関取花さんのライブに初めて行った。 in 布博

 

手紙社という会社が企画するイベントが楽しくて、もみじ市や蚤の市にたびたび行くようになった。

そのなかで、さらに布博や紙博というイベントもあることを知ったのは去年辺りのことで、布博には去年もブローチほしさに遊びに行った。

今年も布博が開催されるんだなぁと何気なく眺めるまま、行くかどうかは決めていなかった。前回はライブの時間と合わなかったから、見られるなら行こうかなとタイムスケジュールと出演アーティストを調べると、「関取花さん」の名前が目に入った。

あ、知ってる。そう思って、歌を聴きに行きたくなった。

ちゃんとは知らない“知ってる”で、確か‪関ジャム‬でも関取花さんの曲が紹介されたことがあったはずという記憶と、「今夜くらべてみました」などでトークをされていた姿の印象のみで。これを書いている今、「ジャニ勉」にゲストで出ていたことも思い出して、なぜそれを忘れていたのかと思う気持ち半分、感覚的に惹かれた楽しさが半分だった。

 

なんとなくの知っているを増やすよりも、直に見たくなったタイミングが今ならば、それはたぶん今なんだろうと、至極シンプルな動機で会場を目指した。

ゆるく見に行こうと心構えをしていたはずなのに、ライブとなるとどうにも緊張はするもので、新しいことに出会うワクワクと吸収するぞと意気込む気持ちとがそわそわと行ったり来たり。公園のベンチに佇むみたいな落ち着く手紙舎のBGMのおかげで、待つ時間は全く苦ではなかった。

 

そうしているうち、開演の時間。

初めて目の前に見る関取花さん。可愛い!がもうほんとに素直な第一印象で、小柄でギターをかろやかに奏でる姿には心がときめいて仕方なかったし、メイクも素敵だなぁ低めの位置で結ぶポニーテールが似合っているなぁなんてことを思いながら見とれてしまって。可愛い人だ…と佇まいを含めて好きになった。

アコースティックギターにプラグを差して、マイクの前に立ち、空気を吸って歌いはじめた関取花さんは、強くて、柔らかさもありながらスコーンッ!と突き抜ける爽快さがあった。

静かにぽつりぽつりと歌うイメージを抱いていた私は、その歌声に驚いて、真っ直ぐな声も裏声も、こぶしのようながなりの格好良さもすべてが新発見で。以外だと驚き、自分の目で本当を目の当たりにすることの嬉しさを経験した。

 

 

1曲目に歌ったのは「君の住む街

大阪へ行った自分を思い出して、頭に思い浮かぶ景色がどれもこれも大阪で。なんかこういう時にふと思い出してしまうところで、意思ではどうにもできない本音が顔をだす気がして、どんな思いであの時新幹線に乗って、あの時間を過ごしていたのかが蘇った。

 

これまではどこか、過去に抱いてきた思いに重なる曲や歌詞に引きつけられていたけれど、関取花さんとの出会いはなんだかそれとも違う心境のステップアップを感じている。

もうすこし年齢の上がった今の、今の自分で馴染むことのできるアーティストとの出会い。

なにも持っていないままの自分でも、そこにいられる歌。強くても弱くてもどっちでもよくて、頑張っている時でもなにもしていない時でもきっと聴きたくなる歌。カーテンのような包容力があって、でもちゃんと風が吹くことを教えてくれる。

頭の中に浮かんだのは、大泉洋さんが主演で北海道プロジェクトにもなっている映画作品の雰囲気で、「しあわせのパン」の撮影地だったあの大きな湖のある草原。いつか、関取花さんの歌がこの世界観と繋がって、主題歌として流れる日がきたらいいなと思った。

 

ギターひとつと、声。

それでこんなにも届く。その浸透力。

一体どういうことなんだろうと、ライブというものに触れるたび圧倒される。目の前で、歌ってる。それがどんなにすごいことか。私はやっぱり歌う人に惚れてしまうのだと、あきらめのような、よろこびのような。

 

歌の間のおしゃべりも面白くて、関取花さんのユーモアのセンス好きだなあとグッときた。次に歌う歌に繋がる流れがおしゃべりのなかに組み込まれていて、観ている側のテンションのエスコートが素敵だった。

