アップテンポにも乗りきれないけど、反骨精神で攻撃性に転じることもできないなあという気分のとき。
ふかふかで、真綿みたいな広い雲に包まれる空気感の「fuka-fuka Love the Earth」を聴いていると、自然と嬉しい気持ちになれる。
関ジャニ∞を好きになってすぐの頃、コテコテな関西イメージの曲から、がしがし踊るダンスナンバーもあることにギャップを感じて、さらにはしっとりとバラードを歌う関ジャニ∞の魅力を知った。
なかでも「fuka-fuka Love the Earth」は、“意外”と感じた曲トップに入る曲で、こういう曲も歌っていたんだ!というのが第一印象だった。
自分にとってテゴマスがジャニーズへの入り口で、「マルイチカラ」が好きでずっと聴いていたからか共通点を感じて、派手な何かではないけれど、この曲が好きだなあと思うようになっていた。
きっと僕らの愛しあう地球に これ以上の涙はいらない So smile
渋谷すばるさんの歌声ではじまる、この一行が好きで。
抗えない出来事に怒りさえもぶつけ所がなく、ただ立ち尽くすしかないとき、この歌詞は綺麗事と片付けるにはあまりにもったいない真実を掴んでいると感じた。
自分が活力に満ち満ちているときに聴くと、スケールが壮大すぎる?と戸惑う感覚になったりもする。でも凪のような心境を取り戻したいときに聴くと、落ち着くテンポと柔らかな曲調に安心できる。
なにより、穏やかでいることを肯定してくれる曲を一曲でも関ジャニ∞が歌っていることは、優しく居つづけることの勇気になると思った。
この曲は、シングル「無責任ヒーロー」の初回盤Bに収録されていて、2008年に放送された環境問題を取り上げた、関ジャニ∞も出演する番組のテーマ曲になっていた。
作詞:関ジャニ∞、TAKESHIさん
作曲:TAKESHIさん。編曲:船山基紀さん。
同じ時代に生まれて 何気なく暮らすその中で
と続く歌声は大倉忠義さんの歌声で、ドラムがツッタンと一定のリズムを刻むなか、まどろみが漂う低音で歌う大倉さんの声色がとても素敵。
錦戸亮さん、安田章大さん、丸山隆平さんとバトンを繋ぐようなパート分けが陽だまりの温度を段々と増していくようで、とくに丸山隆平さんの声がまさしくオレンジ色の暖かみを醸し出している。
2番に入って横山裕さんの次には村上信五さんが続き、バトンは完成する。
今から約11年前の関ジャニ∞。それぞれの若々しい声が聴ける楽しさもある。
サビに入り、声が合わさってユニゾンに聴こえるものの、安田さんが上ハモをしていたり丸山さんと大倉さんが下ハモをしていたりする。
主メロで際立っているのは渋谷すばるさんだけではなく、錦戸亮さんの声もぴたりとピッチを寄り添わせて、なおかつ声質が違うことで重ならない部分の旋律が音に厚みを作る。
渋谷さんの縦方向に細かくギザギザ揺れる声の波に、村上さんの声が合わさると、凹凸の作用みたいにまろやかなラインができる。
頭の中でそれぞれが歌っている旋律を、なんとなくでも楽譜の4本線みたいに思い描くと、音符は忙しく行ったり来たりしているのがわかる気がした。
シンプルなようでいて、そのシンプルという美しさをつくるための計算式が素晴らしい曲。
これ以上の涙はいらない
切実にそう思った時間を忘れることはなく、たぶんこれからも力なくそう願うしかできないことが沢山あるのだと思う。
渋谷すばるさんが、関ジャニ∞が歌ったこの言葉と「fuka-fuka Love the Earth」という曲全体に溢れる物腰柔らかな空気を思いながら、優しくあることを捨てないでいたいと、ふと感じた休日の夕暮れだった。