3つの歌が繋ぐストーリー Nissy「OK?〜君に贈る24時間〜」

 

西島隆弘さんが監督をした、ミュージックショートフィルム「OK?〜君に贈る24時間〜」

映像としての魅力も勿論、まだまだやってみたいことがあるんだという気迫が熱として伝わる作品だった。

出し惜しみしない、その時に持つ力の限りを使って、クオリティを保つ。全力でものを作り続けることは並大抵ではないはずなのに、それに向き合い挑み続ける西島隆弘さんの強い意思をあらためて感じた。

 

今回はミュージックショートフィルムになっていると聞いた時、台詞がついて断片的になるのかなというイメージをしていた。けれどそうではなく、今までの作品は1曲に1つのストーリーだったものが、今回は3曲が繋がって出来上がる1つのストーリーになっていた。

 

映像がはじまってすぐに、西島隆弘さんがシアターという空間で「OK?」を上映したかった理由がわかった。

青スーツを着たNissyが、ホテルの部屋に帰って来る。ハットを置いてジャケットを脱ぎ、ベットに寝転ぶ。

その一連の動きの音ひとつひとつ、シーツの擦れる音、時計を持った時のチェーンの僅かな音もすべて、映画館特有の音の繊細さではっきりと聞こえた。

耳に直に聞こえてくるようで、映画館で聞く紙の擦れる音や、靴の音を聞くのが好きな自分には堪らなかった。

CDと共に映像のDVDとしての発売は決まっているのに、こうして観に来ることの意味とはなんだろうと考えていた問いはすぐに消えた。

この音は、ここでしか聞けない。自宅でイヤホンをつけてもヘッドホンをつけても、ここまで細かく聞くことはできないと思った。

「どうしようか?」を初めて見た時の、あの手を置く音、革靴の音、そこに寸分違わずリンクしていく映像に感動した感覚が蘇って、今度はそれを大きなホールに響く音で全身で浴びることができる嬉しさがあった。

 

土砂降りの中のシーンから始まり、分からないけれどなんだか感じる胸騒ぎにドキドキしながら観ていると、Nissyの登場にほっとした。

それから視界に入ってくるタイの風景と、流れだす「17th Kiss」のメロディーに気分は高まり、旅をしているワクワク感を同じように観ながら感じることができる。

西島くんがバスから降りた時のワクワクはなんとも言えなくて、サングラスを自然に掛ける仕草も素敵だった。嬉しそうに写真を撮りながら歩く表情がすごく良くて、旅先でカメラを持って歩くってこんな感じで楽しかったなと旅をしている時の気分を思い出した。

タイの街を踊りながら歩いて行くNissyとボーイズたちの絵が格好よくて、実際に街にいるお店の人たちや旅行客の方々が興味津々な様子で後ろから見ているところが映っていて、突然始まるストリートパフォーマンスみたいで、そこでキレッキレのダンスを見せつけるNissyが最高に誇らしかった。言語なしで、ダンスだけで目が離せなくなる魅力があると知っているからこそ、離れた場所にいるNissyを見てもハラハラすることがなく、タイのみなさん見て見てと思っていた。

 “癖になる Flavor”という歌詞に合わせて、ダンスの振りで鼻の下を人差し指で擦る動きをするのが可愛くて、やんちゃっぽさが良かった。

 

Nissyボーイズたちの可愛さとコミカルさが今回も炸裂していて、みんなで浮き輪をつけてギュムギュムしながらチューの口ってどういうこと?絶対当たらない楽しさ?と思いながら、彼らの行動に謎は多いけど、それさえも可愛い。

「Never Stop」でも思ったけれど、車×Nissy×ボーイズの組み合わせは最高だと思う。

西島くんと女の子がチンピラに追いかけられているところに、突如現れるアロハシャツのNissyボーイズ…?らしき人物がまたふっと笑顔にさせてくれて、Nissyに指令を受けて来たのかなと思うとその関係性にもキュンときた。

 

西島くんと女の子が、スカーフのカーテンにふわっと逃げ込むシーンは本当に綺麗で、このシーンが忘れられない。

柔らかい布地に水色や赤いペイズリーの柄が光を集めてライトみたいだった。パンフレットで、これは現地に着いてから思いついたことだったと書いてあるのを読んで、どんな時もアイデアになるものを目で探しているんだなと感動した。

 

 

一曲目では二人の会話に字幕だけがつき、街の音とそこに流れている「17th Kiss」の音だけが聞こえている。どこかで印象的な鐘の音がチリンチリンと鳴っているのも聞こえる。

