むリズムに声がばちっと当たる爽快感。

バトンを繋いだ先には大倉忠義さん。“上がっておいて 曲がりくねって”の音程が心地よく、さっきまでメインだった丸山さんが大倉さんの声に合わせてハモりにまわっている、忍者屋敷もびっくりな立ち回りの早さ。

サビでは、“1秒先はほら もう別世界 こんな感動を 見逃すなんてできない”

単に振り回されるだけではなくて、広がる世界、見えてくるものに視点を向けた歌詞に心躍る。

Give You My Love

Falling, Rising, Falling...

『僕の愛を君にあげるから』と意訳したくなるこの詞にも、ぎゅうーっと心掴まれる。

“Show Me Your Love”で貫いてもよかったはずなのに、途中で“Give You My Love”になってしまうところが、らしいというのか…尽くさずにいられない人間味。かわいらしさがあっていいなぁと思う。

そのあと大サビになると、“大丈夫 もっと素直になっていい 怖がらないで 僕がそばにいる”という言葉がでてきて、かっこいいけど“俺”じゃなくて“僕”なとこ!そういうとこが好き!!と聴きながらひとりジタバタしてしまう。

 

日常と非日常の対比を感じる歌詞の言葉遊びは、日常における遊園地の存在そのもので、この先は未知だと感じさせる曲の雰囲気が魅力になって引きつけられる。

この曲を聴くことができる「ハリウッド・ザ・ドリームライド」の搭乗時間は3分。

想像の範囲になるけれど、“目を開いて”のタイミングやメロディーの移り変わりがぴったりなことを考えると、制作の際にどれほど緻密に組み立てていったのだろうとワクワクする。搭乗している時に見える景色の映像を何度も見たり、映像を元にストップウォッチで秒単位で計測したりしたのだろうか?

関ジャニ∞は、2018年の冬にも「All you need is laugh」(オール・ユー・ニード・イズ・ラフ)が“ハリドリ”で選択できるBGMとして搭載されていて、大阪にようこそと迎え入れるテーマが楽しい曲になっていた。

今回の「Faaaaall In Love」(フォーリンラブ)は、ジェットコースターを擬人化ならぬ“楽曲化”したような曲で、“ハリドリ”に見事すぎるほどに合う。

 

しかしながら。こんなに力説しておきながら、私はジェットコースターに乗ることが出来ない。

いや、どうにも。できない。乗ろうと列に歩みを進めたことはあるけれど、360°回転!という看板を目にして引き返して以来、近づくこともしていない。

それなのに、この曲を聴いていると、一体どんな景色が見えるのだろうと気になってくる。関ジャニ∞の声を聴きながらなら、見てみたいかもしれない…

乗れないはずのジェットコースターでも、君となら…と思わせる引力が、「Faaaaall In Love」にはある。