ペンライトの灯りで届けたい。GR8EST in 京セラドーム

 

ペンライト1つじゃ足りないくらい

この手に持てるのは灯り1つだけど、届いているだろうか。伝わるだろうか?

 

たくさんの人が集まって、ザワザワとした空気のなか、ペンライトの灯りがひとつずつ増えていって、ドームの照明がフッと消えた。

生まれた暗闇に光るペンライトの海は綺麗で、今回のペンライトは周りに付いたラメラメが光をぽわっと柔らかくしていて、順々に移り変わっていく色がドーム一体の空気を目に見える形で映していた。

 

ステージに見えた関ジャニ∞の姿。聴こえてきたのは「応答セヨ」だった。

一瞬、何の曲かわからなくなるほど、私は目の前に見えた6人の姿に釘ずけになっていて、丸山隆平さんの声がして“子供の頃に願い事を込めた”という歌い出しを聴いてようやく、「応答セヨ」だ!と気づいた。

どんなライブになるのか、何度考えても見当がつかなくて、なにを1曲目に歌うのかはもっと見当がつかなかった。ベストアルバムのなかで、ほかのどの曲でもなく「応答セヨ」が選ばれたことに胸がいっぱいになった。

福岡公演のオーラス、最後の最後に歌ったこの曲が、ライブ「GR8EST」【グレイテスト】のスタートになっていることで、それが全く切り離されているものではなく、地続きであると感じられたのが嬉しかった。

 

7月26日。どんな気持ちでいたらいいかわからないままでやって来た京セラドーム。

ペンライト手に持って、リズムに合わせて振るのも、振り付けに合わせて振るのも、歌に聴き入ってしまってその手が止まるのも。楽しかった。

この感じ、これだったと思い出す感覚があって、あっという間にすぎた3時間。

 

「応答セヨ」の後、錦戸亮さんの挨拶があって、その言葉を合図に聴こえた

ようこそ

で始まる歌声に鳥肌が立った。

心配や見守りたい気持ち、この場所にいろいろ持ってきたつもりだったけど、ただ一言、“ようこそ”と迎え入れた関ジャニ∞の度量に、一生敵わないと思った。

楽器の音色が広がると同時に聞こえた関ジャニ∞の声。揃ったその声が本当に温かくて。

これまでだってライブで聴いたことはあったけど、「ここにしかない景色」を聴いてなったことのない感情だった。歌詞にストーリーを見い出したいのとも違う、ただその一言は、ドームに集まった5万5千人が持って来たそれぞれの思いをふわりと白いシーツで包んでしまえるような力があった。

 

そしてメインステージの大きなスクリーンに、どんっと6分割でメンバーが映った。

あのタイミングが、すごかった。どの席からも見える大きさで、今いる関ジャニ∞が映し出される瞬間。それを、さらーっと流れ込むでもなく、ドラマティックさを意識し過ぎているわけでもない。あのタイミングしかなかったと、見てしまった後では確信するくらいに、それぞれの顔がスクリーンに大きく映るタイミングは思いきりよくけれど繊細で、丁寧だった。

 

ドーム内を縦横無尽に動き回るライトも印象的だった。

メンバーに当てるわけではないそのライトできっと、メンバーにはファンの表情がよくよく見えるだろうなと思った。

今回のライブはベストアルバムからのライブ。「涙の答え」を聴けたことがすごくうれしかった。演出が好きだったのもこの曲で、夜空に広がる星の光が綺麗だった。

ただ、「ひびき」も「涙の答え」も聴けて嬉しかったし好きだけど、関ジャニズムの流れを思い出したところではあって、できれば他の曲との組み合わせでの流れを見たかったなとも思った。

メインステージが少しだけせり上がり、床にはうっすらとスモークが炊いてある。それが雲の上みたいで、後ろにあるスクリーンが開いて奥行きのできたセットには、暗闇と光る灯りで星空が現れて、曲の途中に右横のスクリーンから中央、左へと流れ星が通っていくのを見た。