二人が言語の違いを意識する間も無く急速に距離が縮まっている様子を感じることができて、二人だけに集中して観ることで、二人の会話が沢山聞こえてくるようで。視線で交わされる会話は言葉よりも多いなと気がついた。

 

三曲目の「愛tears」でやっと声が聞こえる。西島くんの声は日本語、女の子の声はタイ語。最後の「OK?」だけがそのままの発音だった。

ここで女の子に日本語を話してもらったりはせず、基本としては日本語を話す西島くんとタイ語を話す女の子というシチュエーションを守ったことで切なさが増していた。

 

「恋す肌」で、グレーのシャツをお揃いで着ているところも、白でも黒でもなくグレーのシャツというところに絶妙なカップル感があって、物凄くグッときた。ほどよく生活感があって、お互いにリラックスしている空気が伝わるグレーのチョイスは素晴らしいなと思った。

二人で食事をしていて、タイ料理のスープを差し出され、いや僕は…とジェスチャーで拒もうとすると、ん?と強めの圧をかけてくる彼女に負けて、飲む西島くん。お?といけそうな顔をしたと思ったら、辛い!とむせて退出した西島くんが、戻ってきた時に彼女の隣に座ったところが良かった。ねえ!と表情で訴えかける様子が可愛くて、二人の関係性の変化も感じられた。

このシーン以外でも、彼女が時々するムッとした表情の時の可愛さはとんでもなかった。眉が動くだけで、表情がくるくると変わって可愛い彼女に釘づけだった。

野外のドリンクスペースのシーンで、二人でカウンターに入り働いていたところから、西島くんが自分でお水をカウンターに一度置いて、もらいまーすという感じで持って行くのを見守る彼女の図がキュートさ満点なカップルの空気感で、そのまま持って行かずに自分で頼む係と頼まれる係をする西島くんが子供みたいだった。

 

「恋す肌」で、浜辺でギターを弾くNissyにときめきが止まらず、スーツに楽器の相性は抜群だった。

これまでは西島くんの陰でこっそり行動することが多かったNissyが、ちょっといたずら心を解放して大人数の前でライブを始めちゃう感じが、ご主人の言うことを聞かなくなったジーニーみたいで。

そして彼女がNissyの横に並んでマイクが2本立っている様子が映った時の、私のテンションの上がりっぷりが半端ではなかった。これまでの作品も同様に、ヒロインとNissyが接触する瞬間にとてつもなくときめく。西島くんが主体でそれを助けるのがNissyだけど、見せることができずにいる本心が繋がった瞬間のように思えて、よりドキドキする。

彼女のダンスが上手で。ちゃんと役のまま、でもすごく楽しそうで素敵なシーンだった。

 

楽しい時間があればあるほど不穏な空気は拭きれず、お互いの悲しさを言葉にはしなくても共有している空気がそれを表していて、なんとか二人が一緒にいられたらいいのにと思わずにはいられなかった。

もともと泣くつもりで撮ったシーンではなく、彼女役のバイトイさんが泣いてしまいそうだと言ったことから演出が決まったという話を読んで、その感性で演じていく現場の空気がすごくいいなと思った。

涙が西島くんの頬をすっと伝う瞬間と、音楽が動く瞬間がしっかりと合っていて、全体の流れのなかほとんど音楽を完全に止めることはないのに、その時間枠のなかでタイミングを合わせることがすごいと思った。

 

「愛tears」のイントロを聴くと、一瞬にして異国の空気が流れて、見たことはないけれど知っているような感覚になる。

同じ要素を関ジャニ∞のユニット曲「ノスタルジア」からも感じたけど、洋楽などで聴いたことのあるテイストだなと感じて、この曲調はトロピカルハウスと呼ぶのだと、パンフレットを読んで知った。

 

 

どうなってしまうのか、どこで終わってしまうのかエンディングが想像できないまま、ラストシーンを迎えた。

初めて観た感想は、あまりにあのカップルが好きだったから、ハッピーエンドではないのか…という悲しみで行き場のない喪失感があった。

けれど西島隆弘さんはインタビューで、あの終わりをバッドエンドと話してはいなかった。私も何度か観ているうちに、そう感じる瞬間があるだろうか。

 

終わり方について、Nissyの表情についてなど、考えたくなる要素は沢山あって、その余白の自由さがNissyとしての作品に惹きつけられるポイントなのだなと思う。1から10まで説明を敷き詰めることはしないで、観た側が思いたいように思えるように出来ている。だからNissyとしてのこだわりや挑戦が沢山盛り込まれていたとしても押し付けがましくなく、楽しみたい方法で楽しむことができるのだなと感じた。