弾いているアコースティックギターの音色も心地よくて、ストロークの動きやカポの位置を変える様子を見られたのも嬉しかった。ギターの腕を前に下ろす部分、カドが無いように斜めになっていて、腕が痛くならないようになっているのかなと思いながら見たりした。

 

ライブスペースになっていた場所の装飾も美しくて、刺繍のカーテンや、ランタンのように張られた布には山の刺繍。その布の向こうに見える丸い電球が山の向こうに沈んでいく太陽みたいだと、眺めるたび楽しかった。

その向こう、外の景色は夕暮れの街並みで、電車のホームも見下ろせる。到着しては発車していく電車、歩道橋の人の行き来、空のオレンジがビルに反射していたり。

ライブの終盤、曲に合わせたかのように窓の向こうで鳥が4羽か5羽、ふわーっと飛びながら右に左に行き来して、それがライブと溶け込んで綺麗で。

 

最後に歌われた「もしも僕に」の歌詞にも好きなところがいくつもあって、このライブが終わったらCDを買おうと聴きながら決めた。

 

努力は大概報われない

願いはそんなに叶わない

それでもどうか腐らずに

でかい夢見て歩いて行くんだよ 

 

“もしも僕に子供ができたなら”というはじまりのこの歌で、サビにくる言葉が、ちょうどいいと言ったら上手く伝わらない気がするのだけど、信じたいこと、という意味でアンバランスに混ざり合う心境を表現していて、やさぐれるけど腐らないと決める思いは自分の中にもあるなと感じて、染みていった。

 

人生なんてそうさネタ探し 

その感覚がとても好きだと思った。巻き起こるあれこれを、まず面白がってみる姿勢は関ジャニ∞を好きになって大阪を好きになって学んだことだった。 

なにそれと思うことが起こったとして、それを面白がれたなら、こんなにおいしいことはない。

 

 

ライブ終演後、物販で関取花さんのアルバム「君によく似た人がいる」を購入した。

今回聴いた、「君の住む街」「もしも僕に」「黄金の海で逢えたなら」が収録されている。「黄金の海で逢えたなら」は、ビールがテーマになっている歌で、最高に楽しい歌だった。タイトルもすごくいい。

まさかのサインを関取花さんご本人に書いていただくことができて、順番を待つ間にCDのパッケージを開けようとするも震えて手元がおぼつかない。ペリペリのスタートがわからないんじゃ!と渋谷すばるさんみたいなことを思いながら、どうにか封を開けて、サインをいただいた。

ファンになったその日にご本人を目の前にするなんて、贅沢が過ぎて、緊張のあまり冷えに冷えた手で握手をしてしまった。

行ってみようと思って、来てみてよかった。

 

 

帰宅して、早速CDを取り込み、エンドレスで「君の住む街」「もしも僕に」を聴きながら今こうして文章を書いている。

歌詞カードを開いて、後ろのクレジットのページを何気なく見ていたら、見覚えのある名前がそこに。

bass : ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)”

ええー!と言いそうになった。あぶなかった。「君の住む街」のベースを弾いているのは、ハマ・オカモトさんだった。ベース担当に目がいくようになったのは完全に丸山隆平さんの影響で、それがこんなふうに繋がっていくなんて。

 

2019年のライブ始まりは関取花さん。

まだだったということに驚くけれど、2019年の春からユニバーサルミュージックでメジャーデビューが決まったという。

また歌を聴きたいな、そう思える出会いが嬉しかった。

 

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冬のロマンティックを魅せて - Nissy「GIFT」

 

革靴の足元。トントンっとつま先を鳴らすと、はじまるオルゴールの音。

ハットを目深に被り、にやりと微笑むNissyの口元。

 

Nissy「GIFT」

冬の季節がやってくると一際輝くこの曲は、Nissyとしても活動する西島隆弘さんが、初めて作りあげた作品「どうしようか?」の次に、2014年12月17日にYouTubeへとリリースした2番目の作品。

Nissyについても西島隆弘さんについても、何も知らないままでいた頃、「どうしようか?」のあとに新作は続くのか、 どのくらいの間隔で活動があるのかも知らないまま、新しい作品が見られたら嬉しいなあとただ思っていた。