 

無責任ヒーロー」で、“ファイト!関ジャニ!無限大、エイト!!”を出来たのも嬉しかった。

東京スカパラダイスオーケストラとのセッションで完成したこの曲のアレンジを、ライブでどうやって演奏するのかも気になっていた。

それぞれの楽器が交互にセッションする部分は、ツアーのバンドメンバーそれぞれとのセッションになっていて、スクリーンにも画面分割で生の楽器セッションを見られたのには胸が熱くなった。管楽器隊の所に横一列で並んで、トランペットを吹いている横山裕さんがかっこよかった。

 

MCが明けて、見えたのはシアターのような重厚感のある赤い幕。関ジャニーズエイターテインメントの文字がゴールドのライトの看板になって赤い幕の真ん中に降りてきて、カラフルな衣装を着たメンバーが登場。そこから「今」を歌う。

ハイスクールミュージカルを彷彿とさせる赤い幕とゴールドのライトは、ハイスクールミュージカル好きとしてたまらなかった。このセットに関ジャニズムのコンセプト映像のような、ジャケットにハットを被った衣装で魅せる演出もいつか観てみたい。「Street Blues」や「DO NA I」がぴったりくるはず。

 

ライブを観に行くようになったのは「元気が出るライブ‼︎」からで、その頃からソロ曲ではなくユニット曲を披露することが増えていたから、これまでのソロ曲を聴くのは憧れだった。

安田章大さんソロ曲の「わたし鏡」をついに聴けた感動はひとしおで、“早よ 会いたい”のいじらしさがもう、乙女心の集合体という感じだった。そのあとに安田さんがアドリブで言った「早よ 会いたかっっった!」は信じられない可愛さで、くしゃっとした目尻と大きく開いた口角に、観ているこっちが笑顔になった。

 

錦戸亮さんと大倉忠義さん2人の曲「torn」は、見てはいけないものを見ているのではと、一旦物陰に隠れてから眺めたくなるほどの色気。

この曲を知ったきっかけは「十祭」で横山裕さんと村上信五さんでコンビを組んだ「torn」を見たことで、本家を見るのは初めてだった。衣装がはだけているわけでもなければ、あからさまな何かがあるわけでもないのに、こんなに大人なムードを醸し出せてしまうのは、錦戸さんと大倉さんのボーカルの艶っぽさがあるからだと思う。

2人とも少し鼻にかかる声の出し方をすると、声に涙の表情がついて、憂いの湿度が一気に増す。

 

横山裕さんと丸山隆平さんが歌う「パンぱんだ」も見られる日が来るとは思っていなくて、そっか台湾公演!と後から気づいて納得だった。

かわいさがメーターを振り切っていて、うっきうきでペンライトを振った。こんなに平和な気持ちになることがあるだろうかと思うくらい。ドームが一瞬にしてEテレのようなほがらかさに包まれていた。

ドームの一体化、ペンライトのリズムが揃ってすごいと感じたのは、KING。

あの盛り上がりはすごかった。自分が最高に楽しかったからそう見えたのかもしれない。オラオラ系サウンドは苦手なはずなのに、「LOVE & KING」は無条件で楽しくて、KINGとエイトに煽られる楽しさはこの曲だから味わえる。

 

 

京セラドームの26日公演は、間にある映像のコーナーがどちらも丸山さん大活躍。

Tik Tok風のダンス動画を撮ろう!のコーナーは、大倉さんと丸山さんのコンビで、「バッキバキ体操」を踊ることに。キュートに踊る大倉さんの後ろで、狂い咲く丸山さん。もう後ろで好き放題。踊り狂ったかと思えば、傘をさして後ろを横切るわで、わけわからん行動のオンパレード。

「丸、やったな」と大倉さんに感づかれるも、シラを切る丸山さん。映像を確認しよう、いやいいと思うよ、で逃げ切ろうとするものの、狂い咲きがバレる丸山さん。最高だった。