 

「17th Kiss」からストーリーのラストまで象徴的に繰り返し出てくる、問いかける “?” には紳士な色気がある。高圧的というより、弱気な気持ちがあるからこそ言い切れないどこか臆病な性格を感じるところに魅力があると思う。

これだけ仲良しのカップルを見ていて、キスシーンはいくつあったっけと思い返してみると、西島くんと彼女が実際にキスをするシーンはなく、あるのはハプニングとしてのほっぺにキスのみだったことに気がついて驚きだった。それが意外に思えるほど、距離が確実に近づいていることを見て取れる演出の仕方がすごいと思った。

そして今回の「OK?」にも、後ろからのハグのシーンがあった。これまでの作品でも度々あったシーンで、この行動がいつも印象に残っていた。

どうして後ろからのハグがこんなに切ないのか考えると、引き止めている気持ちの距離感かなと思う。背中を抱きしめているということは、どちらかはどちらかが見えていないという一方通行な視線が切ない。

 

今回、Nissyの「OK?」に出演した、タイで活動されているBAITOEI【バイトイ】さんが本当に可愛くて、自然な佇まいが素敵な方だった。スクリーンで観ながら、Nissyを目で追いたいけれどバイトイさんに惹かれて目が離せないという困った状態になったから、今度はしっかりとそれぞれに注目して観たい。

 

タイで撮影をした「OK?」を観たことで、タイに興味が湧いたことも今回の発見だった。海外に関心はあっても、イギリスやスウェーデンなどの方面ばかりでアジア圏にはほとんど関心がなかった。「OK?」を観て、こんな景色があるのかと驚きがあったり、その土地の空気感を感じられたことで、いつか実際に見てみたいと思えた。

 

Nissyのつくる世界はやっぱりサプライズに満ちていて楽しい。こんなにも音楽を楽しんでいて、挑戦していくNissyのことだから、いつか関ジャムに出演する日が来ると思っている。

初めはちょっと覗き見というつもりでいたYouTubeでの視聴から、思っていたよりも歩みを進めて来てしまったなという自覚がある。それでも、Nissyがこれからどんな世界を観せてくれるのかを、追いかけずにはいられない。

2017年に「ばしゃ馬さんとビッグマウス」を映画館で観た。

 

今年、「味園ユニバース」を映画館で観て、「ばしゃ馬さんとビッグマウス」を映画館で観た。

「ばしゃ馬さんとビッグマウス」は、2013年に公開された作品。公開期間をとうに過ぎて、映画館で再び上映される。そんなことが一年のうちに二度もかなうとは思っていなかった。

この二つの映画は、関ジャニ∞を知り始める前からどこか心惹かれていた不思議な距離感の映画で、それでもあとわずかに間に合わず、映画館で観ることができなかった。観に行けばよかった、映画館には行っていたのにと後悔していた。

あまり映画やドラマのDVDを買う習慣がないけれど、この映画だけは迷いなく手元に欲しかった。レンタルでは足りない、必ず元が取れるほど繰り返し観るからと、確信を持てたので購入を決めた。

どちらも何度も観て、未だに飽きることがない。

 

そんな「ばしゃ馬さんとビッグマウス」が映画館で観られるまたとないチャンスとなれば、逃すわけにいかなかった。

何度も観たはず。けれど、映画館で観るものはやっぱり別物で、この新鮮な驚きはなんだろうと考えた。普通は映画館で観て、それからDVDが出て。映画館での迫力や音の記憶を人は無意識のうちに投影して観ているのだと思う。だから多少の物足りなさはあっても、馴染みやすいのかもしれない。

ところがこの復活上映という特殊な状況は、インパクトの大きさでいくと、テレビスタジオから東京ドームレベルの迫力の差があって、大きいものから小さくではなく、小さいものから大きくなるので、何倍もの衝撃になるのだと思う。

 

映画館の全体を包囲される音の力はやっぱり凄かった。プリンターが動く音、シナリオの紙をめくる音、キーボードをカチカチと押すタイプ音。音数の少ない作品だからこそ、その静かな中にある小さな音が耳に届いて、まとう空気を増幅させていた。

 

天童くんの可愛らしさにも再び気づいてしまった。やたらとオレンジの服を着ていることが多くて、似合っていて彼らしくていい。

馬淵さんの誕生日を祝うためカラオケに向かう途中で、馬淵さんと2人並んで歩いているシーン。告白しようとする天童くんの行動は突然に思っていたけれど、わずかなカット割りで馬淵さんを見つめる天童くんの横顔にふっとピントが動いた瞬間の目を見て、天童くんの心が動いた瞬間を目撃できた気がして、ここで彼のスイッチが入ったんだと感じ取れた。

