改札を抜ければ、見上げずにはいられない建築の美しさ。
イエローにホワイト、ブラウンがアクセントのドーム型の高い高い天井。
何年振りだろう、東京駅の改札を出たのは。
来るとしても、それはいつもディズニーシーへ行くための途中駅で、一切無駄のない京葉線への乗り換えを目指して通り過ぎていたから。
そもそも地元を出て、都会に出掛ける用も気持ちも無く毎日を過ごしてきた。
これはこれで生活出来てしまうんだと、どこか寂しかった。
先月、「ディズニーオンクラシック」を観に行った日。
観に行くこと自体、簡単に決められたわけではなくて、アプリもインストールして、その日までの外出は可能な限り無くした。
それで、久々の東京駅。
ホームページを見てもわからないほど、東京駅の中にはレストランやショップがある。
お昼を食べておいたほうがいいかなと、どこなら緊張せずに入れそうかすこし見て歩いた。
多分、たどり着いたのは「グランスタ東京」のエリア。
最初に見かけたパン屋さん「THE STANDARD BAKERS」を気に入って、そこでクロワッサンとクロックムッシュを選んだ。
コンサート前にコーヒーは摂取しないようにしてきたけど、ここで飲むにはカフェラテのホットがきっと合うと、注文した。
カフェラテにお砂糖は付かなかったけど、今日はそれでもいい気がして、クロワッサンの甘みと合わせて飲んだら美味しくて。
焦茶色のウォルナット。木製テーブルに、ブラックのスチールがアクセントになるインテリアが店内には並んでいて、今まさに好きな雰囲気の空間だった。
ゆっくりしたいとこだけど、お腹を満たしたら少しばかり構内を見て、国際フォーラムまでは歩いて向かう予定。
Suicaグッズや東京駅デザインのグッズが並ぶ「TOKYO!!!」についつい近づいて、Suicaの缶にペンギンタブレットが入ってるやつ!ネットで見た!と思ったり、あの素敵な東京駅の外観がグッズになっているのを見て感動したりした。
買うことにしたのはポストカード。
時間だから行かないとと丸の内 中央口改札を出たのに、左手側にある何とも言えない紳士な風格を漂わせたお店に心惹かれて、
ちょっとだけ、さっと見るだけと店内に入った。
そこは東京駅がホテルになったTHE TOKYO STATION HOTELのグッズを取り扱う、「SOUVENIR SHOP 丹波屋」で、好きにならないはずがない。
301と掘られたゴールドのルームタグのようなキーホルダー。東京駅が線画でプリントされた紅茶缶は、水色と紺の色合いが素晴らしくて、家に置きたい…でも缶はかさばる…何に使うつもりで?と帰りも見に行くほど迷いに迷った。多分、いつか迎えに行く。
今日のところは直感を信じるべしと、初めに目に止まった“TOKYO STATION HOTEL”の書体が美しい、真鍮(しんちゅう)のアクセサリートレーを選んだ。
カメラを持って来ていたから、それを入れるのにぴったりなミニトートも。
その小さなお店の入り口近くにあるポストも、なんだかおもしろくて、
郵便局が深く関わるショッピングビル「キッテ」がそばにあるからだろうかと思いながら、写真を撮った。
外に出て、道なりに真っ直ぐ歩けば東京国際フォーラムが見えた。
オフィスビルの並ぶ街並み、ハトバスの列、広くて長い道を見ていると、地元は都会と呼ぶにはまだまだだと感じて、世界は広いなとやたら壮大な気持ちになった。
コンサートが終わり、もう少しこの空気の中にいたくなって、ずっと憧れていたカフェ「Cafe1894」へ立ち寄ることに。
三菱第一号美術館と隣接しているこのカフェは、明治時代に銀行営業室として利用されていた空間を、復元した場所。
外観のレンガ、入り口の大きなアーチ、内装のアンティークなテーブルや椅子。高い天井。
鳩やコイン。メリーポピンズを彷彿とさせる、重厚感のある銀行の雰囲気に心躍る。
せっかくのクラシックコンサート、ほんのりシックな服で行こうとワンピースを着て革靴をチョイスして、がま口風のバッグにして大正解だったと嬉しくなった。
自信を持ってこの場所に居られる。がま口風バッグなんて銀行のコンセプトにぴったり。
アップルパイとアッサムティーを頼んだ。
パイで包むというより、パイを器に、りんごが中に。そしてシナモンの合わさったしっとりビスケットが上に乗っている。
バニラビーンズの入っているバニラアイスと一緒に食べると、とっても美味しい。アッサムにミルクを注ぐだけで嬉しくなるのは、関ジャニ∞を好きなゆえに。
しゃんと背筋を伸ばして、でものんびりした時間の中で気持ちはほぐれて。
来られてよかった。入るまでのドキドキに負けて引き返したりしなくてよかった。踏み込む勇気、大事。
レトロで魅力的な建築から出てくるのでさえ楽しい。小さな階段の真ん中を、気持ちゆっくり噛みしめるように降りた。
三菱第一号美術館の中央には庭園があって、ちょっとだけ覗くことにした。
温かみのある街灯、角度を合わせたらハート型になるモニュメント。ベストな写真が撮れるよう、スマホスタンドがなんと用意されていて、そこに置いて撮れば見事なハート。
立ち位置まで親切に記してあって、一人の照れより記念写真を残したい気持ちが勝り、セルフタイマーで自撮りまでした。
東京駅へと戻る道すがら、ピクシーダストのように黄色く粒で輝くささやかなイルミネーションが綺麗で、それならこれを聴くしかないとSEKAI NO OWARIの「silent」をイヤホンから流した。
まるでミルクを溢したそんな夜
心に広がる温かさと、満たされていく足りなかった何か。
オーケストラの音色、歌声、ディズニー音楽のエネルギー。そして東京駅の灯りが、時折巡ってくる最高の一日は確かにあることを思い起こさせてくれた。
東京駅へと帰ってきて改札を通るころ、これから訪れる冬への不安はもうなかった。