今思い出してもニヤついてしまうし、出先で突然映像が蘇るからあぶない。とんでもないものを心に残して行ってくれたな丸山さん…と変な気持ちになっている。

 

キーワードを繋げたお題に答えるコーナーは、村上さんと丸山さんが選ばれて、「突然、寝っ転がって、全力で自己紹介」みたいなお題が。

先行の村上さんは、背中大丈夫?と思うくらいの寝っ転がりからの「まっかみしんごでーす!!」と文字起こし不可能な勢いで挨拶。後攻の丸山さんはどうくるかと思ったら、村上さんを上回る狂気。寝っ転がりからローリングで、決めに「イニシャルはM(エム)!!」で全力のM字開脚。

脚が長いから見事なM。丸山さんの勝利。

ドームのウケ具合を裏で聞いたのか、コーナー映像が終わってライブ本編に戻ってから実際に「イニシャルはM!!」をステージで披露する丸山さん。エンジン全開だった。

 

 

横山裕さんの吹くトランペットが、パーッと突き抜けるようにドームに響いていた。村上信五さんがためらわず思いきり歌声をマイクに乗せるようになっていた。

丸山隆平さんが担うボーカルパートの続く3曲、柔らかさよりも勇ましさが強く出ていた。錦戸亮さんがあそこまで喉全部を使って歌うのを私は初めて見た。

安田章大さんの歌う新たなパートは、寄せず引っ張られず、安田さんの歌を聴けた気がした。大倉忠義さんの話す今の思いは、あるままを伝えようという取り繕いのない真摯な言葉だった。

 

 

歌わないという選択もあるのかもしれないと思っていた「大阪ロマネスク」

今日も誰かが巡り逢う 遥か 遥か 西の街

恋をするなら御堂筋から 始まるのさ

雅なるストーリー

関ジャニ∞全員の声が聞こえた。

その音の厚み。迷いのなさ。6人全員が、同じ声量で声を出している。

 

いつか聴きたいと願っていた「大阪ロマネスク」を聴けるまでの間に、自分はどんどんと大阪を好きになって、気づけば10日間をそこで暮らすまでになった。

1ヶ月が経って、戻ってきた大阪で聴く「大阪ロマネスク」は、切なさというよりも色鮮やかな思い出で満ちていた。梅田駅もなんばの庭園も神戸まで見える景色も、大阪の情景が頭の中でくっきりと蘇るのを感じて、過ごした時間が身体の中に確かにあることを知った。

 

 

ライブ最後に歌われた「ここに」

新曲として冷静に聴けると思っていたけど、大倉さんの最初のパートを聴いたらガッと思いが込みあげてしまって、削ったままでむき出しの人間味を見せてもなおどうしてここまでかっこいいのかと悔しくなるほどだった。

どっと押し寄せてくる気迫が、ラジオから聴いていたのとはまた別のもので、直に聴いてわかった曲の魅力があった。

 

4月からずっと、7月19日を越えたら、スバラジがラストを迎えたら、ライブが始まったら、今までがなかったことに、世界がまるごと記憶を無くしたみたいに、リセットされてしまうことを恐れていたのかもしれない。

テレビの過去映像や雑誌で関ジャニ∞として居た渋谷すばるさんを見られなくなったとしても、自分の記憶だけは消されてたまるかと、ずっと身構えていた。

ライブを観て、ああ大丈夫なんだと思った。誰よりも関ジャニ∞が、無かったことにする気なんてなくて、その意思はそれぞれの挨拶やMCで臆せず発せられる「すばるくん」の名前に表れていると実感した。

今の関ジャニ∞があり続けることは、これまでの関ジャニ∞があったことの証明でもある。 

 

初めて聴く6人での歌、初めて見る6人の姿。目で見るよりも耳で聴く変化の実感は大きくて。どの曲も、初めて耳にする新たな関ジャニ∞だった。

素直な思いを書くと、戸惑いも楽しさもごっちゃになった言葉になりきらない感情に、頭はキャパオーバーで、ライブ後は思考停止だった。ご飯を食べていても気を抜くと一点を見つめて固まってしまう。パソコンみたいに、ロード中…ロード中…とあのグルグルが永遠と回っているような状態で、整理しきれない情報量。