そうして、次に見たのが「GIFT」だった。

8分近くあるMVは、映画のようにストーリーが展開されて、その世界観にキラキラと心奪われていく。

以前のNissyについて書いた文章の中で、おすすめしたいMVのNo.1にあげたのも「GIFT」で、それから新しい曲がひとつひとつ増えていった今でも、スペシャルに好きなのは「GIFT」と「‪まだ君は知らないMY PRETTIEST GIRL‬」で変わらない。

 

 

街がイルミネーションで彩られる季節。

彼女との待ち合わせに間に合わない量の残業を押しつけられ、困り顔の西島くん。

彼女はもう待ち合わせの場所に来ていて、西島くんのことを待っている。そんな二人の様子を見つめるNissyは、やれやれと微笑みながらとびきりのサプライズを起こしていく。

 

書類の束を覗き込んでも数えても量は変わらないのに、不服そうに書類を眺める西島くんの表情が可愛かった。

 

彼女のもとへ走るリズムに合わせるかのような、曲のテンポが胸を高鳴らせる。

曲があって映像を当てはめているのではなく、映像のBGMに曲があるわけでもなく、曲と映像の双方があって1つの作品になる。音ひとつひとつにピタリとはまる映像、動き。

“君の笑顔に間に合うかな?”と歌うはじまりが最高にキュートで、怒ってない…?という問い掛けを、こんなに可愛く表現できるのかと衝撃だった。

ベタすぎる?と照れてしまうほど甘々なカップルのやり取りにひゃーっとなるけれど、徹底してそれを魅せきってくれるから、かっこいい。

 

冬の夜。Nissyがひとたび指を鳴らせば、一面に広がるイルミネーション。あまりにも可愛らしくて、しあわせそうな二人だから、見ていて顔がほころんでしまう。

そんな二人を見守るNissyが、スノードームを振って自分もぐるぐると回るシーンが大好きで、その様子こそがスノードームのなかで踊るお人形みたいだった。

 

MVの始まり、Nissyの登場がカップルの二人を割って入るような演出になっているところにも、お茶目さを感じる。応援するけどちょっと妬いちゃう少年感がいい。

歌詞の“綺麗だね”の声に合わせて揺れるNissyに、ベルが揺れてコーラスを歌うみたいなミュージカルっぽさを思い浮かべたりして、行動のどれもこれもが可愛くて。

「GIFT」はNissyの役割りと西島くんのキャラクター性、Nissyと西島くんの関係性を読みとりやすいMVでもあると思う。

 

“僕らの方がしあわせだよ”で、アップに映るNissyとボーイズたち。こちらを向いたNissyが、見ててごらん?というような表情で眉をひょいっと上げる。あの顔が好きで、何度も見たくなる。肩もクッと上がるのがいい。

“ため息で消えていくよ”の歌詞では、パンと弾ける音に合わせて、Nissyがダンスで息を消し去る手の動きをするところも美しかった。

そして、“ねえもっと  仕掛けてよ”の振り付けがとても好きで。自らに魔法をかけるみたいに、頭の上をふわっとかすめる手の動き。片手だけではなくて、もう片方の手でなにかを押さえるような感じ。君にかける魔法、ではなくて、僕に魔法をかけてという西島くんの願いを叶えるところがいい。

 

その後につづく“君の僕への贈り物”の歌詞で、胸の前で手をぐーっと上げて開いていく手のひら。込み上げてくる思いを表現するかのようなダンスにキュンとくる。

歌詞をなぞる部分と、音を拾う部分。

歌詞のストーリーがダンスで視覚的にも伝わる。MVの中でのそのチョイスとバランスが絶妙で、映像としても魅力、曲の魅力、ダンスの魅力すべてがずば抜けてツボで、大好きなのが「GIFT」

 

Nissyが歌う冬は魅力的で、毛布より、ホットココアより甘く温かい。胸をときめかせるいっぱいのGIFTが、この曲に溢れている。

 

ヒリヒリと心に残って、痕になる − 菅田将暉「さよならエレジー」

 

耳に流れ込んできた時からそれは特別で、荒く削られた叫びは美しかった。

菅田将暉「さよならエレジー

 

