出来たこと

 

今年、2019年。

大阪には行かなかったな、行けなかった。

それなら私は、ここで出来ることをするんだと決めて、原稿を作って本を作った。文学フリマに出店した。

文学フリマで、完成した本を手渡すことができた方、通販で購入してくれた方、いろんな形で「大阪滞在記」を届けることができて、本に登場するお店にも、私が行けない代わりに本が大阪へと旅立ってくれた。

 

舞台もライブも、いろいろ観にいくことができた。

  • 高橋優さんライブ「STARTING OVER」
  • レキシミュージカル「ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」
  • Nissyライブ「Nissy Entertainment "5th Anniversary" BEST DOME TOUR」
  • ミュージカル「キンキーブーツ」
  • 関ジャニ∞ライブ「十五祭」
  • 「ディズニー・オン・クラシック」
  • 安田章大さん主演舞台「忘れてもらえないの歌」

 

ひとつひとつ、印象深い。

チケットの取り方を、特にミュージカルに関してはよく分かっていない私に声をかけてくださったお友達の優しさで、「キンキーブーツ」も「ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」も観ることが叶った。

 

ガラスペンを作りに行った。神保町の「ラドリオ」にもついに行けた。

たどり着けるだろうかと思ったけど、濱田英明さんの写真展にも行けた。ホテルでのアフタヌーンティーを、サプライズでプレゼントする計画も成功した。

 

音楽文への投稿を始めて、8月、入賞することができた。

いつまでもそこに留まることはできないと思いながらも、この1年のなかでこれは大きなことだった。

関ジャニ∞の「今」という曲について書いた文章で、実現したこと。それが本当にうれしくて「今」への思いはもっともっと強まった。

 

ブログ全体の記事数は、気づくと310を越えて。

関ジャニ∞のことを考えて、揺さぶられて、どう居ていいかわからなくなった時でも、どうにか。書くことは止めずにいられた。

いつか語源化したいと思っていた、なにわ男子の「ダイヤモンドスマイル」について書けたことも嬉しくて、書きたいけど素敵がゆえに難しい!と感じるものを一歩進めて文章にするということに取り組んだ。

 

今年初めてブログを読んでくださった方もいたのかもしれない。もしこれからまた関心の向く記事があったら、読みにきてください。

今年も読みにきてくださっていた方、ありがとうございます。黙々と、時にはよくわからないベクトルで熱く盛り上がる文章を読みにきてくれること、原動力になっています。

 

振り返りとして、良かったこと、出来たことしか書いていないけど、つらいと感じることがなかったはずはなく。

来年は来年で、初っ端から乗り越えないとならないことが待ち構えている。正直、年越したくないわー!と思っているけど、関ジャニ∞が2020年へと進むと言うなら、私もついて行くしかない。

地道な変化が、いつか振り返った時の大きな変化になっているはずと信じて、好きだ!と感じる音楽、舞台、ライブに足を運んで、文章にしていきたい。

不安だー!でも、なんとか越えられるはずなんだ。たぶん。

 

1年間、ありがとうございました。

2020年も、よろしくお願いします。

 

ふざけてる?お茶目?の境を攻める「木梨ファンク ザ ベスト」

 

「食わず嫌い王」を見ていた頃、タカさんが言ってることをころっと変えた時に木梨さんがする、“よおー!(手のひら返しのジェスチャー)”の流れが好きだった。

日テレの金曜23時に放送していた「未来想像堂」は好きな番組で、一時期そういった空気感の30分番組がいくつもあった頃はハシゴして見るのが楽しみだった。

木梨憲武さんをMCに、ゲストのこだわりの品を聞いて実際に手に取ってみたり、VTRのコーナーでは生活に馴染んで気にも止めなくなったような物がどのように発明されたのかを紐解いてストーリーとして知ることができた。

番組のテーマ曲が、フランク・シナトラ版の「My Way」だったことも覚えている。

 

野猿」として歌番組に出演していた時代もあることから、木梨憲武さんが歌を歌うことは知っていたけれど、まさかこのタイミングでいきなりアルバムをリリースするとは思わなかった。

しかもタイトルは「木梨ファンク ザ ベスト」

最初のアルバムなのに、ベスト。

 

謎の多すぎるアーティストのMステ出演は、関ジャニ∞と同じ週で、関ジャニ∞は中継でスタジオには居なかったものの、村上信五さんが木梨さんに呼びかけた「ウルトラソウルッ!!」のノリが最後まで繋がったことで、中継越しの共演を見ることができた。