まずは目の前にあることを受けとめるのに精一杯で、楽しかったのも本当。嬉しかったのも本当。

だけど、渋谷すばるさんのことが大好きだったから。

思いがこんがらがるのは、全力で関ジャニ∞を好きになっていたからで、26日のライブで錦戸亮さんが話していたように、牛みたいに咀嚼を繰り返して飲み込んでいけたらいいんだと、そう思った。

 

関ジャニ∞のライブがまた観たい。

どんな歌を歌うのか、どんなステージを作るのか、もっともっと観たい。

わけわからん丸ちゃんのギャグも、一変して寡黙にベースを弾いている時の丸山さんも、どうにもこうにも好きだから、見ていたい。

来年もまた、年に一度会える友達と一緒にここに来られますようにと願って後にした京セラドーム。夜になった空にはまんまるの月が見えた。

 

大阪滞在記 あとがき

 

大阪から戻ってしばらく、頭の中がふわふわとした不思議な感覚が続いた。

10日間かけてインプットした大阪の町の地図が、こっちに帰ってからもまだ頭の中に残っていて、地元と大阪がゼロ距離になったみたいな感覚。

あれ?この道は地元の道?あの道は大阪の道か。あのカフェは大阪にあるんだったっけ、そんなふうに一度インストールした大阪地図を地元地図モードへと切り替える必要があった。

大阪にいる夢を見た。地元のカフェと大阪のカフェどっちも行きたい!という思いが募りすぎて、2つのカフェが同じ場所に集結する夢も見た。

 

そんな抜けきらない余韻のなか旅は無事に終わったと思いきや、数日後とある失態に気づくこととなった。

それはお土産の話。家族へのお土産「みたらし小餅」を得意げに取り出し、さあ食べましょうかという時、ふと見えた賞費期限。

切れてる。えっ切れてる。

何がすごいって、大阪滞在中に切れてる。びっっくりした。

お土産を買うことに慣れていない人が気合いを入れて前もってお土産を買った結果、前もってすぎて、帰って来る前に消費期限が切れた。呆然。大阪から買って来たぞ!とドヤ顔で渡すつもりでいたのに、そんなことってある??と自分が信じられなかった。

 

人数分のお土産の予定が大幅に狂い、頭をフル回転させてどうにか分配できないかと考える。

まあなんとかなるかなあと思いながら、忙しくなった毎日の予定をこなすのに精一杯で、また数日が経った。お土産を渡しに行く時間がない。

今日なら持って行ける!そう思って念のため「こたべ」の賞味期限を確認する。あっ……

「こたべ」も戦線離脱。生き残っているのは抹茶プリンと大阪ちよ子のバームクーヘン。

抹茶プリンとバームクーヘンは、無事に手渡すことができた。こんなことなら、ソース味のじゃがりこにしておいたらよかった…背伸びしてお茶菓子買ったばっかりに…なぜ会社へのお土産などにスナック菓子が重宝されるのか、身をもって学んだ瞬間だった。

幸いなのか、8月の今週末、ライブを観にまた大阪に来る。お土産リベンジはその時にしようと思う。

 

大阪滞在記を夢中になって書いていたら、あっという間に1ヶ月。

関ジャニ∞のライブGR8EST京セラドーム、観に行く日が自分にとってももう間も無く。大阪の空気を身体に残したまま、もう一度大阪へ行くのはそれもまた不思議な感覚。どんな景色を見るのか、どんな思いになるのか、検討がつかないけど、考えるよりも何よりも全力で楽しむ気持ちだけを用意して行くことにする。

ついこの間カラになったばかりのスーツケースに荷物をつめて、私はまたガラガラとスーツケースを引っ張り大阪へと向かう。

 

 

