憧れてきた黒の革靴

 

真っ黒な革靴。

マットな質感じゃなくて、ツヤっと光沢のある靴。

黒のスキニーと合わせて履いたら、きっと良い。

 

ずっと憧れで、だけど初めて買った革靴は、焦げ茶色のローファーだった。

HARUTAのローファーを普段着る服に合わせたっていいんじゃない?と思いついたら、それを試さずにはいられなくて、一足目はローファーになった。

ちょっとしたヒール部分が、焦げ茶、明るい茶、焦げ茶と三層になっていて、全体の色もヴィンテージっぽい濃淡の混ざり合った茶色なところを気に入って。

 

靴下が見えるから、ワンポイントで赤やカラシ色を取り入れるのが楽しくなった。

急いでいる時、すぽっと履けるのも便利で。

 

その後にも、一年に一足ずつの間隔で違うタイプの革靴を選んだ。

真っ黒な革靴を、これいいなと最初に思ったのはローファーを買ってすぐの頃で、次はこれかもなーなんて思いながらそっと置いた。

それが、5年前。

そろそろ買えるかもとお店に行った時にはもう、手に取ったあの革靴は無くて、バージョンチェンジしていた。ソールと本体を繋ぐステッチが、黒ではなく白になっていた。

これじゃないなー…。わりとショックで、ステッチひとつでこんなに印象が変わってしまうのかと、驚きでもあった。

 

真っ黒になるまで買わない、待つ。私は待つぞ。

そう決めて、ついに来たその日は5年後。自分のことだけど気の長さに驚く。

スーツに合わせたくなるような、メンズライクなシルエット。シンプルなデザインで、ツヤっとしていて、靴紐もステッチも何もかも黒。

これだ!と思ってからは買うまですぐ。

一度逃して、こんなにも待ったのだから、もう逃すのはいやだと決めた。

 

型は近くても、所々変わっていくのがHARUTAのデザインのようで、

新作かなと思ったこの靴も、ソールの色が茶に近かったのが、今回、黒により近くなったらしく。今で間違いなかったと嬉しくなった。

 

 

ローファーは、気づくと6年間履いていた。

まだ履こうと思えば履けたけど、新しいのを買うからには、黒の革靴と世代交代するつもりでいた。

中敷が指の跡になるほど大切に履いてきたローファー。

安田章大さんの舞台を観に、赤坂へと背伸びをしてやって来た日も、雨だったけれどこのローファーを履いていた。

 

修理も可能ですよ?と言っていただいたし、処分してくださいとお願いしておきながら、実際持って行かれる瞬間は寂しかった。

でも、持てる範囲で、限られた数のなかで大切にしていきたいと思うようになって、増やさないことにした。

 

 

スラックスみたいなパンツに合わせたら、とことんフォーマルに、格好良くなれる。

ワンピースと合わせたら、クラシカルな雰囲気になれる。

でも普段通りのコーディネートの中に、革靴を履くことでパキッとまとまる感じが一番好きだ。

 

ジャニーズのダンス衣装を見ていても、足元の革靴に目が行くようになった。

黒に白のワンポイントで、紐の革靴。ウイングチップのデザインをよく目にする気がしている。

ジャケットの下にベスト付きの、3ピーススーツに革靴で踊るジャズダンスは最高に格好良い。

 

そんなに憧れているなら、最初に買ったらいいのに。

タイミングがそのうちくると、すぐには手を伸ばさないのが良いか悪いかはよくわからない。

でもちゃんと手に入れた、理想のプレーントゥな黒の革靴。足に馴染むまで少し時間はかかるけど、大切に履くことにする。

 

冬の音が近づく東京駅

 

改札を抜ければ、見上げずにはいられない建築の美しさ。

イエローにホワイト、ブラウンがアクセントのドーム型の高い高い天井。

 

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何年振りだろう、東京駅の改札を出たのは。

来るとしても、それはいつもディズニーシーへ行くための途中駅で、一切無駄のない京葉線への乗り換えを目指して通り過ぎていたから。

そもそも地元を出て、都会に出掛ける用も気持ちも無く毎日を過ごしてきた。

これはこれで生活出来てしまうんだと、どこか寂しかった。

 

