ベルの髪に飾られたかすみ草 – 実写版「美女と野獣」を観て

 

好きで仕方ないアニメーションだった。

「リトルマーメイド」「シンデレラ」「美女と野獣」が好きだった。ダークファンタジーに変えずに制作し、音楽をアラン・メンケンが総指揮。ベルの完全再現を目指しエマ・ワトソンが演じてくれたことはなにより嬉しく、制作が決まった時から待ち遠しい気持ちでいた。

吹き替えキャストの発表も全てがサプライズで、徹底的にミュージカルに特化したキャスティング。濱田めぐみさんのエルファバを見たくて「ウィキッド」の当日券を懸命に取った頃が懐かしく、まさかディズニー映画でその歌声を聴ける日が来るとは思わなかった。

今回映画館に行って初めて、前のブロックの席で見る楽しさを知った。視界いっぱいのスクリーンは、まさにその世界観に飲み込まれるようで、押し寄せるバラの赤に覆われる感覚が好きだった。理想にしていた、吹き替えを2回字幕を2回というバランスで見ることが出来たので、心残りはない。

 

字幕、吹き替えどちらも素晴らしかった。こちらのここが良いというポイントは随所にあるけれど、字幕で感動したのは「朝の風景」のシーン。英語のタイトルは「Bell」で、文字通りベルを表す象徴的な歌になっている。そのなかでも特に、ベルが本を読みながら誰かに語りかけるように本の中の登場人物について話すシーン。

アニメーションの日本語版では、

「そう 気づかないのよ 王子様が彼だってことが」

と日本語で歌われている。

この“王子様が彼だってことが”の部分は英詞でも意味としてあるけれど、英詞にある更なる描写が日本語にはない。

 

英語では

「But she won't discover that it's him chapter three!」 

 とベルが歌っていて、ここの「 chapter three 」という表現が大好きだった。

このパートは、ベルがどれほど本を好きで、この物語のここが良いの!と語っている熱量が伝わってくる歌詞になっているところが魅力だと思っていて、しかしアニメーションの日本語字幕でもこの部分のフレーズはあまり意味合いが伝わらない訳になっている気がして寂しく思っていた。

それが今回、チャプター3のことを「第3章」と訳されていたのを見た時の喜び。

そう!そういうこと!と嬉しくなるほどの名訳を付けてくれていたことに感動した。そのまま“チャプター3”と表すのではなく、品のよさをそのままに、本の表現としても日本語としても違和感のない「第3章」という言葉のチョイスは完璧だと思う。それによって、“本の第3章まで彼女は気づかないの”と興奮気味に話すベルの意図がきちんと伝わるようになっている。

英語と日本語では音数に入る言葉の情報量が違うため、全く同じにすることは難しいし、日本語表現ならではの良さもあるけれど、この歌については今回の実写版「美女と野獣」字幕が素晴らしかった。

エンドロールの最後に出た字幕を担当された松浦美奈さんというお名前を見て、素敵な字幕でしたと拍手を送りたくなった。

 

大好きなシーンだけど、「朝の風景」を観ていると、どうしてか切なくなる。 

小さな街で育ち、あれだけ顔見知った人たちのいる賑やかな景色なのに、ベルの持つ感性を理解してくれる人は本を貸してくれるあの人とお父さん以外におらず、同じ視点で物事を見ている人が居ない。孤独ではなくベルの孤立が、はっきりと伝わってくるからかなと思った。「他の世界を見てみたいのよ」という歌詞と、リプライズの「私には大きな夢があるの」という歌詞とメロディーに胸が熱くなる。

 

吹き替えで特に良かったと感じたのは、オープニングのナレーションと、ルフゥと対面した時のポット夫人の台詞だった。ルフゥとポット夫人は、あの瞬間的に2人の息が合う感じが言葉のテンポの良さに表れていた。

そして始まるプロローグ。

「いったい誰が、こんな野獣を愛してくれるのでしょう」

アニメーションと同じ台詞だったこの言葉を聞いて、ああ「美女と野獣」が実写化されたんだなと実感が湧き、鳥肌が立った。ここは日本語で語られることで、言葉の重みが際立って心に響いた。冷たく、哀れむような声で語られるプロローグに一気に引き込まれ、この言葉でバッと暗くなるスクリーン。「美女と野獣」とタイトルが映り、朝がやってきた音がして始まるミュージカルシーン。

