不恰好でボロボロで、それでも格好いい私のヒーロー「ER」

 

アップテンポで勢いのある曲調に、負けることのない強い意思のある歌詞が魅力。

映画「エイトレンジャー」の主題歌にもなった「ER」

「エイトレンジャー2」が公開された際には「ER2」が主題歌になっていて、二部作とも言える。MVも、音楽番組でのパフォーマンスも、エイトレンジャーの格好をしていて、かっこいい曲調にどこかカッコ悪さのあるレンジャースーツという組み合わせが良かった。

 

曲の入りも、遠くに聞こえるフェンスの金属音やサイレンの音から始まり、そこから入る音楽そしてボーカルの順番が凝っていると感じた。

早口でノンストップな歌詞ゆえに、映像に注目しているとなかなか見逃しがちな歌詞について今一度注目してみると、胸にグッとくる言葉が曲のなかに沢山あることに気がつくことができた。

二作目の「ER2」は、よく聞くと哲学的な現代社会における生き方の話をしているなと思いながら聞いていたけど、「ER」の歌詞については掴めていなかった。いつかピンとくる時が来るかなとのんびり構えていたら、思いがけず真っ直ぐ響いてきた瞬間があった。

頭がこんがらがっている時にどんな曲を聴いていいのかというのは難しいところで、意味がありすぎてもだめだし、全くあっけらかんとしすぎてもなんじゃいとなってしまうから、いつも迷う。かといって無音もつらいという時、シャッフルで流れてきたのが「ER」だった。スキップに次ぐスキップで曲を飛ばしまくっているなかで、手が止まり曲を最後まで聴いた。

 

あんなに頼りないエイトレンジャーがこの歌詞を歌う時は最高にカッコよくて頼もしい。

関ジャニ∞とエイトレンジャーの人格が半々に同居しているような空気に胸が熱くなる。

 

「信じる事さえも怖くなるなら信じぬ事」

I know... 至って Simpleだ

誰かの理解を 欲しがっているなら

信じる事 意外と切り離せないぜ

 

韻を踏みながら言いたいことはハッキリと言葉にしていて、音数をメロディーに合わせて行くすごさにも感動しながら、最初の歌い出しの歌詞がこれであることに心を揺さぶられた。

陥りがちな思考回路をばっつり言い当てながら、“至って Simpleだ”とは言うけれど、どこか皮肉めいていて、“切り離せないぜ”の前に“意外と”という言葉をつけるところに一枚上手なヒーロー感が出ていて堪らなかった。意外というのは、思いがけないことであり、この言葉を言っているヒーロー自身が“意外と切り離せない”と感じる経験をしたのだと思うと、初めから達観していて何もかも正解を知っているヒーローとは違う、身近さを感じられた。

 

その身勝手が破裂して 招いた無数の事態を

嘆いたって 結果いつだって

腹の足しにもなりゃしないぜ 

 

ズバッと言われるその現実が、清々しいほどその通りだった。

厳しいようにも聞こえるけど、寄り添いすぎず見守られている距離感が絶妙で。意味がないではなく、“腹の足しにもなりゃしないぜ”という言い方をするところが洒落ていて好きだなと思う。

あの時、あの選択をしなければ。あの時、あっちを選んでいたら。そんなふうに思いだした時にこの歌詞を聴くと、そんなことを言ってる場合じゃなかったと目が覚める。

「ER」も「ER2」も全体を通した印象はどこかニヒルで、100%勇敢で優しいヒーローではないところが良い。窮地を抜け出す手立てはくれるけど、極限まで本人の持つ力を見守っていそうな、そんな印象がある。

 

また守って ただ維持して ±0付近で立っている 

守ることもただ維持することも日常にありふれているけど、だからこそ簡単なことではなくて、前に進むだけではない±0付近で立っていることも大変なことだと、この歌詞を聴いていると思う。

 

それでも、現状を維持するだけではなく

立ち向かっては 失って 確かに理想に迫っていく 

という歌詞がくるところが本当に好きで。

立ち向かって得るものばかりでなく、“失って”いて、そして“確かに理想に迫っていく”

どれだけ跳ね返されても志は全く折れていなくて、“確かに理想に迫っていく”という信念がなによりも強い。凄く力のある言葉だと思った。

 

 

メロディーとボーカルがぴったりと沿って流れていく曲のなかで、錦戸亮さんの“もう逃げるだけの日々脱して”というボーカルをきっかけにスッと音が止み、渋谷すばるさんのソロパートがやってくる。

 

奮い立っては 挑んでいって こっぴどく身の程を知って

今わかった この手にだって きっと守れるものがあるって

 

何度聞いていても鳥肌が立つ。

思い浮かぶのは赤いヘルメットを被ったレッドの姿で、渋谷すばるさんとしてというより、レッドとしての声に聞こえた。

一度二度ではなく、何度も挑んでいってこっぴどく身の程を知る。挑むという言葉を使っていることから、対峙するものは簡単に越えられるようなものでないことがわかる。格好つける余裕などなく、不恰好でも必死に立っている姿と、眉間にしわを寄せながら歌うレッドの表情がいつも目に浮かぶ

“こっぴどく身の程を知って”という歌詞が印象に残る。負けることを知っていて、ただ身の程を知るのではなく、こっぴどくというところに一筋縄ではない葛藤や、ボロボロになってもまた挑んでいく姿が見えた。情けなさや不甲斐なさを感じたことがある、強いばかりではないヒーローだから、好きになるのだと思う。

 

ゴツめのヘルメットにつなぎのユニフォーム。

こんなヒーローあり?と思っていたはずなのに、7人並んだ決めポーズがいつの間にか格好よく見えた。