喫茶店でミックスジュース

 

夏で今年は最後になるな、そう思っていたのに、

なぜ私はまた新大阪駅に。

 

11月、関ジャニ∞の凱旋ライブが京セラドームで行われることになり、気づけば訪れていた再びの大阪。

出発前、ホテルの予約もバッチリ。でも念のためと確認をしたら、予約を1ヶ月勘違いしていたことを出発の2日前に気がついた。考えるよりも早く電話で問い合わせてなんとか宿を押さえるファインプレーで迎えた当日。

 

夜の19時開演のライブは初で、顔のむくみも取れるしそれはそれでいいなと思ったりした。

土曜日、日曜日とあったライブの前には、横山裕さんがカンテレ開局60周年を記念した特別番組につきっきりで出演していて、ATCホールという会場での公開放送やジャニ勉のセット展示が行われていた。

テレビ局の方ではないんだなーと気づきながらも、天神橋筋商店街へ行って関ジャニ∞の曲「タカラモノ」が流れるのを聞けたらいいなと思って、到着してすぐ目指したのは天満。

 

天満に来たからにはカンテレも行っておこう!と挨拶でもするような感覚でカンテレへと歩いて、横山裕さんと東野幸治さんの大きなたれ幕を見上げた。もう片方には、高橋一生さんのドラマのたれ幕。

 

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ATCホールはもちろん混んでいたようだけど、カンテレのジャニ勉ポスター前も混んでいた。整列になっていたので、ひとりひとり順番に写真を撮れている様子だった。

遠巻きに眺めてから、夏は暑すぎて外に出る気になれなかったカンテレ裏の大きい公園へ。日差しはあって、頬にあたる風はほんのり冷たい。天気のいい公園。

警察署の方々が吹奏楽の演奏会をしていたり、子供たちも家族も多くて、日曜日だなぁと思った。

 

カンテレから天神橋筋商店街への信号を待っていると、公園からみんなで移動して来たと見られる幼稚園のお揃いの帽子をかぶった子供たちがぞろぞろと集結。

しっかりと先生の言うことを聞きながら、でもフリーダムさもしっかり。「バーバーバー♪」とバナナの歌を合唱しはじめて、子供たちがミニオン化。どんどん口ずさむ子が増えていって、先生まで参加。

歌いたくなったから歌う。その感じ、いいなあと思わず笑ってしまった。

 

とにかく広い天神橋筋商店街で、前に見つけたお店をもう一度見つけるのは至難の業と思ったけど、ここは勘でなんとかなるだろうと歩いてみる。

行きたい喫茶店があった。前はディスプレイを見つめるだけで通り過ぎてしまったそのお店に、今度は行こうと決めていた。

 

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入り口は1階、階段を上ると2階がお店になっていて、賑やかな商店街にいることを忘れそうな静かな雰囲気。

店内を眺められる席に座って、メロンソーダにしようかコーヒーにしようか迷った末に、ミックスジュースを選んだ。あとアイスクリーム。

アイスは家でだって食べるけど、喫茶店のメニューに書かれた“アイスクリーム”には甘い魅力がある。どんなふうに出てくるんだろうと想像する楽しさもいい。

ミックスジュース、おいしかった。

牛乳は苦手なのにミックスジュースを頼むというのはチャレンジだったけど、バナナの味もフルーツの味もちゃんとわかって、おいしく飲めた。

大阪で飲むミックスジュース。丸山さんが「ミックスジュースあるやん!」と声高々に言っていなかったら初めて飲むこともなかったかもしれない。

 

アイスクリームは、横長なプリンアラモードのお皿にのって出てきた。

バナナとオレンジ、ホイップクリームも添えてあって、お皿の横のスプーンはナプキンにくるまれて置いてある。お馴染みのバニラアイスの味だけど、なんか嬉しいからそれがいい。

 

今日ライブに行くのかーほんとかなー大阪に居るからほんとなんだろな。と思いながらしばらく静かな時間をすごして、また賑やかな商店街を歩いた。

「タカラモノ」が商店街で流れるのを聞くことはできなかったけど、年内は来られないだろうなと思っていた場所に、もう一度来られたことで十分だった。

それからお友達との待ち合わせのために戻って、前回は一人で食べた串カツを今度はみんなで食べて。やっぱり紅天は大阪で食べるほうが辛くなくて美味しかった。

 