いったい誰が、と語られた後に初めに映る人物がベルだというところが、とにかく大好きだった。ストーリーを知ってから見ると、どう転んでも共通点も通じ合うことも無いように見える2人がこれから出会うことになるのだと、まさに本を読みながら物語に出て来る2人を見守りソワソワしていたベルと気持ちが重なるように、あなたこそ、これから恋を見つけるのだと教えてあげたい気持ちでいっぱいになる。

 

ベルの着ている服装が一貫して自然であることが魅力的で、知性を感じるブルーが美しく取り入れられていた。さらにベルの象徴とも言える舞踏会のイエローのドレスは、ボリュームを付けすぎずギラギラしすぎず、落ち着いたデザインにほんのりときらびやかな刺繍を付けたドレスだったことがとても良かった。

 

 実写版のオリジナルとして登場した、カデンツァがとても好きで、どこかで見覚えが…と感じたものの分からずにいたら、なんと「プラダを着た悪魔」で『Weke up sweetheart』という最高の台詞を放ったナイジェルじゃないですか…!スタンリー・トゥッチという名前の役者さん。キャストが揃ってインタビューを受けた時の写真を見て、この方いたっけ?なんて思ったけど、それはあまりに見事に物語に馴染んでいたからだった。ラスト、とびきりのウインクをした瞬間を、4回目の今回見逃さなかった。あのメイクでも隠しきれないダンディーさが素敵だった。

 

「Be our guest」の歌い出しの高揚感は実写でも変わりなく、このエンターテイメントを目の前で見ているベルの表情が見たい…!という感情が湧くのだけど、このシーンはまさに観客がベル目線で見られるように工夫されているのではないかとふと思ってからは、あまりベル自身が映らないことにも納得がいった。英語でも吹き替え版でも、ルミエールの声が本当に素晴らしくて、いい声だった。ルミエールはよく喋り台詞も多く、「Be our guest」は歌から語りに移ったりと、メロディーがあって無いような難しさがある曲調を軽やかに乗りこなし、抜群の存在感を放っていた。

プロローグのシーンに、王子を“見ていただけ”の家来たちが後ろ姿のみで映っていることと、老婆がやってきた時、王子にロウソク台を渡したのはルミエールだということは観ていて何度目かでやっと気づいた。だからルミエールはロウソク台に変えられたのかとハッとした。

人間に戻ったルミエールも笑顔が素敵な紳士で、プリュメットとのカップルがとてもいいバランスだった。今回の実写キャラクターで憧れNo.1はプリュメットで、こんなお姉さんとお友達になれたらと思った。

ルミエールに限らず、ベルも勿論、フランス語アクセントのような英語の発音になっているところに感動して、その自然さによって、時々混じる“シルブプレ”などの言葉も耳に違和感なく聴くことができた。音がこもるような発音を聴いていると、英語なのにフランス映画を見ているような不思議な感覚を覚えた。

 

ディズニー作品の悪役と呼ばれるなかで、昔からどうにも受け入れられなかったのがガストンだった。しかし実写化によって“人間味”の芽生えたガストンは、やっぱり嫌い。嫌いだけど、赤を象徴的に身にまとい戦争時代の背景がちらつく彼を見ていると、街の英雄として信頼を得た経緯が少し理解できた気がした。お金を渡し、ガストンのため観客を作り出すルフゥも同様に、悲しく見えた。

「夜襲の歌」のシーンが本当に苦手で、何度観たとしてもつらかった。人の恐怖心を操り、集団意識を利用して止めようのないパニックを起こすガストンへの腹立たしさと、恐ろしい正義感で団結する民衆の姿に悲しさばかりが募った。解けない誤解ほど恐いものはない。

 

野獣の声は、英語の方はエフェクトが自然に聞こえて、人間になってからもあまり強い変化は感じなかった。それはそれで良く、吹き替え版は山崎育三郎さんの声を楽しみにしていたので、序盤は思っていた以上にエフェクトのかかった声に戸惑いもあった。もう少し、そのままの声でも充分、野獣の声として聞こえていたのではないかなと思った。でも、山崎育三郎さん自身も意識して歌ったと話されていたように「ひそかな夢」のシーンは、声が繊細に移り変わり、野獣の声の中に人間としての声が現れては消えるのが切なくて、凄かった。人間の心を取り戻し、優しさを手にしはじめる変化が伝わってきた。

 