 

天童くんのクラゲのような掴めなさは、魅力ではあるけれど、身近にいたとしたら信用するのは難しい…と思っていた。でも、双子の姉の方か妹の方かどっちでもいい天童くんや、居酒屋では馬淵さんの前の席をキープしている健気さを見ると、チャラいのではなくて、馬淵さんのことが、好きなんだなと伝わってくる。

天童義美という役を安田章大さんが演じていなかったらと、ふと想像した。考えられなかった。普通に考えたら、こんなにいい加減で口ばっかりな人に愛着を抱いたりしない。なのに、本来の安田さんから滲み出る人懐こさや柔和さが天童義美という人を魅力的に表現していて、好きになってしまう。

何度見てもなんとも言えない表情で見てしまう落選のシーンも、ああああー!!と雄叫びを上げる声の大きさに驚き、右から左のスピーカーへと移っていく声の奥行きが流石の映画館だった。声の高さも物凄くて、走りながら2度ほど息継ぎをしているのも聞こえた。息継ぎしてまで叫びたい天童くんの衝動が可愛い。

 

可愛い繋がりでいくと、ワンさんがあんなに枝豆を食べていることも知らなかった。居酒屋でもカラオケでも、なかなかの大きさのお皿を抱えて枝豆ばっかり食べている。日本の分け合って食べる文化を知らないまま、それを天童くんと亀田くんは許している感じが、ワンさんは枝豆好きだもんなと黙認している空気が好きだった。

カラオケが終わり、明け方になって男性陣はこっち、女性陣はこっちと別れて帰るあの空気に物凄く胸が締めつけられる。マスクをして帰る双子のリアリティも情緒を増していて、こんな楽しい時間がまた過ごせたらいいけど、同じような時間はもうこないんだろうなとなんとなくわかっている切なさがある。

 

ラストシーンで、書いていることの象徴だったはずのタイプ音が消え、音楽だけが聞えるようになる。2人が本気を出す勢いのあるシーンで、そこまで使っていたタイプ音を消すというところに、監督の思いを感じた。 

何も書かなければ白紙の画面が続くだけという状況は、自分も意識して書くようになって感じるようになった。パソコンの前に座っているだけでは、何もならない。その恐怖と可能性の表裏一体な感情は、今の自分で観たから理解できたことなのかもしれないと思った。

すべてを注ぎ切った清々しい表情の天童くんと馬淵さん。スクリーンいっぱいに映し出される“了”の文字と点滅するアンダーバーはなんとも言えない力強さがあった。たった一文字、“了”を打ち込むまでに、どれだけの時間と神経を注ぎ込んできたかは、台詞のないあの2人の活き活きとした表情でわかる。

 

馬淵さんのした決断になんとも言えないのは、自分ではないその人が、決めたことだからだと思う。

「ばしゃ馬さんとビッグマウス」を観て感じるのは、夢と向き合うことはいつでも自己責任という現実だった。どんな決断もその人が考え抜いて決めたことで、その決断はその人が持つものだと突きつけられる。

これからも馬淵さんは、自分で決めた道を歩くだろうから、天童くんは天童くんで歩みを進めて、もしまだ好きでいたとしたら本気で迎えに行ったらいいなと思う。

 

 

エンドロールで出演者の名前がずらっと並んでいるのを見て、夢について描くこの映画もまた誰かにとっての夢なのだなと実感した。

1人1人の夢がここにもあって、映画のエンドロールに名前が載ることがどれほど嬉しいことだろうかと考えた。

映画を観終えた後の余韻は明るいものとは言えないかもしれないけど、希望がないとも思わなかった。「ばしゃ馬さんとビッグマウス」を観ると、夢に対してどんな姿勢で自分が立っているのかを再認識できる。

この映画をスクリーンで観たいと思っている人が集まって、エンドロールが終わるまでしっかりと席に座り、明かりがついてから立ち上がる客席の空気が居心地よかった。

Nissy Entertainment「OK?」

 

Nissyが監督をした、ミュージックショートフィルム「OK?〜君に贈る24時間〜」の上映イベントに行ってきた。

何段階にも渡ってNissyの世界観に浸ることができる最高の時間だった。パソコンでもケータイの画面でもなく、大きなスクリーンで。シアターの音で。こだわり抜いた映像と音を全神経を集中して観ることができる時間は、これ以上ないほど贅沢だった。