紙に刻まれる文字の美しさ。活版印刷で、名刺を作る

 

活版印刷”というものにずっと興味があった。

ぽこっと出っ張っていたり、金でキラキラしていたり、紙の加工には様々な技法があると思っていたけど、それは何という名前なのか、どんなふうに作られているのか。特に「活版」と「箔押し」は気になるキーワードだった。

だからこそ、名刺を作るということをきっかけに、印刷技術について色んなことを知りたくなった。

 

活版印刷は、鉛で作られたパーツを使う。ひらがな一文字一文字、漢字一文字一文字の活字を並べて、“組版”というものを作る。そうして並べた組版に、ハンコのようにインクをつけた面をグッと紙に押し込むことで印刷する。

パーツの出っ張りと押し込む力の加減によって、紙にはくぼみが出来て、その紙の凹凸が独特の風合いを生み出す。職人さんの手仕事なので、インクのかすれ具合などもそれぞれにあって、唯一無二の魅力になる。

 

文学の風を感じる活版印刷

しかし印刷会社は年々減少しているようで、店舗を実際に構える会社は見つけようとしても簡単には見つからなかった。 その中でひとつ、気になった会社があった。

 

それが「中村活字

歌舞伎座のある東銀座のあたり、最寄駅は新富町駅。駅から徒歩5分ほどで到着できる。

どんな雰囲気か知らないままでは心細かったけど、「しゃかいか!」というサイトで活版印刷の工房を取材された方のインタビュー記事を読んで、活版の作られ方や社長さんの人柄が伝わり、ここにしようと決めた。銀座までは行ったことがあっても、新富町は初めて到達する駅。乗ったことのない電車を乗り継ぎ、そこへ行くというだけでも自分にとっては大冒険だった。

年の瀬も近づく11月下旬。したいことを先延ばしにして年は跨ぎたくないと、思いきって訪れた。

 

大体の名刺会社はネット注文を受ける代わりに、理想どおりに作りたい場合、データは自分でIllustratorもしくはPhotoshopで作成。規定も細かく、何がなにやらわからなかった。紙の手触りがわからないのもじれったくて、それならもう店頭で実際に目の前にして、紙を選び、文字の配置やバランスを選んで、お店の方と話してアドバイスを聞きながら作りたい。

目の前にパーツが揃っている状態から、自分で組み合わせを考えることは好きで、一からのデザインはそんなに得意ではないとわかった。

 

走り書きの名刺デザインと、これだけは載せたいブログタイトルのロゴのデータ。

それだけを持って、「中村活字」を訪ねた。

小道を曲がった先に佇むお店。横開きの扉を開けると、年季がはいっている木の壁とテーブル、受付。その向こうには活版の棚が奥の方までずらりと並び、“ものが作られている場所”という重厚感があった。

本当にお店にたどり着けた…あった…と感動しながら、お店へと入り「名刺を作りたいんです」とまず一言。「こちらへどうぞ」と案内してもらった。

ここまできたら、なにがしたいか、どうしたいか、はっきり口にしなくては伝わらない。人見知っている場合ではないと、いつもよりはっきりと言葉にして希望を伝える。データの下書きも作っては来られなかったのに、その場でデータを作ってくださり、文字の位置はもう少し下にしてくださいというオーダーもその場で感覚的にすることができた。

肩書きは上に置くか、下に置くか、どっちが名前が目立ちますか?という質問には「下の方がいいかもね」とアドバイスをくれた。

 

ロゴは印を樹脂で作るといいと思うよと中村さんが方法を教えてくれて、活版のあのくぼみを手書きの質感そのままに再現できることになった。線の細さは大丈夫だろうかと心配もあったけど、このロゴなら大丈夫と言っていただいてほっとした。

峰崎まめこさんがくださったロゴのデータがPDFになっていたおかげで、それをメールで送信してすぐに使ってもらうことができ、自分ではわからなかったデータのサイズのあれこれも対処してくださった。