ラストの舞踏会で、王子は鮮やかなブルーの装いにブルーのリボンで後ろ髪を結っていて、忠実に再現されたその姿に嬉しくなった。

そしてベルは、ホワイトを基調にしたシンプルなドレスにオレンジの花があしらわれていて、後ろにまとめた髪にはかすみ草を着けていた。

ベルのドレスだけがなぜ現代的なのかという問いもあるようだけど、私には、この華やかな場でもベルが心に持つ芯がしっかりと表れているように見えて、ベルが好きなものを選んで着ているのだろうなと思った。マダムガルドロープの着せたドレスをスッと脱ぐ彼女のことだから、服装の好みもはっきりしているのだろうと思う。

髪に飾ったかすみ草が、慎ましく可憐なベルに似合っていた。

調べてみると、かすみ草は英語で「Baby's breath」

花言葉は【everlasting love】(永遠の愛)【purity of heart】(清らかな心)だった。

学名にも「philios」(愛する)という意味の言葉が入っていて、本来の意味合いはその花が石灰質の土を好むことからついたそうだけれど、エンドソングにもなっていた「時は永遠に」の歌詞を見ていると、それも偶然ではないように思えた。

 

 

“一瞬が永遠になるには?”

“物語が続くためには?”

「時は永遠に」の歌と共に流れはじめるエンドロールの前のエンディングが本当に美しく、一人一人映る人間の姿に戻った彼らを見て、映画を観ているうちにそれぞれへの愛着が生まれていたことに気づく。

 

今回オリジナルソングとして加わった「時は永遠に」は、物語の中でもメロディーが印象的に聴こえてきて、映画を見終わる頃には耳に残る曲になっていた。あれだけ昔から馴染んでいる曲の中に、新たに曲を加えることは簡単ではないと思うけれど、「時は永遠に」も「ひそかな夢」も、ちゃんと美女と野獣の物語の一部になっていた。

それぞれの表情が感慨深く、モーリスの穏やかでありながら、訴えかけ受け入れるような眼差しが心に強く残った。そしてガストンが映るのは魔法の鏡の中、というのも“野獣は誰か”と暗に示しているようでドキッとした。シルエットだけになっているカットが好きで、俯いていたりする彼らのシルエットは魔法をかけられている頃の心の姿のように見えた。歌の終わりと共に、魔法をかけられていた頃の彼らは絵本を閉じるように扉の向こうにそっとしまう、その映像の閉じ方が、さびしくもあり暖かかった。

英語で“Still our song lives on”という歌詞に来るタイミングで、歌うことが全てであるマダムガルドロープを映すところも素敵だった。

 

 

彼は探していた。かけがえのない自分を。

彼女は信じていた。かけがえのない自分を。

日本版のポスターに書かれている言葉が本当に好きだった。この一文を読んで、だからベルに惹かれていたのだと気がついた。“変わりもの”と呼ばれることを気に留めない訳ではないけれど、周囲に合わせ自分を形作ることはしない。ただ、信じている。どこかに自分の居るべき場所があると。

そしてインタビュー映像で、ルフゥを演じるジョシュ・ギャッドが話していたこの言葉が、印象に残った。

「ベルは自分が抱く不思議な感覚を受け入れ、新しい世界を見るんだ」

 

人と違うかもしれない。“普通”とは違うかもしれない。

でも自分の信じられる自分がそこに見えているのなら貫いていけばいいのだと、伝えてくれている気がした。

 

「T.W.L」のカメラワークに魅せられた。関ジャニ∞ライブDVD「EIGHT×EIGHTER」後編

 

そして、このDVD映像で最高なカメラワークだと思ったのが「T.W.L」だった。

歌始まりで右手を挙げる振りの時に、ピントをぼかして映してから合わせるところ。ここに物凄くグッときて、カメラの動きも演出の一部なんだと知った。振り付けや音に合わせてカメラが楽しそうに動いていて、実際に会場で見て高揚感を感じることはできるけど、DVDで映像にしてそのワクワクした空気や熱気を伝えることができるのはすごいと思った。

振りが斜めの時はカメラも斜めに使う、音と映像、動き全ての息が合っていて、引きの画とアップの使い方が絶妙。ここを撮ってほしい!がしっかり押さえられていて、寄って引いて、誰を映すか。何秒で切り替えるか。画面の切り替えは細かく多いのに、ガチャガチャしていなくて酔わない。ライブ映像におけるスイッチングの奥深さに感動した。

どこを見てもらいたくて作られた振り付けなのか、それがはっきりカメラワークで伝えられていて、全体をどうとでも見られる状態の肉眼より、ドラマチックな気がした。

 

