もしも望みがかなうとしたら、ミニシアターをつくりたい。

 
もしも、好きなように使える予算があって、何をしてもいいと言われたとしたら。
自分が支配人になって、理想をいっぱいにつめこんだ、小さな映画館がほしい。
 
支配人の力を駆使して、とにかく自分が好きな映画を上映スケジュールに組む。
これを映画館のスクリーンで見たかった、ちゃんとした音響設備で聴きたかった、という思いの丈を盛り込んだ、オリジナルの映画館。スクリーンはそんなに大きくなくてもいいけど、座席はレトロな赤いふかふかの席がいい。
 
メインで順番に上映するのは
味園ユニバース」「ばしゃ馬さんとビッグマウス」「バッテリー」「ペネロピ」「キリマンジャロの雪」「かもめ食堂「めがね」「しあわせのパン」「8UPPERS」
 
上映前の音楽もきまぐれに選んで、それをレコードでかけられたらいい。いつも決まって夕方になると、ビリージョエルの「Honesty」をかけたい。
月に何度か、サックス奏者の方にロビーでの演奏を依頼する。
 
 
全体のイメージで言うと「ホノカアボーイ」のシアターがまさにそう。
シアターを出て、ロビーにはその日ごとのおやつがあって、マラサダもいいしポップコーンは欠かせない。片手で持てるサイズの、赤と白でストライプな縦長カップにポップコーンが入っていて、フレーバーポップコーンもある。ブラックペッパーとカレー味。ドリンクはジンジャーエールと、もはやコーヒー牛乳なミルクの多く入ったカフェラテがあって、夜はカクテルのダージリンクーラーをメニューにする。
 
ロビーの内装は壁の一つをベイビーブルーにして、窓のフレームは白に。パッチワークみたいに単色の布をつなぎ合わせたソファーも置きたい。
シアターへの入り口は赤いベロアの重たいカーテンで、金色のロープで両端に留める。
 
これを映画館で観たかった…と思うほどの映画を日常で見つけた時に、そんな映画館があったならとふと思う。後から気がつく映画の良さを、スクリーンで。公開期間に間に合わなかった後悔も、ここでなら取り戻せる。
 
 
こうやって書いていると、脳裏にずっと千鳥のノブさんの声が聞こえる気がするけど、たまにはわけもなく空想してみてもいいかなと思う。好きなものばかりなんて最高じゃないか。
 
自分でつくるミニシアターは空想のなかだけど、ずっと悔やんでいた「味園ユニバース」をスクリーンで観たかったという思いは、奇跡が起きて、本当に映画館で観ることができる可能性がでてきた。実現可能だなんて思いもしなかったけど、チケットを取ることができたなら、私の望みは一つかなうのかもしれない。
 
 
p.s.
「宛名のないファンレター」をいつも読みに来てくれる方、検索を通して読んでくれている方、ありがとうございます。
文章を書くばかりでお礼を伝えられないままでいたことが気がかりで、やっと言葉にできました。読者登録や星をつけてもらえることも、書き続ける力になっています。
どんな場所で、どんな人が読んでくれているのだろうと思いを巡らせながら書いています。
興味のあること、好きなこと、あっちへ行ったりこっちへ行ったりな文章ですが、これからもよろしくお願いします。

「パンぱんだ」が可愛いのはどうして?− ユニットシャッフルの魅力 −

 

癒しを必要としている時に見る「パンぱんだ」の包容力はすごい。

初めて知ったのは、ライブ「十祭」のDVD。大倉忠義さんと安田章大さんが、ユニットカバーという形で披露していたのを見たことから。なので元々がこの二人の組み合わせなのかと一時期は思っていて、本家は丸山隆平さんと横山裕さんの二人だと知って凄く意外だったのを覚えている。

丸山さんは可愛らしい曲のイメージもあったけれど、個人的に関ジャニ∞を知った当時、横山さんはシュッとしているイメージ。トークを仕切ったりしている落ち着いたお兄さんな印象を持っていて、この曲を横山さんが…!?と想像がつかないくらい衝撃があった。