大阪滞在記はこれでおしまい。 

どわーっと載せてしまったこの分量を、ここまで読んでくださったこと、ありがとうございます。

どこまで続くのかと自分でも思うほど、10日間の出来事なのに、1ヶ月は過ぎた日々のことなのに溢れてくると止まらなくて。コンビニで何を買ったとか電車の窓から何が見えたとか、どんなに小さな事も書いているうちに空気感ごと鮮明に思い出して、簡潔に書くことが難しかったです。

読んでいておもしろいだろうかこれは…音楽のことを書いている方が楽しんでもらえるのではと迷いもあったけど、今はこれが書きたい。という気持ちのままに従うことにしていました。

なのでここまで付き合ってくれた方々に、どんだけ大阪大阪いうんじゃと愛想尽かさずにいてくれてありがとうございますの思いでいっぱいで、書くことにおいても挑戦だったこの時間を共有してもらえたのだとしたらうれしいです。

 

すーっと通過して行ったけど、6月で「宛名のないファンレター」は書き始めて丸3年が経ち、4年目に突入しました。

4年目になってもまだまだ、書きたいことが尽きません。関ジャニ∞の過去の曲でも、最近気になるアーティストの曲でも、書きたいことに書く手が追いつかなくて、それがとにかく楽しいです。

いろんな形の文章を経験していきたいと思うので、読みに来てください。

これからもよろしくお願いします。

 

大阪駅の大冒険

 

おいでやす商店街からすぐの中崎町の駅の階段を、地下へとどんどん降りて行く。何度も通った改札を今日も通って駅のホームで電車を待った。

東梅田まではあっという間で、東梅田からの梅田までの道も、気づけばほとんど迷わず歩けていた。

ゆりやんレトリィバァが広告をしている、梅田駅の大きな柱のポスターが通るたびに印象的で、“迷えるって、ステキやん?”と書かれたキャッチコピーが梅田ダンジョンを上手いこと表していて、迷うことを逆手に取った面白い広告を作るなあと通るたび思っていた。

 

梅田駅で時間をつぶそうと来たけれど、どこに行こうかと歩いていたら、ルクアにたどり着いた。

やすとものどこいこ!?でルクアって見た気がする!と思って、雑貨屋さんも多そうだったので大阪の締めはルクアになった。何とも普通だけどそれがいい。

スーツケースをまずはロッカーに預けたいよなぁ…と探していると、ルクア出入り口の近くにロッカーを発見。必要な場所にあるものなんだなあと感心した。中段に1つ空きがあって、少々お行儀がわるいながらも膝とお腹と使ってスーツケースをなんとか持ち上げ、ぐいーっと押し込んだ。

こういうのってロッカーの場所忘れそう…と一応全体の写真を撮ってから、ルクアへと入って行った。

 

日曜日のセールシーズン。エスカレーターに乗る順番待ちができるほど、ルクアはお洒落なお姉さま方でいっぱいだった。

本当にみんなお洒落で、すごい…キラキラしている…と思いながら、ムーミンショップを楽しく眺めたり洋服を見たりした。中崎町で見つけた「にじゆら」の手ぬぐいをここでも見つけて、最後の最後までストールを買うかどうか迷った。

自分が大阪に適応しはじめていると感じる瞬間があるたびに嬉しくて、ペットボトルの飲み物が買いたくなっても、ルクアを出て少し歩くと京都から帰った時のことを思い出して、あっちの方に自動販売機があったとスタスタ歩いて行けることが楽しかった。

その通りすがりで見た大阪駅のホーム越しの空が綺麗で、少しの間ベンチに座って見ていた。

 

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ルクアは大盛況。PLAZAのレジにも無印用品のレジにも行列ができていて、ただならぬ混雑を感じながらも、ショッピングは楽しかった。あまり関東で見かけないブランドで、可愛いなあと思う水色のシャツを見つけた。

大阪資金は大幅にゆとりを持って残すことができたけど、使ってしまう?持ち帰る?と頭の中で決算会議。

10日間やりきったから!を免罪符に、今日は好きなものを買っていいことにした。シャツをセール価格で買って、アクセサリー屋さんでこれだと思える大ぶりのフープイヤリングを見つけて、それも買った。