言論の自由という画面の上で炎上”の丸山さんと錦戸さんの映し方も、向かいにあるカメラで平面的に撮らずに、斜め左下からのカメラで撮ることで抱きかかえられている丸山さんの目線がちょっと味わえる。見上げる感じがいい。

錦戸さんがハーモニカ終わりで次のポーズを先にスタンバイしているゆるさも好きで、注目して見てしまう。そして最後に“本当 All Light?”の歌詞で大倉さんが腕を前に伸ばしてから指さしに変えた瞬間。手元に寄るカメラがいい。

予定していた通りの動きをするとは限らない予測不能な状況で、その瞬間を逃さない。一発本番の場での計算されたピント合わせにカメラさんの凄さを感じた。

 

「輝ける舞台へ」では、安田さんと渋谷さんと同じムービングステージに乗っている錦戸亮さんが、二人のジャンプで揺れる床に身を委ねてピョコピョコ浮いている姿が可愛くて仕方ない。丸山さんとJr.の子と大倉さんで並んで、DJみたいにスクラッチの動きをしながらくるっと回るJr.の子の振り付けを真似して踊るところも好きで、この振りがやってみたかったんだろうなという可愛さと、楽しそうで嬉しそうな空気がいい。

そのようなちょっとしたポイントを余すところなくカメラで押さえてくれているところも含めて、DVDとしても素晴らしいと感じたのが「EIGHT×EIGHTER」だった。

始まりのバンドからの振り幅に驚いているうちにどんどんとセットリストは進み、「パンぱんだ」は小さな子供でも口ずさめるような歌詞と可愛いがいっぱいの演出に全方位から心を掴まれる感覚。「wonder」を初めてこのDVDで見て聴いた時は、あまりにリアルに伝わってくる感情と心情のようなものに圧倒された。

 

 そして「Fight for the Eight」

ブルーのジャケット衣装に白の手袋。メンバーそれぞれが間隔をあけて立ち、後ろには大きなスクリーン。

言葉にすることが難しいほど、細部までこだわりを感じる演出だった。きめ細かさと大胆さが共存している凄さがあって、ひたすら釘付けになって見た。本人の後ろにスクリーンがあり、そこに大きく映される本人の姿という構図が格好いい。ダンスに合わせてスクリーンに映る大きな岩が動いているかのように見える映像技術がすごい。その岩がメンバーカラーになっていて、遠目でも誰がどこにいるのか分かるようになっているところもいい。

岩を打ち破るとメンバーが映る。大きな壁を壊したり、裏表が入れ替わる演出を見ていると、どこか虚構と実物の対比のようにも見えてドキッとする。

“今は聞こえないクライ”の歌詞で、実際の丸山隆平さん越しの見上げるほど大きいスクリーンに映る丸山さんと、“目の前のYou”での振り付けと一緒に映る丸山さんの表情が最高にかっこいい。

そこからライトを使った演出。あそこまで照明を落として見せる時間を作る思い切りがすごいと思った。あの仕掛けの衣装では暑さや重さもあるだろうし、動きづらいはず。その状態で踊り続けるのは大変なことだと思う。

曲のラストに上がる紙テープが消えたライトマンの残像みたいに見えて、最後まで驚かせるパフォーマンスに感動した。

 

その象徴的な紙テープが落ちていく間に、「365日家族」のイントロが流れてくる。少し前まで不気味にも見えた紙テープが、記念日を祝うクラッカーのテープみたいに見えるようになる。一つの演出で二つの表情を作る、緻密に計算された凄さを感じた。

 

着替えへの流れも自然で、「I to U」から着る衣装はライブ衣装の中で個人的にトップ3に入るくらい好きなデザイン。センスよく柄と柄を合わせてパッチワークにするのは難しいはずなのに、パッチワークに三角が散りばめられたカラフルさがいい。1人1人デザインが違って、丈長めのジャケットだったりベストだったりする。特にこの時の渋谷すばるさんの髪型と雰囲気にとても合っているのがこの衣装だと思っていて、フード付きの袖長めな服がすごくいい。

衣装といえば、丸山さんの着る衣装の中では「ミセテクレ」から着る、よく見るとグリーンのチェックになっているシャツに、赤のネクタイで黒のスキニーを合わせている服が素晴らしく似合っていた。

 