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先月、「ディズニーオンクラシック」を観に行った日。

観に行くこと自体、簡単に決められたわけではなくて、アプリもインストールして、その日までの外出は可能な限り無くした。

それで、久々の東京駅。

 

ホームページを見てもわからないほど、東京駅の中にはレストランやショップがある。

お昼を食べておいたほうがいいかなと、どこなら緊張せずに入れそうかすこし見て歩いた。

多分、たどり着いたのは「グランスタ東京」のエリア。

 

最初に見かけたパン屋さん「THE STANDARD BAKERS」を気に入って、そこでクロワッサンとクロックムッシュを選んだ。

 

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コンサート前にコーヒーは摂取しないようにしてきたけど、ここで飲むにはカフェラテのホットがきっと合うと、注文した。

カフェラテにお砂糖は付かなかったけど、今日はそれでもいい気がして、クロワッサンの甘みと合わせて飲んだら美味しくて。

焦茶色のウォルナット。木製テーブルに、ブラックのスチールがアクセントになるインテリアが店内には並んでいて、今まさに好きな雰囲気の空間だった。

 

ゆっくりしたいとこだけど、お腹を満たしたら少しばかり構内を見て、国際フォーラムまでは歩いて向かう予定。

Suicaグッズや東京駅デザインのグッズが並ぶ「TOKYO!!!」についつい近づいて、Suicaの缶にペンギンタブレットが入ってるやつ!ネットで見た!と思ったり、あの素敵な東京駅の外観がグッズになっているのを見て感動したりした。

買うことにしたのはポストカード。

 

時間だから行かないとと丸の内 中央口改札を出たのに、左手側にある何とも言えない紳士な風格を漂わせたお店に心惹かれて、

ちょっとだけ、さっと見るだけと店内に入った。

そこは東京駅がホテルになったTHE TOKYO STATION HOTELのグッズを取り扱う、「SOUVENIR SHOP 丹波屋」で、好きにならないはずがない。

301と掘られたゴールドのルームタグのようなキーホルダー。東京駅が線画でプリントされた紅茶缶は、水色と紺の色合いが素晴らしくて、家に置きたい…でも缶はかさばる…何に使うつもりで?と帰りも見に行くほど迷いに迷った。多分、いつか迎えに行く。

今日のところは直感を信じるべしと、初めに目に止まった“TOKYO STATION HOTEL”の書体が美しい、真鍮(しんちゅう)のアクセサリートレーを選んだ。

カメラを持って来ていたから、それを入れるのにぴったりなミニトートも。

 

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その小さなお店の入り口近くにあるポストも、なんだかおもしろくて、

郵便局が深く関わるショッピングビル「キッテ」がそばにあるからだろうかと思いながら、写真を撮った。

 

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外に出て、道なりに真っ直ぐ歩けば東京国際フォーラムが見えた。

オフィスビルの並ぶ街並み、ハトバスの列、広くて長い道を見ていると、地元は都会と呼ぶにはまだまだだと感じて、世界は広いなとやたら壮大な気持ちになった。

 

コンサートが終わり、もう少しこの空気の中にいたくなって、ずっと憧れていたカフェ「Cafe1894」へ立ち寄ることに。

三菱第一号美術館と隣接しているこのカフェは、明治時代に銀行営業室として利用されていた空間を、復元した場所。

外観のレンガ、入り口の大きなアーチ、内装のアンティークなテーブルや椅子。高い天井。

 

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鳩やコイン。メリーポピンズを彷彿とさせる、重厚感のある銀行の雰囲気に心躍る。

せっかくのクラシックコンサート、ほんのりシックな服で行こうとワンピースを着て革靴をチョイスして、がま口風のバッグにして大正解だったと嬉しくなった。

自信を持ってこの場所に居られる。がま口風バッグなんて銀行のコンセプトにぴったり。

 