関ジャニ∞のユニット曲はインパクトが強いものが多い。こんなことするの?!という驚きを見るたびに受ける。もしもユニット曲MV集が発売されたら、関ジャニ∞に興味を持ち始めている人にはそれを見せたいくらいに楽しい。そのインパクトの強さに引っ掛かりを感じる人がいるはず。

 

「ビースト!」「Kicyu」「アイスクリーム」…挙げきれないほど、どのユニット曲も意外性とサプライズに満ちていて、そんな中でもカワイイユニット曲ランキングを作るなら「パンぱんだ」は外せない。

本家の「パンぱんだ」は、音源は「FIGHT」映像はライブDVD「EIGHT×EIGHTER」に収録されている。

子供番組から飛び出してきたようなビジュアル、衣装がまたとてつもなく可愛くて。パンダの帽子をかぶって、モコモコしましまのフードつきパーカーを着ている丸山さんと横山さん。モコモコ手袋まで…!そして似合っているという衝撃。全体の色合いは白黒だけど、丸山さんの衣装は何重もの三角が重なっている幾何学模様のTシャツに水玉模様のサルエルパンツを合わせることでステージでも映えていて、横山さんの衣装はボーダーのパーカーに白Tで黒の膝上短パンがナイスバランス。

ジャケット衣装やステージで目立つ衣装が多いなかで、部屋着のようなリラックス衣装の二人を見られる嬉しさもこの曲の魅力かなと思う。ライブ衣装といえばゴテゴテでギラギラしたもの、という先入観のあった頃に見たこともあって、こんなにシンプルな衣装も有りなんだという驚きがあった。

今となってはライブならではの派手目な衣装の良さも分かるようになったけれど、それでも変わらず普段着に近い形の服は好みで、ライブMCで白Tに着替えて出てくる時とかなんかはグッとくる。具体的には「JUKE BOX」でのMCの渋谷すばるさんがとてもいい。

 

振り付けも覚えたくなる可愛さで、手を顔の周りで動かす振りが多いため、女性アイドルのダンスに似たキュルルン感が溢れ出ている。ここまで可愛さにメーター振り切った演出にしたアイデアが素晴らしい。

ライブDVDでは各公演のラスト名場面集が入っていて、丸山さんにとって馴染みいっぱいの“パン”が歌詞に盛り沢山なこの曲を歌っているという時点で面白可愛いのに、最後に“パン”を強めに言わずにいられない衝動に駆られる丸山さんとそれを懸命に止めようとする横山さんの攻防が微笑ましすぎる。最終公演は「じゃあ、ラストやし、一緒に言おうか」と横山さんが言って、丸山さんが「うん」と頷いた後、いくよ?と表情で小さく合図して、会場全体の阿吽の呼吸で「パーン」を言う流れを全部含めて、ほのぼのに満ちている。

この曲の時のバルーンの演出もとても好きで、カラフルなバルーンが曲中に登場して客席へと満遍なく移動した後に、サビのタイミングでバルーンが割れて中からパンダの風船と紙吹雪が降ってくる演出。始めから空中に仕掛けが用意してあるのではなくて、本当に突然出てきて驚く感じがいいなとDVDで見ていて新鮮に感動したのを覚えている。またパンダの風船のサイズ感が絶妙で、手に取りたくなるミニマムさがいい。

 

大倉さんと安田さん版の「パンぱんだ」も良さがいっぱいで、二人が並んでこの曲を歌っていると、ファンタジー感がすごい。なんとなく、丸山さんと横山さんは絵本。大倉さんと安田さんはファンタジーなイメージ。

ファンにたまらないユニットシャッフルの集合体が「十祭」だと思っているので、二人の組み合わせは最高に決まっているのだけど、想像以上の魅力と威力を発揮している。安田さんの衣装の似合いっぷりが半端ではなくて、着こなしているすごさ。大倉さんは若干照れていて、堂々としている安田さんと照れ笑いが溢れてしまう大倉さんに二人ならではの空気感が表れていていい。