野球要素と言えば「Eightopop!!!!!!!」にもそれを感じる。メガホン型ライトが大活躍で、ドラムと同じリズムで手拍子を打つところや“oh oh...”の部分など、メガホンを振るのにぴったりな箇所が多く、どこか野球の応援っぽさがあって、ライブの流れのなかでここでまたテーマに戻ってくる感じがいい。

メンバーもメガホン型ライトを手に持って振りながら横一列で踊るところは、どこよりも可愛い応援団にしか見えない。

 

「Fly High」では、“目指すオリジナル スタイル スタイル…”の歌詞に合わせてポーズをとる丸山さんがツボで好きなところ。大倉さんの“飛ぶなら今”を言いながらのカメラの使い方が流石な魅せ方なのもすごいと思った。

さらにユニット曲である「夜な夜な☆ヨーNIGHT」は、あまりにはっちゃけたテンションの安田さん大倉さん村上さんの3人に、なんか意味はわからないけど楽しい!と引っ張られる感じがして、ユニット曲はかっこいいだけじゃなくこういう曲でライブに緩急をつけることもできるんだと発見だった。会場の完璧な合いの手、メンバーが入れ替わりで立つお立ち台。ユニット曲の新たな面白さを知った。ここでも野球節が出てくるところが良くて、「ビバ ビバ エイター」みたいなことを会場でやってみたい!と思ったことも、ライブに行きたくなるきっかけだった。

曲のインパクトもさることながら、この曲での村上さんの色っぽさは半端ではない。あまりの衝撃に思わず巻き戻して見たくらい。なんとなく知りつつあったけど、バラエティーでは見せない村上さんの表情をライブでは見られるんだと気づいたのはこのDVDを見た時だった。特にこのDVDでの村上さんの可愛さと男の人感はすごい。

「Hi & high」で自由自在に動き回りながらベースを弾いて歩く丸山さんも、立ち回りが綺麗で格好よくて、魅せることと観られることのプロだと感動した。さらにこの曲の、テンポが早いところからワルツのようなゆったりとした3拍子に変わって、また早いテンポに戻す。掴みどころのないメロディーを弾いている時のリズムの取り方が好きで、何度も見た。

 

そしてここだけはツアー最終日のサプライズだったようだけど、オープニングと同じくらいラストも素敵だった。

アンコールも終わった最後の最後で映像が流れた。「準備はええな」と言う横山さんの声が暗闇で聞こえた後で、マウンドへと上がる階段を登るエイトレンジャーの後ろ姿。 これが後々に発表されるエイトレンジャー映画化に繋がる伏線になっていたと知った時、どこまで驚かせるんだろうと思った。粋で、楽しませることに一生懸命。お尻にある∞マークですぐに分かるエイトレンジャーという特徴を活かして、オープニングに被せた映像を作るアイデアが凄い。

 

バンド色の強かったライブというと「JUKE BOX」の印象も強いけれど、「EIGHT×EIGHTER」も始まりの4曲がバンド。後半にもバンドセクションがある。歌と演奏で届けたいなにかがその時にあったのだと感じた。

6年前の関ジャニ∞にも変わらぬ魅力があり、ここを経た今があると知ると、さらに引き込まれていった。特に印象的なのは渋谷すばるさんの荒々しさ、1曲が終わるたびに燃え尽きてしまうのではと危うく感じるほどの全力の叫び。

発展を始めた頃に生まれた、関ジャニ∞としてのバンドの空気がこのライブに溢れていた。

 

ドームであることをライブテーマに活かした面白さ。関ジャニ∞ライブDVD「EIGHT×EIGHTER」前編

 

関ジャニ∞に興味を持ち、遡って過去のライブDVDをいろいろ見た中で、大好きだと直感的に感じたライブ。

「EIGHT×EIGHTER おもんなかったらドームすいません」

今から6年前の公演。アルバム「FIGHT」を提げたツアーで、インパクト大なタイトルだなというのが第一印象だった。英字の部分は、エイト バーサス エイターと読む。

オープニングがあって、エンディングがある。映画のように一貫したテーマがありストーリー性のあるものが好きで、このライブがまさにそうだった。コンセプトと構成がしっかり支え合っていて、完成されていたところに感動した。

 

全体のテーマが「野球」

なんとなく感じるもう一つのテーマに「エール」があると思った。

演出の一つ一つが素晴らしく、とにかく楽しい。ライブに行くようになるまで、東京ドームや京セラドームは“野球をしている会場”というイメージが強く、むしろここでライブをするの?!と感じていたギャップを上手く使った…!!と衝撃を受けた。