まずヘアスタイルとサングラスに髭の出で立ちからして、かなりの鋭角さでふざけにきている木梨さん。

セットにスタンバイして、カメラがそれを映すと、やっぱりすごい存在感のヘアスタイル。まーたそうやってふざけて…!と思ったら流れだした曲がかっこいい。

それっぽく渋く歌うが、歌詞は日常密着型。

ただふざけているように見えて、音楽に関心のある層には音楽面で。歌詞に共感を覚える層には木梨憲武さんとしてのライフスタイルのような見せ方で。年代の隔たり無く楽しみの間口を広げているところがすごい。

リード曲のタイトルは「GG STAND UP!!」歳を重ねることを、曲のパフォーマンスとして渋くかっこよく成立させていて、だけど身体にくる節々の痛さは隠さない。力の抜き加減が絶妙で、その魅力に惹かれる。

 

 

「GG STAND UP!!」では、“パーリラ”と入ってくるコーラスに、70年代を彷彿とさせるEarth,wind&Fireの「SEPTEMBER」を思い出したりして、いたるところに散りばめられている音楽の遊び心にワクワクしてくる。

「I LOVE YOUだもんで。」の“だもんで。”に込められた、照れたはにかみのような言葉が持つ表情にグッときて、木梨憲武さん節がこれでもかというほど効いているところにも笑ってしまう。

 

しかしこのアルバムのずるいところは、

「Laughing Days」

という曲を隠し持っているところにある。

ブラスバンド、優しいドラムで刻むリズム。ピアノが奏でるジャジーなメロディーに木梨憲武さんのボーカルが合わさり、好きにならないはずがない。

ここまで曲の好みが分かりやすいといっそ清々しいな!と思うほど、これまで文章にして好きだと書いてきた曲たちと傾向が似ている。

「Laughing Days」作詞はH.U.B.さん。作曲はJosef Melinさん。

 

Laughing in the love Laughing in the shine 君はずっと大丈夫

smileが表情だけで微笑むことを表すのに対して、Laughは声をだして笑うことを意味する。

“Laugh”という言葉を歌詞の中で見つけると、私は関ジャニ∞が歌った「All you need is Laugh」を思い出す。

あまり頻繁には見かけない単語だからこそ、あえてそれを選んだ意味を考えて、微笑んでと伝えるよりも気軽な、そして切実な思いをそこに見る。

 

 

私は時間が恐い。歳をとることも恐い。

若くなくなることへの恐れではない。人も場所も“このまま”が守られることはないのだと思い知らされるようで、立ち止まらせてはくれない時計の針が恐い。

けれど、お茶目にふざける大人の姿は、ときにどんなヒーローよりも輝いて見える。

肩肘張らず、向かってくる出来事にものらりくらりと交わす術を身につけて、楽しみどころを見つけ出す。

 

座右の銘にしたいと思っている言葉がある。

「柳に雪折れなし」

しなやかな柳(やなぎ)の枝は、雪が降ったとしても、その重みに耐えることができ折れることがない。しかし堅い木は雪の重みで枝は折れやすい。

強くあろうとすることは大切な心持ちだけど、頑なにならなくとも、しなやかに成せるはずだと思っている。

関ジャニ∞、レキシの池ちゃん、木梨憲武さん

少し先を歩く、私が憧れる大人たちは、脱力のすべを知っている人たち。

エネルギーを持ちながら、その脱力の緩急をセンス良く用いることのできる大人に、私もなりたい。

 

弱気なヒーローとラジオの思い出。 - 井上ジョー「幻」

 

たまに悲しいふりをして見せたり だらしのない事ばかりしてみたり

甘い甘い思い出の中には ニヤリと笑う悪魔が隠れているんだ

 

片割れのような気持ちがここにあると思える曲が存在することは、どんな居場所よりも心強い。

陽でもない、黒い鉛筆でグルグルと渦を描いた感情が、閉じたはずの箱から少しはみ出てこようとする時、それに飲まれてしまうのではと怖気づく。でも無理に蓋を閉じようとしても、今ある感情を無いことにするようで。

おりこうさんではない自分を許して、ニュートラルなままで落ち着く空気を取り戻させてくれるのが、井上ジョーさんが歌う「幻」だった。

 

この曲は作詞も作曲も歌も、井上ジョーさん。

「幻」が収録されたアルバム「ME! ME! ME!」がリリースされたのは2009年のことで、今から10年前になる。

初めて耳にしたのは、ラジオからだった。

「JOE24」というNACK5の番組でパーソナリティをしていた井上ジョーさんのラジオを偶然に聴いて、アルバムリリース当時でいくつか流していた曲の中で、特別に好きになったのがこの曲だった。ひと聴き惚れと言える出会いで毎週聴くようになり、勇気を出してリクエストメールを送ったことがあった。