昨年のMステスペシャルで、菅田将暉さんが歌うのを再び見られたことが本当に嬉しかった。リリース当時、この曲だけエンドレスに聴いていた時期がある。

声に出して口ずさみたくなると、おもむろにカラオケへ行って何度も歌うけれど、その度どうしても泣きそうになって、なぜこんな気持ちになるのかは見ないふりをしている。

ヤケになる思いと同時に生まれるエネルギーを、ドスっとキャッチャーミットど真ん中に投げられるような魅力。悔しさと愛が入り混じるむしゃくしゃの中、光が確かに見える。

 

作詞作曲は石崎ひゅーいさん。

破いた紙のように歌詞の端々は痛みに滲んでいて、なのに清々しい。

 

虹が出る どうせ掴めないのに

言葉の投げやりさがとても好きで、虹に気がつく目を持っているのに、その美しさを信じることのできないやさぐれた心に、懸命にもがく“人の温度”を感じる。

菅田将暉さんの声でなくては、こんなに気持ちを揺さぶられることはなかったと思う。関西弁で話していなくとも、佇まいに感じる関西の空気感。

きっと求められていることを察する観察力や洞察力にも長けている方なのではないかなと見ていて感じる。それでも垣間見える不器用さというか、役柄ではない時の雰囲気や表情にはつかみどころのなさがあって、彼の声はそこにさらなる情緒を増していく。

 

かすれるような、喉の限り叫ぶような歌声は、この曲の世界観にピッタリとハマっていて、傷ついているのに美しい。

 

愛が僕に噛みついて 離さないというけれど

さみしさのカタチは変わらないみたいだ

舞い上がって行け いつか夜の向こう側

うんざりするほど光れ君の歌

 

サビの最後、“うんざりするほど光れ君の歌”と歌うところで雷に打たれたような衝撃を受けた。応援、という言葉では綺麗にまとまりすぎる。ある意味で突き放す、言葉の間にある距離感に想いの深さを感じた。

そしてこの歌詞から、この曲の主人公は見送る側であることを悟った。

たった一文だけど、この言葉はすごい。耳を塞いでいたって聴こえてくるくらいに、距離などものともしない強さで“光れ”と願い、投げる言葉の熱が、ヒリヒリと心に残って痕になる。

 

そしてこの曲が好きでたまらないのは星が歌詞に出てくるからで、

流れ星をみた 流れ星をみた

願う僕の歌

と言葉はつづく。

“流れ星をみた”と歌う声は、確かにみたんだと誰かに語るようでもあり、自分に言い聞かせているようでもある。星に向かって願う“僕”は、どんな思いでその歌を奏でるのだろう。

 

 

「さよならエレジー」のメロディーは全体的に暗めで、イメージする景色はMVに出てくるようなトンネル、コンクリートの壁。無機質なものが思い浮かぶ。

曲調が、マイナーと括って正しいのかはわからないけれど、低いところをずーっと保ってからサビの“愛が僕に”でガッと語気が強くなり、目線がこっちを向いたような感覚にドキリとする。メロディーが見せる表情は吹っ切れているようで晴れ晴れとさえしているのに、菅田将暉さんの歌声が涙声のように響くから、なぜそんなに悲しそうなのかと、問いかけたくなる。

 

“初めてのキスを”の後ろで聴こえるベース音は心地よくて、かっこいい。全体としてはドラムの音がとても前に出ていて、それが前に前に出る思いの疾走感をつくり出しているのかなと感じた。

目立つドラムと、アコースティックギター

そして、サビやわずかに間奏部分で聴こえてくるのはバイオリンの音色。泥くささだけではない、美の一面を感じるのはこのバイオリンの効果もあると思う。

 

 

“僕が愛を信じても”と言う歌詞からは徹底的な孤独を感じて、その弱さと強さの表裏一体に引きつけられる。

「さよならエレジー」を歌う菅田将暉さんが、ある意味で曲の世界観に入り役を演じているのだとしたら、私はその役に惚れ込んでいる。MVでギターを掻き鳴らす姿も、憂いをおびた瞳に落ちる影も。儚さでは片づけられない、奥で燃えるもの。

ピンチはチャンスというけれど、極限まで弱りきったように見える時が実は最強に最も近かったりすることを、この曲は知っているのではと思う。だから大好きだ。

 

投げやりなのに全っ然諦めてないところ。

それがこの曲の魅力。傷を負ってもなおできることがあるはずと足掻く「さよならエレジー」に、痛みを抱えた強さをみた。