二人の「パンぱんだ」を見て初めて、“あざとい可愛さ”とはこういうことか…!と分かった。「十祭」での二人の振り向きウインクは本当にズルい。確信犯的に狙い落としにきているのは分かっているのに、だめだ可愛い…と全面降伏せざるを得ない。

 

「パンぱんだ」は、コンビによってそれぞれ違った魅力が溢れ出る不思議な曲だと思っている。本家だけに止まらず、ユニットをシャッフルしてよくぞ完全再現してくれましたと感動した。1曲で2パターンも楽しみ方があることの贅沢さを感じながら、この曲の持つゆるさにこれからも癒されていきたい。

そしてやっぱり、かっこいいユニットも好きなのだけど「my store 〜可能性を秘めた男たち〜」のように可愛さのある衣装や演出も好きなので今後のユニットも楽しみでしょうがない。

君と僕の「エネルギー」

 

アルバム曲として隠れたままではもったいないと思うくらいに好きな曲「エネルギー」

関ジャニ∞のアルバム「ズッコケ大脱走」に収録されている。シンプルな曲だけど、大好きで。エンドレスリピートで聴いていた時期がある。

好きなものがあって、日々それを原動力にしている人にとって「エネルギー」は応援歌になるはず。

 

音楽プレーヤーから流れてきて初めて聴いたこの曲で丸山隆平さんの声を聴いて、これだ!と青天の霹靂だった。それが何のこれだ!なのか、よく分かってはいないのだけど、まず丸山さんの歌声に、そしてメロディー、歌詞。全てがしっくりきた。

丸山さんの伸びやかで明るい歌声が目の前の景色を照らしてくれるような力を持っていて、声から湧いたイメージはまさしくオレンジだった。

 

この曲を聴くまで、自分にとって、元気の源というものをどう言葉に表現したらいいのかがずっと分からなかった。確かに力になっているのだけど、それは得体の知れない何かのようで、抽象的すぎて『無いもの』みたいだと寂しく思っていた。

けれどこの曲を聴いて、そうかこれがエネルギーか…!と全部に納得がいった。自分の感じている感覚は『無いもの』じゃなく、そういうものは確かにあると肯定してもらえたような気持ちになり、嬉しかった。

 

“恋しい”と“愛しい”を描いた君のグラフィティー

“会いたい”と“会えない”のバランス僕のエネルギー

歌い出しにくるサビ。このサビのフレーズが好きで、何度聴いたかわからない。

対比が美しくて、語感も素晴らしい。口に出して言いたくなる歌詞ランキングを自分の中で作るなら、ベスト5に入る。

 

ここでは韻が踏まれていて、「“恋しい”と“愛しい”」では“しい”が重なり

“会いたい”と“会えない”」では一見違うように見える“たい”と“ない”が、語尾の“い”だけではなく、子音の二文字が同じになっていて、「」と「」には小さな“”が付く。「」の後ろには小さな“”が付く。

「描いた」も「バランス」も、「君の」と「僕の」というフレーズも、リズムが揃っていて、言葉が同じ箱にすっぽりおさまっているような心地よさがある。

「グラフィティー」と「エネルギー」も“”で繋がっている。無意識のうちに心地よく聴こえる音感のマジックがたくさん隠れているから、この曲は楽しい。

 

曲全体の雰囲気や歌い出しがあまりに丸山隆平さんのイメージにぴったりで、初めて聴いた時、この曲は丸山さんのソロ曲なのかな、もしかして作詞も?と思ったほどだった。実際はソロではなくて作詞もmicro+grandeさんという方なのだけど、それでもこの曲は“丸山隆平さん”という感じがする。丸山さんのソロ曲「ワンシャン・ロンピン」「MAGIC WORD~僕なりの…~」に通じるものがある気がした。

 

