年に1度、特別なダージリンクーラーとディズニーシー

 

年に1度、ディズニーシーへ行く。

その日は特別。全力で楽しむ。

朝日が昇りきる前の空が見える電車の中で、この日のために作ったセットリストをiPodで聴いた。1曲目はスキマスイッチの「惑星タイマー」で、夜明け間際の空にはこの曲がとてもよく合った。

 

いつも照れが先行して着けることが出来なかった耳のカチューシャを、今年は着けて遊ぼうと決めていた。選んだのは、赤いリボンのミニーの耳。王道は選べない、目立たないようにしたい、そんな自分が変わりつつあるんだなと感じた。

はっちゃけるのも楽しむのも、苦手でぎこちなくて、でも楽しみたい気持ちはあって、その殻を脱却できるようになったのは、自分の心掛けと、ライブに行くようになってその方法を覚えたからだと思う。

写真に写る表情が、年々柔らかく、嬉しさが素直に出るようになっている。

 

この日、ディズニーシーに来たら観てみたかった、「ダイヤモンド・シスターズ」というショーを観ることができて、すごく嬉しかった。

タップダンス、歌。ブロードウェイのステージを目指してシンガーを探すエージェントと、ダンサーの2人で始まるそのショーは、エンターテイメントに満ちていた。ブルースのかっこよさもあり、目の前で聴く全力の“がなり”は鳥肌が立つほど迫力があった。道で突然開催されるアトモスフィアという形式の「ダイヤモンド・シスターズ」は、立派なショーで、このショーを観るためにまた来たいと思うくらいに素敵だった。

 

毎年の恒例になっているミッキーとグーフィーへの挨拶もできて、ここへ来ると、ああ一年頑張ってきたな。よかったな。と思える。

そしてお昼ご飯。幼い頃に食事をした思い出のあるレストラン「セイリング・ディ・ブッフェ」が3月31日でクローズしてしまうという知らせを聞いてから、この日の昼食はここでと決めていた。ローストビーフや、ツナとポテトのグラタンわさび風味。お腹いっぱい食べた。最後にくることができてよかった。

 

 

ステージで観るショーも好きだけど、アトモスフィアのようにばったり遭遇して近づいて見入るショーも好きだった。

アクアトピアなどがあるポートディスカバリーのエリアを歩いていると、楽器の音が聞こえてきた。思わず近づいて、空いていた真横のスペースに立ち止まると、今始まったところだった。

演奏していたのは「タイムトラベラーズ・バンド

金と銀のトランペット、トロンボーン、チューバ、ドラム、ブラスバンドの演奏は音がそのまま目の前に迫る勢いがあって、かっこよくて。ちょっと見て離れるつもりが予定変更になった。

音がよく反響する屋内で演奏するのと屋外で演奏するのとでは、違った難しさがあるのだろうなと感じたり、トランペットに金と銀があることや、音を前に勢いよく出して音程を当て続けることの難しさを感じることができるのは、関ジャニ∞でバンドを見るようになったからだなと思う。音への関心、楽器への興味そのものが自分の中で変化していることを実感した。

 

奏者さんと目があってドキッとしたり、チューバに頭を食べられるみたいにしてボオーッって音を浴びせてもらったり、楽しいサプライズが色々起こった。

「好きな作品でリクエストがある人ー!」という場面で、照れずに乗っていってなんぼだと手を上げたら、「君!」とまさかの当てられた。「リトル・マーメイド」とリクエストすると、「オーケー、任せて」とグーサインを作って颯爽と去って行って、誰が吹く?と会議をするとバンドメンバーの1人が「私が」と言って、目の前へ来て、なんと私に向けて「パート・オブ・ユアワールド」を吹いてくれた。嬉しくて嬉しくて、今日のピークはここだと思った。

 

ランドホテルのラウンジに行ってケーキを食べようと、初めてのランドホテルのラウンジでチョコレートケーキを食べた。こんなに素晴らしい景色の席に座っていいのだろうかと思うくらいの、目の前には大きなガラス窓があって、天井は見上げきれないほど高くて、特等席のようだった。