 

紙はコットンというものを選んだ。厚みがあって、手触りが画用紙に近く、でもすべすべ感もある。色が3色あって、コルクなど黄色みがかった暖かい色の紙があった。

文庫本のような黄色みも惹かれるけど、ここはテーマにした“手紙”を思い出して、素直に白でいこうと決定。インクは黒にした。

 

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オーダーが無事にできてよかったー…と安心したところで、中村さんがひょいっとトロフィーサイズの銅像を持ってきて見せてくれた。

「持ってみ?」

えーそうは言っても持てるくらいの重さでしょう?と持ち上げようとしてみると、おっも。重い。持ち上がらない。そんなに重いものをひょいっと持っていた中村さん。相当にすごい。

 

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そのすっごく重い銅像は、ヨハネス・グーテンベルクという名前のヨーロッパの人物で、活版印刷を発明したとされる人物。活版印刷がどうやって始まったのか、仕掛け絵本で教えてくれて、その時間が楽しかった。

 

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活版というものが、文字のパーツとそのほかのパーツでかちっと止められていることは理解していたけど、実物の組版を持ってきて見せてくれて、余白の部分に使われるパーツについても話を聞かせてもらった。

 

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パソコンでの印刷は、置きたい場所に配置すれば余白に何かする必要はないけど、活版となると文字の部分だけではなく何もない部分も埋めていく必要がある。

「行間が大事」

物書きなら知っているといいよと言いながら話してくれた、その言葉が印象に残った。文字通りの意味だけではないように感じて、文章を書く上でも、“描かない部分”が大切になるのだと思った。

 

お店のなかには手動の印刷機がひとつ置かれていて、これで印刷するのか…とまじまじ眺めていると、中村さんが先ほど見せてくれていた活版をそこに設置して、白い紙のコースターを手渡し、そこに置いて左側にあるハンドルを下ろしてごらん?と試しに刷らせてくれた。


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壊してしまわないだろうかと恐る恐るハンドルを下ろすと、インクの付いたローラーがくるくると動き、ハンドルがぐーっと下がった先に、くっと押し込む手の感覚がわかった。

 

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紙に出っ張りが押し込まれる瞬間が手に伝わって、出来上がったコースターを見ると、しっかりくぼみが付いている。

思う以上にインクはくっきりと発色して、よくよく見るとかすれがある。裏面を見ると、ほんのりくぼみの部分が出っ張っていて、「力が強すぎると、裏面に出てしまうんだよ」と説明してもらった。

 

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ちょっとの力加減で出来が左右される活版印刷。職人さんがいてくれることは大切なことだ…と尊敬が深まった。

 

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まさか実際に印刷体験をさせてもらえるとは思わず、ただ名刺を作りたいのではなくて活版というものに関心があった自分にとっては社会科見学みたいで嬉しくて仕方なかった。

小学生の頃の、連れて行かれるがままな社会科見学もそれなりに楽しみどころを見つけようとしていたけど、自分の興味のあるものがわかるようになった今経験する社会科見学は、想像の倍楽しかった。

 

 

減少しつつあると言われている活版印刷だけど、海外ではその価値が見直されはじめていたり、日本でも気軽に試すことができるワークスペースが増えていたりする。

好きなのになあと言うだけに留まらず、今回実際にオーダーをすることができてよかった。素敵なものは、残り続けてほしい。スピードや簡単さではない、文字に込められた心の機微が宿るような美しさのある印刷技術が、どうかこれからも根強くあってほしい。

 

名刺は郵送で届くことになった。

どんな風合いの名刺になるだろう。初めてのオーダー名刺がこの手に届く日が待ち遠しい。

 

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「宛名のないファンレター」をロゴにしてもらいました

 

お手紙のような名刺を作りたい。

文字の魅力が活きた名刺を、いつか。そう思っていたけど、今の自分では持っていても宝の持ち腐れなのではとためらっていた。

いや、やっぱり作ろうと思い立ったのは、都内へチョコレート探しの旅に出た時のこと。文章を書いていることをお話しできて、読みにいきますとまで言ってもらえたのに、あっ名刺を持ってない…と気づいた時。