毎週のように流していた「幻」がそろそろ流れなくなってきた頃、“この曲が大好きです。ぜひ流してください”と送ったメッセージ。エンディング間近でまさかのラジオネームを読まれ、井上ジョーさんがメッセージを読む声。その後ろでBGMとして流れていたのは「幻」だった。

「今ね、後ろで流れていますね、これが君のための「幻」ということでね」と、いい感じ風にトークを進めるシュールさが面白くて、普段のトークからして掴みどころのない面白い人だから、そういうパターンか!と納得しつついやいやいやBGMじゃなくて…!ちゃんと流して…!と私はラジオを片手に部屋をうろうろバタバタしていた。

 

 

それは君のために現れた幻

夜空の下で 寝そべるのもいいだろう  

 

こんな弱気な僕に たった一度だけでもいい

君を救えたなら 上等 

 

静かなドラムに言葉数の少ないベース、優しく穏やかに鳴るギターが心地よくて、なんて美しいメロディーなんだろうと思って以来、それは今も変わらず、聴くたびに心が震える感動を覚える。

理屈を抜きにして、自分がまといたい空気感の一つだと感じているから、歌詞に何を投影するということでもない気がしている。2番の歌詞やMVを見ると恋人同士や別れがテーマにあるようにも感じるけれど、あえて抽象的なまま、星の夜のイメージだけを持って、 この曲を大切に思っている。

 

「幻」をきっかけに聴くようになった井上ジョーさんのラジオには、それ以降も1度ハガキをラジオ局に送った。

リスナーからのイラストつきハガキを募集する企画で、いそいそと絵を描き、届くだろうかと半信半疑でポストに投函した。しばらく経ち、公式ブログにハガキをずらっと並べて井上ジョーさんがジャーンとポーズをとる写真が載った。その端に、小さく、私が送ったイラストの面影。

届いてた!そこにある!嬉しくて嬉しくて、にやにやがしばらく治まらなかった。

プレゼントとしてサイン入りの缶バッジが送られてくるという企画で、届いたのはかなりの月日が経ってからだったけど、こんなに嬉しいプレゼントはない大切にすると誓って今も、届いた封筒と一緒に缶バッジは宝物としてとってある。

 

月日が経って、井上ジョーさんが関ジャニ∞へ2013年に作詞作曲で楽曲提供をしていると知った時、

あの井上ジョーさん!何年も経ってそんな繋がり方がある…!?と驚いた。

再度意識して「レスキューレスキュー」を聴けば、それが井上ジョーさんの作った楽曲であることは確かにわかってくる。畳み掛ける歌詞、日本語と英語の言葉遊びのような語感。そして効き目抜群のキザさ。

“それよりお嬢さん、おケガはありませんか?”と歌う歌詞を作った井上ジョーさんは、ラジオで聴いたあの頃の遊び心のままの人だった。

ネイティブな英語に、驚異の語感リズム感覚。伸ばし放題な能力がありすぎて渋滞を起こすタイプの人だと思った直感は間違いなかったと今も考えている。

 

アルバム「ME! ME! ME!」には、「幻」だけでなく、

丸山さんが気に入りそうな語感が目白押しの「PARTY NIGHT ~踊り足りなNight~」や、躍動感が爽快な「CLOSER」

スピッツイズムを感じながらもトリッキーなメロディーの「瞳 ~HE TOLD ME~」

このアルバム1枚に、彼の多才さが溢れている。

 

ラジオが、私にとって唯一の“窓”だった頃。

誰が私の存在を知っているだろうかと思う時でも、ラジオは音を届け続けてくれた。

眠れない夜でもメッセージが読まれればたちまち眠りたくない夜に変わった。

この頃にお世話になったラジオはいくつもあって、ふかわりょうさんがパーソナリティだった「ロケットマンショー」もそうなのだけど、止まらなくなるのでまたあらためて書くことにする。

 

 

たまに悲しいふりをして見せたり だらしのない事ばかりしてみたり

甘い甘い思い出の中には ニヤリと笑う悪魔が隠れているんだ

ぽつりぽつりと置いていく風景描写がかわいくて、ぎこちなくしゃべる子供のようなあどけなさが胸のスペースを狭くする。

 

それは君のために現れた幻 

“幻”というものをこんなにも儚く、だけど確かなものとして表す歌詞があるのだと、うれしかった。

強くないヒーローとしてたまらなく愛しく、そのひた向きさに、共鳴のような何かを感じた。

きっとこれからも聴き続けるこの曲。書き残さず、自分の中だけで留めておくのが、と思ってきたけれど、「幻」という曲の素敵さをいま伝えたくなった。

とりとめもなく、つたないけど、私はこの曲が大好きだから。