想定外の恋心 − 関ジャニ∞「ローリング・コースター」

 

思い込んで Up↑ Down↓

他でもない 僕にとってスウィートなお相手

それってもしや君ですか?

まさに心はローリング・コースター 

 

想定外の恋心に戸惑って、振り回されて、思った通りにいかないもののそれでも頑張る男心。

振り回される状況を“ローリングコースター”つまりジェットコースターに例えているのが正しくぴったりで、意味合いは同じとしてもローリングと言葉が付くことで、360°ぐるっと回る激しめのジェットコースターを想像できるところが表現としてすごい。

 

恋に落ちる予定じゃなかった相手に心揺さぶられている自分に驚きながら、予測不可能で読み取ることができない彼女を想ってぐるぐると考えを巡らせる彼の心情が、手に取るように伝わってくる。

“恋をしている時”ではなく“恋に落ちた瞬間”の、その一瞬のときめきの濃度がこの曲にはある。

まさか好きになるなんて、という感情は、恋愛や人相手に限らず、何かを見つけた時のときめき全てに共通する感情だと思う。それが全く予測しなかった方向であればあるほど、スピードは早く、振り幅と揺り動かされる重力も大きいものがある。

 

関ジャニ∞のアルバム「PUZZLE」に収録されている、2009年リリースの曲で

作詞は田中秀典さん、作曲は野間康介さん。

 

ライブでもバンド曲として強い力のある曲だと感じていて、始まりの掴みが特にすごい。

“思い込んで Up↑ Down↓”と歌い出す錦戸亮さんの声で、瞬間的に「ローリング・コースター」だ!!とわかる。そして歓声の波が、わぁっ!と広がる空気感。

ボーカルから始まり、ギターが入って、“スウィートなお相手”でチキチーとドラムが入ってきて、“まさに心はローリング・コースター”で音がバッと開ける感覚。次のフレーズからベースの音が濃く聞こえ出すところもいい。裏打ちのドラムのリズムの心地よさは最高で、思わずリズムを取りたくなるテンポ感。

曲自体の人気と、歓声が湧きやすい間合いのある絶妙な構成の曲だと思う。

 

 

歌い出しや大サビ前のソロパートからも伝わる、「ローリング・コースター」と錦戸さんの声の相性の良さは格別で、錦戸さんの喉を擦るようなスモーキーな声が際立っている。

渋谷すばるさん×錦戸亮さんのツインボーカル…!というインパクトを感じるのは、「LIFE~目の前の向こうへ~」と「ローリング・コースター」が強い。

しかし、前面に出てきているイメージのある錦戸さんのボーカルは、2番サビになるとハモりに回っていて、その移り変わりの自然さに驚いた。 

 

大サビ前、錦戸さんの声にエフェクトが掛かって、“戦力もない”のあとに一拍置いて、“まさに心はローリング・コースター”で伸ばして歌うところに“ほのめかして”とかぶせ気味でボーカルが重なるところに、盛り上げの黄金比になる間合いを感じる。

バッファロー’66」という映画を教えてもらって以来、「ローリング・コースター」はこの映画にぴったりだと思うようになった。洋画で、日本語版キャッチコピーは“最悪の俺に、とびっきりの天使がやってきた”

この言葉がまた、どこかこの曲の世界観と通じる気がしている。

 

“気がすむまで食べる”の安田章大さんのパートなど、メンバー個々のボーカルパートがあるのも魅力で、“そんなイメージじゃないけどな”と歌う丸山隆平さんの声色からは困り顔が想像できるようなところも好きだ。

ライブで見ていても、順にカメラに大きく抜かれるカット割は楽しさのポイントだと思う。

 

お腹いっぱい食べて、眠たくなって、全額支払ってくれた彼に「紳士ぶってウケる」と言っちゃう女の子。

聴くたびにいつも、女の子のリアクションに謎が多い気がしていた。

好きな人に、ちょっと面白がるニュアンスで「ウケる」とか言うかな…わりと好きな人の前にいる時って緊張してお腹空かなかったり、ごはんが喉を通らなかったりするんじゃないだろうかとイメージしてみて、

そうか…女の子ははなから“彼”に対して何とも思っていないからこその自由奔放さなのかもしれない…と気づいてしまって、気づいてしまったこっちがなんだかグサッときた。

緊張されてない、だからこその自然体。切ない。

 

ほのめかして Up↑ Down↓

紛れもない 僕にとってビンゴなお相手

君はどんな気持ち…ですか?

もはや心はローリング・コースター

伸るか反るかのローリング・コースター

 

“思い込んで Up↑ Down↓”が、“ほのめかして Up↑ Down↓”になっていたり、“まさに”が“もはや”になって、“心はローリング・コースター”と続いていたりするところが、くるくると入れ替わる彼の心情そのものを表しているように聞こえてグッとくる。

そして最後のフレーズになって、“伸るか反るかのローリング・コースター”と言い切るところには、もうー…と肩の力が抜けながらも思い切って挑んでいく様子が思い浮かんで、頑張れ…!!と後押ししたくなる。

なんだかんだで追い続けてくれた彼が側にいなくなってみて、そのことをふとした瞬間に自覚した彼女が今度は矢印が入れ替わって追う側になって、それを待っていた彼と結局は両思いになったらいい。

 

振り回されて報われずな恋を歌うことが多かった関ジャニ∞

最近徐々にエスコートする側の大人な歌を歌うようになってきて、その魅力にもグラッとくるけれど、でもやっぱり眉を下げて翻弄される関ジャニ∞が好きで、追い続けるどこか冴えない男性視点の歌はこれからも歌いつづけていてほしい。