「Melody」という曲を、ひたすら聴いている。
耳に心地よくて、聴きたくなる。
それがなぜなのかを考えたくなった。
8LOOM「Melody」
作詞:JUNさん
作曲:UTAさん
始まりを見つめると同時に締めくくりを見つめることになる、ボーイズグループ『8LOOM(ブルーム)』
ドラマ「君の花になる」から実在するボーイズグループへと飛び出していく企画性。
俳優さんたちがアイドルという仕事を演じるだけでなく経験するということに、注目せずにはいられなかった。
ドラマ内のバンドやグループが実際にライブをするというのは、これまでも行われてきた。
「ハンナ・モンタナ」のハンナのライブチケットが本当にプレミアチケットになったことや、
「美男ですね」のA.N.JELLは特に印象深い。
テレビ局としての気合は放送前から伝わってきていて、ポスターデザインからは韓国ドラマに見ることの多い青春群像劇の空気を感じた。
そのドラマ「君の花になる」で、グループのセンターでメンバーカラー赤の佐神弾を演じるのが高橋文哉さんだと知って、度肝を抜かれた。
TBSドラマと高橋文哉さんと言えば「最愛」形容するのを躊躇うほど危うく儚い横顔と、じわーっと心に広がっていくお芝居は、石に彫るかのごとく記憶に残った。
その後も、医療ドラマで翻弄されるコミカルさのある役も見てはいたものの、いわゆる“俺”感の強い役に今挑戦するとは思わなかった。
8LOOMは7人。
もう1人の存在もどうやらありそうではある。
オーディションからグループのメンバーに選ばれた1人1人がレッスンを積んで、ダンス、歌とパフォーマンスを磨いた。ダンスのスキルが既に高いメンバーもいる。
巧を演じるのは、NOAさん【紫】
栄治を演じるのは、八村倫太郎さん【白】
有起哉を演じるのは、綱啓永さん【青】
竜星を演じるのは、森愁斗さん【オレンジ】
宝を演じるのは、山下幸輝さん【黄色】
大二郎を演じるのは、宮世琉弥さん【ピンク】
グループとして、すでに2曲が誕生している。
「Come Again」と「君の花になる」
そして3曲目が「Melody」
ドラマ放送中はさらりと耳心地のいいメロディに、そこまでの引っ掛かりを感じていなかった。
でもどうしてか、その作り込みの緻密さに圧倒される感覚はあった。考え始めるとどこまで掘ることになるか分からないと、一旦は蓋をしたくらいに。
それでも聴き込みたくなって、Apple Musicで購入。目が覚めてから、朝の支度をしながら、この間は都内への移動の最中ずっと、聴いていた。
歌い出しからAメロ、サビも全て、基本がファルセット(裏声)になっている。
歌い繋ぐメンバーが変わっても、ささやくファルセットはキープされる。
息を多く含んだウィスパーボイスが心地よく響いて、そこに重なっているのはベースの低音が効いたメロディ。
ただファルセットを続けるだけでは曲にメリハリが無くなってしまうし、地声が出過ぎてもこの曲調では浮いてしまう。ボイストレーニングを相当緻密に積んだか、レコーディングでの指示が明確だったのではと考えた。
この歌い方が個人的に印象に残っていたのは、BTSの「Permission to Dance」だった。主にジミンさんの歌声。
そして「Melody」では、歌う時にあまり口を大きく開かずに発音している。
口の中で音を作って、舌の上の空洞で響かせているみたいな感じで、それは番組「よるのブランチ」での歌唱の様子からも見て取ることができた。
舌ったらずのような発音になるので、ある意味では歌詞カードを見ないと言葉を聞き取れないところもあるのだけど、
それによって“言葉”よりも“メロディ”が前に立つ。
さらに、アクセントを効かせるところが的確で、“そばにいるだけで”の『そう』が下から這い上がるような濃さになっていたり、
“色褪せないメロディー”の『いろ』の前に小さな『ん』が入っているような音が入っている。
“たちつてと”もあまり際立たせないことから、作詞・作曲・編曲、レコーディングと、KPOPにどんなエッセンスがあるのか、調合を相当に研究した人が作っているか、実際に同じ製作陣から作られているかのどちらかだと思っている。
調べていると、作曲も振り付けもKPOPのアーティストにも携わる製作陣が実際に揃っていると分かった。
