奥行きのおもしろさ

 

嵐山の竹林は、どこまでも同じ景色が続いているようで、けれど飽きることがない。

近くにある竹、遠くにある竹、その遠近感と光の差し込み具合で、吸い込まれていくような感覚になる。でも不思議と怖くはなくて。薄暗さが心地いい。

“奥行き”の楽しさをここでは体験できる。沢山の同じものが並んで、近かったり遠かったりして表情が変わる。レアンドロ・エルリッヒの美術展に行った時のような、体験型の美術作品のおもしろさだと思った。

 

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人力車からの景色もいいけれど、足で歩き進めて自分の速さで景色が動く竹林は、それはそれで楽しさがある。

関ジャニ∞の曲「ここにしかない景色」のMVで丸山隆平さんが立っていたのは、ここ嵐山の竹林。ロケ地だということは知っていたけど、具体的な撮影位置がどこなのかはわからないままで、昨年は歩いただけでその場所は探さなかった。

一人で来ていて、好きなように歩いていいわけだから、あてはないけど探してみようと、何本かに分かれている道を進んでこっちかなあっちかなと行ったり来たり。

竹林の途中に小さな踏み切りを見つけて、意味もないのに渡ったりした。

撮影地である目印は、看板が背景に映り込む場所であることだった。わからないなーとぷらぷら歩いていると、途中で雨がぱらついてきた。雷も鳴っていて、人力車を優先しておいてよかったなと自分の計画性をちょっと誇らしく思った。

来た道を引き返したりを繰り返して、確か天龍寺の庭へ入る裏口を横目に通り過ぎて、ずっと向こう。緩やかな坂を登ったあたりでようやく看板が見えてきた。

 

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人が多く集まっていたから、竹林のメジャーなスタート地点なのかもしれない。どの道からたどり着いたか、標識よりも勘を頼りにくまなく歩いていたから分からないのだけど、多分また、たどり着ける気はする。

 

竹林を歩きながら「大阪ロマネスク」をずっと聴いていた。ここでなら聴けるかもしれないと思った。シャッフルしているから他の曲も聴けるのに、何度も戻して、ずっとずっと聴いた。

感傷に浸りたいというよりも、竹林の静けさにはこの曲が何より合った。

大阪へ来てから不思議なことに、関ジャニ∞の曲を聴きたくなるようになった。聴けなくなるか、聴きたくなるか、どっちだろうと思っていたけど、関ジャニ∞が7人でいるこの時に大阪にいるというのは大切なことで、気持ちがそう動いたなら勿体ぶらずに聴きたいだけ聴こうと思っていた。

曲に記憶が染み込んでしまう恐さはあったけど、こうなったらもう今感じているもの何もかもを全力で覚えておこうという気持ちだった。

 

竹林には1時間半近くいた。

静寂があって、緑以外に情報が何もないのがいい。頭の中の静けさを取り戻したひと時だった。