ビックバンドで輝くスター 佐藤勝利さん ソロ曲「Kiss You Good-Bye」

 

好みの音が飛び込んできて、何事かと思った。

iPodの画面をすぐに確認して、佐藤勝利さんのソロ曲だと知った時の驚き。

とびっきりジャジーに、魅惑的に。スウィングを効かせて、ウッドベースが誘うリズム。トランペットにトロンボーンが弾ける。ドラムが刻むビートは時に強く、時に微かに。

 

ここまでくると、好みがはっきりしているを超えて癖なのではと思えてくる。

少年隊「まいったネ 今夜」の雰囲気が好きだったり、関ジャニ∞Street BluesHey! Say! JUMPMasqueradeジャニーズWESTParade!!」King & Prince「Moon LoverTravis Japan夢のHollywood」が好きな人にこの曲は120%刺さる。

悲壮感を漂わせる歌詞の魅力は、ジュリーである沢田研二さんの「勝手にしやがれ」に通じるものがある。

それなのに、シャッフルで耳にするまで気づかずにいたなんて。ライブでも披露したのだろうか?どんな演出でだろう?と想像が膨らんで止まらないほど、魅惑的な曲だった。

 

Sexy Zone 佐藤勝利さん

Kiss You Good-Bye

作詞:EMI K. Lynn

作曲:Fredrik”Figge”Bostrom / Shu Kanematsu
編曲:Shu Kanematsu / 生田真心

Sexy Zone アルバム「XYZ=repainting」通常盤 Disc2に収録。2018.02.14 リリース。)

 

もはや、ビックバンドビート。

ディズニーシーで観ることのできる、あのショーを佐藤勝利さんアレンジで観ているような贅沢さ。

ネクタイではなくブラックの蝶ネクタイで。

タキシードよりも後ろの長い、燕尾服(えんびふく)をひるがえして、ターンにステップ。キザに決めたウインクすら飛んできそう。

それを佐藤勝利さんがひとりで歌っているというのは、大きな幕を背負い舞台に立つ佐藤勝利さんを観られていない私は以外なように思えたけれど、

立ち位置“0番”である、センターに立ち続けてきた佐藤勝利さんが、パークのショーでスターとして輝くミッキーさながら、ビックバンドを背負うというのは物凄くしっくりきた。

 

照明の少し落ちたジャズバーで、白シャツにサスペンダー、黒のボトムに艶やかな黒の革靴を履いて、シルバーのスタンドビンテージマイクを手に握って歌う姿も見てみたい。

ラグジュアリーなJAZZのムードに浸ることを追求したソロ曲があることだけで夢のようなのに、佐藤勝利さんがそれを魅せているというのはもはや幻のよう。

 

歌詞とは別のところで聴こえる、佐藤勝利さんの声の「Uu」「Ah-」などのフェイクの付け方や、リズムを後ろ重心に取るセンス。

ヴルーヴを感じさせるということは、不規則なリズムを乗りこなすこととも同意義だと感じる。演奏のテクニックは勿論のこと、その波を乗りこなすボーカルの妙技。

Walkin' out the door 

“door”で低音へとグーンと降りていくところに、ジャズを感じてグッとくる。

Made you cry cry cry

スモーキーさのある歌声が活きる曲調のなかで、“cry”はクリアに跳ねるように功を描く。

 

君を傷つけたのは そう俺だから

と歌うパートで、“そう”を台詞っぽく瞬間的に置いて、“俺だから”で歌い上げる緻密な演出。

『ら』の揺らし方が、ビブラートと言うのもちょっと違う、“らあーあーあー”で『あ』の音でで揺らしている感じがたまらない。

フォールで落ちていく声。そこからトランペットで開けて行くメロディー。

 

Kiss You Good-Bye

“Bye”が力抜け気味に消えていくニュアンスも素晴らしい。

はじめの“Bye”は儚さを見せるけれど、次にでてきた時には“Bye”は少し強めだったりする。めくるめく声で魅せる表情の変化が、息つく暇を与えない。

 

歌声の魅力を追うのにも一生懸命なのに、ドラムのスーチチッと鳴る音感、ビックバンドの編成から構成の魅力と、4分間の中に語り切れないほどの小宇宙がある。

序盤、中盤、終盤の各セクションで表現されるメリハリ。エンディング直前のもう一押しの盛り上がり。

繰り返し聴けば聴くほど、目の前に広がるのはレッドカーテンを開けて照明の当たるステージ。

ベルベットのようなふかふかの座席に座る私は、フィナーレの歌声と存分に鳴り響くトランペットの後で立ち上がってブラボーと拍手を贈りたくなる。

 

イヤホンを耳にそんな高揚感に浸って、ひとり拍手をするのは流石に照れたものの、誰もいない場所で小さくガッツポーズをした。

華やかさに飲まれることなく、もっと強い光を放つ。ビックバンドの前に立つのはスターの証。

佐藤勝利さんの魅せるステージの輝きを、音から浴びた一曲だった。