夏の雰囲気だけど、月がぶら下がるイヤリング。ケバケバしすぎない、好みのデザイン。ひとつ見つけると、3点セットにしたくなる謎のさが。華奢なゴールドにわずかに大きさが違うパールのついたリングと、サンゴ礁のような髪留めを見つけて、この3つを大阪最終日のご褒美とすることにした。

 

 

買い物が楽しくなってきたころ、スマホにかけていた、新大阪へ向かう出発のアラームが鳴った。

行かなくては。そう思ってロッカーの場所に向かおうとするも、思った出口に出られない。ルクアはあまりに広くて、出口がいくつもあるから、ぐるぐるとフロアを移動しているうちに、どっちが前か分からなくなってしまった。

自主的ぐるぐるバットじゃないか…と思いながら、実際はそんなことを考えている場合ではない。ゆとりを持ってはいたけど、迷う時間は想定外。

てこずれば新幹線に間に合わない。だんだんと焦りだす心拍数。え…どうしよう!

撮っておいた写真を見返すも、ロッカーの全体写真しか撮っていない私。ルクア何階から入ったかを写していない。なんの意味もないじゃないかー!

ひとり漫才が止まらず、必死に入って来た時の景色を思い出そうにも、どんなお店があったか、浮かれポンチでエスカレーターに乗ってしまったせいで思い出せない。

 

とにかく出なければ。とルクアの出口をまず探して、駅から出てすぐの所だったから…落ち着けば見つかる…落ち着け……と自分に言い聞かせ、歩いた覚えなんてない場所をとりあえず進む。

この階じゃなかったと思うんだよな…エスカレーターがあったから…と記憶をたどりながら、なんで最後の最後にこんな…と人波に沿って肩を落としながら歩いていると、階段の上の方から歌を歌う声が聞こえてきた。

そうだ!ルクアに入る時、ストリートライブをしている人が見えた!とロッカー周辺の景色を思い出して、上だ!!と階段を駆け上がると、はじめに見たあの景色だった。

よかったよおおと泣きつきそうな気持ちでロッカーに駆け寄り、鍵を開けてスーツケースを取り出した。

ストリートライブの人、ありがとう!と耳を向けると、歌っているのはドリカムの「未来予想図」だった。しかも大阪ロマネスクを巡ったあの日、aikoさんの「カブトムシ」を歌っていたあの人、Ellieさんの声だった。

きっとこの曲を聴くたびに思い出します…と染み入る気持ちで、歌声を背中に御堂筋線へと乗り込んで、新大阪駅を目指した。

 

 

夕方の御堂筋線。電車は空いていた。

席に座って、自分の前にスーツケースを固く持って、電車が出発した時にどれだけ安心したか…慎重に慎重を重ねるのに、本当にまったくもう。

けれど無事に、あまりタイムロスも無く新大阪駅へと到着して、余裕を持って改札内へ。

新大阪駅に来たなら「yokooのビーフカツサンド」を買って帰るべしという掟を聞いていたので、お店を探すと、フードコートのような空間になっている室内にyokooはあって、持ち帰りでオーダーをすると、注文を受けてから厨房で切って箱に詰めてくれた。

新幹線で食べる夜ごはんも手に入れて、お水も買って準備万端。なのに。

 

新幹線に遅れが発生していた。

えっ!とまた騒がしくなる自分の心拍数。

すでに来ているはずの新幹線はこれから到着で、自分の乗る予定の新幹線よりも一つ後の新幹線の方が、始発なので先に出発する予定。全体的に20分ほどの遅れ。

あとは新幹線に乗るだけかと思っていたのに、イレギュラーな事態。点検のための遅れなので、必要なこととはわかっているけど、電光掲示板の見方もよく分からないしややこしいし、何より一人で心細いのにどうしたら…とひたすら掲示板を見上げて、駅員さんにつめかける人たちの近くで駅員さんの説明を聞いて、状況を整理する。