ブログの名前を伝えても、それを記憶してもらうことは相手にとって手間になるのだとわかって、ああこういう場面で名刺は必要になるのかとわかった。

 

名刺を作るなら、決めていたことがあった。

一つは、活版印刷で作る

もう一つは、ロゴを作ってもらう

活版印刷のあてはなかったけど、ロゴになる文字のデザインを頼みたい方はもう決まっていた。一年前にネット上で作品を見かけて、万年筆で小説のタイトルや曲名を書いていたその手書き文字に心惹かれた。まだその頃は何のアイデアもなかったけど、いつかお願いできるきっかけがあったらと頭の中の棚にそっと置いていた。

 

ロゴをデザインしてくださったのは、峰崎まめこさん。

万年筆を使いこなすのは難しいはずなのに、峰崎まめこさんの字はスルスルと自由に線を描いて、手書き文字の温かみと、ロゴとしての見栄え。どちらもが理想的なバランスで成立している。

魅力は見てもらえたら伝わるはずなので、ぜひツイッターに見に行ってほしい。

 

作品を見て以来、いつの日かお願いできたらと思っていたその引き出しを今こそ開けるべき時だと思って、

受けていただけるか確証はなかったけれど、勇気を振り絞って連絡させていただいたところ、お受けしてくださることになり。

文章を書くことへの思いも、「宛名のないファンレター」というタイトルへ込めた気持ちも、好きなものや曲まであれこれ、こんなにいらないってと言われそうなほど、手掛かりになりそうなキーワードを伝えて、そうして完成した作品。

 

峰崎まめこさんに希望を伝える際、この作品がとくに好きですと話した中から、曲線のあるものが好きそうだと気づいてくださって、いくつかの案にそうしたデザインも含めてくれていた。

手書き文字がよかったのは、名刺を作るにあたってゴシック体や元からあるフォントにどうにも納得できなくて、手書きの質感がほしいけど自分の書く字では“普段通り”すぎると思ったからだった。

ああいうのがいいこういうのがいいと言うのはかんたんで、私の頭の中を見せられたら、互いに緊張すること無くいられるのにと思ったりもしたけど、思いを託して、なにが出来上がるかわからない可能性でいっぱいなこの時間が好きで。

だからこれを作れるのすごい!と感動したら、自分にできないことをできる相手に「すごい!」を伝えたい。依頼をするなんて恐れ多いと思う気持ちもあるけれど、それが叶うならと思い描かずにはいられなかった。

 

そうして、作っていただいた作品がこちら。

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これ!と思った。

自分の頭の中では到底産み出せなかった、この言葉の魅力が表現されていて、大好きになった。

漢字とひらがな、カタカナが入っている文字の並びはバランスと取るのが難しく、形にしずらいはずだけれど、それを美しく描いてくれていて嬉しかった。“ター”の終わりが横棒だけではなくて、“…”で終わるところが、言いたいことに余韻が漂う感じがして好きになった。

そして紙飛行機を見た瞬間に、そっか紙飛行機!と気づく感覚。上昇気流に乗って行きそうな紙飛行機と、ぽっと残された点にある余白が素敵で。すぅーっと線を描いて飛んでいく姿に思いが乗ってる気がして、ふと「青春のすべて」で安田章大さんが窓から飛ばした紙飛行機が思い浮かんだ。

手紙というコンセプトも、届けたい思いも、空気感がこ表現してもらったような。あんなふうにそっと飛ばした手紙が、届いたなら。

 

こんなに素敵なロゴを作ってもらって、お願いできて本当によかった。

「宛名のないファンレター」というタイトルに、こんなに思い入れができるとは思わなかった。アイコンも、タイトルも、憧れの人に作ってもらうことが叶い、ひとつひとつが大切なものになっていく実感があって、それがうれしい。

 

 

届くかわからない相手へ

どこへ届けたらいいかわからない相手へ

ファンレターの宛先がないとしても伝えたい思いがあるから、タイトルは「宛名のないファンレター」

 

ロゴを受けとって、ここから名刺作り。

未知のことに広がる景色を感じながら、進展していく一歩一歩に高まる気分をいま、楽しんでいる。