 

場所は浜松町。Nissyがここでイベントを行わなかったら、ここに来ることはなかったなと思うと感慨深かった。知らない場所に行ってみようと思うきっかけをくれるのはライブやイベントで、それを理由に初めて入るお店があったりと、いろんなものを見られることが楽しい。

イベントが終わり、会場を出て駅までの道を歩いているとセミの声がした。いつもなら夏だなあと思うだけのセミの声も、タイが撮影地になっている「OK?」のショートフィルムを観た後はぴったりきていて、この気候とタイの映像は相性が良かった。

 

シアター内に入って席に座ると、シングルCDの「OK?」に収録される「17th Kiss」「恋す肌」「愛tears」が流れていて、曲を聴き込んだ後にショートフィルムを観ることができて、会場を出る頃には頭の中で曲が流れ続けていた。

 

上映が終わったタイミングで突如フォトスポットが出現。

一人一枚写真を撮ってもらうことができるコーナーがあった。やめておこうかと思ったけど、いや…ここは思い切って、せっかく来たわけだし記念にと勇気を出して撮ってきた。羞恥心に打ち勝った瞬間。

フォトパネルの完成度も作りがちゃんとしていてすごかった。置いただけみたいなものではなくて、箱型になっていて黒いフレームがしっかりあって入り口と出口はカーテンも付いている。背景の写真は奥に配置されているから、本当にその場に居るような錯覚が起きる、クオリティが高い写真になった。Nissyのパネルの白いフチが写ると、「OK?」の世界観で立場が逆転したようにも見えるところも好きだなと思った。

 

映像を観た後に待っている写真展も素晴らしかった。

映像の後に、写真として見せるということは簡単ではないと思う。映像があって、音があるインパクトをさらに超えることとストーリー性を持たせること。限られた広さと条件の中で、動線を確保すること。それらの課題をクリアするのにどれだけ考え抜かれたのだろうと思うと、どんな小さなひとつも見落とせないなと感じて、一生懸命目に焼き付けた。

自分は美術館が得意ではなかった。見たいものがあっても、人の壁をよけたり待ったりして前に立つ気になれなくて。でも今回、あれだけの人数がいて、会場の狭いロビーを使ってあれだけのストーリー性がある写真展を完成させたことがすごいと思った。

自然な流れで誘導があって、道順に沿って行くと徐々に道が狭まって二人分のスペースに。そこから写真展が始まり、まず感動したのは、入ってすぐに印象的な鐘の音が聞こえてきたことだった。「OK?」の映像の中でついさっきまで耳にしていた、タイの風景に馴染むように鳴っていた音が、ここで聞こえてくるなんて。

 

Nissyが作るエンターテイメント、ただ写真を見るだけで終わるはずがなかったと、ここでさらに引き込まれた。写真を一枚一枚見ていくたびに、目にした映像が写真をきっかけに動き出すみたいで、こんなシーンもあった。あのやり取りがよかったな。と思い出すことができて、不思議なくらいするすると記憶がよみがえるような体験だった。

展示の順番も配置も素敵で、写真だけではなく衣装と小道具も実物を見られたことが嬉しかった。「愛tears」でのハートのネオンの実物と懐中時計の実物を見られたことが特に嬉しくて、さっき見たものが、タイにあった物がここにある…!と感動した。

衣装を見た時、衣装を見られたことへの感動というより、本当に全部がエンターテイメントになっているんだなと感じて感動した。映画のように、映像があって、それを大きなスクリーンでしっかりとした音響のもと観ることができて、その時使った衣装も小道具も作品の一部になっている。

西島隆弘さんの頭の中にあるものが具現化して、こうして形になったんだとふと体感した瞬間、すごいことだと実感が湧いた。

 

入場して、出てくるまでずっとワクワクが止まらなかった。

応募してみて、来てよかったとしみじみ思った。写真展の最後に直筆で“来てくれてありがとう”と書いてあったNissyのサインを見て、この場所へ来ることの意味や経緯をNissyは想像してくれているのだなと感じた。CDのリリースだけでなくイベントを企画して、もう少し高めに設定することもできたかもしれないのに、行ってみようかなと思いやすい価格にしてくれていたことに感謝したいなと思う。

今もまだ頭の中で流れ続ける「17th Kiss」と「恋す肌」と「愛tears」をすぐにでも聴きたい気持ちは山々だけど、そうするならDVDのついたCDを買いたいなという気持ちでいる。