歌詞を見ていると、小学生の二人のストーリーで、仲の良かった二人だけど、夏の暑い頃に女の子が転校して遠くへ行ってしまったのかなという情景が思い浮かんだ。歌詞の空気に合わせるように、その幼さがメンバーの歌声にも表れていて、無邪気に跳ねるような抑揚で歌っているのがとてもいい。

歌い出しに続く歌詞は、男の子が書いた夏休みの絵日記を見ているような、風景のピースになる言葉が色々と出てくる。「麦わら帽子」や「水まきホースにかかる虹のアーチ」「流れ着く鯨雲」と、どれも表現がやわらかくて可愛らしい。

 

サビの間ずっと「“会いたい”と“会えない”のバランス僕のエネルギー」と歌って、会えないことを納得しようとしているのに、最後のサビで

“恋しい”と“愛しい”を描いた君のグラフィティー

会いたいよ 今すぐ会いたい

と、堪えきれず素直な本音になっているところがいい。そこまでの流れがあるからこそ、大人になりきれずやっぱり会いたいと言わずにいられない等身大な歌詞にキュンとくる。

 

そしてその歌詞の後に、ためにためて

僕にエネルギー そのエネルギー

という歌詞が続く。“僕に”と歌うのはここだけで、それが切実さと一生懸命さが伝わってきて可愛い。この曲は総じて可愛い。ライブツアー「47」で歌われたこともあるけれど、ここ数年のライブでは歌われていないので、いつか「エネルギー」がセットリストに入る日を密かに夢みている。

 

「エネルギー」を聴いて印象的だったのは、

“会いたい”と“会えない”のバランス 僕のエネルギー

という歌詞。“バランス”と表現されたところだった。

普通にありそうな歌詞にするなら、会いたいけど会えない、とかそういうものになりそうなところを、一つ飛び越えている表現だと思った。

会いたいからといって会えてばかりでは、そのうち“会いたい”と考えることがなくなってしまうだろうし、会えないばかりではエネルギーにならない。会えていない時間と会える時間がそれぞれ存在して、そのバランスがあるからこそ、エネルギーに変えることが出来ると気がついた。

この曲を聴くまでは、好きなものがあるからこそ頑張れると思うことはあっても、日常に向き合う時間に湧いてくる一見マイナスに思えるような感情がエネルギーだと考えたことはなかった。でも、この曲で新しい視点を知ったことで、案外マイナスに思える感情は使いようで、下から押し上げる力はプラスなエネルギーよりも強い時があるかもしれないと感じるようになった。

 

ライブに行くと、元気になる。ステージの上に立つ姿を見ると、自分も頑張りたいことをちゃんと頑張ろうと思う。ライブが終わるとさびしく思うけれど、『現実』と『非日常』と括ってその落差に落ち込むのではなくて、もっと有効に使う方法があるのではと思うようになった。

自分にとってライブは日常と同じ道の上にあって、日常を耐えながら歩いて行く先にある、とびきりのご褒美だ。その時間で目一杯に発散して、フル充電をする。ライブが終わってからの毎日は、その充電したエネルギーを大切に使いながら、また前進して行く。

時々、思う以上にエネルギーを削られるような出来事に阻まれるけど、途中途中にあるDVDの発売やCDの発売に補充のエネルギーをもらって、また一歩ずつ進む。

 

そうして一年を歩ききると、とびきりのご褒美の時間にまた居ることができる。

自分にとってライブとは、アーティストとは、そういう存在になっている。もうお手上げだと思うほどに打ちのめされるような出来事も、音楽があって、ライブという特別な時間があるから、一日一日どうにか進んでいくことができる。

アーティストも自分も同じ時間を人として生きている。そんなシンプルなことを時々忘れてしまうけど、同じ時間をそれぞれの場所でちゃんと生きているから、一年に一度のライブという場であっても、また会えるわけで。それぞれの毎日だったなかに、ひとつ同じ思い出ができる。道が重なる瞬間だと思う。

そういうことをシンプルに嬉しく感じられる自分でいたいと、「エネルギー」という曲に出会ってさらに思うようになった。