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アップルパイとアッサムティーを頼んだ。

パイで包むというより、パイを器に、りんごが中に。そしてシナモンの合わさったしっとりビスケットが上に乗っている。

バニラビーンズの入っているバニラアイスと一緒に食べると、とっても美味しい。アッサムにミルクを注ぐだけで嬉しくなるのは、関ジャニ∞を好きなゆえに。

 

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しゃんと背筋を伸ばして、でものんびりした時間の中で気持ちはほぐれて。

来られてよかった。入るまでのドキドキに負けて引き返したりしなくてよかった。踏み込む勇気、大事。

レトロで魅力的な建築から出てくるのでさえ楽しい。小さな階段の真ん中を、気持ちゆっくり噛みしめるように降りた。

 

三菱第一号美術館の中央には庭園があって、ちょっとだけ覗くことにした。

温かみのある街灯、角度を合わせたらハート型になるモニュメント。ベストな写真が撮れるよう、スマホスタンドがなんと用意されていて、そこに置いて撮れば見事なハート。

立ち位置まで親切に記してあって、一人の照れより記念写真を残したい気持ちが勝り、セルフタイマーで自撮りまでした。

 

東京駅へと戻る道すがら、ピクシーダストのように黄色く粒で輝くささやかなイルミネーションが綺麗で、それならこれを聴くしかないとSEKAI NO OWARIの「silent」をイヤホンから流した。

まるでミルクを溢したそんな夜

心に広がる温かさと、満たされていく足りなかった何か。

 

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オーケストラの音色、歌声、ディズニー音楽のエネルギー。そして東京駅の灯りが、時折巡ってくる最高の一日は確かにあることを思い起こさせてくれた。

東京駅へと帰ってきて改札を通るころ、これから訪れる冬への不安はもうなかった。

 

“不思議なチカラがわいたらどーする?” 私は…

 

泣くつもりはなかった、こんなに思い入れがあるとも気づいてなかった。

あの頃の私たちと、今の私たちが出会う待ち合わせの場所、MAHO堂

 

 

映画「魔女見習いをさがして

 

おジャ魔女どれみ」の放送開始から、20年。

はじめは、ああ懐かしいなぁと何となく。

プリキュア初代は、わりと居残り続ける気持ちで見ていたから覚えているけど、「おジャ魔女どれみ」は初期の放送を見ていた記憶がうっすらと残っていて、親に聞いてみると初期のアニメーションを食い入るように見ていたんだよと教えてくれた。

あの変身した衣装が欲しいとねだったことも、ブルーがよかったのにピンクをプレゼントされて密かに拗ねたことも覚えてる。

親戚が集まる中で、注目されるのはきらいなくせに、着替えて出てきた時の盛り上がりが実は嬉しかったのも。

とんがり帽子と、ツンとハネた靴もちゃんとついていた。

 

持っていたのは、音符がたくさん入ったスティック。

中にカラフルで小さな音符が入っているのが好きで取り出して遊ぶから、どんどん無くしてしまって、いつの間にかほとんど空っぽなスティックだけが残った。 

 

ブルーが好きだから、あいこちゃんが好きかと思えば、あの頃はまだ関西弁の魅力に気づいていなくて、おんぷちゃんが好きだった。

お菓子作りがテーマになって、エプロン風の衣装になった時に、衣装へのときめきを知った。ヘッドセット型のマイクも大好きで。

ももこちゃんのハイテンションには中々ついて行くのが難しくて、大きくなったハナちゃんにも戸惑いは隠せなかったり。

 

今回は、「魔女見習いをさがして

描かれるのは、大人になったどれみちゃんたちではなく、

当時「おジャ魔女どれみ」をリアルタイムで見ていた『ミレ』27歳。途中からリアルタイムで見始めた『ソラ』22歳。再放送と配信で見るようになった『イカ』20歳。

彼女たちが、“おジャ魔女どれみが好き”ということをきっかけに知り合い、ゆかりの地を巡りながら、それぞれに持つ迷いも悩みも溶け合っていく。

 

どれみの続編でないことは心に留めて行かないといけないなと思っていたけど、序盤からこれは見たい!を満たしてくれる演出で、泣かさないでーと思いながら観ていた。

 

