外は澄んだ空気なのに、窓を伝う雨がまだ止んでいないような。
お花屋さんを見るたび、特別な思いを持ち立ち止まるようになったのは、Nissyの歌う「花cherie」を聴くようになってから。
“花”がテーマの一つになっているこの曲を、季節ごとに咲く花を眺めては思い出している。
Nissy「花cherie」(はなしぇり)
作詞:SAKAI youthKさん、Takahiro Nishijimaさん
作曲:SAKAI youthKさん
蕾の中で 君が待ってる
淡い夢を毎晩見るの
2ndライブで歌った時の演出がとても印象深く、繰り返し見た。映像になっている、あの間奏での眼差し。一瞬だけ合うピント。逸らされる目線。
自分にとって曲の歌詞は、小説を読むのと同じ意味を持つことを、歌詞の何が好きかを考えているとわかってくる。
抽象的な余白があって、何を明言しなくても、心惹かれるその語感と字の並びの美しさ。想像を膨らませると、色鮮やかに広がるストーリー。
ねえ、また 静かな夜は
そのささやく声に添うように、ぽろろんと鳴るピアノ。
全体を通して優しく響くピアノの音と、バイオリンなどのストリングスの音が描く曲線が綺麗で、耳に優しい。
曲ごとに喜怒哀楽の移り変わるNissyの歌声。この曲で聴こえる、悲しげだけど寄り添っている声の表情に癒される。
涙をそんなことに 使わないで
そんな君でも綺麗だから
優しい香りがした 君の花
僕の水面で 咲いておくれ
どんなことで胸を痛めた為に、誰に向けて涙を流しているのか。
涙について、“そんなことに 使わないで”と語りかける視点に驚いた。
大切だから笑っていてほしいと見守る歌詞は聴くことがあっても、涙をその視点で着目することができるんだと、柔らかいけど切実な願いが響いてくる。
泣いていることに、ではなくて、胸を痛めなくていいはずのことで泣かなくてはいけない状況を憂いているように聴こえた。
今は悲しい言葉たち 言わないよずっと
君と笑えるのを僕が 見つける時まで
歌詞に出てくる“君”と“僕”が好きで、Nissyの歌に出てくる“君”と“僕”が特別に好きなことに気がついた。温度感が心地いい。
“君と笑えるのを僕が”の歌詞も、“僕が”を最初に持ってくるのではなくて、“君が”先にくる歌詞の中の主人公の心情に惹かれた。
メロディーに合わせる意味もあってこの順番になった可能性もあるけど、意識的に選んでいる気がする。
どちらにしても、完成したこの形が好きになった。
今でも、お花屋さんの前を通れば目線が向く。
Nissyと小松菜奈さんの見せた、MVの二人の悲しく可憐なワルツを思い出して、モノクロから淡いピンクが花咲く景色を思い描く。
落ち着いたメロディーに触れたいとき、ふと気づくと「花cherie」を再生している。