紅茶のポットの蓋を開けることができなくて、カチャカチャしながらうわどうしようと焦っていると、キャストの方が「お開けしますね」と蓋を開け、茶葉を取り出して、そのまま片手でポットを持ってカップに注いでくれた。紅茶をぴたっと止めて切る手首の返し方も一連の動きもすべてスマートで、まさか注いでまでくれるとは思わなかったびっくりと、プロだ…と見惚れる動きのしなやかさに感動した。

 

 

ランドではなくシーに行くのは、海外の雰囲気の中にいられることと、S.Sコロンビア号という船があること、そしてもうひとつ、憧れのラウンジがここにあるから。

テディ・ルーズヴェルトラウンジ」はS.Sコロンビア号の中にあって、私はずっとこのラウンジに入るのが夢だった。10代の頃から丸い窓越しに店内を眺めては、きらびやかないくつものボトル、落ちた灯りが照らす木のテーブル、カウンター席に座る大人たちに憧れて、まだまだずっと先のことだけどいつかここでお酒を飲みたいと思っていた。

数年前、その夢がかなった。初めて飲むお酒は、なにか思い出に残り続ける特別なものがいいと考えていた。

数年前のその頃、NEWSの増田貴久さんのラジオ「MASTER HITS」にメッセージを送った。初めて飲むお酒でおすすめのものを教えてくださいという内容。誕生日のその日、電車に乗りながら、願う気持ちでラジオを聴いた。読まれていた。

一生に一度、二十歳になるその日の放送で、読まれるとしたらこの時しかない日に、読んでくれていた。

 

その日からダージリンクーラーは特別なお酒になった。

聞いたことのないお酒の名前だったし、ディズニーシーのラウンジでそれが飲める保証もなかったけど、必ず飲むと決めていた。ドキドキしながらメニューを見ると、見つけたその名前。それから毎年、ここで、このお酒を飲むことが楽しみだった。

去年はラウンジが混んでいてお預けになってしまったから、今回は2年越しの念願だった。カウンター席に通してもらうことができ、未だ慣れない大人な空気に飲まれながら、自分の口から「ダージリンクーラー」とオーダーした。

美味しい。毎年のように飲んでいても、普段ほかのお酒を飲むことがあっても、ダージリンクーラーが1番美味しい。

 

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ダージリンクーラーは、紅茶のリキュールのお酒。

フランボワーズのリキュールとレモンジュース、ジンジャーエールが入っている。レモンのスライスも。アイスティーのような見た目に、味は紅茶の香りとジンジャーエールの爽やかさが合わさって、ほのかにフランボワーズの味がする。スライスされたレモンは目にも嬉しく、かき回せばレモンの風味が増していく。

初めて飲んだお酒だから、特別に美味しく感じるのだろうかと思っていたけど、本当に好みの味にぴったりきていたんだとここで飲みなおす度に思う。一度だけほかのお店で飲んだけれど、泡が残って美味しくなくて。やっぱり味もディズニーシーのラウンジが美味しい。

 

大好きな景色の中で、ショーを観て、ミッキーたちに会って、ポップコーンいっぱい食べて、ブラスバンドにときめいて。ダージリンクーラーを飲む。

こんなに楽しい一日ってあるんだなと、来る度に思う。 一年に一度でなくてもいいかも、なんて思ったりするけど、なんだかんだで一年経つのはあっという間だから。また来年の自分が、懐かしく振り返ることのできる時間を積み重ねられるように、行動を起こし続けていくことにしようと思う。

 

帰りのバスの中、夜の高速道路と東京の景色を見ながらふとこの曲が合う気がして、関ジャニ∞の「Street Blues」を再生した。

ほぼ同時に見える東京タワーとスカイツリーの明かりが夜の中に幻想的で、対向車線の車のライトを見ながら、この東京で頑張っているんだなと関ジャニ∞のことが思い浮かんだ。バスの少し高い位置から見た東京の景色は「Street Blues」の大人な雰囲気にぴったりで、それが楽しくて何度も聴いた。

曲と思い出を意識的に紐付けるのはベタだけど楽しい。「惑星タイマー」と「Street Blues」はこの日の思い出と一緒に残るオープニングとエンディング曲になった。

 

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