一刻も早く着かなければいけないのにはわけがあって、「関ジャム」の渋谷すばるさんラストの生放送に何としてでも間に合わないといけないからだった。

当初の予定でも、ラストの放送がこの日にあると思っていなかったから、大阪優先のスケジュールで、まあ間に合うかなというつもりだった。けれどラストの3日間で、自分にとっても大阪から帰ってその日の夜の関ジャムとなれば、絶対にリアルタイムで見たかった。

 

指定席に乗らず並ぶか、取ってある席で帰るか。

慣れないことを一生懸命に考えて、それでもやはり予定通りの新幹線で帰るのが安全策だと思い直した。

地元までのルートを検索し直して、一切の無駄をのぞけばギリギリ間に合う乗り換えを見つけて、これでいくしかないと決まった。泣き言を電話で話しながら、時間はようやくやってきて、新幹線に乗り込んだ。

 

席を見つけて、スーツケースを上に仕舞おうとするのだけど、それがどうにも持ち上がらない。ひとりで格闘技みたいにあれやこれや頑張るけど、膝ではどうにもならないし、腕の力が全く足りない。

無理じゃん…と途方に暮れていると、見兼ねたおばさまが「手伝いますか?」と助け舟を出してくれた。2人がかりで持ち上げて押し込み、ようやく収まったスーツケース。

行きの新幹線でひょいっと持ち上げたおじちゃんの強さを再認識した。そして空いている新幹線ではスーツケースを自力で持ち上げられるかどうかが大切なサバイバル項目であると学んだ。

 

しばらく外の流れる街灯を眺めて息を整えたあとで、牛カツサンドを食べた。

 

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からしをつけて食べるのが絶品で、なんだか牛カツサンドを頬張って食べている時が一番涙腺にきた。何なのだろう。安心感なのか、達成感なのか、美味しさなのか分からなかったけど、ちょっと泣いた。

新幹線のなか、ルクアで買ったアクセサリーを取り出して、ひと通り着けてみたけど、ひとまとめにしてつけるものではないなと思った。そんなさなか、ふとした拍子に買って着けたばかりのパールのリングが折れて壊れるという悲劇が。カチャンと音を立てて落ちたそれを拾った。

えーそんなことある…?大阪での思い出の品を地元に着く前に壊すってある?と呆然と面白くなって、笑ってしまった。壊れる数分前に撮っていた着用写真をぼんやり見つめた。

これ1個じゃなくてよかったかもと気持ちを切り替え、席でぼーっと聴きたい曲を聴いて時間を過ごした。早く着きたい気持ちのせいで到着の時間を1時間勘違いしたりして、そんな早く着くはずないよなと自分の空回りっぷりがおかしかった。

 

新幹線が降りる駅へと着き、すぐに乗り換えルートを移動して、予定通りの電車に乗った。

この時の電車の中での空気感が自分にとっては初めてのもので、数日ぶりの地元に戻り、自分は全く違う場所で時間を過ごしていたけど、ここは何も変わっていなくて。

10日間、私が居なかったことを知る人はいないし、沢山のものを見て経験して、中身の少し変わった自分に気づいているのは自分だけで周りには関係のないことなんだというのが不思議で、透明人間になった気分だった。

それは寂しさじゃなくて、誰も知らない自分の中だけで起きた秘密みたいで、うれしいことだった。

 

最寄駅からは本気の分刻み。導線の無駄なく動かなければ、関ジャムには間に合わない。

ホームに着いて、エレベーターを探している暇はないのでそのまま階段を気合いでスーツケースを持ち上げて登り、改札を出て早歩きでタクシー乗り場へ。

乗り込んですぐに行き先を伝えて、支払うお金もスタンバイ。はやる気持ちを落ち着かせて、ようやく自宅に到着。スライディング帰宅でテレビをつけて正座で座ると放送5分前。

間に合った…やっと深呼吸をした。

 