共感する年代が、最年長のミレであることに感慨深さを感じながら、

鎌倉で出会った3人が、飛騨高山・京都・奈良と新幹線などに乗って旅をする様子に、ライブの遠征を思い出して、年代に境なく関ジャニ∞をきっかけに出会った友達のことを思った。

不意に訪れる見覚えのある場所は、東京ドームホテルのエレベーター前。あの場所を、おジャ魔女どれみタッチで見られるなんて。

 

個人的には石田彰さんが声をしていた、ミレの同僚・矢部隼人さんが、とても魅力的なキャラクターでときめいた。

 

ミレの声は、松井玲奈さん。落ち着いたトーンで話してくれるキャラクターがいる安心感。

ソラの声は、森川葵さん。あれ?吹き替え誰だったっけ…と一瞬わからなくなったほど、裏声すれすれのトーンで普段とは表情の違う声をしていて、すごいと思った。

イカの声は、百田夏菜子さん。特徴的な声の印象でいたけれど、広島弁のキャラクター性と馴染んで、“おジャ魔女どれみ”のエッセンスを特に含んだ発声をしていたように感じた。

どれみたちが常に登場しているわけではない分、物足りなくなりそうなところを、ソラもレイカもどれみにある独特の喋りの音運びで話していることで、満ち足りるものがあった。

 

 

大人になるって、そう扱われるようになること?

自分がそう思えるようになること?

ここ最近、自分の該当する年代は、今がまさに主にエンタメや企業マーケティングのターゲットになっているのだろうなあと感じることが多くなっていた。

消費者として楽しいのはきっと今なのかなと、俯瞰で思う自分がいる。

車のCMでGReeeeNの曲が使われていたり、キューピーのCMで「たーらこー♪」のキャラクターが再登場したり。

考えると確かに社会人として数年過ごし、車が買えるかもしれないタイミング。家族が増えてファミリーカーを買う人も増える頃合い。

 

歌番組での懐メロ特集は、リアルタイムで追っていた思い出深い曲ばかりになった。知らない曲が無い。

そう実感しているうちにも時間は流れて、つい最近だよと思う曲が増えつつある。

 

「魔女見習いをさがして」も、その流れのひとつかなあと、どこか思っていた。

けど、観てよかった。おジャ魔女どれみを好きでいたことにも、今をなんとか歩んでいることにも寄り添う映画だった。

 

映画の中で、魔法玉が光を失う瞬間の描写が印象的で。

ただのビー玉と見ればそれもそう。でも思い入れを持って大切にしつづけてきたそれは、彼女たちにとってはあのどれみちゃんたちの持っていた魔法玉。

放っている光と言うより、当たっていた光が失われた時、一気に力は失われてしまったように見えた。

 

 

幼心に何度も聞いて、空でだって歌える「おジャ魔女カーニバル‼︎」

不思議なチカラがわいたら どーしよ?(どーする?)

無邪気に問いかけてくる、どれみちゃんたちの顔が思い浮かぶ。

ミレ、ソラ、レイカたちにそれぞれあったもの。

私は…書くことが好きだと変わらず言える。それが“不思議なチカラ”になるか、このままか、わからないけど。エッセイもコラムも、作詞だってしたい。

思いつくものがあることに嬉しくなった。

 

宿題をゴミ箱に捨てられちゃうパッションは昔も今も無いけれど、

でもね もしかしてほんとーに できちゃうかもしれないよ⁉︎

この一言で、出来ちゃうかもしれないって思えるから不思議だ。

 

おジャ魔女どれみ」を見たいた頃は、ひとりテレビの前。

同じようにどれみを見て、好きでいたみんなが実はこんなに居たことを、大人になって知る。

子供の記憶のまま、最終話がどれみちゃんたちとのお別れだと思っていたけど、また会えてうれしかった。

 

リアルは大変がいっぱいだ。納得いかないことも、向き合えないこともいろいろ積み重なるけど、子供心はまだ胸にある。

どれみちゃん、はづきちゃん、あいこちゃん、おんぷちゃん

その声を聞くだけで、私は無限の想像力を掴み直せるような気がしてる。