振り付けはReiNaさん。8LOOMが踊るダンスのほとんどを振り付けている。
これほどのクオリティで成立していて、楽曲陣の本気と俳優さんの本気が化学変化を生じさせていることに感動する。
曲の空気感を作る意味で、声帯模写と言えるのではと思う。
アイドルが多様なのは今に限らないと考えているけど、自分にとって見ている範囲で大まかに分けたとき、
ジャニーズの曲は言葉をはっきり発音していて、歌詞の意味を含めて曲を受け取るイメージ。
KPOPグループの曲は振り返しのフレーズの差し込み方や、ラップのインパクトがあるイメージ。
日本人メンバーがいるグループ。日本人メンバーでプロデュースが韓国のグループ。日本でのオーディションから誕生したグループにまで視野を広げていくと、本当に千差万別だと感じる。
だからこそ、既に実際するグループがこんなにもある中で、あえてドラマから企画を大きく広げて人気を掴む自信を持てるプロデュース方針とはどんなだろうと気になって仕方なかった。
この3曲に渡るプロデュース、グループの中で見えるメンバーの関係性の発信の仕方。
8LOOMが共同生活をすることから部屋のシーンが多いので、ジェラートピケとの部屋着コラボで販売。
ライブ開催にあたって、とことんアイドルグッズを追求したラインナップ。
本物に、本気でする。その覚悟を、プロデューサーさん、スタッフさん、何より本人たちからひしひしと感じた。
結果、ライブに申し込んだものの外れてそうかー…となるほどになっている。
もし8LOOMが目の前に存在した時、才能に尊敬と憧れの眼差しで見るのが弾で、この人のパフォーマンスから目が離せないと感じるのは宝だと直感した。
ダンスの大会で優勝経験があると、後から知った。
宝くんが唯一の関西弁を話すからということではない。多分、そうでなくてもダンスと魅せ方、宝として居る時の感覚に引き込まれている。
不意に始まる
メロディに惹かれて
このパートと一緒に、指パッチンでリズムを取っている振り付けがいい。
様々なバージョンのMVがあるものの、長回し風に進んでいくMVでのリアクションの取り方や、音源に含まれている口笛の音に合わせて指笛のジェスチャーをしていたりする細やかさにぐっときてしまう。
「よるのブランチ」でのフル尺パフォーマンスでは、ダンスのキレにグルーヴ感とウインクまで忍ばせられる宝くんの引力が凄まじかった。
歌い方、メロディだけでなく、歌詞にも好きなところがある。
君じゃなきゃ合わない My Place
Yes 声を聞かせてほしい
色褪せないメロディ
それが難しい今だから、“声を聞かせてほしい”が胸に響く。
“色褪せないメロディ”も、一度形になって耳に届いたメロディは鮮明なままという意味で心に残った。
君がハイノートで I'm Base
Yes 夢を見させてほしい
代わりのないメロディ
“ハイノート”(高音域)と“Base”(低音域)が出てきて、作詞と音楽の要素が色濃く伝わるところ。それを、君と自身に例えるところ。
続いて繊細な歌声で響く、“夢を見させてほしい”に喉がきゅっと切なくなる。ステージに立つ側が歌う意味でも、聴き手側が委ねる意味でも切実さがある。
“代わりのないメロディ”は正しくそうだから。
弾が書くラブソングという物語上の流れがありつつ、音楽へのラブソングとしても受け取れる。
曲として、ビートが効いていて、ファルセットが美しいことからくる魅力。
ファルセットを聴き分けるのはなかなか難しいけど、その中でもビブラートの掛け方などに個性があること。
ポップというよりはアンニュイで、がしがしに踊るというよりはリズムに合わせて踊れる楽しさがあるところ。
ひとつひとつに、そうある意味と魅力がつまっている。
音楽ランキングを見た時に、男性ボーカルにハイトーンが多い印象は今も続いていて、
配信でリリースされている3曲で「Melody」が上位にいるというのも、最新曲であるにしても興味深いことだと思っている。
8LOOMの何に引力を感じているのかを考える機会に出会えてよかった。この曲が誕生してくれたから、これからも暮らしの中で聴くのだろうと思う。
肩の力をゆるめてリラックスしたい時、今耳が求めるのが「Melody」だった。