 

私にとって冒険だった旅の終わり。

頭のなかでスケジュールの締めくくりに書き込まれていたのは「関ジャム」

1分1秒が過ぎるごとに輝いていく時間が、忘れることのない記憶のうつわにさらさらと積もっていくようだった。

表情も声も全部が大切で、‪メンバーが選んだ「忘れられないあのセッション」を振り返って、関ジャニ∞のセッションを本人たちが見ているところを見られるのも貴重なことで、Perfumeとのダンスセッションを見て笑う関ジャニ∞を見られたことが嬉しかった。

メンバーから見たメンバーの音楽での繋がりを強く感じる時間だった。

 

東京スカパラダイスオーケストラとのセッション。

無責任ヒーロー

渋谷すばるさんの発表を聞いた時、このコラボは見られないのだと覚悟した。それが関ジャム‬で実現できると知った時、本当にうれしかった。

演奏を終えて、キラキラとした笑顔でハイタッチをする関ジャニ∞スカパラの姿を見て、この瞬間を見られてよかったと、笑顔にすらなれた。

 

私はライブで「大阪ロマネスク」を聴いたことがない。

十祭のDVDを見た時、いつかこの曲を聴くことを密かな楽しみにしていようと決めた。それはついに叶わなかったと、4月のあの時には思ったけど、‪関ジャム‬での生放送というかたちで、その夢は叶った。

渋谷すばるさんが、歌詞ではない声で大阪の情景を描くあのパートが大好きだった。

その声を聴けてよかった。関ジャニ∞が7人で歌う「大阪ロマネスク」を見ることができてよかった。 

 

LIFE〜目の前の向こうへ〜

気持ちは寂しさに捕まってしまっていたから、ラジオ「大倉くんと高橋くん」で聴いた時も、なぜこんなにも前を向いた曲を選ぶのだろうとわからない気持ちでいたけど、この時に初めてこの曲を選んだ理由がわかった気がした。

ドームでライブを観ているのだろうかと錯覚するほどの熱。「Eighter!!」と叫んだすばるくんの声が、何もかもを突き抜けて届いた。

 

これまで、人の感情が動くのを見るのは苦手だった。あまりに人間らしさを感じてしまうから、喜怒哀楽がはっきりした人といると自分の感情がその色で消えてしまう。伝わりすぎて、不安になる。

でも関ジャニ∞のひとりひとりが見せる人間性は、あるがままなのに見ていて不安にならない。

感情の動きが素直で、そこに繕う意図がないから。

 

見たかったセッション、聴きたかった曲、聞きたかった言葉、すべてを受け取った。

関ジャニ∞は最高にかっこいい。

決まりました、発表しました、で閉じず、会見から番組ひとつひとつの締めくくりがあって、関ジャニ∞自身が一番動揺していたはずの時にラストを見せてくれたこと、心構えの順序を作ってくれたことに胸がいっぱいになった。

永久保存版にします。ありがとうと伝えたい。

 

 

10日間の最後がこんなにドタバタになるとは思わなかったけど、無事に帰ってくることができて、関ジャムにも間に合って、ラストを見届けられたことで悔いのない10日間になった。

いつも何かを考える時、先回りがあまりに得意だから、行って結局戻ってくるなら、行く意味はあるのだろうかと考えてしまう思考回路だったけど、今回ばかりはそれを黙らせて、思いもしないことが起こってくれたらいいと踏み出した。

帰ってきてみて、何がそんなに恐かったのだろうと思ったり、小学生のような門限で帰らずに、夜も飲み屋さんとか行ったらよかったと思ったりしたけど、あの時なりの精一杯で私は生きていたことも本当だから、今やってみたかったことに飛び込んでみてよかったと確実に思う。

いつかもっと度胸がついて、緊張も恐がりも薄まった私がこの挑戦のことを思い出して、よくやっていたなと笑えたらいいなと思う。

自分の心の場所をこんなにはっきりと、手で触れられそうなほどに感じた時間は初めてだった。