野球場っぽさを消そうとするのではなく、むしろ際立たせる大胆さ。本来は野球場である場所でライブをしているという、異空間を逆手に取ったこんな演出の方法があったんだと驚きだった。

ライブグッズにも野球要素が散りばめられていて、ツアーTシャツは思い切ったデザインの野球ユニフォーム風のTシャツ。このデザインがとても可愛くて、歴代のツアーTのなかで一番好みだった。そしてペンライトはメガホン型。光がグリーンなのも、ドーム全体に光ることで芝生っぽさがでる。ここまでだけでも、徹底したテーマ作りにテンションが上がる。

 

そしてライブの始まり方が今世紀最大に好きだった。

野球ではお馴染みのサイレン音が鳴り、野球応援の独特なリズムで手拍子が始まって、暗いドーム内に走るカラフルなスポットライトの数々。見える7人のシルエットに聞こえてくるアナウンス。

「皆様、大変長らくお待たせしました。本日の試合、『関ジャニ∞五大ドームTOUR EIGHT×EIGHTER おもんなかったらドームすいません』最終戦関ジャニ∞チームスターティングメンバーを発表いたします。」

そこから「一番、ドラムス、大倉忠義。背番号8」と順にアナウンスされていくワクワク感。それぞれの背番号にも個性がはっきり表れていて楽しい。一人ずつ名前を呼ばれて階段を降りて行って、背番号のアナウンスに合わせてポーズを取っていく流れも好きだった。選手入場のような演出。そしてそれぞれの定位置へとスタンバイ。

このシーンでの安田章大さんの振り向き笑顔は、後世に語り継がれるほど可愛い。最後に呼ばれた横山裕さんが、お辞儀をして、“おねがいします”と口を動かしてから背番号を見せて両腕を高々と突き上げた時の高揚感。

最初のアナウンスが流れている最中、関ジャニ∞がステージに登場していながら派手にではなく普通に立っていて、軽くお辞儀をしたり手拍子をしていたりとフラットな雰囲気で登場してくる感じが好きだった。衣装もユニフォームにジーンズとスニーカーという気張らない感じで、それが良い。

「間も無く、試合開始となります。どなた様も盛り上がって参りましょう」 

という言葉がスタートの合図。このアナウンスが最高。煽りつつも声は淡々としているところがグッときてしまう。

 

ボルテージが上がる会場に、スクリーンに映し出されるトレーディングカード風のメンバー写真。こんなところも芸が細かい。旗が次々に上がっていって、トレーディングカードがわーっと押し寄せて抜けた先にスクリーンにツアータイトルが映され、「LIFE~目の前の向こうへ~」バンド演奏から始まるライブ。

見事に気分が盛り上がる。人のテンションを動かすことは難しいはずなのに、この煽りのうまさはどうやって作るんだろうと不思議で仕方ない。まだ暗くスポットライトの当たらない状態から村上信五さんと安田章大さんが頭の上で手拍子をして煽っているシルエットが見えるところも良い。

このアナウンスが好きでたまらないのは、何回戦目と言うことによって、ツアーの日程とリンクしてリアルタイムで変化していく感じがあることと、毎度違う、その時だけの特別感ができるところに魅力を感じるから。

 

「LIFE」の次に続くのは「宇宙に行ったライオン」

 さらに畳み掛ける「ローリングコースター」は、思いがけず何かを好きになってしまった…!と言う戸惑いとドキドキを感じたことのある人の心にヒットするはず。

「ローリングコースター」の村上さんのパート、“そりゃね 理屈は分からんでもないが”と歌いながら放ったウインクに、関ジャニ∞を知りたてだった頃の自分は見事に打ち落とされた。えっこんな優しい表情を村上さんはするの…!と驚きだった。カメラにしっかりと映された奇跡のウインク。何度見ても新しく恋に落ちる。

そのあとの照れた笑顔も、それに気づいた大倉さんの“やったな”みたいな笑みとアイコンタクトもいい。

  

その空気からの「モンじゃい・ビート」でアップテンポに一気に持っていく変化。歌う。踊る。全身を使って踊るメンバーが楽しい。

「イッツマイソウル」が好きだ!と思ったのはこのライブでのパフォーマンスを見てからだった。渋谷さんのパートで手拍子が揃う空気感が良かった。“ま、そりゃしょうがない”の歌詞で映る横山さんの斜めよこからの角度も完璧だった。